自分たちで種付けし、成長したワカメをしゃぶしゃぶで味わう釜石小の6年生
地元の海で行われるワカメ養殖について学んできた釜石小(及川靖浩校長、児童92人)の6年生は9日、最後の学習日を迎え、自分たちで種付けしたワカメを試食した。当日朝の刈り取り作業の様子を映像で見た児童らは、その成長ぶりにも驚き、海の恵みの素晴らしさを実感。地場産業への理解、郷土愛を深めた。
同校は昨年度から海洋教育パイオニアスクールプログラム(笹川平和財団海洋政策研究所など主催)の採択を受け、6年生がワカメ学習に取り組む。岩手大が講師の派遣などで協力。本年度は児童16人が3回シリーズの授業に臨んだ。初回はワカメの一生(生育過程)を座学で学び、2回目は漁船に乗せてもらい、養殖用ロープに種付けする作業を体験した。
学習最終日はワカメの刈り取り現場と学校の理科室をリモートでつなぎ、児童らに見てもらう予定だったが、午後からの授業時間帯に海上の強風予報が出ていたため、生中継は断念。児童らに種付け体験の場を提供した両石町の漁業者久保宣利さん(49)が朝方にワカメを刈る様子を、岩大三陸水産研究センターの齋藤孝信さん(61)が事前収録し、映像を見せながら直接、児童らに解説した。
「早採りワカメ」の収穫作業を映像で見て学ぶ
養殖ワカメの刈り取りについて解説する漁師の久保宣利さん(右上)
久保さんは「今採っている“早採りワカメ”は生で、3月から本格的に採るものは湯通し、塩漬けし“塩蔵ワカメ”として出荷する。間引きを適切にやれば、太いきれいなワカメだけが成長。手をかければそれだけいいものができ、収入にも反映する」と説明。100メートルのロープから早採りは約300キロ、塩蔵用になると約1トンものワカメが収穫できるという。収穫作業は4月末まで続き、5月にはメカブの刈り取りも行う。
児童らが昨年11月28日に種付けしたワカメは、この日まで約70日間で1メートルほどの長さに成長。塩蔵用の収穫期には最大で約3メートルになるといい、児童らを驚かせた。授業では塩蔵作業の様子も映像で見た。児童からはさまざまな質問が飛び出し、漁業や海への関心の高まりを感じさせた。
最後は久保さんが朝採りしたワカメを試食。自分たちで食べやすい長さに切り分け、土鍋を囲んでしゃぶしゃぶで味わった。ドレッシングやしょうゆ、ごま油など複数のつけだれも用意され、さまざまな味わいを試した。
立派に成長したワカメを手に取り、笑顔を見せる児童ら
みんなで協力しながら、食べやすい大きさにワカメを切り分けた
初めて食べる「早採りワカメ」のおいしさに感動
早採りワカメは初めてという大野雫さんは「やわらかくておいしい」と箸が止まらない様子。「元々、ワカメは好き。麺つゆにつけて食べるのがお気に入り。家でもしゃぶしゃぶで食べてみたい」と笑顔満開。東方智紀君は「採れたては食感が良くて全然違う。かなり売れるんじゃないか」と予想。危険と隣り合わせで作業する漁業者の姿を目にし、「大変な仕事をしてくれる人たちがいるから、食卓で味わうことができる」と尊敬の念を抱いた。前川大有君は刈り取りに使う「間切りナイフ」に興味を持った。海に落としても浮くように柄の部分が空洞になっていることを聞き、「漁師さん専用のナイフがあるとは」とびっくり。初のワカメしゃぶしゃぶを「いろいろな“味変(あじへん)”もできて楽しい」と存分に味わった。
ワカメしゃぶしゃぶを楽しむ児童らを見守る岩手大の齋藤孝信さん(左)
一連の学習をサポートしてきた岩大の齋藤さんは「海の仕事は日常で目にする機会が少なく、どうしても距離感がある。こういう学習で海を身近に感じ、魚や漁業にもっと興味を持つことにつながれば。この中から水産関係の仕事を目指す子どもたちが出てくれればうれしい」と“魚のまち釜石”のDNAに期待した。
海洋教育パイオニアスクールプログラムは、海に関する学習を行う学校などを支援する取り組み。市内では本年度、同プログラムを活用し、かまいしこども園がサケの学習、釜石高が深海魚の学習を行った。