遊び尽くす!釜石の海 箱崎白浜・隠れ家的ビーチでワンデイキャンプ 「怖い」を「楽しい」に
さまざまな遊びや体験で海に親しむ家族連れら
知る人ぞ知る釜石市のシークレットビーチ、箱崎白浜の通称“小白浜”海岸で19日、親子で海に親しむイベント「海あそびワンデイキャンプ」があった。海に関わる活動を展開する団体や漁師らでつくる「海と子どもの未来プロジェクト実行委員会(通称・さんりくBLUE ADVENTURE)」が主催。東日本大震災後に進んだ“海離れ”を食い止めたい、地元の自然に誇りと愛着を持ってほしい―と続けられ、今回で10回目となった。市内の家族連れを中心に60人超が参加。夏の暑さが残る水辺に歓声を響かせた。
参加者はウエットスーツとライフジャケットを身に着けて海ヘゴー。シーカヤックやスタンドアップパドルボード(SUP)による水上散歩、シュノーケリングでの生き物観察、砂遊びなど思い思いに時間を過ごした。昼食にカレーライスを味わった後は、釜石ライフセービングクラブの安全講習。水辺防災の合言葉「ういてまて」を実践した。
カヤックや救助用ボードで海に繰り出す子どもたち
水上バイクの試乗体験でうれしそうに手を振る子どもたち
波に揺られるだけでも楽しい。磯の生き物探しもできちゃう
小川町の久保綺良里(きらり)さん(小佐野小5年)は初参加。救助用水上バイクの試乗や砂浜での“シーグラス”探しなどを楽しんだ。「気持ちよくて楽しい場所。友達が一緒なのもうれしい」とにっこり。父の文之さん(49)は「いろんな遊びがそろっている」と歓迎した。平田の尾崎白浜出身で、実家のなりわいが漁業ということもあり海は身近な存在。だが、震災の津波で漁具を失ったり苦い記憶も。それでも「海を嫌いになることはない」ときっぱり。楽しい思い出が多く、子どもにも良さを伝えたいと思う。「いざという時は逃げろ。そのことを守ればいい」。のびのびと活動するまな娘を優しく見守っていた。
ラグビーイベントに合わせて来釜中の広島市のグループも参加した。碓井大和(やまと)君(深川小6年)は足ひれをつけて海に飛び込み、大はしゃぎ。さまざまな遊びを満喫していた。感想を聞いてみると、「海を嫌いな子も楽しめるんじゃないかな」と予想外の答えが返ってきた。「実はしょっぱい海水が苦手」とのこと。それでも白い砂、透明度の高い海に好印象を持ったようで、「遊び尽くす」と元気だった。
釜石の海を満喫中。子どもも大人もみんな笑顔
水上散歩、砂遊び…好きなように時間を過ごす参加者
小白浜は古くから地元住民がレジャーを楽しんでいた隠れ家的な場所。陸路で行くこともできるが、船での移動が便利で、このイベントでは漁師4人が白浜漁港からの送り迎えに協力した。「ホワイトビーチ」と呼ぶこともあると教えてくれたのは地元の佐々木幸喜さん(59)。仲間の佐々木義光さん(53)=片岸町室浜=と一服しながら、「自慢のビーチに人が集まるのはいいことだ。いろんな人と顔見知りになれるし、毎年楽しみにしている」と表情は明るかった。
昼食のカレーライスや汁物を届けるのは地元漁師の船
漁港からシークレットビーチまでの送迎を担当した漁師たち
こうした景観のいい環境で体験活動を行うことで地域に魅力を感じ、自然を残し守ろうという気持ちになってもらうのが狙いの一つ。安全確保の条件が良いのもポイントで、有事の際にはハイキング路を利用し高台避難も可能だ。団体が連携することで多彩なプログラムを提供でき、それぞれの取り組みを知ってもらうことで次世代に活動をつなぐとの期待感もある。そして欠かせないのが地域の力。運営には住民、高校生や大学生など市内外のボランティアが協力し、実行委と合わせると約40人が関わった。
「海の恵みをもらって暮らしている地域。豊かな経験を通し、いい思い出を作ってほしい。それが生きる力にもなるはず」とさんりくBLUE ADVENTURE共同代表の佐藤奏子さん(44)。震災後、気になっているのが海離れで、「海は怖いもの」と印象をいまだに残す人がいると感じている。「心の距離がある人たちが少しでも海に触れ合える機会になればいい。楽しい記憶を親子で残すことができたら、自然の見方や海への気持ちも変わってくると思う」。そのきっかけづくりになるよう取り組み続ける構えだ。
「古里の海の思い出と生きる力を育んでほしい」と佐藤奏子さん
同キャンプは海外からの大きな支えもあって継続する。釜石にゆかりのある元プロトライアスリートのマイケル・トリーズさん(英国出身)が設立した社会貢献団体「Tri 4 Japan(トライ・フォー・ジャパン)」の寄付で運営。新型コロナウイルスの影響で来釜は見送られているが、トリーズさんは心を寄せ続けているという。
釜石新聞NewS
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