「過去の津波に学び、今一度備えを」 釜石市郷土資料館が防災啓発の企画展


2024/03/25
釜石新聞NewS #地域 #防災・安全

市郷土資料館企画展「津波・震災 過去に学ぶ、次への備え」

市郷土資料館企画展「津波・震災 過去に学ぶ、次への備え」

 
 明治、昭和の三陸地震津波、十勝沖地震津波、チリ地震津波、東日本大震災―など、幾度となく津波災害を経験してきた釜石市。被害の実態や教訓はさまざまな形で伝えられるものの、発災から時がたつことによる防災意識の低下は避けられないものがある。過去の津波災害の資料を所蔵する鈴子町の市郷土資料館(佐々木豊館長)では今、同市の津波の歴史を学び、日ごろの備えを見直してもらおうという企画展が開かれている。
 
 1933(昭和8)年3月3日に発生した昭和三陸地震津波、2011(平成23)年3月11日発生の東日本大震災。多くの死者、行方不明者が出た両災害の発生月に合わせ、同館では毎年この時期に津波に関する企画展を開催している。今年のテーマは「津波・震災 過去に学ぶ、次への備え」。新たに作成した説明パネルを含む131点の資料が公開される。
 
 三陸地方を襲った主な地震津波の年表は869(貞観11)年の津波にまでさかのぼって記載。マグニチュード6~9レベルの地震で津波が発生し、各地で人身、浸水被害があったことが記されている。1896(明治29)年の地震津波は三陸沖を震源とするものだが、最大震度は2~3。揺れは小さかったものの、死者・行方不明者は2万1000人以上に上った。2011年の東日本大震災は最大震度7。日本周辺における観測史上最大の地震で、死者・行方不明者は1万8000人を超えた。
 
 被害の大きかった5つの津波は、釜石市の被災状況を数字データや写真を交えたパネルで紹介。惨状は風俗画報(明治)や写真で残されており、それらも額入りで展示された。
 
館内の展示室では131点の津波関連資料が公開される

館内の展示室では131点の津波関連資料が公開される

 
明治、昭和の三陸地震津波、チリ地震津波、十勝沖地震津波は風俗画報や写真で惨状を紹介

明治、昭和の三陸地震津波、チリ地震津波、十勝沖地震津波は風俗画報や写真で惨状を紹介

 
 津波への備えを啓発するパネルは緊急避難場所を示す緑と白のマークを添え、「いち早く、より高い安全な場所へ避難する必要がある。日ごろから街を歩いてルートや所要時間などを確認しておこう」と呼び掛け。非常持ち出し品(避難する時に最初に持ち出すもの)や備蓄品(発災後、数日間を自活するために最低限必要なもの)の例も紹介している。備蓄用の食品や飲料水は消費、賞味期限切れを防ぐため、「ローリングストック」方式を勧める。
 
津波への備えを教える展示コーナー。非常持ち出し品や備蓄品のチェックにも役立ててもらう

津波への備えを教える展示コーナー。非常持ち出し品や備蓄品のチェックにも役立ててもらう

 
 この他、東日本大震災で被災した市の施設などから流出した遺物や関連書籍、新聞なども展示公開される。
 
世界各地で大規模自然災害が多発する時代―。いつ、どこで直面するかわからない天災から身を守るには日ごろの備えが最も重要となる。佐々木館長は「災害は“忘れたころ”ではなく“忘れぬうちに”やってくるようになった。三陸は津波の常襲地でもあり、特にも津波に対する心構えはしっかり持ってほしい。この企画展が見直しのきっかけになれば」と願う。企画展は5月6日まで開催する。
 
東日本大震災の写真やがれきの中から見つかった遺物なども展示。写真集や記録誌も閲覧できる

東日本大震災の写真やがれきの中から見つかった遺物なども展示。写真集や記録誌も閲覧できる

 
 また、館内では2022~23年にかけて発掘調査が行われた橋野町「太田林遺跡」の出土品などを公開する速報展も開かれている。調査は新消防屯所建設に伴う記録保存のために実施。縄文時代の竪穴住居跡や耳飾り、土器、石器などが見つかっている。展示は3月31日まで。
 
橋野町「太田林遺跡」発掘調査の成果を公開する速報展

橋野町「太田林遺跡」発掘調査の成果を公開する速報展

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