「釜石復興の鐘」建立から10年 震災の記憶継承、慰霊の思い新たに
建立から10年となる「釜石復興の鐘」の継承に思いを新たにするプロジェクトメンバーら
釜石市鈴子町のJR釜石駅前広場に建つ「釜石復興の鐘」は、2021年12月31日で建立から10年を迎えた。東日本大震災の犠牲者の鎮魂と復興への祈りが込められた鐘は、全国の支援者の協力で建てられ、傷ついた市民の心を癒やす音(ね)を響かせてきた。鐘を設置した市民団体「釜石復興の風プロジェクト」(八幡徹也代表)は毎年、建立日の打鐘を欠かさず、「震災を忘れない」思いを発信し続けている。
恒例となった“大みそか打鐘”は11回目。活動に協力する若者団体「小さな風」(八幡達史代表)のメンバーも加わり、夕刻に鐘を鳴らして祈りをささげた。鐘の周辺にはLEDキャンドルをともした竹灯籠約70個を並べた。北九州市の「小倉城竹あかり実行委員会」(世話人:同市職員/森井章太郎さん)から釜石観光物産協会を通じて贈られた300個の一部。22年の3・11には、この灯籠を生かした慰霊行事も予定する。
同鐘は復興うちわの販売収益と寄付金を資金に、震災があった11年に建立。大みそかに除幕し市に寄贈された。鐘の四方には、野田武則市長が揮ごうした「鎮魂」「復興」「記憶」「希望」の4つの言葉が刻まれる。駅前という好立地にあることで観光バスの立ち寄りも多く、市外の人に震災の事実を知ってもらう場にもなっている。
恒例の“大みそか打鐘”には一般の人も参加。震災の記憶を後世につなぐ=昨年12月31日
自らも被災した同プロジェクトの八幡代表(69)は「この10年はあっという間。全てを失い、生きるのに必死だったころが今でも鮮明に思い出される」と回顧。同鐘建立に協力した全国の支援者にあらためて感謝し、「皆さんの『釜石頑張れ』という気持ちを、いつまでも忘れてはいけない。若いメンバーを増やし、確実に引き継いでいける方法を考えたい」と気を引き締める。
プロジェクトには今なお、個人から毎月支援金が送られてくるといい、寄せられた善意は鐘の維持管理や関連行事の費用などに充てられている。「今後は震災をいかに伝えていくかが大事。細々でも活動を続け、風化防止の一翼を担いたい」と八幡代表。
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