小川川沿いのソメイヨシノの並木=9日午前撮影
釜石市内は先週末、各所の桜が満開となり、花見を楽しむ人たちが繰り出した。ほとんどの桜が例年より1週間以上早く開花。入園、入学式シーズンを彩った。青空が広がった9日日曜日は、家族連れなどが桜の名所に足を運び、花を愛(め)でたり記念撮影したりする姿が見られた。8、9の両日は、今季で運行を終了するSL銀河と桜を写真や映像に収めようという人たちが沿線各所でカメラを構えた。
釜石駅近くの駐車場内にある線路沿いの桜並木。8日は、午後3時10分釜石着のSL銀河と桜を同時に撮影しようという人たちが市内外から集まった。蒸気や煙を棚引かせ、汽笛を鳴らしながら到着する列車を満開の桜がお出迎え。熱烈なSLファンや地元住民らが今年で最後となる光景をカメラに収めた。
満開の桜に迎えられ、釜石駅に到着するSL銀河=8日午後3時9分撮影
線路沿いに連なる桜並木=鈴子町/到着後、転車台の前でカメラを向ける人たち(左上写真)
一関市から訪れた田辺毅さん(50)は「SL銀河と桜のコラボも今年で見納め。この季節ならではの写真を撮りたいと思って。うまく撮れているかは別ですけど」と笑い、カメラの画像をチェック。4月中に釜石―遠野間を2回乗車予定。「まさか(切符を)取れるとは思っていなくて。ほんと、運が良かった。恵まれています」と車窓からの景色も楽しみにした。
運行開始当初からホームでの出迎え、見送りなどに協力してきた地元・鈴子町内会の女性陣。この日は桜の下で歓迎の手旗を振って出迎えた。夕向有子さん(77)は「今年は一気に咲いた。満開の桜とSL、こんな絵に描いたような光景はめったにない。時期を逃すまいと出てきました」と友人と声をそろえ、「何とも言えない幸せな気分」に浸った。
9日の釜石発の上り運行でも、沿線の桜がある場所に多くのカメラマンが陣取った。桜木町の日本製鉄釜石山神社付近の線路沿いの桜並木。強風で散り始めた花びらが舞う中、SLが通過し、名残惜しい風景を見せた。
小川川の橋梁を通過するSL銀河(上り)=9日午前10時3分ごろ
小川川下流域沿いのソメイヨシノの並木は市内を代表する花見スポット。枝先が川面に垂れるような木もあり、清流と背後の山々と相まって独特の風情を生み出している。地元住民によると、最高気温が20度を超えた5、6日で一気に満開に。7日は雨に濡れたが花は持ち、天候が回復した9日は家族連れらが訪れ、桜をバックに記念写真を撮る姿が見られた。昨年の桜シーズンには同所で映画の撮影も行われており、さらに知名度もアップしている。
川側に張り出す枝ぶりが見事なソメイヨシノ=小川川下流
きれいな桜をバックに記念の一枚。春の思い出!
市中心市街地を一望できる高台、大町の薬師公園も古くから親しまれる桜の名所。頂上広場のソメイヨシノのほか、坂道の遊歩道沿いでは濃桃色の花が目を引くシダレヒガンザクラなども咲き誇る。赤い花の椿も開花しており、9日は青空を背景に花色の競演が見られた。広場のベンチでは持参した団子などを味わいながら、花見を楽しむ人たちも。桜の合間からのぞく釜石湾、震災復興で形成された新たな街並みも春景色に彩りを添えた。
大町の佐藤なつきさん(36)は「下からは結構見ているが、上まで上ってきたのは久しぶり。近場で桜を見られるのは魅力的。今日は青空に恵まれて最高の花見日和。きれいな花を見るとうれしくなる」と声を弾ませた。夫卓也さん(40)は「スマホやテレビで画面越しに見るのとは違って断然いい。気持ちが和み、すごく癒やされる。明日からまた頑張れそう」と活力をもらった様子。夫婦で春のひとときを楽しんだ。
薬師公園には9日、続々と花見客が訪れた/花色の異なる桜が出迎える遊歩道(左下写真)。夜には園内のちょうちんに明かりがともされる
薬師公園頂上広場のソメイヨシノはほぼ満開
園内からは釜石湾の青い海、市街地の街並みを眺望できる
唐丹町本郷の桜並木は、1933(昭和8)年の三陸大津波からの復興を願って植樹されたもの。道路の両側に立ち並び、毎年見事な桜のトンネルを作り出している。休日の9日は見物に訪れる人たちの車の出入りが続いた。同所では3年に一度、天照御祖神社の式年大祭「大名行列」が行われるが、開催年にあたった2021年は新型コロナウイルス感染症の影響で中止された。コロナ収束後の祭りの復活が待たれる。
唐丹町本郷の桜並木。目にも鮮やかな桜のトンネルが来訪者を迎える
美しく咲き誇る桜の下で多くの見物客が散策を楽しんだ=9日