タグ別アーカイブ: 地域

umesaibai1

梅酒の実、再利用した加工品づくりへ 釜石地方梅栽培研究会「可能性に期待」

梅酒の実を再利用した試作品を味わう生産者たち

梅酒の実を再利用した試作品を味わう生産者たち

 
 釜石地域で栽培されたウメの実を使い、地元の酒造会社浜千鳥(新里進社長)が製造する「梅酒」。ウメの実を提供する生産者らでつくる釜石地方梅栽培研究会(前川訓章会長)が、梅酒製造後のウメの実(漬梅)を利用した加工品づくりで知恵を絞っている。6月20日、会員企業で漬梅加工品の開発を進める「麻生」(本社・神奈川県)の三陸釜石工場(釜石市片岸町)を見学。試作品のジャムを味見し、「おいしい」と手応えを得た。同会事務局によると、市内外で漬梅利用の動きもちらほら。資源・副産物を再利用して環境にやさしい循環型の取り組みにする考えだ。
 
釜石地方梅栽培研究会ではウメの安定生産や漬梅の有効活用を考える

釜石地方梅栽培研究会ではウメの安定生産や漬梅の有効活用を考える

 
 同会は釜石市、大槌町のウメ生産者、梅酒製造の浜千鳥、漬梅を利用した商品開発を進める食品加工業や菓子製造業、小売販売業者ら22個人・団体で組織。良質なウメの栽培や安定した生産の確保を目指し、栽培講習などで技術力の向上、栽培推進を図っている。
 
 ここ数年、浜千鳥による青梅集荷量は3~4トンで、梅酒は継続的、安定的に製造できるようになった。課題は漬梅の活用で、「食べてもおいしい」がすべてを使い切るのは難しかった。麻生三陸釜石工場が一部を使って加工試験事業を進めているが、種抜きなどで思いのほか手間がかかることが分かった。実を細かくする作業を効率よく行えるよう、昨年、カッターミキサーを購入。同会が県や市の補助金を活用し資金を出したほか、麻生も一部を負担した。
 
麻生三陸釜石工場で導入したカッターミキサーを確認した

麻生三陸釜石工場で導入したカッターミキサーを確認した

 
 20日の工場見学には会員ら15人ほどが参加し、導入したカッターミキサーを確認。試作品のジャムを試食した。加熱し種抜きした漬梅をミキサーでみじん切りした後、さらに過熱・煮詰めた試作品は「おいしい。ハイカラな味」と評価は上々。商品化、ジャムを活用した加工品づくりへ期待感を高めた。
 
 2022年度総会も開かれ、昨年の青梅集荷実績(4138キロ)、前年産の青梅を使った梅酒の出荷量(720ミリリットル入り約9300本)などが報告された。本年度は計4回の集荷会、せん定や病害防除を学ぶ栽培講習会、先進地研修などを計画。生産者勧誘と生産面積の拡大運動、漬梅の商品開発と試験販売にも力を入れる。
 
収穫したウメの実を持ち込む生産者。期待を込め浜千鳥に託す

収穫したウメの実を持ち込む生産者。期待を込め浜千鳥に託す

 
 収穫したばかりの青梅の実を持ち込む参加者もいた。今年は春先に雨が少なく、木の成長と実のなり具合に不安があるとこぼす前川会長(76)だが、漬梅の活用が広がることで、ウメの単価や生産者への還元率が上がることを期待。一方、生産者の高齢化が課題だとして、「退職後に参入できるよう受け入れ態勢を整え、この地で末永くウメ栽培を継続させたい」と前を見据える。
 
釜石地域の農業振興に意欲を高める会員、助言する市や県関係者

釜石地域の農業振興に意欲を高める会員、助言する市や県関係者

 
 浜千鳥醸造部長で杜氏(とうじ)の奥村康太郎さん(41)によると、地元の観光施設や盛岡市のホテルなどが漬梅を使ったジェラートや和洋菓子を売り出しているという。県外から漬梅自体の販売を希望する問い合わせもあり、全量を再利用できる可能性が見えてきた。市の地域振興作物として生産力向上へ支援を受けることができるようになり、「安定生産と新たな地場産業を結びつけた取り組み。知名度が上がれば、遊休農地の活用にもつながる。釜石型の農業振興に役立てたい」と意欲を見せた。

 

koho1787thum

広報かまいし2022年7月1日号(No.1787)

広報かまいし2022年7月1日号(No.1787)
 

広報かまいし2022年7月1日号(No.1787)

広報かまいし2022年7月1日号(No.1787)

ファイル形式: PDFファイル
データ容量: 1.12MB
ダウンロード


 

【P1】
根浜海岸海水浴場を開設します
橋野鉄鉱山見学会 他
【P2-3】
低所得の子育て世帯に対する子育て世帯生活支援特別給付金
乳がん検診を受けましょう 他
【P4-5】
新型コロナワクチン接種
【P6-7】
まちのお知らせ
【P8】
ラグビー女子日本代表 対 南アフリカ代表戦
うのすまい・トモス朝市with ひとつの街 他

この記事に関するお問い合わせ
釜石市 総務企画部 広聴広報課 広聴広報係
〒026-8686 岩手県釜石市只越町3丁目9番13号
電話:0193-27-8419 / Fax 0193-22-2686 / メール
元記事:https://www.city.kamaishi.iwate.jp/docs/2022060900074/
釜石市

釜石市

釜石市公式サイトと連携し、縁とらんすがピックアップした記事を掲載しています。記事の内容に関するお問い合わせは、各記事の担当窓口までお問い合わせください。
keitoraichi4709

市民に愛され3年目 「かまいし軽トラ市」スタート! 11月まで月1回開催

6月から始まった本年度の「かまいし軽トラ市」

6月から始まった本年度の「かまいし軽トラ市」

 
 地元の農産物や水産加工品などを生産者が直売する「かまいし軽トラ市」が今年もスタート。6月26日、釜石市大町の市民ホールTETTO屋根のある広場で本年度初の販売会が開かれ、待ちわびた市民らが買い物を楽しんだ。市が主催し、2020年度から始めて3年目。地場産品の発信、生産者と消費者の交流の場として定着してきた同イベントは、11月まで月1回の開催を予定する。
 
 市内の農業生産者、水産加工業者、障害者就労支援施設など11店が出店。農産物はタマネギ、キャベツ、ナスなどの採れたて野菜のほか、収穫期を迎えたウメの実、市内では珍しい無臭ニンニクなど10数種類が並んだ。水産物は塩蔵ワカメ、新巻きザケ、ホタテなど貝類の味付け加工品など。菓子やワイン、手工芸品も買い物客の目を引いた。
 
地元産の新鮮野菜は大人気!直売ならではの低価格も魅力

地元産の新鮮野菜は大人気!直売ならではの低価格も魅力

 
新巻きザケの切り身やワカメなど海藻類の加工品を販売したリアス海藻店

新巻きザケの切り身やワカメなど海藻類の加工品を販売したリアス海藻店

 
釜石産ブドウで作ったワインや手作り雑貨が注目を集めたまごころ就労支援センター

釜石産ブドウで作ったワインや手作り雑貨が注目を集めたまごころ就労支援センター

 
 大只越町の櫻庭秀子さん(72)はサンショウの実を手にし、「家でも庭先に植えているが、使い方は限定的。今日は地元の農家さんから調理法を教わった。やってみます」とうれしい発見も。「秋にかけてリンゴとかも出てくるので今後も足を運びたい」と楽しみにした。
 
 この日は、岩手県立大総合政策学部、吉野英岐教授のゼミ学生6人がフィールドワークの一環でイベント運営を手伝った。平井凪未(なみ)さん(3年)は「客ではなく運営側に立つことで、見えてくる課題もある。岩手出身だが、まだまだ知らないことが多い。釜石の特産物、地域活動などを知るきっかけにもなった」と貴重な学びの場を喜んだ。
 
アンケート回収などイベント運営を手伝う岩手県立大の学生

アンケート回収などイベント運営を手伝う岩手県立大の学生

 
 生産者の所得向上、地産地消の推進などを目的に始まった軽トラ市は、農作物の収穫時期に合わせて開催。昨年度は6月から11月まで計6回の開催を計画したが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で8、9月は中止。全4回の開催に延べ1542人が来場した。事業を担当する市水産農林課の小山田俊一課長は「水産関係を含め一次産業全体の出店者を増やしたい。高齢の生産者は対面販売で元気ももらっているようで、人や地域のつながりへの貢献も期待できる。さらなる集客へ工夫しながら取り組みたい」と今後を見据える。
 
1回200円でチャレンジ!菌床シイタケの詰め放題コーナー

1回200円でチャレンジ!菌床シイタケの詰め放題コーナー

 
昨年度から軽トラ市の会場となっているTETTO屋根のある広場

昨年度から軽トラ市の会場となっているTETTO屋根のある広場

 
 次回の軽トラ市は7月24日日曜日、鵜住居町のうのすまい・トモス朝市と同時開催で、午前9時から11時までトモス広場(三陸鉄道鵜住居駅前)で開かれる。

shokomodel1

自転車安全利用モデル校・釜石商工高に指定書交付 釜石署「地域の見本に」

「自転車安全利用モデル校」の指定書を手にする釜石商工高の浦島君(中)と伊東校長(右)、釜石署の田中課長

「自転車安全利用モデル校」の指定書を手にする釜石商工高の浦島君(中)と伊東校長(右)、釜石署の田中課長

  
 釜石商工高(伊東道夫校長、生徒201人)は2022年度、釜石警察署から釜石地区「自転車安全利用モデル校」の指定を受けた。釜石市大平町の同校で15日、指定書の交付式があり、釜石署交通課の田中慎也課長が交通安全委員長の浦島真央君(3年)に指定書を伝達。生徒たちは自転車を利用する際の交通規範意識を高めた。
   
 同校では、生徒45人が通学に自転車を利用する。浦島君も2年生までは自転車通学をしていて、学校への通学路は坂道や狭い道が多いうえ、国道45号は車の交通量も多く注意が必要だと実感。経験を伝えながら、自転車の点検や車の送迎場での歩行者誘導、安全確認の徹底など呼び掛けに力を入れる考えで、「地域の一員として全校生徒で交通安全に努めたい」と意気込む。
   
田中課長から指定書を受け取り交通安全意識を高める浦島君(左)

田中課長から指定書を受け取り交通安全意識を高める浦島君(左)

  
 釜石署管内で自転車利用者の人身事故は年間5~6件ほどで、昨年は4件だった。今年は2件発生しており、年代は50代と80代。事故の形態と原因は出会い頭の衝突、不十分な安全確認が目立つといい、田中課長は「若いうちからの意識向上が重要になる。マナーの良い行動をすることで見本となり、地域の交通安全を引っ張ってほしい」と期待する。
   
 指定書は釜石市交通安全対策協議会(会長・野田武則市長)、釜石地区交通安全協会(菊池重人会長)、釜石署(前川剛署長)の3者連名による。基本的な交通ルールを正しく理解し、地域の模範となる行動や学校での自主的な交通安全活動の促進を目的にする。同校のほか、釜石中も同モデル校の指定を受けている。

kizunawalk1

東北つなぐ「絆ウオーク」 復興支援に感謝込め、釜石から元気発信

釜石で展開された「絆ウオーク」。参加者はゴール地点を目指して歩を進めた

釜石で展開された「絆ウオーク」。参加者はゴール地点を目指して歩を進めた

  
 東日本大震災被災地の復興と発展支援を目的に東北4県を歩いて巡る「絆ウオーク」が15日、釜石市に到着した。釜石市ウオーキング協会(桝井昇会長)の会員らが大船渡市側から引き継いだシンボルフラッグを掲げ、市内を3日間の日程で実踏。復興支援に感謝を込め元気に歩き、心の復興を願う絆のリレーを担った。25日には同協会員らが県内陸部の愛好者らを先導し、大槌町から山田町を歩行。三陸鉄道陸中山田駅で宮古地区を担当する実踏隊にフラッグを託す。
  
 絆ウオークは日本ウオーキング協会などでつくる東北復興支援運動体実行委員会が主催。「被災地の今を知り、知らせる」をテーマに掲げ、福島県相馬市から青森県八戸市までの約570キロを4県のウオーキング協会員らでつくる実踏隊がリレー方式で踏破する。相馬市を2021年3月に出発。本県での実施は昨年9月の予定だったが、新型コロナウイルス禍で延期していた。今回、5日に本県入り。陸前高田市、大船渡市と歩をつないできた。
  
釜石市の桝井会長(左)にシンボルフラッグを引き渡す大船渡市の佐々木会長(右)

釜石市の桝井会長(左)にシンボルフラッグを引き渡す大船渡市の佐々木会長(右)

  
 15日は、大船渡市歩こう会(佐々木一郎会長)の会員7人が三陸町の三陸鉄道吉浜駅を出発し、釜石・唐丹町の同唐丹駅に移動。釜石市協会、民話のまち遠野ウオーキング協会(荻野七朗会長)の会員ら34人が出迎えた。唐丹駅前の広場で引き継ぎ式。佐々木会長(79)は、歩行中に掲げ続けたシンボルフラッグを桝井会長(81)に手渡し、「脈々とつないできた復興の歩み、被災地の願い、絆を引き継いでほしい」と思いを伝えた。
  
思いをつないできた小旗の引き継ぎも行われた

思いをつないできた小旗の引き継ぎも行われた

  
「歩くぞー!」。出発前に気合を入れる参加者たち

「歩くぞー!」。出発前に気合を入れる参加者たち

  
 「一歩ずつ」「ガンバロウ!」「リフレッシュしながら楽しんで歩こう」などと、これまでの参加者が思いを書き込んだ小旗、横断幕の引き渡しも受け、釜石地区のリレーウオークがスタート。初日は3会の会員たちが、JR釜石駅までの13キロを歩いた。唐丹町では片岸地区の防潮堤、小白浜地区の復興住宅、漁港を通り、まちの変化、なりわいの再生を確認。復興に力を合わせた10余年の出来事や日常の大切さをかみしめつつ、元気に歩を進めた。
  
唐丹町に整備された防潮堤沿いを歩く釜石市協会員ら。余裕の笑顔が見える

唐丹町に整備された防潮堤沿いを歩く釜石市協会員ら。余裕の笑顔が見える

  
遠野協会の会員らもにこやかな表情でスタートを切った

遠野協会の会員らもにこやかな表情でスタートを切った

  
力強い足取りで漁港周辺を進む大船渡歩こう会メンバー

力強い足取りで漁港周辺を進む大船渡歩こう会メンバー

  
 釜石市協会の藤原巴さん(78)も元気ハツラツ。震災で自宅を失い、生活再建の場とした嬉石町が今回のウオークコースになった。「本当にいろんなことが変わった。それでも今も元気に歩けている。たくさんの仲間と楽しく歩くことができた」と目を細めた。今年から同協会に本格参加する山田町の千代川礼子さん(68)も震災で自宅が床下浸水した。「東北の人たちと思いや元気をつないでいくのがいい」と充実感をにじませた。
  
 震災時に遠野市は、津波被害を受けた三陸沿岸の後方支援拠点として大きな役割を果たした。遠野協会事務局長の臼井悦男さん(74)は、歩くことで隣接する両市の縁を再認識。「一区間だが、旗をつなぐ役割を担うことができた。穏やかな海沿いを歩き、気分も爽やか」と晴れやかな表情を見せた。
  
参加者は国道45号の上り坂にも負けずグングンと歩く

参加者は国道45号の上り坂にも負けずグングンと歩く

  
 釜石市協会は唐丹―陸中山田駅間の48キロを担当。桝井会長は「多くの温かい支援をいただいた。まちの復興と合わせ、そこで暮らす人たちの元気で前向きな姿を発信したい」と思いを込める。

power3643_

パワーリフティング・関村駿央さん(釜石) 北日本の大会 初出場で準優勝

北海道・東北ブロック選抜パワーリフティング選手権で初めて準優勝した関村駿央さん

北海道・東北ブロック選抜パワーリフティング選手権で初めて準優勝した関村駿央さん

 
 釜石市の関村駿央(としひろ)さん(31)=釜石警察署勤務=は、5月29日に青森県藤崎町で開かれた第7回北海道・東北ブロック選抜パワーリフティング選手権大会(2022とちぎ国体最終予選会)105キロ級で準優勝に輝いた。全国トップレベルの選手がそろう大会に初めて出場し、上位に食い込む実力を見せた関村さん。目標とする国体出場は逃したが、今後につながる大きな手応えを感じ、さらなる高みを目指す。
 
 パワーリフティングはウエイトトレーニングの集大成とされる競技で、スクワット(脚力)、ベンチプレス(腕力)、デッドリフト(背筋力)の3種目を行い、持ち上げたバーベルの総重量を競う。
 
バーベルを肩に担ぎ、規定の深さまでしゃがんだ後、立ち上がる「スクワット」

バーベルを肩に担ぎ、規定の深さまでしゃがんだ後、立ち上がる「スクワット」

 
ベンチ台に寝てバーベルを胸まで下ろした後、押し上げる「ベンチプレス」

ベンチ台に寝てバーベルを胸まで下ろした後、押し上げる「ベンチプレス」

 
床に置いてあるバーベルを直立姿勢まで引き上げる「デッドリフト」

床に置いてあるバーベルを直立姿勢まで引き上げる「デッドリフト」

 
 関村さんは、本格的な大会出場となった昨年11月の県予選(北上市)で優勝。7道県の代表が集まる同大会では、スクワット250キロ、ベンチプレス170キロ、デッドリフト260キロの計680キロを挙げ、準優勝した。優勝者との差は90キロ。「最初の大きな大会にしては目標とした記録は出せたのではないか」。他の出場者は「この世界では有名な人たちばかり」という、強豪ひしめく中での競技経験を大きなステップと捉える。
 
市営プール内のトレーニングルームで練習に励む関村駿央さん

市営プール内のトレーニングルームで練習に励む関村駿央さん

 
 幼稚園から高校まで水泳に励んだ関村さんは、大学入学と同時に陸上のハンマー投げに転向。体づくりのため、本格的に筋力トレーニングを始めた。やるほどに力がついていくことが楽しくなり、卒業後も警察官として働く傍らトレーニングを継続。自宅に機器をそろえるほか、釜石赴任後は市営プールのトレーニングルームや大船渡市の24時間営業の施設などに出向き鍛錬を続ける。
 
 身長175センチ、体重98キロ。トレーニングの成果は体格にも如実に表れ、高校卒業時の65キロから大幅に増量。3年ほど前から大会出場を目指すようになり、競技を意識した練習に励む。現在の自己ベストはスクワット270キロ、ベンチプレス180キロ、デッドリフト275キロ。
 
体幹、腕、脚の筋肉が日ごろのトレーニングの成果を物語る

体幹、腕、脚の筋肉が日ごろのトレーニングの成果を物語る

 
 今後の目標に掲げるのは、大会で総重量700キロ以上を出すこと。自身の体重は現階級では軽いほうで、「少し減量して1つ下の階級でトップを狙ったほうが、本来の力を出せるのかも」と戦い方を探る。国体選手になることも大きな目標の一つ。関村さんは全日本大会出場のための標準記録(105キロ級では650キロ)をクリアしており、今後、国体を含む全国大会出場がかなえば、上位入賞も期待される。
 
関村さんの今後の活躍に地元関係者も注目する

関村さんの今後の活躍に地元関係者も注目する

 
 地元競技関係者によると、本県からは過去にベンチプレスの世界大会やアジア大会、国体パワーリフティングの優勝者も出ており、全国的に見てもレベルの高さが際立つ。「身近に先駆者がいることで上を目指して頑張る人たちが増え、県全体の底上げが図られているのでは」。
 
 釜石市内から大会に出ている人はまだ少ないが、“予備軍”は10人以上。関係者が願うのは、誰でも気軽に利用可能なトレーニング施設の整備。筋力トレーニングはパワーリフティング競技を目指す人だけでなく、あらゆるスポーツに必要な体づくりの基本。「他市では公共の体育館にトレーニング施設が併設されるなど恵まれた環境がある。釜石から東北、全国の舞台で活躍する選手を輩出するためにも、地元に充実した施設が欲しい。全日本クラスの大会やスポーツ合宿誘致にもそうした施設は絶対必要」と話す。

seibutsu3167

小川川ワッカラ淵で水生生物調査 釜石小4年生が郷土の河川環境学ぶ

釜石小4年生が取り組んだ水生生物調査=13日

釜石小4年生が取り組んだ水生生物調査=13日

 
 釜石小(及川靖浩校長、児童92人)の4年生20人は13日、釜石市の小川川中流、ワッカラ淵で水生生物調査を行った。郷土の自然への理解を深め、環境保全意識を育むことなどを狙いとした総合的な学習の一環。児童らは水中にすむ小さな生き物を探し、見つかった種類から川の水質を判定する調査を体験した。
 
 調査学習には市生活環境課とまちづくり課の職員が協力。県環境アドバイザーの加藤直子さん(かまいし環境ネットワーク代表)が講師を務めた。児童らは5月に事前学習も行い、加藤さんから水辺にすむ生き物なども教わっている。
 
講師の加藤直子さんらが調査の仕方について説明

講師の加藤直子さんらが調査の仕方について説明

 
 この日は6班に分かれて生き物を採集。川底の石を拾い上げ目を凝らすと、さまざまな生き物が見つかった。児童らは普段あまり見かけない姿かたちをした生き物に興味津々。水を張ったバットに入れてじっくり観察した。
 
川に入り、生き物がくっ付いていそうな石を探す

川に入り、生き物がくっ付いていそうな石を探す

 
「何かいる~!」。発見した生き物は?

「何かいる~!」。発見した生き物は?

 
見つけた生き物を見せ合いっこ!

見つけた生き物を見せ合いっこ!

 
 約40分間、生き物探しを楽しんだ後は、班ごとに水生生物表と照らし合わせ、調査票に記入。最後に全員で確認した。水質階級は見つかった種類と数が多かった種類の合計で判定される。階級は▽きれいな水▽ややきれいな水▽きたない水▽とてもきたない水―の4つ。児童らが見つけたのはカワゲラ類、ヒラタカゲロウ類、ナガレトビケラ類など「きれいな水」にすむ生き物が多く、小川川は「きれいな川」であることが分かった。この日は、清流にすみ、美しい鳴き声が特徴のカジカガエルの声も確認。卵も見ることができた。
 
水生生物表の写真と見比べ、見つけた生物を特定

水生生物表の写真と見比べ、見つけた生物を特定

 
最後は各班から出された情報を基に水質判定

最後は各班から出された情報を基に水質判定

 
 中澤朋哉君は「初めて見る生き物がたくさんいた。地域の川がきれいだと聞いてうれしい。川を守るためにも、ごみはちゃんと決められた所に捨てたい」。藤元美和さんは「最初は水が濁っている感じがして汚いのかと思ったけど、(きれいな水にすむ)ヘビトンボ(幼虫)も見つけて、きれいな川だと分かった。環境のために自分でできることをしていきたい」と意識を高めた。
 
 「川には一生懸命生きている虫たちがいる。ワッカラ淵にはきれいな水でないと生きていけないホタルもいる。家に帰ったら、川を汚さないためにどうすべきか家族で話し合ってみて」と加藤さん。自然に親しみ、生き生きとした表情を見せる児童らを目の当たりにし、「生で本物に触れる大切さを常々感じていた。子どもたちにこういう機会をたくさん作ってあげてほしい」と願った。

kawanina2817

「ホタルの里」再生へ 小川川ワッカラ淵に地元町内会が餌のカワニナ放流

ゲンジボタルの餌となるカワニナの放流=小川川

ゲンジボタルの餌となるカワニナの放流=小川川

 
 釜石市内有数のゲンジボタルの生息地として知られる小川川。東日本大震災後の周辺環境の変化で数が減ってしまったホタルの光を取り戻そうと、地域住民らが川の環境再生に乗り出した。12日、地元の中小川町内会(佐々木正雪会長、280世帯)が、ホタルの幼虫の餌となる「カワニナ」の放流会を開き、住民ら約40人が参加。以前、目にした美しい光景の復活へ期待を高めた。
 
 ホタル観察会も開かれる中流域の通称・ワッカラ淵が放流会場。始めに、釜石ホタル友の会の臼澤良一会長(73)がホタルの一生や発光の仕組みについて説明した。ホタルは卵から成虫になるまで約1年を要する。幼虫は約10カ月間、水中で生活。ゲンジボタルの幼虫は巻き貝の「カワニナ」を食べて成長する。カワニナは、きれいな川の指標にもなる生物で、ゲンジボタルの生息には良好な水質の河川環境が欠かせない。
 
参加者は初めにホタルの生態について学んだ

参加者は初めにホタルの生態について学んだ

 
ゲンジボタルの幼虫が食べる巻き貝「カワニナ」

ゲンジボタルの幼虫が食べる巻き貝「カワニナ」

 
 震災前、無数のホタルが飛び交い、市民らの目を楽しませていた小川川だが、近年はその数が激減。震災後の流域への仮設住宅整備や台風豪雨の影響とみられる河川環境の変化が要因と考えられ、「そもそも餌のカワニナ自体がいなくなってしまった」という。
 
 再びホタルを増やす方策を模索する中、佐々木会長(72)が今年3月、上流域でカワニナの繁殖を確認。採集した約700匹を住民の協力を得てワッカラ淵に放流することになった。参加者はカワニナの姿を観察した後、小さなバケツに分けてもらい、流れの緩やかな場所に放流した。
 
放流場所のワッカラ淵。岸に近い浅瀬に放した

放流場所のワッカラ淵。岸に近い浅瀬に放した

 
地域の未来を担う子どもたちも放流活動に協力

地域の未来を担う子どもたちも放流活動に協力

 
 兄弟3人で参加した菊池朝陽君(小佐野小6年)は「カワニナがホタルの餌になるのを初めて知った」。同所でホタルを見たことがあり、「夜に来ると点々と緑色に光りながら飛んでいるのが見えた。もっといっぱい飛んで、『きれいだな』と思えるような川になったらいい」と願いを込めた。
 
 同川は1993年ごろ、市のホタル再生モデル事業の対象となり、カワニナやホタルの幼虫の放流が行われた。ホタルの発光は繁殖行動の一種で、雄と雌の求愛のシグナル。住民らは黒いカーテンで家の明かりを外に漏らさないよう配慮するなど、地道な努力を重ねた。その結果、ピーク時には100匹以上のホタルが見られるまでに。地元住民だけでなく、広く市民が訪れる観察スポットになっていた。
 
数年後、この場所でたくさんのホタルが飛び交うことを願って…

数年後、この場所でたくさんのホタルが飛び交うことを願って…

 
 今回の放流の成果が判明するのは来年以降。佐々木会長は「小川川のホタルは釜石の宝。絶対に守っていきたい。今日は子どもたちもたくさん集まってくれた。若い親子にどんどん参画してもらい、保全活動の輪を広げていきたい」と話す。
 
 ホタルの発光は例年6月下旬~7月上旬。気象条件がそろえば、今年も間もなく光輝く姿を見られそうだ。

bluecarbon1

「ブルーカーボン」活用で水産振興 海との関係性見直す 釜石市で勉強会

「ブルーカーボン」に関する勉強会。水産業振興に役立てる方策を考えた

「ブルーカーボン」に関する勉強会。水産業振興に役立てる方策を考えた

  
 脱炭素社会の実現に向けて世界が動き出す中、海域の生態系が吸収・貯留する二酸化炭素(CO2)「ブルーカーボン」が注目されている。森林が取り込むCO2「グリーンカーボン」の海洋版で、四方を海に囲まれた日本でも活用に向けた研究が進む。また近年、CO2削減量を認定した「カーボンオフセット・クレジット」を取引する取り組みが各地で進行。釜石市で10日に開かれた勉強会(岩手大三陸水産研究センターなど主催)ではブルーカーボンの働きやカーボンオフセット制度に着目し、水産業振興への活用策を考えた。
   
 ブルーカーボンは2009年、国連環境計画(UNEP)が提唱した。海は大気からCO2を吸収しており、アマモやコンブといった海草や藻類は海中でCO2を取り込む。吸収した後に地中の枝や葉、根で長期間貯留する機能も。森林から河川を通して海に流れ出たグリーンカーボンを藻場が吸収する働きもあり、CO2削減と気候変動の緩和に役立つとされる。
  
講師はリモート参加。児玉さんはブルーカーボンの働きなどを紹介した

講師はリモート参加。児玉さんはブルーカーボンの働きなどを紹介した

   
 平田の岩大釜石キャンパスで開かれた勉強会はオンライン配信を併用し、講師はリモートで参加した。国立研究開発法人水産研究・教育機構水産技術研究所の研究開発コーディネーター児玉真史さんがブルーカーボンの働きや活用を探る世界の動きを紹介。国内でも▽生態系・地域別藻場のCO2吸収量・貯留量の評価モデル開発▽藻場の維持・拡大技術開発▽海藻養殖技術の高度化―などの研究が進められている。
   
 児玉さんは、海水温上昇による磯焼け、ウニ類や魚類による食害は世界中で生じている現象とした上で、「新しい藻場の維持、形成技術の開発が必須。海藻養殖は気候変動の緩和、適応策として貢献していける。先進国日本の対策技術に期待が寄せられている」と強調した。食用以外で産業として成り立つことが重要で、「海藻由来の製品開発といった工業的活用策を探り新しい産業を生み出す、イノベーションが求められる」と指摘。沿岸域の藻場を増やす必要もあり、「大規模というよりは大胆に考えてほしい」と助言した。
  
信時さんは「横浜ブルーカーボン事業」について解説した

信時さんは「横浜ブルーカーボン事業」について解説した

  
 神戸大産官学連携本部アドバイザリーフェローの信時正人さんは、ブルーカーボンの活用事例として横浜市の取り組みを紹介した。海洋を活用した地球温暖化対策から生み出されたCO2削減量の枠(クレジット)を購入することで、削減したとみなす「カーボンオフセット」という事業で、横浜市では仕組みを利用しトライアスロン大会を開催。地元企業や団体が行うワカメの地産地消活動で生み出されたクレジットを購入することで、大会運営でのエネルギー利用や参加者の会場までの移動で生じるCO2排出量を埋め合わせ(オフセット)した。大会が温暖化対策を間接的に支援するほか、地域振興にも役立っているという。
  
 コンブ養殖による新たな事業が展開され、飲食店などと連携したメニュー提供や加工品開発、「こんぶ湯」など環境への優しさ、SDGsに注目したイベントでブルーカーボンの可能性を探る動きが活発化している。「アプローチの仕方はさまざま。変化を都市づくりにつなげている」と信時さん。「目の前の海との付き合い方を考えていくことが重要。資源、エネルギー、食の関係性を意識し、見直すきっかけの一つがブルーカーボン」と伝えた。
  
講師に質問する参加者。「海の持つ可能性を知ることができた」との声もあった

講師に質問する参加者。「海の持つ可能性を知ることができた」との声もあった

  
 会場参加と合わせて約90人が聴講。ブルーカーボンのメリットと理解促進へのアピール方法、親しみやすい海づくりのポイントなど質問を投げかける時間もあり、関心の高さをうかがわせた。
 
 釜石東部漁業協同組合青年部長を務める両石町の漁師、久保宣利さん(49)は深刻な磯焼けの対策のヒントが見つかることを期待し参加。同漁協では漁場にコンブを投入する磯焼け対策の実証実験を始めたところで、「ブルーカーボン事業とうまく組み合わせると、資源の循環、持続可能な漁業につなげられると可能性を感じた。より学びを深めたい」と刺激を受けていた。

kansya1821

行方不明の高齢女性を保護 危険回避した2女性に釜石警察署長が感謝状

釜石警察署署長感謝状を受けた阿部静子さん(中左)と前川陽美さん(中右)

釜石警察署署長感謝状を受けた阿部静子さん(中左)と前川陽美さん(中右)

 
 釜石警察署(前川剛署長)は9日、行方不明になっていた釜石市甲子町の女性(82)を保護し、迅速な通報で命の危険を回避したとして、大槌町小鎚の保健師・阿部静子さん(40)と釜石市鵜住居町の看護師・前川陽美さん(22)に署長感謝状を贈った。保護された女性は認知症の症状があり、2人の的確な判断と処置がなければ生命に関わる事案となっていた可能性も。女性が無事に家族のもとに帰れたことに、2人は「安心しました。本当に良かった」と口をそろえた。
 
 同署署長室で贈呈式が行われ、前川署長が阿部さん、前川さんに感謝状を手渡した。前川署長は「お2人のやさしさ、親切心が高齢女性を救った。ご家族も大変感謝しておられた。高齢者が犯罪被害や交通事故に巻き込まれる事案が増えている。これからも地域の安全、安心のためにご協力を」と願った。
 
行方不明高齢者保護の功労で前川剛署長が感謝状を贈呈

行方不明高齢者保護の功労で前川剛署長が感謝状を贈呈

 
 釜石市内に職場がある2人は5月11日午後7時すぎ、車で帰宅途中、鵜住居町の国道45号恋の峠付近で、ガードレールにつかまりながら上り坂をとぼとぼ歩く高齢女性を目撃。阿部さんは近くの店舗駐車場からUターン。前川さんは一度自宅に戻ったものの、気になって父親と一緒に現場に引き返した。
 
 2人が声を掛けると、女性は「家に帰ろうとしている」というようなことを口にしたが、「目がとろんとして、少し疲れている様子だった」(前川さん)という。「声を掛けたらすぐに近寄ってきた。不安も大きかったのでは」と阿部さん。その後、阿部さんの車に女性を乗せて毛布やカイロで体を温めるなど介抱。前川さんが110番通報し、警察官が到着するまでの間、手掛かりを求めて2人で女性の話を聞いていた。
 
 女性が家にいないことに家族が気付いたのは午後6時ごろ。付近を捜したが見つからず、釜石署に届け出た。前川さんらと家族からの通報が重なり、早い段階での身元判明につながった。発見時、外傷などは見受けられなかったが、翌日の受診で軽度の足首の捻挫が判明した。
 
大きな事故につながらず、女性が家族のもとに戻れたことを喜ぶ阿部さん(右)と前川さん

大きな事故につながらず、女性が家族のもとに戻れたことを喜ぶ阿部さん(右)と前川さん

 
 5年前、福祉施設から抜け出した高齢男性を保護した経験がある阿部さんは、今回の発見場所から「もしかしたら…」と同様のケースを考え、すぐに行動を起こした。「まずは無事だったことが何より。(高齢化が進み)これから似たようなことが増えるだろう。この地域に住む人間として、気になる人がいたら積極的に声を掛けたい」。
 
 発見現場は街灯がなく、当時は薄暗かった。周辺では過去にクマの目撃例もある。地元住民でもある前川さんは「あの時間帯に散歩する人を見かけることはほぼ無い。後悔しない選択ができて良かった」。思いがけない感謝状を受け、「自分にとっても誇りになる」と話し、初めての経験を胸に刻んだ。

koho_thum1786

広報かまいし2022年6月15日号(No.1786)

広報かまいし2022年6月15日号(No.1786)
 

広報かまいし2022年6月15日号(No.1786)

広報かまいし2022年6月15日号(No.1786)

ファイル形式: PDFファイル
データ容量: 4.01MB
ダウンロード


 

【P1】
表紙
【P2-5】
参議院選挙
【P6-8】
新型コロナワクチン接種のお知らせ
【P9】
個人情報の漏洩についてのお詫び
【P10-11】
健康診査・肺がん検診
【P12-13】
子どもはぐくみ通信
市民のひろば
【P14-15】
まちの話題
【P16-17】
防災行政無線
復興まちづくり協議会の開催 他
【P18-21】
まちのお知らせ
【P22-23】
保健案内板
保健だより
【P24】
市内で見られる夏鳥の紹介 他

この記事に関するお問い合わせ
釜石市 総務企画部 広聴広報課 広聴広報係
〒026-8686 岩手県釜石市只越町3丁目9番13号
電話:0193-27-8419 / Fax 0193-22-2686 / メール
元記事:https://www.city.kamaishi.iwate.jp/docs/2022060900074/
釜石市

釜石市

釜石市公式サイトと連携し、縁とらんすがピックアップした記事を掲載しています。記事の内容に関するお問い合わせは、各記事の担当窓口までお問い合わせください。
hashinokozan1307

みんなで守ろう!世界遺産 「橋野鉄鉱山」で環境美化活動&記念講演会

橋野鉄鉱山山神社エリアの環境美化活動=4日

橋野鉄鉱山山神社エリアの環境美化活動=4日

 
 釜石市橋野町の世界遺産「橋野鉄鉱山」で4日、高炉跡周辺の環境美化活動が行われた。市が主催し、市民ら約20人が参加。老朽化のため新たな鳥居が設置された山神社エリアを中心に、見学者の安全な歩行環境を整えた。山神社の歴史にスポットをあてた記念講演もあり、参加者が遺跡の保護、継承へ理解を深めた。
 
 「みんなの橋野鉄鉱山」と題した同行事は、「橋野高炉跡国史跡指定60周年」となった2017年にスタート。史跡指定月日の6月3日にちなんで毎年同時期に開催される。今年の環境美化活動は、三番高炉の東側にある山神社跡周辺で行われた。参加者は沢水の流れを良くするための溝の清掃、山神社跡に向かう通路の整備、新設された鳥居周りの枯れ木の撤去のほか、大雨で土が流出した見学路の修繕などを行った。約1時間の作業で一帯は歩きやすい環境になった。
 
山神社跡に向かう石段などの堆積物も撤去した

山神社跡に向かう石段などの堆積物も撤去した

 
大雨で土が流出した通路に土砂を運び路面を補修

大雨で土が流出した通路に土砂を運び路面を補修

 
 この後、同鉄鉱山インフォメーションセンターで記念講演会が開かれた。市世界遺産課課長補佐の森一欽さんが講師を務め、同鉄鉱山山神社について解説した。
 
 盛岡藩士・大島高任が甲子村大橋で洋式高炉による連続出銑に成功した翌年、1858(安政5)年に操業を開始した橋野鉄鉱山。操業の安全などを祈願する山神社は、三番高炉東側の山の斜面、高炉建設に使う花こう岩を切り出した後の平場を利用し、60年ごろに建てられたと推測される。現在は礎石だけが残り、社の場所を物語る。
 
山の斜面の平場に礎石が残る山神社跡。右隣には「石割桜」が育つ

山の斜面の平場に礎石が残る山神社跡。右隣には「石割桜」が育つ

 
 山神社の御神体、扁額(ともに木製)、手水鉢(石製)は、同町中村の熊野神社に保管される。94(明治27)年に鉄鉱山が廃業した際、山神社の神主を兼務していた熊野神社が引き取ったものとみられる。手水鉢は64(元治元)年、扁額は69(明治2)年の作。山神社への登り口には69(明治2)年建立の「山神碑」と「牛馬観世音碑(供養碑)」が残る。
 
1869年建立の山神碑(左)と牛馬観世音碑

1869年建立の山神碑(左)と牛馬観世音碑

 
 市は2021年度事業で同神社の鳥居を建て替えた。変形し倒れかかっていた前の鳥居は、風化具合から1945(昭和20)年ごろの製作とみられ、世界遺産の対象となった時代からは外れるため、新設に至った。鳥居の下には、神社ができたころのものと思われる礎石(花こう岩)があり、これは「世界遺産の構成要素」となるため保全された。
 
以前と同じ形に再現された山神社の新しい鳥居

以前と同じ形に再現された山神社の新しい鳥居

 
 新しい鳥居は前の鳥居と同じ形に再現。地域の慣習にならい、地元産のクリの木で作った。形は代表的な2つの型(明神、神明)が交じったタイプ。解説した森さんは「高炉場の全景が描かれた絵図(巻)には鳥居が3つある。橋野鉄鉱山時代は朱塗りだった可能性も。今後の調査で他の鳥居の痕跡も見つかるかもしれない」と期待を示した。
 
橋野鉄鉱山山神社について解説する市世界遺産課の森一欽課長補佐

橋野鉄鉱山山神社について解説する市世界遺産課の森一欽課長補佐

 
記念講演に聞き入る参加者

記念講演に聞き入る参加者

 
 釜石観光ガイド会の新人ガイド、川崎通さん(66、栗林町)は昨年10月からの養成講座を修了し、同鉄鉱山などで実習を重ねてきた。この日の講演で、「山神社にもいろいろな歴史があることが分かった。ガイドの参考にしたい。ここを訪れる人は事前に勉強してくる人も多い印象。それに対応できるようさらに知識を深めたい」と意欲を見せた。
 
釜石観光ガイドの案内で山神社についても理解を深める見学者

釜石観光ガイドの案内で山神社についても理解を深める見学者