2年ぶりに参集開催「釜石市成人のつどい」 二十歳の門出に笑顔はじける


2022/01/17
釜石新聞NewS #地域

「釜石市成人のつどい」式典に臨む新成人=9日

「釜石市成人のつどい」式典に臨む新成人=9日

 

 10日の「成人の日」を前に釜石市では9日、成人のつどい(市、市教委主催)が大町の市民ホールTETTOで開かれた。新型コロナウイルス感染状況を踏まえ、昨年は出席者を限定した式典をウェブ配信しており、参集開催は2年ぶり。検温や体調確認、マスク着用などの対策を徹底し、保護者も入場可能とした。長引くコロナ禍で帰郷がかなわなかった市外在住者も多く、会場では友人との再会を喜び合う姿が目立った。感染症の収束が見えぬまま、大人としての一歩を踏み出す新成人らは、困難を乗り越えた先の輝く未来に希望を託し、それぞれの人生をしっかり歩むことを誓った。

 

晴れ着姿の新成人で華やぐ式典会場の市民ホール

晴れ着姿の新成人で華やぐ式典会場の市民ホール

 

 今年の新成人は2001年4月2日から02年4月1日までに生まれた人。式には対象者295人中、227人が出席した。野田武則市長は東日本大震災の教訓、釜石人の不撓(ふとう)不屈の精神を胸に、たくましく生きることを新成人に期待。多様な課題を抱える世界と共に歩む必要性を示し、「限りある人生の中で精いっぱい自分の幸せを求めて生きてほしい。それがひいては世界の平和、幸福につながる」とエールを送った。

 

新成人を代表し、抱負を発表する三嶋瑛菜さん

新成人を代表し、抱負を発表する三嶋瑛菜さん

 

 釜石郵便局に勤務する三嶋瑛菜(あきな)さん(唐丹中、釜石商工高出身)が、新成人を代表し抱負発表。「つらいことも人生経験の価値を上げるチャンス。自分の素直な気持ちと向き合い、考えて出した答えを大事にし、自分色の人生を歩んでいこう。これまでの家族や地域の支えに感謝し、しっかり生きていくことが恩返しにつながる」と述べた。

 

 同市の成人のつどいは今年から、公募で集まった新成人が実行委員となり式典内容などを協議。今回は5人が名乗りを上げ、過去を振り返り未来につなぐイメージ動画、出身2高校の恩師から集めたメッセージ動画を自主制作し上映した。恒例の新成人有志による虎舞披露も式典を盛り上げた。

 

恩師のメッセージ動画上映で高校時代を懐かしむ

恩師のメッセージ動画上映で高校時代を懐かしむ

 

“寅年”の成人のつどいを虎舞で盛り上げる有志

“寅年”の成人のつどいを虎舞で盛り上げる有志

 

 式典の前後にはフォトスポットでの記念撮影を楽しんだり、再会した友人と会話を弾ませるいつもの光景が見られ、会場は華やいだ雰囲気に包まれた。大東文化大2年の本間勇樹さん(20)は甲子中の同級生らと再会し、「式典ができ、懐かしいみんなと会えたのが一番うれしい」と笑顔。大学はオンライン授業が続き、この2年間はほぼ釜石生活だが、体育教員の免許取得を目指し勉学に励む。成人としての自覚を高めつつ、「大好きな釜石を誇れるような大人になりたい」と地元愛をにじませた。

 

甲子中出身の同級生は「K」ポーズで記念の1枚

甲子中出身の同級生は「K」ポーズで記念の1枚

 

 市内の企業に勤める藤井利咲さん(20)は12月に誕生日を迎え、20歳になったばかり。初めて口にしたお酒の味に「おいしかった」とにっこり。今春から社会人3年目に入るにあたり、「自分の技能を磨きながら、後輩にも教えていければ」と決意を新たにする。長年続ける民謡でも夢を描き、「小さい子たちに民謡を広めていきたい」と後進育成に意欲を見せた。

 

 盛岡大短期大学部2年の山本菜摘さん(20)は、20年間育ててくれた両親に感謝。周りから「大人の仲間入りだね」と言われ、20歳の実感をかみしめる。保育士の資格を取得し、4月から就職予定。「子どもの目線に合わせ、気持ちを分かってあげられる保育士になりたい。まずは仕事を理解し、先輩方についていけるように頑張る」と目標を掲げた。

 

風船アートで彩られたフォトスポットで笑顔満開

風船アートで彩られたフォトスポットで笑顔満開

 

 今年の新成人は小学3年時に東日本大震災を経験。幾多の困難を乗り越えながら小・中・高校生活を送り、まちの復興をつぶさに見てきた。各種活動で震災後のまちづくりにも貢献。高校3年時に同市で開催されたラグビーワールドカップ(W杯)では、世界中から訪れる人たちへのもてなしや震災伝承活動で活躍する生徒もいた。

 

 ラグビーW杯の会場となった釜石鵜住居復興スタジアムのこけら落としイベント(2018年8月)でキックオフ宣言を行った洞口留伊さん(20)は現在、慶應義塾大の2年生。成人のつどいでは市民憲章、防災市民憲章の唱和を担当した。

 

釜石東中在学時の校長だった髙橋勝教育長(左)、野田武則市長と記念写真に納まる洞口留伊さん

釜石東中在学時の校長だった髙橋勝教育長(左)、野田武則市長と記念写真に納まる洞口留伊さん

 

洞口さんが復興スタジアム完成イベントでキックオフ宣言する姿を伝えた記事(復興釜石新聞)

洞口さんが復興スタジアム完成イベントでキックオフ宣言する姿を伝えた記事(復興釜石新聞)

 

 震災の津波で鵜住居町の自宅が全壊。18年に再建を果たした家で家族と暮らす洞口さんは「助けてもらった世界中の皆さんに感謝を伝えたいという思いは今も変わらない」。コロナ禍で世界の人々が苦しい日々を送る中、「自分も誰かのために何かしてあげられる人になりたい」と意を強くする。大学では防災を学ぶ。「勉強して多くの命を救うことが、これまでの支援への恩返しになる」と信じ未来を開く。

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