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ナツハゼ苗木、育成中 全国植樹祭へ 釜石・栗林小「大事にお世話」

全国植樹祭に向け苗木育成事業に取り組む栗林小児童、県職員ら

全国植樹祭に向け苗木育成事業に取り組む栗林小児童、県職員ら

  
 釜石市栗林町の栗林小(八木澤江利子校長、児童33人)は、来春本県で行われる第73回全国植樹祭(県など主催)に向けた苗木の育成事業に取り組んでいる。1、2年生8人がナツハゼの苗木10本を育成中。12月上旬まで世話をする予定で、「どんどん大きくなるよう、水やりを頑張る」と意欲を見せる。
   
 植樹祭で植栽する苗木を県内の小中学校の児童生徒に育ててもらう取り組み「苗木のスクールステイ」の一環。児童生徒に森林づくりの大切さを伝え、植樹祭成功の機運醸成を図ることを目的にする。本年度は県内54の学校や緑の少年団などが取り組んでおり、苗木計445本の育成を委託する予定。釜石・大槌地域では3校で実施している。
  
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「大事に育てるぞ」。県職員(右)からナツハゼの苗木を受け取る児童

   
 3日、県沿岸広域振興局農林部の職員3人が同校を訪問。育成を担当する児童らは緑の少年団「橋野森林愛護少年団」として、赤い帽子と緑のスカーフを身に付けて出迎えた。同部林業振興チームの主査林業普及指導員、新井隆介さんが子どもたちに苗木を引き渡した。
  
苗木に興味を示す子どもたち。水やりのタイミングを教わった

苗木に興味を示す子どもたち。水やりのタイミングを教わった

 
「大きくなって」と水やり。12月まで成長を見守る

「大きくなって」と水やり。12月まで成長を見守る

   
 受け取った子どもたちは、ナツハゼに興味津々。同部職員から、▽国内に自生するツツジ科の落葉低木で、黒い実を付けることから「和製ブルーベリー」とも呼ばれている▽夏にハゼノキのような紅葉を見せるのが名前の由来―などと特徴を聞き取った。「土を触ってみて、乾いていたら水をたっぷり上げてください。根元に優しくかけてあげて。花がいっぱい咲き、実がたくさん付くように大事に育ててほしい」と依頼を受けた児童は元気に「はーい」と応えた。
   
 佐々木貫汰君(2年)は「ナツハゼという植物を初めて知った。木が腐らないようにみんなと一緒に水やりを頑張る。葉っぱの色が変わったり、花が咲いたり、実がなるって聞いたから、変わるところを観察しながら育てたい」と胸を張った。
  
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森林づくりの大切さを伝える学習で自然への興味関心を高める子どもたち

   
新井さんによる森林環境学習も行われた。「いわて森林(もり)の恵みガイドブック」を使い、森林の働きや林業の仕事を解説。児童は、「県の木は?」というクイズに挑戦しながら、自然に対する理解や興味関心を高めていた。
   
 育てた苗木は12月に回収され、2023年春に陸前高田市の高田松原津波復興祈念公園で開催が予定される全国植樹祭で植えられる。

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急げ!近くの避難場所へ 鵜住居小と釜石東中、下校時に合同訓練

大地震を告げる放送を聞き、近くの避難場所に向かう児童生徒ら

大地震を告げる放送を聞き、近くの避難場所に向かう児童生徒ら

  
 釜石市鵜住居町の鵜住居小(佐藤一成校長、児童140人)と釜石東中(佃拓生校長、生徒102人)は6月1日、下校時に地震と津波発生を想定した合同避難訓練を行った。「今いるところから一番近い避難場所は!」「とにかく高台に避難する」。学校での学びを生かし、東日本大震災時に生徒が児童の手を引き高台に避難した両校では、脈々とつないできた防災意識の深化に向け、自ら主体的に考え判断し行動する力を身に付けようと取り組みを進めている。
  
 三陸沖を震源とする震度6強の地震が発生し、高さ10メートル以上の津波が襲来するとの想定。帰宅途中に防災行政無線から大地震を告げる放送が流れると、児童生徒はその場にしゃがみ込み、持っていたかばんなどで頭を守った。「早く高台へ」「逃げろー、急げー」。揺れが落ち着いたことを確認し、近くの指定避難場所などに向かった。
   
警報が流れると、その場でしゃがみ込み荷物で頭を覆って身を守った

警報が流れると、その場でしゃがみ込み荷物で頭を覆って身を守った

  
最寄りの避難場所を目指し坂道を駆け上がる子どもたち

最寄りの避難場所を目指し坂道を駆け上がる子どもたち

  
 このうち日向・新川原地区を歩いていた子どもたちは、高さ19メートルの三陸沿岸道路釜石山田道路につながる「津波避難階段」に向かった。長内集会所に近い、鵜住居第2高架橋南側たもとにある階段は、上りきると鵜住居トンネル電気室前の広場に出る。そこを目指して約80段の階段を急ぎ足で上った。「気を付けて」。中学生や小学校高学年の児童は振り返って他の子に気を配って避難。より早く逃げられるよう、低学年児童の荷物を背負って逃げる生徒の姿も見られた。
  
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小学生のランドセルも背負って避難する中学生の姿があった

  
 主体的に行動することを目標に訓練に臨んだ高清水麻凜さん(釜石東中3年)は「普段は自分のことだけでいいが、今回は後輩のことを考えながら行動した。大きい声を出して誘導できた」と自己評価。川﨑拓真君(同)は「いざという時に備えて、防災に関する学びにしっかりと緊張感を持って取り組んでいく」と意識を高めた。
  
 震災から11年が経過。現在の小学生は当時0歳か1歳で、ほとんどは生まれていない。実際の記憶はなく、授業や教科書で「あの日」の出来事を学ぶ。岩鼻樹里さん(鵜住居小6年)は「サイレンが怖くてドキドキした。みんなと一緒にいて素早く行動できたけど、落ち着いて逃げることができなかった」と、ちょっと残念そうな表情を浮かべた。「知識はあっても、実感のない話」にしないよう真剣に参加していて、「本当の時は落ち着いて行動したい。自分の命を守ったら、低学年の子の命も守れるようになりたい」と上を向いた。
  
 鵜小・東中学区内の指定避難場所(津波災害緊急避難場所)は、両校の校庭を含め36カ所ある。今回の訓練で小学校は集団下校としたが、普段の下校時間はばらばら。登下校中に地震に遭遇したり、警報が鳴った時に周囲に頼ることのできる人がいない場合でも逃げられるよう各自が避難先を把握するのが訓練の目的。さらに、それぞれの状況に応じて考え、判断し、行動する力を鍛えてもらうのも狙いにする。
   
訓練終了後の反省会で、主体的に行動しようと思いを共有した

訓練終了後の反省会で、主体的に行動しようと思いを共有した

   
 訓練終了後、広場で反省会。地区住民20人ほども参加していて、新川原町内会の古川幹敏会長(69)が震災の経験談を交えながら、「大きな地震の時、みんなで一緒に行動できるとは限らない。大事なことは、どこにいても一人でも逃げることと、避難場所を考えておくこと。備えが必要。命を大切にする取り組みを一緒にやっていこう」と呼び掛けた。
  
 訓練の様子を見守った両校の教諭らは「中学生に頼らなくても逃げられる心構えを。どんな時でも自分の力で逃げられるよう努力してほしい」「訓練だからではなく、普段から本気で自分で考えて行動することが大事。夜中だったら…、自分ひとりかもしれない。いろんなパターンがあり、自主的に行動する姿勢を小学生につなげてほしい」と求めた。

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養殖サクラマス、評価上々「臭みなく食感よし」 釜石・魚河岸で事業者向け試食会  

養殖サクラマスの刺し身と塩焼きを味見する試食会参加者

養殖サクラマスの刺し身と塩焼きを味見する試食会参加者

  
 釜石湾内で海面養殖されているサクラマスの認知向上、需要拡大につなげようと、釜石市内の事業者向けの試食会が5月31日、魚河岸テラス内のヒカリ食堂で開かれた。飲食店や水産加工会社、行政関係者ら約30人が刺し身や塩焼きを味見。「臭みがない」「食感がいい」などと、6月の出荷を前に評価は上々だった。
  
 市と岩手大、釜石湾漁業協同組合、地元水産会社などで構成する釜石地域サクラマス海面養殖試験研究コンソーシアムが主催。参加者は、味や見た目、食感、脂の乗りを確かめながら味わった。上中島町にある鮎徳食堂の鮎田健さん(56)は「食感はすごくいい。身の色や味は思っていたより、あっさりした感じ。そこが良さなのかもしれないが、生食で活用するには工夫が必要になりそう。マリネのような料理で提供できたら」と考えを巡らせた。
  
ほんのり赤みがあり、脂が乗っているのに淡白、柔らかな食感が特徴

ほんのり赤みがあり、脂が乗っているのに淡白、柔らかな食感が特徴

  
参加者は味や見た目などを確かめ、活用策を探った

参加者は味や見た目などを確かめ、活用策を探った

  
 不漁が続く秋サケなどの主力魚種に代わる新たな水産資源として、サクラマスの海面養殖に関係者が寄せる期待は大きい。試験研究は2020年11月に開始し、1季目は約12トンを水揚げした。共同研究に参加する泉澤水産(両石町)の泉澤宏社長(60)は「養殖では寄生虫が付かず、刺し身で食べることができる」と強調。釜石地方で「ママス」としてなじみのあるサクラマスは日本の在来種でもあり、「釜石の春の魚として浸透し、応援してもらえるようにしたい」と熱い思いで取り組む。
   
 釜石流通団地水産加工業協同組合長で平田の水産加工業、リアス海藻店の平野嘉隆社長(50)は「小ぶりなので生食として需要があるのでは。加工原料とするには生産量をさらに増やす必要がある。サクラマスは市場での希少価値が高いはずなので、安定生産で量の確保を」と取り組みを見守る。
  
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釜石湾で試験養殖されているサクラマス

   
 2季目は昨年11月にスタート。静岡県産の300グラムほどの稚魚約2万1000匹をいけすに入れ、育てている。泉澤社長によると、今季は海水温が低めで成長に遅れがあったというが、5月に入り適水温になると餌をよく食べるようになり、順調に成育。中には2キロ越えのものも見られるという。6月中に水揚げを始め、計約24トンの出荷を目標にしている。
  
 海面での養殖飼育研究のほか、岩大が中心となって釜石地域の養殖環境に適した種苗研究も進められている。

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防火、防災の士気高め 釜石市消防団演習 3年ぶり開催

3年ぶりに行われた釜石市消防団の消防演習

3年ぶりに行われた釜石市消防団の消防演習

  
 釜石市消防団(川﨑喜久治団長、団員551人)の2022年度消防演習は5月29日、鈴子町の釜石消防庁舎駐車場を会場に行われた。新型コロナウイルスの影響で20、21年が中止となり、3年ぶりの開催。今回もコロナ感染拡大防止のため分列行進や放水訓練は行わず、表彰式主体で規模を縮小して行われた。
  
姿勢を正し敬礼。職務遂行へ士気を高めた

姿勢を正し敬礼。職務遂行へ士気を高めた

   
 式典には団員221人、車両40台が参加。統監の野田武則市長が「有事の際に安全、迅速に対応できるよう訓練に励んでほしい。地域防災のリーダーとして既成にとらわれることのなく、活発な活動を」と訓示した。
   
 優良消防団や団員をたたえる市長表彰では竿頭綬(かんとうじゅ)に5団体、功績章は11人が受賞。市消防団長表彰の精勤証は9人に贈られた。新規入団者3人が辞令を受け、第7分団3部(橋野町中村)所属の佐々木一真さんが「良心に従って誠実に消防の義務を遂行する」と宣誓した。
  
先輩団員に見守られ辞令を受けた新入団者

先輩団員に見守られ辞令を受けた新入団者

   
 各分団や所属ごとに整列した団員らは姿勢を正し、野田市長らの観閲を受け、防火・防災と安全・安心のまちづくりに向けた任務遂行へ気を引き締めた。
 

震災から11年 「鵜住居観音堂」再建 落慶法要で地域住民に初公開

震災から11年 「鵜住居観音堂」再建 落慶法要で地域住民に初公開

震災から11年 「鵜住居観音堂」再建 落慶法要で地域住民に初公開
 
 東日本大震災の津波被災から11年の時を経て再建された釜石市鵜住居町の「鵜住居観音堂」で5月29日、落慶法要が営まれた。地域住民や再建に尽力した関係者が参列。奇跡的に流失を免れ、修復された本尊「十一面観音立像」が安置された真新しいお堂を参列者は感慨深げに見つめ、500年にわたり地域を守ってきた秘仏に感謝しながら手を合わせた。
 
 新観音堂は別当の小山士さん(78)が、高台の私有地に建設。竣工した3月に落慶法要を行う予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大を考慮し延期していた。法要に先立ち小山さんは、被災後の経緯について説明。「前向きに生きるためのよりどころ、地域復興のシンボルとし、教訓を次代に伝えていきたい。交流人口の増加、地域の活性化にもつながれば」と期待した。
 
 法要は平泉町、医王山毛越寺の藤里明久貫主らの協力で行われた。読経が響く中、参列者が焼香。震災後の歩みに思いをはせ、再び取り戻した日常に感謝の祈りをささげた。藤里貫主は「新しい観音堂がまたここから光を放ち、地域を照らし続ける。お参りし、その御利益を心の安寧につなげていただければ」と話した。
 
鵜住居観音堂落慶法要=5月29日、鵜住居町

鵜住居観音堂落慶法要=5月29日、鵜住居町

 
観音堂入り口で焼香し、手を合わせる参列者

観音堂入り口で焼香し、手を合わせる参列者

 
導師を務めた医王山毛越寺の藤里明久貫主(右) 

導師を務めた医王山毛越寺の藤里明久貫主(右) 

 
 観音堂再建に貢献した菊池建設(釜石市橋野町)、ちいろば設計(盛岡市)に小山さんが感謝状と記念品を贈呈。鵜住居青年会が虎舞を奉納し落慶を祝った。
 
施工した菊池建設の菊池浩社長に感謝状を贈る小山士さん(右)

施工した菊池建設の菊池浩社長に感謝状を贈る小山士さん(右)

 
観音堂の前で虎舞を奉納する「鵜住居青年会」

観音堂の前で虎舞を奉納する「鵜住居青年会」

 
 別当を務める小山家の屋敷に併設されていた前観音堂は震災の津波で全壊。33年に一度の御開帳を守り続けてきた本尊の観音立像はブロック造りの宝物庫に保管されていたため流失を免れ、破損しながらも奇跡的に原形をとどめた。震災前から同像の調査を行っていた故大矢邦宣さん(震災当時、盛岡大教授)らが救出にあたり、県立博物館に持ち込まれた後、ボランティアで駆け付けた京都科学(本社・京都市)の技師らの手で修復作業が行われた。
 
 同像は慈覚大師の作とされ、背面に「永正七年」(1510年・室町時代後期)の墨書銘がある。2012年11月に県の有形文化財に指定された。新しいお堂には、同様に救出された「不動三尊立像」「千手観音坐像」(ともに江戸時代作)、本尊を模刻した「身代わり観音像」(2014年作)が安置される。
 
津波による流失を免れ、修復された本尊「十一面観音立像」

津波による流失を免れ、修復された本尊「十一面観音立像」

 
 震災前、観音堂の近くに住んでいた木村正明さん(66)=栗林町在住=は、被災した同観音像などの第一発見者。津波でがれきに覆われた一帯から倒れた宝物庫を見つけ出し、当時の勤務先の後輩の力を借りて、砂泥にまみれた観音像などを助け出した。「見つかった時は本当に良かったなぁと思ってね」。あれから11年―。新観音堂の完成も心から喜び、「昔から地域の人たちにあがめられてきた歴史ある観音様。これからもずっと守り続けていってほしい」と願った。
 
 新観音堂は当初、19年の再建を目指していたが、地域の復興の遅れを鑑み延期。周辺住民の自宅再建がほぼ完了した昨年、建設を決意し、今春の完成に至った。小山さんは本尊の救出からこれまで、さまざまな形で支援してくれた関係者に深く感謝。法要で多くの人たちにお披露目できたことに「ほっとした。先祖代々守ってきた観音様を今後も地域住民に愛されるようしっかりお守りしたい」と意を強くした。

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海図刊行150周年―第1号の地・釜石で記念講演会 郷土の歴史を知る手掛かりに

海図第1号「陸中国釜石港之図」の刊行150年を記念し開かれた講演会 

海図第1号「陸中国釜石港之図」の刊行150年を記念し開かれた講演会

  
 日本人の手だけで初めて作られた海図第1号「陸中國釜石港之圖(りくちゅうのくにかまいしこうのず)」の刊行150周年を記念した講演会(第2管区海上保安本部、釜石海上保安部など主催)は5月29日、釜石市大町の市民ホールTETTOで開かれた。新型コロナウイルスの流行が続く中、ユーチューブのライブ配信を取り入れて行い、会場参加と合わせて約130人が聴講。「海図の歴史を巡る」をテーマにした3人の講演を通じ、海洋での活動に不可欠な海図の重要性、歴史的背景や意義について理解を深めた。
   
 海図は、船が安全に航行できるよう海岸の地形や水深、灯台などの目標物を分かりやすく示した地図。海上保安庁海洋情報部の藤田雅之部長が海図の必要性や測量技術の変遷などを解説した。1872年(明治5年)、当時の兵部省海軍部水路局(現同海洋情報部)が刊行した「陸中國釜石港之圖」の特徴も紹介。釜石港が第1号の地に選ばれた背景について、▽東京―函館間航路の重要な補給地点▽官営製鉄所の開業を控えていた―ことなどを挙げ、近代化を進めるための重要な港湾だったと強調した。
   
海図作成の歴史を振り返り、教育現場での活用を提案した小林准教授

海図作成の歴史を振り返り、教育現場での活用を提案した小林准教授

   
 京都女子大文学部史学科の小林瑞穂准教授(日本近現代史)は第1号海図作成の背景について、「釜石は陸路が狭く、海からの輸送の実績があったからこそ、製鉄につながったのではないか。鉄という重要な資源の損失を出さないために測量、海図作成の重要性が増したと考えられる。釜石港之図は『鉄の都釜石』の証しでもある」などと歴史的意義を独自の視点で示した。
   
 「海図は近代日本の殖産興業の礎となり、外交方針に果たした役割も重要だ」と指摘し、釜石港之図を日本史や地理、社会科の教材として教育現場で生かすことを提案。海図の更新は現在も海上保安庁によって行われており、東日本大震災の影響で変化した地形の情報も正確に反映している。震災を記憶する歴史資料としても重要で、保存と活用を期待。「歴史の証言者として、のちの釜石人に役立つもの。しっかりと受け渡してほしい」と求めた。
   
来場者は歴史の深さを感じながら専門家の話に聞き入った

来場者は歴史の深さを感じながら専門家の話に聞き入った

   
 浜町の曳船・内航運送業、海洋曳船の星野諭社長は「岩手三陸地域海上交通の今、昔」と題して講演。港湾内で他の船を押したり引っ張ったりするタグボートの歴史や種類を説明し、釜石港の変遷を紹介した。
  
海図の歴史などを紹介するパネル展示。興味津々に見つめる姿があった

海図の歴史などを紹介するパネル展示。興味津々に見つめる姿があった

   
 会場では、第1号海図を印刷するために手彫りで作られた銅板や海図の歴史などを紹介するパネル展示も。第2管区海上保安本部の宮本伸二本部長は「海図第1号刊行の地で、綿々と培われてきた歴史、測量技術に触れ、海に理解を深めてほしい。海とともに生きてきたまち、先人たちに思いをはせる機会に」と期待した。
 

「浜千鳥酒造り体験塾」の田植え体験。塾開催は25年目を迎えた

「浜千鳥酒造り体験塾」スタート! 大槌での酒米生産20年目 喜びの田植え

「浜千鳥酒造り体験塾」の田植え体験。塾開催は25年目を迎えた

「浜千鳥酒造り体験塾」の田植え体験。塾開催は25年目を迎えた

 
 釜石市小川町の酒造会社、浜千鳥(新里進社長)が開く「酒造り体験塾」が今年も始まった。5月29日、同社に酒米を供給する大槌町の農家の田んぼで田植え体験会が行われ、子どもから大人まで約70人が手植え作業に汗を流した。同社が大槌産の酒米を使うようになって今年で20年目。品質の良い「吟ぎんが」で仕込まれた地酒は、各種鑑評会や国際コンテストで高い評価を受ける。塾参加者は地元の自然の恵みと蔵人の技で造られる酒に思いをはせながら、今後の体験を心待ちにした。
 
 新型コロナウイルス禍で過去2年は形を変えて行われてきた田植え体験。今年は休止していた神事を復活させ、時間をずらした2部制開催を一斉作業に戻すなど制限緩和を図った。神事では杜氏(とうじ)の奥村康太郎さん(41)が田んぼにくわ入れし、参加者の代表が植え始めの儀式を行った。
 
奥村康太郎杜氏による田んぼへのくわ入れの儀式

奥村康太郎杜氏による田んぼへのくわ入れの儀式

 
田んぼの所有者・佐々木重吾さんから苗の植え方の説明を聞く

田んぼの所有者・佐々木重吾さんから苗の植え方の説明を聞く

 
 田んぼの所有者・佐々木重吾さん(65)から植え方の説明を受けた後、一列に並び苗植えを開始。スタッフが張るロープに沿って丁寧に植え付けていった。抜けるような青空、目にも鮮やかな新緑、心地よい薫風―。参加者は季節感も味わいながら作業に精を出し、1時間半ほどかけて約7アールの田んぼへの植え付けを完了した。
 
腰をかがめての作業は重労働。昔ながらの手植え

腰をかがめての作業は重労働。昔ながらの手植え

 
素足の参加者は、ぬる水の泥の感触も楽しく!

素足の参加者は、ぬる水の泥の感触も楽しく!

 
 ボーイスカウト釜石第2団は同体験塾の田植え、稲刈り参加の常連。この日は団員と保護者、指導者ら20人が訪れた。山崎健太君(平田小5年)は2回目の田植え。「今回は(苗が)あまり倒れることなく植えられた。農業に触れるとやさしい気持ちなる。自分たちが植えた米がお酒という商品になるのもうれしい。大人になったら飲んでみたい」と声を弾ませた。
 
田植えを楽しむボーイスカウト釜石第2団の団員

田植えを楽しむボーイスカウト釜石第2団の団員

 
 釜石市小佐野町の小国亜紀さん(46)は、夫が同塾に協力する大槌町の青年団体「波工房」のメンバー。自身も何度か田植えを経験するが、「今日は暑かったせいか大変だった」と農業の苦労を感じた様子。「日本酒は得意ではないが、浜千鳥のお酒だけは好きで飲む。他地域の方に送ると喜ばれ、リクエストされることもしばしば」と魅力を語り、体験塾で手にする完成品にも期待した。
 
 次回の体験塾は稲刈り。9月下旬か10月上旬の実施を予定する。
 

「大槌産吟ぎんが」で仕込む酒 高評価、認知度拡大で浜千鳥の“顔”に

 
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 大槌町で浜千鳥に供給する酒米生産が始まったのは2003年。地場産米での酒造りを模索していた新里進社長が佐々木重吾さんに協力を求めたのがきっかけだった。佐々木さんは地元農家と「大槌酒米研究会」(佐々木会長)を立ち上げ、岩手オリジナル酒米「吟ぎんが」の生産に着手。メンバーを増やしながら徐々に作付面積を拡大し、今では5個人、1法人(農事組合法人大槌結ゆい=佐々木代表理事)で約20ヘクタールを耕作するまでになった。近年では年間70トン以上を供給する(昨年実績72トン)。
 
 現在、同社が使う酒米の5割近くが大槌産。銘柄に「吟ぎんが」の名前が入る商品は全て“大槌産”に切り替わり、本年度から特別純米酒にも使われる予定だという。新里社長(64)は「米は酒の品質に直結する。同一地域から一定品質の米を安定的に仕入れられるのは非常にありがたい」と感謝。「大槌産吟ぎんが=浜千鳥」という地域ブランドの認知拡大も実感し、同研究会と歩んできた20年の重みをかみしめる。
 
浜千鳥の新里進社長(右から3人目)=2020年酒造り体験塾・稲刈り

浜千鳥の新里進社長(右から3人目)=2020年酒造り体験塾・稲刈り

 
 研究会では米の品質向上を目指し、関係機関の指導のもと課題解決に向けたさまざまな取り組みも重ねてきた。「20年を振り返ると感慨深い」と佐々木さん。大槌産吟ぎんがで最初に生まれた酒「ゆめほなみ(夢穂波)」は町民にも愛される。「まちをあげて利用してもらっている感があり、生産者としてもうれしい」。地元ラグビーチームを応援する商品企画など地域密着の同社の企業姿勢にも共感し、「釜石・大槌の元気の源に自分たちも少し貢献できているかと思うと大きな励みになる」と話した。
 
大槌酒米研究会会長として同地域の酒米栽培をけん引してきた佐々木重吾さん(中央)=2018年酒造り体験塾・田植え

大槌酒米研究会会長として同地域の酒米栽培をけん引してきた佐々木重吾さん(中央)=2018年酒造り体験塾・田植え

 
 大槌町では今年、地元の豊富な湧水を活用したまちおこしの一環で、民間企業ソーシャル・ネイチャー・ワークスが浜千鳥の協力を得て「源水の湧水」と「大槌産吟ぎんが」で仕込んだ地域おこし酒を醸造。7月3日に行われる源水生き物観察会での試飲を予定する。

釜石市の海岸で行われた“海ごみゼロ”清掃活動

深刻化する海洋ごみを減らせ!「春の海ごみゼロウィーク」釜石で清掃活動

釜石市の海岸で行われた“海ごみゼロ”清掃活動

釜石市の海岸で行われた“海ごみゼロ”清掃活動

 
 5月28日から6月12日まで展開される「春の海ごみゼロウィーク」全国一斉清掃キャンペーン(環境省、日本財団主催)。釜石市ではスタート初日、市民団体「かまいし環境ネットワーク」(加藤直子代表)が呼び掛け、両石町水海の通称・桐島海岸で清掃活動が行われた。参加者はプラスチックごみが海洋環境に与える影響なども学び、流出防止への意識を高めた。
 
 官民6団体から約20人が参加。活動場所は、国道45号から愛の浜海水浴場に向かう途中にある小さな浜「桐島海岸」。参加者は道路脇から海辺までの緑地を含めた一帯で約1時間にわたり、ごみを拾い集めた。
 
浜に至る緑地にはさまざまなごみが散乱。協力して拾い集めた

浜に至る緑地にはさまざまなごみが散乱。協力して拾い集めた

 
海の安全を守る釜石海上保安部職員も活動に協力

海の安全を守る釜石海上保安部職員も活動に協力

 
 一帯は11年前の東日本大震災で津波に襲われた場所。緑地には経年劣化したプラスチック片や金属ごみ、空き缶、漁具などのほか、比較的新しいと見られる飲料容器(缶、瓶、ペットボトル)、靴、灯油用ポリタンクなどもあった。波で打ち上げられたものか、運ばれて故意に捨てられたものか、判別が難しいごみも多かったが、いずれにしても人の暮らしの中で排出されたごみであることは確か。集められたごみの量は約200キロにもなった。
 
海への流出が問題となっているプラスチックごみも多数見つかった

海への流出が問題となっているプラスチックごみも多数見つかった

 
波で打ち上げられた流木に交じる多種多様なごみを集める参加者

波で打ち上げられた流木に交じる多種多様なごみを集める参加者

 
自転車の一部とみられるさびついた金属ごみも…

自転車の一部とみられるさびついた金属ごみも…

 
 この日は活動に先立ち、同ネットワーク会員で県環境アドバイザーの臼澤良一さん(73)が海洋プラスチックごみについてのミニ講話も行った。国内外のデータを示し、▽1年間に海に流れ出るプラごみの量が800万トン(東京ドーム7個分の重量)に及び、これは釜石市で排出されるごみの約571年分に相当すること▽海洋ごみの約65%がプラごみで、他の種類に比べ群を抜いて多いこと―を説明。プラごみが自然分解されるのにかかる時間は、予想される最大値で、レジ袋20年、ペットボトル450年、釣り糸600年という米国のデータも紹介した。
 
海洋プラスチックごみの現況を説明する臼澤良一さん(左)

海洋プラスチックごみの現況を説明する臼澤良一さん(左)

 
 臼澤さんは、海中で微小化するマイクロプラスチックについて、「魚が食べてしまうことにより、食物連鎖で最後は頂点の人間が影響を受けることになる。暮らしの中でなるべくごみを出さない、適正な処理をする―など、自分たちができることを積極的に実践してほしい」と呼び掛けた。
 
国際ソロプチミスト釜石はまぎくの会員はそろいのジャンパーで活動

国際ソロプチミスト釜石はまぎくの会員はそろいのジャンパーで活動

 
 一昨年設立された女性奉仕団体「国際ソロプチミスト釜石はまぎく」(中村のり子会長)は、環境整備活動に力を入れ、同ネットワークが行う活動にも協力。会員らは同海岸での初めての清掃に「ごみの多さに驚いた。たき火をしたような跡もあり、遊びにきた人が放置したのか、通行する車から投げ捨てたのか?」。故意による投棄が見られる現状に心を痛め、「一人一人の意識が大切。ごみの持ち帰りは徹底してほしい」と強く願った。

広報かまいし2022年6月1日号(No.1785)

広報かまいし2022年6月1日号(No.1785)

広報かまいし2022年6月1日号(No.1785)
 

広報かまいし2022年6月1日号(No.1785)

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【P1】
第12回全国虎舞フェスティバル
令和4年度「かまいし軽トラ市」
【P2-7】
特集 健康寿命日本一へのトライ
【P8-9】
新型コロナワクチン接種
子どもと妊産婦に対する医療費給付拡充
住宅への助成や耐震診断
【P10-11】
釜石にU・Iターンする人への助成
釜石市自然・生活環境展 の開催
ブルーカーボンに関する勉強会 を開催します
【P12-15】
復興まちづくり協議会・地権者連絡会を開催します
令和4年度前期地域会議を開催します
まちづくり参加スペース 釜石版「デシディムDecidim」を導入しました
まちのお知らせ
【P16】
釜石市育英会の奨学生追加募集および奨学金返還猶予のお知らせ
「介護分野」「障がい福祉分野」の就職支援金貸付制度
狩野泰一 篠笛コンサート in KAMAISHI

この記事に関するお問い合わせ
釜石市 総務企画部 広聴広報課 広聴広報係
〒026-8686 岩手県釜石市只越町3丁目9番13号
電話:0193-27-8419 / Fax 0193-22-2686 / メール
元記事:https://www.city.kamaishi.iwate.jp/docs/2022052700019/
釜石市

釜石市

釜石市公式サイトと連携し、縁とらんすがピックアップした記事を掲載しています。記事の内容に関するお問い合わせは、各記事の担当窓口までお問い合わせください。
観光農園の整備支援を目的にする連携協定を結んだ野田市長(左)と木島社長

ラベンダー観光農園整備を後押し 釜石市とロクシタンジャポン、連携協定

観光農園の整備支援を目的にする連携協定を結んだ野田市長(左)と木島社長

観光農園の整備支援を目的にする連携協定を結んだ野田市長(左)と木島社長

  
 釜石市は5月27日、フランスの自然派化粧品メーカーの日本法人「ロクシタンジャポン」(東京都千代田区、木島潤子社長)と、観光農園の整備支援を柱とする連携協定を結んだ。同社は東日本大震災の復興支援として交流拠点の復旧や公園の整備などで釜石応援を継続。今後、ラベンダーの栽培や鑑賞を通じた市民の憩いの場づくりや自然環境、植物の多様性の保護活動などを進めながら、釜石の地域活性化や国際交流の推進、観光振興を後押しする。
 
 協定では、▽観光農園の整備にかかるクラウドファンディングの実施▽支援製品キットの販売▽ふるさと納税返礼品の企画▽ラベンダー苗の定植▽ラベンダーを通じた国際交流の推進-などに連携して取り組む。同社製品を返礼品にしたクラウドファンディングは6月9日に開始予定。目標額は500万円で、農園整備の資金に役立てる。
 
 同社では、ラベンダーを使ったチャリティーキットの販売も始めた。フラワーソープ(150グラム)とリラックスハンドクリーム(30ミリリットル)を税込み3080円で、2500セット販売。阪急阪神百貨店や高島屋の店舗のほか、ロクシタン公式オンラインショップで購入できる。収益を市に寄付する。
 
ロクシタンジャポンが販売するラベンダーを使ったチャリティーキット

ロクシタンジャポンが販売するラベンダーを使ったチャリティーキット

 
 釜石の姉妹都市フランスのディーニュ・レ・バン市が、ロクシタン創業者の出身地だったことが縁で始まった復興支援。2012年には、津波で被災した青葉ビルの復旧費を支援。市中心部の交流拠点施設の再建は、地元に勇気と希望を与えた。その後も、薬師公園のリニューアル整備や津波で失われた海浜植物ハマナスの群落復活に向けた活動を支えている。
 
観光農園予定地では昨年植えたラベンダーの苗が順調に育っている

観光農園予定地では昨年植えたラベンダーの苗が順調に育っている

 
 今回、ラベンダー栽培が盛んなディーニュ市から、友好の証しとして栽培を提案され、「釜石ラベンダープロジェクト」を立ち上げた釜石市。観光農園を、甲子町の道の駅釜石仙人峠近くの遊休農地約1・2ヘクタールを利用して整備する。農園づくりは昨年から始まっていて、土づくりを終えた一部に甲子小児童らがラベンダーの苗を植栽、順調に育っている。ディーニュ市から種の寄贈を受け、現在市内の農家が育苗中。今後さらに定植し、25年のオープンを目指している。
 
協定書に署名する木島社長(手前)と野田市長

協定書に署名する木島社長(手前)と野田市長

 
 協定の調印式は、両者にゆかりのある青葉ビルで行われた。野田武則市長は「花を観賞するだけでなく、市民の癒やしや健康維持、子どもたちの教育、観光、地域活性化など多様な場として活用したい。双方に魅力ある取り組みになってほしい」と期待を述べた。
 
 同社は観光農園整備の趣旨に賛同し、協定締結を決めた。木島社長は「植物の多様性を知る、人がつながるといった製品づくりの理念と重なる。未来を広げていくことのできる取り組みにワクワクしている。復興の新しいステージに協力したい」と意欲を見せた。

大槌町で始まった初心者向けの「農業入門塾」

野菜栽培の基礎 実践で学ぶ 就農促進、農地活用目指し「入門塾」開講

大槌町で始まった初心者向けの「農業入門塾」

大槌町で始まった初心者向けの「農業入門塾」

 
 県沿岸広域振興局農林部主催の「農業入門塾」が5月25日、大槌町で開講した。担い手を育成し、農地を有効活用してもらうことで地域農業の活性化につなげようと、昨年に続き2年目の開講。釜石、大槌両市町から12人が受講し、10月まで全10回の実践講座で野菜栽培の基礎を学ぶ。
 
 初日は塾耕作地近くの、かみよ稲穂館で開講式を実施。眞島芳明農林部長が「野菜栽培を楽しみながら農業について理解を深めていただきたい」とあいさつ。講師を務める県農業農村指導士の佐々木重吾さん(大槌町)、大船渡農業改良普及センターの照井直人技師が紹介された。
 
 20代から70代の受講生一人一人が自己紹介し、受講動機や抱負を述べた。釜石市橋野町の三科宏輔さん(26)は地域おこし協力隊員として4月に移住したばかり。市内の製麺業者が和山高原で栽培するソバの生産を手伝う。今回の塾で「野菜作りを基礎から学び、自分で食べる分は自給できるような暮らしをしたい」と意気込んだ。
 
開講式で互いに自己紹介し合う12人の受講者

開講式で互いに自己紹介し合う12人の受講者

 
 式の後は同センターの照井技師による座学。作付け計画の立て方、畑の作り方、植え付けの仕方を解説した。受講生は連作障害の回避、土壌改良、畝の上に張るマルチの役割など、必要な知識を学んだ。実習では時期ごとに果菜、葉菜、根菜類など11品目の栽培を予定する。
 
 この日は座学に続き、畑作りに挑戦。講師の指導のもと1人ずつ割り当てられた区画に肥料をまき、長さ4メートル幅90センチの畝を2列作った。マルチをかぶせた後、穴を開けてピーマン、ナス、トマト、スイカの苗を植えた。収穫は早いもので6月下旬から始まり、スイカは8月下旬ごろになるという。
 
畝作りについて講師の佐々木重吾さん(右)から説明を受ける

畝作りについて講師の佐々木重吾さん(右)から説明を受ける

 
初めてくわを握り畝作り。コツをつかむと徐々にペースアップも

初めてくわを握り畝作り。コツをつかむと徐々にペースアップも

 
地温上昇、雑草抑制、土壌水分保持に有効な黒マルチを畝の上に張った

地温上昇、雑草抑制、土壌水分保持に有効な黒マルチを畝の上に張った

 
 大槌町大ケ口の黒澤仁之さん(65)はこの春、43年間従事した医療関係の仕事を定年退職。興味があった農作業に挑戦したいと受講を申し込んだ。「全くの素人。初めてくわを持った。これからが楽しみ」と笑顔を輝かせ、「日曜日には妻を連れてきて一緒に作業したい。できた野菜は孫に送ってやりたい」と収穫を心待ちにした。
 
 釜石市浜町の藤澤育子さん(74)は今時期、店頭に並ぶ野菜苗を見て「やってみたいと思いつつも(知識がなく)なかなか手が出なかった」という。基礎から学べる本講座に「作業は大変だが、本格的な知識を教えてもらえる。受講者同士で協力し合ったりして会話も弾む」と充実した時間を喜ぶ。新型コロナウイルス禍で「2年間家にこもってばかりだったので足腰も弱ってしまった。運動不足解消にも」とほほ笑んだ。
 
果菜類の苗の植え付け。強風などで倒れないよう支柱も設置

果菜類の苗の植え付け。強風などで倒れないよう支柱も設置

 
講師の照井直人さん(右から2人目)からアドバイスをもらい作業

講師の照井直人さん(右から2人目)からアドバイスをもらい作業

 
 講座では今後も座学と実習を併用しながら農作業に関する幅広い知識を身に付ける。主催する振興局農林部の担当者は「農業後継者の減少は釜石、大槌地域でも顕著。農地は地域の財産。兼業、小規模でも何らかの形で農業に携わっていただく人が増えれば地域の活性化、維持にもつながる」とし、新規就農、定年帰農、産直向け栽培など多様な担い手の出現に期待を寄せる。

見ごろを迎えた「陽子の庭」で咲き誇るバラ

美しく色づいたバラ見ごろ 釜石・甲子町「陽子の庭」 菊池さん夫妻が公開

見ごろを迎えた「陽子の庭」で咲き誇るバラ

見ごろを迎えた「陽子の庭」で咲き誇るバラ

 
 釜石市甲子町の菊池秀明さん(74)、陽子さん(75)夫妻の自宅庭園で、赤や黄、ピンクなど美しく色づいたバラが見ごろを迎えている。「陽子の庭」と名付け、毎年一般公開。今年もあす6月1日から10日まで開放する。
 
 公開は7年目。約2600平方メートルの敷地には、約150種のバラに加え、サツキやアヤメ、シャリンバイなど季節の草花が植えられている。こつこつと作り続けているバラ園では、濃いローズ色の大輪種「聖火」、咲き始めと開花後の花色が大きく変わる品種の代表格と言われる「チャールストン」などが一斉に咲き始め、香りや色など種類の違いを楽しむことができる。
 
色も大きさも異なるさまざまなバラを楽しむことができる

色も大きさも異なるさまざまなバラを楽しむことができる

 
バラ、アヤメ、サツキ…花々の競演も見所の一つ

バラ、アヤメ、サツキ…花々の競演も見所の一つ

 
 ツツジなどで彩った日本庭園、華やかに咲き誇るバラと可憐に咲く野の花が混植されたイングリッシュガーデンなど雰囲気の異なる庭を巡る楽しみもある。庭を一望できる「見晴らし台」がお目見え。周囲に広がる自然風景や街の様子など高台からの眺めは解放感が抜群だ。
 
枝を長く伸ばすモッコウバラも見ごろを迎える

枝を長く伸ばすモッコウバラも見ごろを迎える

 
高台にある見晴らし台から街の様子を眺めることができる

高台にある見晴らし台から街の様子を眺めることができる

  
 心安らぐ庭を目指す陽子さんは「バラは次々と新種が出ていて、すたれがない。花との出会いを思い思いに楽しんでもらえたら」と願う。庭の維持は年々大変さを増すが、夫婦で力を合わせて整備。訪れた人たちから「きれいだね」「良かったよ」と声を掛けられると、「疲れが解消。頑張ろうという気になる。皆さんのおかげで続けられる」と目を細めた。
 
こつこつと手作りした庭を開放している菊池夫妻

こつこつと手作りした庭を開放している菊池夫妻

 
 見学時間は午前9時~午後4時。入場無料。4日には水晶でできた楽器クリスタルボウルの演奏会、5日はmia&リアスバンド(シャンソン、ジャズ)によるミニコンサートを予定する。いずれも午前11時から。問い合わせは菊池さん(電話0193・27・2141)へ。