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フランスでの異文化体験「未来への財産に」 海外派遣の中学生、釜石で報告会

「メルC」「かまいC」と笑顔で帰国報告する中学生

「メルC」「かまいC」と笑顔で帰国報告する中学生

 
 釜石市の中学生海外体験学習事業でフランスを訪問した中学1、2年計9人の帰国報告会が29日、大町の市民ホールTETTOであった。保護者ら約50人を前に、生徒が外国での生活や異文化体験を振り返った。
 
 生徒たちは14~21日、釜石と姉妹都市提携を結ぶフランス南部のディーニュ・レ・バン市などを訪問した。ディーニュ市の学校では授業に参加し同年代の子と交流。ホームステイ先で現地の生活や文化に触れた。姉妹都市提携のきっかけとなったジオパーク資産・アンモナイト化石群も見学。歴史的建造物も多い市街地の散策、地元ラグビークラブの試合観戦なども楽しんだ。復興支援に尽力した化粧品メーカー「ロクシタン社」(マノスク市)を訪ね、感謝を伝えた。
 
 報告には、釜石中2年の虻川結空さん、阿部紗希さん、久保伶奈さん、若生彩花さん、同1年の三浦碧人さん、大平中1年の今野凛彩さん、唐丹中1年の小野寺頼さん、甲子中1年の佐々舞凪さんと米澤悠真さんの9人全員が参加した。昨年、提携30周年を迎えたこともあり、ディーニュ市では温かい歓迎を受けた。いずれも、多くの出会いや発見があり、視野が広がり、刺激ある体験をさせてもらったことへの感謝を述べた。
 
フランスに派遣された釜石の中学生の帰国報告会

フランスに派遣された釜石の中学生の帰国報告会

 
印象に残った出来事や学びを一人一人が発表した

印象に残った出来事や学びを一人一人が発表した

 
 初めての海外という緊張感や言語に対する不安も共通だったが、現地では翻訳アプリを使いながら不慣れなフランス語や英語でコミュニケーションをとる様子に理解を示し、懸命に耳を傾けるなど親切に接してもらったと声をそろえた。「やっぱり話すことは楽しい」と小野寺さん。虻川さんも「上手に話すよりジェスチャーを交えて伝えようとする姿勢が大切」と実感を込めた。
 
 阿部さんは壁のようなアンモナイト化石群の迫力を語り、佐々さんは同年代の子と音楽を通じた交流を振り返った。フランスの歴史や産業、文化、政策に興味を示したのは三浦さん。SDGs(持続可能な開発目標)に関心を持つ米澤さんは、環境に対する意識の高さに刺激を受けたことを話した。
 
モニターに写真を表示しながら思い出を振り返った

モニターに写真を表示しながら思い出を振り返った

 
 「海外にも友達ができたことが思い出」とはにかむ若生さん。国籍、出身地がさまざまな人が意見を出し合って楽しく学ぶフランスの学校生活が印象的で、「自分も積極的に意見を出していきたい」と背筋を伸ばした。日本語教師との夢を持つ久保さんも多様な価値観に触れ、「互いの文化を知り、認め合うことで考え方は変わる。広い視野を持つためにも言語学習を続ける」と思いを強めた。
 
 聴講した人から「フランスの友達が釜石に来たら何する?」と質問されると、生徒たちは「鉄の歴史を教える」「おいしいものを一緒に食べたい」などと案を出した。今野さんは「ディーニュ市になかった海を紹介したい」と思案。地域を出たことで、自分たちが暮らす古里への関心を深めたようで、「学んだことを地域で生かせるようにしたい」と力を込めた。
 
海外体験で発見したことや感じた日本の良さを伝えた

海外体験で発見したことや感じた日本の良さを伝えた

 
「日本とフランスの架け橋に」と耳を傾けた人たちは期待する

「日本とフランスの架け橋に」と耳を傾けた人たちは期待する

 
 小野共市長は「貴重な体験を楽しいだけで終わらせず、9人それぞれが次なる展開へいいきっかけになったようだ」と成長を実感。高橋勝教育長は本物に触れ続けること、勉強のほかにも打ち込めるものを見つけることへの期待を伝え、「自分自身を伸ばす行動、挑戦をどんどんして。社会との関わりを持ち、生きるための財産、失敗を含めた経験を心の中に増やしてほしい」と激励した。

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釜石・大町広場 ウッドデッキに美観再び 塗装奉仕の日本塗装工業会県支部に市から感謝状

日本塗装工業会岩手県支部の奉仕(右下)できれいになった大町広場のウッドデッキ

日本塗装工業会岩手県支部の奉仕(右下)できれいになった大町広場のウッドデッキ

 
 釜石市の中心市街地にある公園「大町広場」のウッドデッキが美しい景観を取り戻した。一般社団法人日本塗装工業会岩手県支部(松田隆二支部長、29社)が社会貢献活動として、ボランティアで塗装作業を買って出たもので、広場は明るく快適な空間に生まれ変わった。市は26日、同支部に感謝状を贈り、多大な貢献へ謝意を表した。
 
 同広場は、東日本大震災後の復興まちづくりの中で整備され、2015年6月に完成。大型商業施設「イオンタウン釜石」や共同店舗「タウンポート大町」に隣接し、市民の憩いの場、また各種イベント会場としても活用されてきた。特徴的なウッドデッキは9年が経過し、塗装の劣化で色あせた印象となっていたところ、県内の建設塗装業者で組織する同支部から奉仕活動の申し入れがあり、今回の再整備が実現した。
 
 2月26日、県内各地から32人の職人が集まり、木材保護塗料を施す作業が行われた。事前に高圧洗浄機で汚れを落としておいたデッキに2色の茶系塗料を塗った。デッキの一部はステージとしても使われるため段差がある。職人らは手間のかかる作業を分担しながらこなした。完成時のような美観を取り戻した広場は市民にも好評で、散歩や買い物に訪れた人たちが休憩したり、子どもたちが遊ぶ姿が見られている。
 
県内各地から建設塗装業者が参加した社会貢献活動=2月26日、大町広場(写真提供:日本塗装工業会岩手県支部)

県内各地から建設塗装業者が参加した社会貢献活動=2月26日、大町広場(写真提供:日本塗装工業会岩手県支部)

 
32人が1日かけて塗装作業。プロの技が光る(写真提供:同)

32人が1日かけて塗装作業。プロの技が光る(写真提供:同)

 
感謝状を受け取った日本塗装工業会県支部の松田隆二支部長(中央)=3月26日、市長室

感謝状を受け取った日本塗装工業会県支部の松田隆二支部長(中央)=3月26日、市長室

 
 作業から1カ月となった一昨日26日は、同支部への感謝状贈呈式が市役所で行われた。同支部から松田支部長、千葉俊一事務局長、地元業者の伊東公一さん(松草塗装工業代表取締役、中妻町)が訪れ、小野共市長から感謝状を受け取った。
 
 松田支部長は「塗装の目的の一つが美観。そういった部分を見て喜んでもらえるのは非常にうれしい。地域の皆さんあっての塗装の仕事。感謝の心を忘れず、これからもまい進していきたい」。市との調整役を担った伊東さんは「今回の活動には予想以上の参加があった。皆さんの協力でこの広さ(約650平方メートル)を1日で仕上げることができた」と仲間との絆を示した。
 
松草塗装工業(釜石市)の伊東公一代表取締役(写真右上)らが今回の活動について報告

松草塗装工業(釜石市)の伊東公一代表取締役(写真右上)らが今回の活動について報告

 
塗装には防虫防腐効果のある塗料が使われ、耐久性も期待できる。はがれにくいのも特徴

塗装には防虫防腐効果のある塗料が使われ、耐久性も期待できる。はがれにくいのも特徴

 
 小野市長は「県内景気が悪い中で、身銭を切って市民のために奉仕していただいたことに深く感謝する。皆さんの気持ちが本当にありがたい」と頭を下げた。
 
 同支部は1955年に発足。人材育成、労働安全衛生活動、情報収集などを行いながら、会員の経営強化、業界の地位向上などを目指してきた。年1回の社会貢献活動も長年にわたり継続。今年、創立70周年を迎える。支部はこの後、タウンポート大町前のウッドデッキ塗装も手がける予定で、4月中の完成を見込む。
 
「釜石のシンボル的な場所で作業をさせていただき光栄」と話す松田支部長(左)。同市との新たな縁を喜んだ

「釜石のシンボル的な場所で作業をさせていただき光栄」と話す松田支部長(左)。同市との新たな縁を喜んだ

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薬師公園桜まつり

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開催場所

薬師公園(釜石市大町3丁目)

開催内容

特にイベントは行いませんが、提灯150灯を設置してライトアップしますので、200本とも言われる園路のシダレヒガンザクラや広場のソメイヨシノなどを自由にお楽しみください。

薬師公園には、太平洋戦争犠牲者の霊を慰める「平和女神像」のほか釜石に関連する様々な句碑や顕彰碑があり、少し足を伸ばすと長谷川時雨や林芙美子の文学碑、大渡橋の橋詰め広場の桜、釜石駅寄りには田村尚男の像「遡る」がありますのでゆっくり歩きながらご覧いただくのも良いでしょう。

近くに民間の駐車場がありますのでご利用ください。

開催期間

令和7年4月6日(日)から20日(日)
※ライトアップは、21時までとなりますのでご注意ください。

問合せ

釜石観光案内所 TEL0193-27-8172

 

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(一社)釜石観光物産協会

釜石市内の観光情報やイベント情報をお届けします。

公式サイト / TEL 0193-27-8172 / 〒026-0031 釜石市鈴子町22-1 シープラザ釜石

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2050年ゼロカーボン実現へ 「脱炭素先行地域」認定の釜石市 目標達成へ取り組み加速

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 昨年9月、環境省の「脱炭素先行地域」に選定された釜石市は、2025年度から再生可能エネルギー導入や脱炭素をテーマにした企業研修受け入れへの取り組みを加速化させる。同市が掲げる50年度の「温室効果ガス排出量実質ゼロ(ゼロカーボンシティ)」の目標達成へ、国の財政支援を受けながら官民一体となって取り組む。市民の意識、行動変容も促しながら、地球温暖化防止策を強力に推し進める。
 
 猛暑や豪雨など異常気象発生の要因として考えられる地球温暖化。その対策として世界的に求められている「温室効果ガス排出量削減」に向け、釜石市は2021年10月、脱炭素社会を目指す「ゼロカーボンシティ」を表明。22年1月、同推進室を設置した。23年10月、温室効果ガス排出量を30年度に55%削減(13年度比)、50年度に排出量実質ゼロを目標とする「第二次市環境基本計画」を策定。24年3月には、同市の再生可能エネルギー(陸上風力、太陽光、水力、バイオマス)の活用をさらに進める「市再生可能エネルギービジョン」を示し、再エネ発電、熱利用の導入量を30年度までに約3倍(22年3月比)とする目標を掲げた。
 
釜石市再生可能エネルギービジョン(2024年3月策定)で示された将来像

釜石市再生可能エネルギービジョン(2024年3月策定)で示された将来像

 
 これら目標達成に拍車をかけるのが、環境省による「脱炭素先行地域」の選定。地域特性を生かした脱炭素の取り組みを国が支援するもので、釜石市は第5回の公募で、産学官29の共同提案者と共に選ばれた。同市の計画は、太陽光発電の導入拡大と脱炭素をテーマにした企業研修の受け入れを柱に、温室効果ガスの実質削減、内外の企業や一般市民の意識、行動変容につなげるもの。中心市街地、鵜住居の2エリアを対象に事業を展開する。
 
 中心市街地への再エネ発電による電力供給地として、片岸公園隣接地2.5ヘクタールに「地域共生型太陽光発電」施設を整備。公園周辺の自然環境と共生するため、敷地外周への樹木の植栽、昆虫や野鳥などの生息を助けるエコスタック、バードバスの設置を検討する。年間発電量は約330万キロワットアワー(kWh)。一般家庭約790世帯分を見込む。事業収益の一部は生物多様性保全活動に還元。27年度からの運用開始を目指す。「小規模分散型太陽光発電」として、中心市街地の施設や住宅などへの設備導入も進める。
 
脱炭素先行地域の事業対象は釜石市内2エリア

脱炭素先行地域の事業対象は釜石市内2エリア

 
「地域共生型太陽光発電」が行われる片岸公園周辺。自然環境に配慮した策を検討

「地域共生型太陽光発電」が行われる片岸公園周辺。自然環境に配慮した策を検討

 
 釜石ならではの取り組みの一つが、鉄鋼スラグを活用した藻場再生。ブルーカーボンクレジット(海洋植物の二酸化炭素吸収量を数値化し取引する仕組み)の創出に寄与するほか、ウニ食害対策モデルの可能性も探る。日本製鉄が唐丹町、釜石東部両漁協の協力を得て、24年度は約20トンを設置した。
 
 木質バイオマスの熱利用策として、まきストーブ12台を市内の施設などに導入。みちのく潮風トレイル、世界遺産「橋野鉄鉱山」観光などへの活用を想定し、レンタルEV(電動)バイク10台も導入予定。電気は地域の再エネを活用する。
 
 市内の脱炭素コンテンツをプログラムに取り入れた新たな「釜石版サステナブルツーリズム」(企業研修)を展開するため、研修を受け入れるかまいしDMCが、拠点となる企業向けワーケーション施設を浜町に整備中。エコマテリアル(環境に配慮した材料、技術)を採用し、太陽光発電・蓄電池、まきストーブの導入などで環境配慮のショーケースとしての役割を担う。
 
企業向けワーケーション施設は、かまいしDMCが企業版ふるさと納税などを活用して整備。地域脱炭素の活動拠点となる

企業向けワーケーション施設は、かまいしDMCが企業版ふるさと納税などを活用して整備。地域脱炭素の活動拠点となる

 
 市はこの計画で、電力消費に伴う二酸化炭素(CO2)排出量を約7万トン削減。再エネの地産地消でエネルギー代金の流出抑制、地域内の経済循環を促すとともに、脱炭素・環境を軸としたサステナブルツーリズムで交流、活動人口の拡大を図りたい考え。2月26日には、市、共同提案者、協力事業者らで組織する「釜石市脱炭素先行地域推進協議会」を設立(正会員30、協力会員9)。規約の承認、役員の選任後、事業推進を図るための15のワーキンググループを設置した。
 
2月26日に開かれた「釜石市脱炭素先行地域推進協議会」設立総会

2月26日に開かれた「釜石市脱炭素先行地域推進協議会」設立総会

 
3月21日の釜石市環境審議会では脱炭素先行地域の取り組みが説明された

3月21日の釜石市環境審議会では脱炭素先行地域の取り組みが説明された

 
 25年度は地域共生型、小規模分散型両太陽光発電のためのSPC(特別目的会社)2社の設立に向けた協議、分散型発電の制度設計(民間商業施設、水産関連施設など)、住民や事業者の相談窓口、人材育成、普及啓発セミナー開催などを担う「釜石市デコ活支援センター」の設立を予定する(デコ活=脱炭素とエコを組み合わせた運動の愛称)。
 
 市国際港湾産業課ゼロカーボンシティ推進室の神山篤室長は「先行地域に選ばれたことで国の財政支援が受けられ、地域のCO2排出削減への取り組みを加速化できる。目標達成に向け、事業を着実に進めていきたい」と今後を見据える。
 

企業、団体間連携で広がる脱炭素、エコアクション ラグビー釜石SWホーム戦会場では…

 
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日本製鉄釜石SWのホーム戦ではリサイクル可能な「1DAYスチールカップ」が来場者に配られた=8日、釜石鵜住居復興スタジアム

 
 今月8日、釜石鵜住居復興スタジアムで行われたラグビーリーグワン2部の日本製鉄釜石シーウェイブス(SW)とレッドハリケーンズ大阪の試合。約4400人が訪れた会場内で来場者に無料で配られたのは、リサイクル可能なスチール素材の飲料用カップ。リーグワンプリンシパルパートナー、三菱UFJフィナンシャル・グループの三菱UFJ銀行と、釜石SWメインスポンサーの日本製鉄(市脱炭素先行地域推進協会員)、総合容器メーカーの大和製罐の3社が連携したエコプロジェクトとして実施された。
 
ベアレン醸造所(盛岡市)はスチールカップ利用で樽生ビール内容量4割以上増量のサービスを実施

ベアレン醸造所(盛岡市)はスチールカップ利用で樽生ビール内容量4割以上増量のサービスを実施

 
 釜石SWのチームカラー赤を基調とした限定デザインで、会場内のフードスペース対象店舗で利用すると、飲み物の割引や増量などのサービスが受けられる特典もあった。容器・包装の回収、リサイクルを行う青南商事(釜石SWパートナー)の協力で、使用済みカップの回収ボックスも設置された。ごみ減量、再資源化は地球温暖化対策への第一歩。多くの人たちが環境に配慮した行動への意識を高めた。
 
バイオディーゼル燃料発電で映像を映し出した「大型ビジョンカー」=8日

バイオディーゼル燃料発電で映像を映し出した「大型ビジョンカー」=8日

 
 観光地域づくり法人かまいしDMC(市脱炭素先行地域推進協会員)はこの日、試合をリアルタイムで映し出す大型ビジョンカーの電力供給に協力。使用済みの食用油から作られたバイオディーゼル燃料による発電で、CO2排出量削減に貢献した。
 
 同社は管理・運営業務を行う同市鵜住居町の根浜シーサイド(レストハウス)で、地域から出る廃食油を回収している。集められた油は、再生可能エネルギーを生かした循環型地域づくりに取り組む橋野町の一般社団法人ユナイテッドグリーン(山田周生代表理事)が燃料に精製。市内のスポーツ大会やイベント、イルミネーション点灯などで使う発電機の燃料に活用されてきた。
 
 SWホーム戦での同発電は約2年前から試験的に実施。今回が本格スタートとなった。大型ビジョンカーにつないだ発電機には、同燃料約20リットルを給油。前日のリハーサルから試合終了までの電力供給を担った。この日は、会場内で出店した9店舗から約100リットルの廃食油も回収した。次回のホーム戦の発電で活用される。
 
試合前日、廃食油を精製した燃料を発電機に給油するかまいしDMCのスタッフ

試合前日、廃食油を精製した燃料を発電機に給油するかまいしDMCのスタッフ

 
営業を終えた出店者から使用済み食用油を回収。9店舗が協力した(写真提供:かまいしDMC)

営業を終えた出店者から使用済み食用油を回収。9店舗が協力した(写真提供:かまいしDMC)

 
来場者や出店者にチラシを配布して取り組みをPR(写真提供:かまいしDMC)

来場者や出店者にチラシを配布して取り組みをPR(写真提供:かまいしDMC)

 
 バイオディーゼル燃料は植物由来の油が原料。植物は生育過程で光合成によってCO2を吸収。同燃料の使用時に排出されるCO2量は植物の吸収量と同等とみなされ、地球上のCO2量はプラスマイナスゼロ(大気中のCO2を増やさない)という「カーボン・ニュートラル」の考え方から、地球温暖化防止への効果が期待される。化石燃料の代替エネルギー、資源循環型社会構築の要素としても注目される。
 
 来場者には同発電の取り組みを知らせるチラシも配布した。かまいしDMC地域創生事業部の佐藤奏子さんは「バイオディーゼル燃料は軽油の代替品として使用可能。市が目指す2050年までの温室効果ガス排出量実質ゼロにも貢献できると考える。廃油が資源になり、燃料の地産地消につながる取り組みを今後も継続していきたい」と話す。

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地域と共に 釜石「うのすまい・トモス」6周年 味覚に手仕事…記念マルシェにぎわう

オープンから6周年を迎えた「うのすまい・トモス」

オープンから6周年を迎えた「うのすまい・トモス」

 
 釜石市鵜住居町のうのすまい・トモスで23日、6周年記念マルシェが開かれた。東日本大震災の教訓を伝えるとともに、地域の交流拠点にもなるよう願いが込められた施設。市内外のおいしいものや雑貨などの出店、工作体験などの催しがあり、家族連れらでにぎわった。
 
 地元釜石のほか、盛岡市や遠野市などから43店が出店した。ホタテなどの浜焼き、もつ煮、ピザなど各店がこだわりの味を提供。手作りのアクセサリーや着物のリメイク小物など手仕事の技を込めた商品も紹介した。鵜住居町内会は綿あめやポップコーンをお振る舞い。陸中海岸青少年の家(山田町)は貝殻や松ぼっくりなど海と森の素材で彩るフォトフレームづくり体験で楽しませた。
 
市内外のおいしいものが並び、来場者は品定めを楽しんだ

市内外のおいしいものが並び、来場者は品定めを楽しんだ

 
食べて、体験して、会話を楽しむ人たちの笑顔が広がった

食べて、体験して、会話を楽しむ人たちの笑顔が広がった

 
 三陸鉄道鵜住居駅がすぐそばにあり、列車を利用し来場した人にはマルシェ限定の買い物券を配布するサービスも用意された。そうした後押しに応えようと、三鉄(本社・宮古市)が今回、初出店。黒字化の願いを込めたポン菓子「クロジカせんべい」や駅名板キーホルダーなどを並べた。釜石駅の山蔭康明駅長は「沿線地域のものを紹介しながら、一緒に活気づけられたらいい。ゆっくり列車に乗って旅を楽しんでもらえると、もっとうれしい」と、店先で買い物客をもてなした。
 
三陸鉄道の販売ブースに並んだ品々をのぞき込む来場者

三陸鉄道の販売ブースに並んだ品々をのぞき込む来場者

 
 家族で飲食を楽しんだ二本松勝さん(45)は「イベントがあれば訪れる」と、今回も同級生や親戚が出店していることから足を運んだ。顔を合わせる機会にもなっていて、「こういうにぎわいの機会をもっと増やしてほしい」と願った。
 
 「元気出していくぞー」。地元の釜石東中の1、2年生の有志約40人がソーラン節を披露し、会場を盛り上げた。「若い力を感じて、地域も人も元気になってほしい」。生徒会長の千葉心菜さん(2年)は法被をなびかせながら、力の入った踊りにそう思いを込めた。ソーランリーダーの花輪和穂さん(同)は練習の成果を発揮できたと満足げ。伝統の“東中ソーラン”を引き継ぎつつ、「地域の人にも踊ってもらえるようにしたり、『映(ば)える』活動を発信して活発化させたい」と目標を掲げた。
 
息を合わせソーラン節を踊る釜石東中の生徒たち

息を合わせソーラン節を踊る釜石東中の生徒たち

 
「地域に元気を」と思いを届け、満足げな笑顔を見せた

「地域に元気を」と思いを届け、満足げな笑顔を見せた

 
 うのすまい・トモスは震災の教訓伝承、地域活動や観光交流を促進する拠点として公共施設を一体的に整備し、2019年3月にオープン。釜石祈りのパーク、いのちをつなぐ未来館、鵜の郷(さと)交流館などで構成され、両館の来場者数は3月22日現在で約66万人。新型コロナウイルス禍で減少した時期があったものの、修学旅行先や企業研修先として堅調に推移している。
 
 うのすまい・トモスの菊池啓統括マネジャーは「普段は防災や災害の備えを学ぶ県外からの利用が多いが、地域に根差した施設でありたいという思いがある。人が集う機会を定期的に設け、鵜住居駅前地区のにぎわいを創出し、地元を中心とした事業者の潤いにつなげていければ」と展望する。

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釜石の“宝物”が集う新スポット!?「まちかどミニ美術館」 TETTOに開設

釜石市民ホールTETTOに開設された「まちかどミニ美術館」

釜石市民ホールTETTOに開設された「まちかどミニ美術館」

 
 釜石市大町の市民ホールTETTOに、常設展示コーナー「まちかどミニ美術館」が開設された。地域に眠る“宝物”をみんなで楽しもうと、釜石市芸術文化協会(河東眞澄会長)が企画。思い思いの表現活動に取り組む人たちの“見てもらいたい一作”を紹介している。今後は、3カ月ごとに作品を入れ替える予定。「わが家の宝」「創作活動の力作」などテーマを設けたりしながら公募し、作品10点程度を無料で展示していく。
 
 開設に合わせ22日に行われたセレモニーで、河東会長は「釜石にはさまざまな芸術作品が眠っている。地域には絵を描いたり、ものを作ったり、文化活動を楽しむ人たちがいる。そうした活動の中で生まれた宝物をみんなで楽しみましょう」とあいさつ。芸文協の関係者や出品者らが除幕し、文化芸術に触れる場のオープンを喜んだ。
 
まちかどミニ美術館には市民が手がけた多彩なジャンルの作品が並ぶ

まちかどミニ美術館には市民が手がけた多彩なジャンルの作品が並ぶ

 
 同ホール共通ロビーの一角を活用。毛布に包まれて気持ちよさげに眠る猫を描いたパステル・色鉛筆画「爆睡」(小野寺浩さん作、日仏現代美術世界展準大賞受賞)、破けた障子の穴をのぞき込む瞬間を切り取った写真作品「好奇心」(菊池賢一さん作、第45回岩手県写真連盟公募展大賞受賞)、鶏をモチーフにした複雑で細緻な線をつないだ切り絵「まなざし」(黒須由里江さん作、第76回中美展準会員賞受賞)のほか、版画や俳句、彫金、砂絵など多彩なジャンルの作品が並ぶ。13人が出品。団体に所属している人もいるが、多くは個人で創作活動に取り組んでいる。
 
オープニングセレモニーで出品者が作品に込めた思いを解説

オープニングセレモニーで出品者が作品に込めた思いを解説

 
感性豊かな作品が並び、来場者がじっくりと鑑賞を楽しむ

感性豊かな作品が並び、来場者がじっくりと鑑賞を楽しむ

 
 本業の看板業を発展させながら写真やイラストなどの作品を作り続ける多田國雄さん(82)は、「2011.3.11の記憶」とタイトルを付けたデザイン作品を並べた。東日本大震災で被災し避難生活を送る中で唯一、手元に残った記録媒体・携帯電話で撮った写真を散りばめた。全ての窓が抜け落ち土砂に埋まった当時の自家用車、防潮堤を壊した形で岸壁に乗り上げた貨物船、被災後のまちに戻った街灯の明かり…。被災から3年たった頃に手がけたもので、「次第に当時の記憶が遠のく今、薄れかけた記憶を呼びもどす」との気持ちを閉じ込めた。「(災害は)また来るかもしれないでしょ」。毎年3月に個人的に向き合ってきた一作を公開している。
 
震災をテーマにした「2011.3.11の記憶」(左)と作者の多田國雄さん

震災をテーマにした「2011.3.11の記憶」(左)と作者の多田國雄さん

 
 同美術館には「港かまいし 芸術鑑賞散歩」とのキャッチフレーズが付く。芸文協の関係者は「どの作品も個性が全く違う。作品を楽しみに来てもらい、一作一作をじっくりと楽しんでほしい」と期待。公開された作品に刺激を受け、「新たなことに挑戦したり、趣味を見つけてもらえたら。そして、ぜひ展示してみましょう」と、輪の広がりを待つ。
 
制作者、鑑賞者がつながる場としての可能性に期待が高まる

制作者、鑑賞者がつながる場としての可能性に期待が高まる

 
 出品は原則釜石在住の個人、芸術文化団体に所属する人が対象。今後、市の広報紙などで募集する予定だ。同美術館には文化芸術に関する催しのチラシなどを配置する情報コーナーも用意。作品公募の案内も置くことにしており、「鑑賞がてらチェックを」と呼びかける。

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災害再現VR 釜石で体験会 “その瞬間”どう動く?自らの判断力と対応力を試す

VRを使って地震や津波などの災害を疑似体験する中学生

VRを使って地震や津波などの災害を疑似体験する中学生

 
 災害時、必要な行動をとることができるか―。地震や津波を疑似体験しながら身を守る行動や防災スキルのレベルを確認できるVR(仮想現実)コンテンツの先行体験会が14日、釜石市鵜住居町の「いのちをつなぐ未来館」で開かれた。防災担当の自治体職員や教員、中学生ら約30人が参加。大きな揺れで物が落下したり、津波とともに車が押し寄せてきたりする架空の映像などから災害の怖さ、備えの重要性を認識し、防災意識を高めた。
 
いのちをつなぐ未来館で行われた災害VRの先行体験会

いのちをつなぐ未来館で行われた災害VRの先行体験会

 
 VR映像は、防災設備メーカーの能美防災(東京、岡村武士社長)が開発を進める「地震・津波臨場体験VR~命をつなぐ選択」。▽震度6強の前震▽震度7の本震▽火災▽大津波▽避難場所―という5つの場面が登場し、身を守るために必要になる行動の実践可否を問われながらストーリーが展開する。同社は岩手県を継続的に訪問していて、東日本大震災被災地の経験や教訓を織り交ぜている点が特徴の一つ。体験後には防災スキルのレベルが判定される仕掛けもある。
 
 街が地震や津波に襲われたら、そこにいる“ひとり”として、どう行動するか。選択できるか―。
 
 体験会で、参加者はダイジェスト版を視聴。大きな揺れによる落下物でけがをしたり意識がない人を手助け「できるか」、自宅や職場からの避難場所を「把握しているか」、避難を渋る人がいたとしても「率先して行動を起こせるか」、避難した先での食料や飲み水を「確保しているか」など、場面に応じて必要な動きを選択していった。
 
開発が進む「地震・津波臨場体験VR」の一場面

開発が進む「地震・津波臨場体験VR」の一場面

 
仮想空間に入り込む生徒。楽しみながら防災を学ぶ

仮想空間に入り込む生徒。楽しみながら防災を学ぶ

 
VRでは場面ごとに命を守る行動を選び、防災スキルも確認

VRでは場面ごとに命を守る行動を選び、防災スキルも確認

 
 グラフィックなど目から入る情報だけでなく、周囲の声や警報音など災害発生時の状況がVR上でリアルに再現され、参加者たちは体験空間に入り込んだ様子だった。「地震で物が落ちてくる。やばいよ」「あ、津波。なんかいっぱい流れてきた」などと思わず声を発したり、椅子に座って体験していたが勢いよく立ち上がったり。行動の選択を迫られることで、自分の防災知識や向き合い方を振り返る機会にした。
 
 釜石東中の生徒らも体験。2年生は震災当時1歳、1年生は生まれていない。記憶がない、知らない世代の生徒たちはゲーム感覚で楽しんだ。舘鼻大滋さん(2年)は「VRに入り込み、リアルな感じ。防災を学んでいるけど、書いて理解するよりイメージがわいた。実際に動けるか、考えられた」と話した。一方で、「映像がリアルで、気軽にやると小学生とかは怖い体験になるかも」と想像。「災害が起きて混乱しても早めに逃げて、自分もみんなの命も守れるよう声をかけたい」と表情を引き締めた。
 
生徒が視聴する映像が映し出されたモニターに見入る教員(左)

生徒が視聴する映像が映し出されたモニターに見入る教員(左)

 
 同校教諭の佐々木伊織さん(28)は釜石出身で、震災当時は中学2年生。今回、VRを体験した生徒たちと同じ年頃に津波を目の当たりにした。警報音、渦を巻く波…脳裏にこびりつく、忘れられない記憶。生徒らの様子をそばで見つめながら「(津波襲来の映像は)見せたくないという思いはあるが、この地で暮らす子どもたちには必要な学び。行動しないと、命がなくなってしまうことがあると感じてもらえたら。楽しく体験することで防災を知り、伝承を担う一人として学びを深めてほしい」と望んだ。
 
 同社は火災防災を主軸とした事業を展開する。VRコンテンツとして、2022年にオフィスでの火災を想定した「火災臨場体験VR」を公開。今回の地震・津波編は第2弾となる。近年は災害が頻発・激甚化しており、さまざまな災害への備えを事業に生かそうと、釜石や陸前高田市など震災被災地での社員研修を継続。視察や、語り部から聞いた当時の状況などもVRのストーリーに盛り込んだ。
 
「地震・津波臨場体験VR」の開発を進める佐々木聡文さん(左)

「地震・津波臨場体験VR」の開発を進める佐々木聡文さん(左)

 
 VRコンテンツを担当する同社特販事業部主査の佐々木聰文(あきふみ)さん(48)は釜石出身。「震災を経験していない子どもも増えており、伝え継ぐツールとして使ってほしい」と思いを込める。VRには「避難するか」「戻る、戻らせない」といった葛藤の場面がいくつもあり、古里で聞いた声を踏まえたという。釜石の経験、教訓を次の防災にと考えていて、「南海トラフ巨大地震などリスクの高い他地域にも展開したい。自身の防災スキルを振り返るツールとして活用を」と願う。
 
 地震・津波臨場体験VRは体験会での反応や意見を踏まえ、精度を高めて今春に公開する予定。自治体の防災イベントや企業の避難訓練などでの活用を見込んでいる。未来館など釜石での展開は未定。

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トモス de 6周年記念マルシェ

3月23日(日)に、うのすまい・トモスで「トモス de 6周年記念マルシェ」が開催されます。
トモス de 6周年記念マルシェでは、マルシェ恒例のポップコーン・綿あめのお振舞いに加え、海と森の素材を使ったフォトフレーム作り体験や釜石東中学校の生徒によるソーラン披露などの催しも行われます。
また、三陸鉄道を利用しご来場された方に当日使用可能な200円引きのお買い物割引券をホーム付近で配布します。
詳しくは下記のイベントチラシをご覧ください。

 

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日時

3月23日(日) 11:00~15:00

開催場所

うのすまい・トモス
住所:釜石市鵜住居町4-901-2

お問い合わせ先

うのすまい・トモス事務局
電話:0193-27-5666

地図

この記事に関するお問い合わせ
釜石市 産業振興部 商工観光課 観光物産係
住所:〒026-8686 岩手県釜石市只越町3丁目9番13号
TEL:0193-27-8421 / FAX:0193-22-2762 / メール
元記事:https://www.city.kamaishi.iwate.jp/docs/2025030700018/
釜石市

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地域まるごとサポーター!認知症見守りへ 釜石・栗橋地区住民有志 チーム結成

認知症の人や家族を支える「チームオレンジ くりはし」のメンバー

認知症の人や家族を支える「チームオレンジ くりはし」のメンバー

 
 釜石市の栗橋地区(栗林町、橋野町)の住民有志は12日、認知症の人やその家族を支える活動に取り組む「チームオレンジ くりはし」を結成した。もともと地域の団結力が強く、根づく住民同士の見守り、支え合いの風土を生かす。各種講座を受けて理解を深めたメンバーが、それぞれ自主的に取り組んできた活動をさらに前進。認知症に関わらず、「共生」の地域づくりを目指す。
 
 同地区には、486世帯986人(2月末現在)が暮らす。昨年秋頃にチームづくりの機運が高まり、認知症サポーター養成講座とステップアップ講座を順次開催。延べ167人が修了している。
 
 結成式は栗林町の砂子畑さんあいセンターで開催。10~90代の約60人が参加し、認知症支援のシンボルカラーであるオレンジ色のリングを受け取った。栗林、橋野それぞれにリーダーは置くが、メンバー各自が「地域まるごと認知症サポーター」として隣近所での見守り合いを継続。栗橋地区生活応援センターや市社会福祉協議会と連携し、認知症カフェの開催なども予定する。
 
各地区のリーダーからオレンジリングを受け取るメンバー

各地区のリーダーからオレンジリングを受け取るメンバー

 
 栗林地区リーダーの小笠原サキ子さん(74)は、親の介護のため7年前に古里に戻った。その頃から地域にチームオレンジをつくる目標を持っていたといい、「結成は結果で、これまでのプロセスや住民の気持ちの動きが大事」と深く感じ入った様子。若い世代の参加もうれしい動きで、「世代が違っても気持ちがつながっていればいい。その輪を広げていきたい」と思いを深めた。
 
 橋野地区リーダーの菊池信子さん(73)は「表情が気になる人がいたら声をかけている。経験者の話も聞きながら活動していきたい」と話した。百歳体操、グラウンドゴルフ、お茶っこ会などの集まりは継続。停滞しているという老人会の活動を見直したり、季節の植物を地域で楽しむ機会を増やしたい考えだ。
 
「地域みんなが顔見知り」。普段のつながりを活動に生かす

「地域みんなが顔見知り」。普段のつながりを活動に生かす

 
 市内では鵜住居、小佐野、唐丹地区に続き4番目の結成となった。栗橋地区生活応援センターの二本松由美子所長は「支え合い文化が根づいた地域で、ゼロからのスタートでない。これまでの支え合いの延長線として考えてもらえたら」と、緩やかな視点での活動を期待した。

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趣味の作品集まれ~ 中妻公民館に展示コーナーお目見え 地域交流、来館促進、達人発掘も?

中妻公民館でスタートした「みんなの作品展」=18日

中妻公民館でスタートした「みんなの作品展」=18日

 
 釜石市上中島町の中妻公民館(中妻地区生活応援センター、小山田富美子所長兼館長)は3月から、地区住民が誰でも出品可能な「みんなの作品展」を始めた。趣味で創作している人、こども園や学校、サークルなど個人、団体、年代を問わず作品を募集。1カ月単位で展示期間を設け、毎月継続していく。「住民が地域とつながるきっかけに」と作品提供を呼び掛ける。
 
 3月の展示は18日から開始。中妻地区に住む高齢者ら男女3人が作品を寄せている。一枚板をくりぬいてさまざまな模様を施した木工の壁掛け、切り絵、和紙人形、羽子板、パッチワークなど16点が並ぶ。いずれも趣味で創作しているもので、これまで多くの人の目に触れる機会のなかった作品だ。
 
 同館を利用する女性は「初めて見る作品も。地域にこういうのを作っている人がいるのは知らなかった。素晴らしい」と驚いた様子。自身も創作活動に興味があり、「何か開拓しようかなと思っていたところ。いろいろ見ながらやりたいことを見つけたい」と刺激を受けていた。
 
パッチワーク、切り絵、和紙細工… 作者の思いが詰まった作品が並ぶ

パッチワーク、切り絵、和紙細工… 作者の思いが詰まった作品が並ぶ

 
木工細工の壁掛けは商品のような仕上がり。部屋を素敵に彩りそう

木工細工の壁掛けは商品のような仕上がり。部屋を素敵に彩りそう

 
 同地区には震災後、復興住宅が建設され、他地区からの移住者が増えた。住民には高齢者も多く、同館では引きこもり防止策の一助にと体操やゲーム、健康相談、昼食会などサロン活動を定期的に開催するが、「なかなか足を運べない」「人が集まる場は苦手」という人もいる。そういう人でも地域とのつながりを持てればと考えたのが「みんなの作品展」。話を聞くと、自宅で物作りを楽しむ人は意外と多く、作品を通して新たな交流が生まれるのではないかと常設の展示コーナーを設けることにした。
 
来館者も初めて見る作品に興味津々。制作過程が気になる

来館者も初めて見る作品に興味津々。制作過程が気になる

 
 菊池洋範所長補佐は「作品を持ち寄ることで外出のきっかけになったり、作品を楽しみに気軽に公民館へ来てもらったり。制作者、来館者双方にいい効果があれば」と期待。同館では今のところ、定期的に活動するような制作系のサークルはなく、「こうした展示を機に新たなサークル活動に発展することもあるかも。人と人との輪がさらに広がっていけばうれしい」と今後を思い描く。
 
 作品展示を希望する方は中妻公民館(電話0193・23・5543)まで連絡を。なお、3月の展示は4月17日までを予定する。
 
作品展は入り口近くのロビーで開催中。今後、展示の仕方も工夫する予定

作品展は入り口近くのロビーで開催中。今後、展示の仕方も工夫する予定

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抹茶の苦さも思い出に 釜石・正福寺幼稚園 年長児、小学校入学前の特別な茶席体験

「苦いけど、おいしい」。お茶会を楽しむ子どもたち

「苦いけど、おいしい」。お茶会を楽しむ子どもたち

 
 釜石市甲子町の正福寺幼稚園(松岡公浩園長、園児28人)の年長児を招いたお茶会が2月28日、隣接する正福寺(須藤寛人住職)で開かれた。日本の伝統文化に触れてもらおうと企画。参加した園児14人のほとんどが抹茶をいただくのは初めてで、「ちょっぴり苦いね。けど、がんばったよ」と得意げな表情を広げた。
 
 同園を運営する学校法人釜石学園理事長でもある須藤住職がお点前を披露。園児たちはその様子を間近で見ながら、お菓子をいただき、抹茶を飲んだ。「いいにおい、たまらない」と笑う子もいれば、「葉っぱのにおいだ。にがーい」と動きが止まる子もいた。「チョコの追加、お願いします」との希望者も多数。それでも、最後はみんなで「がんばって飲んだよ」と声を合わせた。
 
園児を前にお点前を披露する須藤寛人住職(右)

園児を前にお点前を披露する須藤寛人住職(右)

 
お菓子もお点前も真剣な表情で「ちょうだいいたします」

お菓子もお点前も真剣な表情で「ちょうだいいたします」

 
抹茶を一口…。表情豊かに味わいを表現する子どもたち

抹茶を一口…。表情豊かに味わいを表現する子どもたち

 
 茶の湯の研さんを積む須藤住職の妻由布子さん、近所に住む佐野宗智さんが作法を紹介した。「一座建立(いちざこんりゅう)」とのキーワードを示し、「お茶を出す人、いただく人が心を通わせて心地よい空間をつくり出すという言葉です。まずは、お互いに心の込もったあいさつをしましょう。そうすれば、平和であたたかい空間になるから」と説明。茶を飲むときは器の正面をずらすために少し回すなど、園児たちは約束を守りながら取り組んだ。
 
 お点前の体験もあり、福士千晴君(6)は「混ぜるとこ、楽しかった。苦かったけど、飲めてうれしかった」と笑顔を見せた。
 
教わったことをしっかり受け止めて「ちょうだいします」

教わったことをしっかり受け止めて「ちょうだいします」

 
お点前に挑戦。「シャカ、シャカ、シャカ…」。集中力、抜群!

お点前に挑戦。「シャカ、シャカ、シャカ…」。集中力、抜群!

 
もてなし、もてなされ、笑顔あふれる正福寺幼稚園のお茶会

もてなし、もてなされ、笑顔あふれる正福寺幼稚園のお茶会

 
 小学校入学を控える年長児に「思い出になる園行事を」と須藤住職が提案。園とは違った生活になることを「抹茶の苦さ」や、作法という「決まり事」で感じてほしいという期待もある。「今日やったことを忘れずに頑張ってください」。エールを送った。

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釜石東中 失われた記録つなぐ 卒業生と共につくる50周年記念誌 協賛呼びかけ

記念誌づくりを進める釜石東中創立50周年記念事業実行委のメンバー

記念誌づくりを進める釜石東中創立50周年記念事業実行委のメンバー

 
 釜石市立釜石東中学校(釜石市鵜住居町)が今年度、創立50周年を迎えた。鵜住居地区の3つの中学校の統合により、1974(昭和49)年に開校、地域とともに歩んで半世紀。これまでの歴史を残そうと、記念誌の作成が進められている。東日本大震災で被災し多くの資料が失われ、情報不足が心配されたが、卒業生らの協力もあって方向性はまとまった。被災の記録と復興への取り組みも加え、後世に伝えるものにするつもりだ。
 
 同校は鵜住居中、箱崎中、栗林中が統合し開校。当時は海に近い場所にあった。さらに橋野中も加わり、その約4年後の2011(平成23)年3月、震災の津波で校舎が全壊。他地域の中学校を間借りして授業を続けた。鵜住居町の内陸部に仮設校舎が設けられると、地区に戻り、同じように被災した鵜住居小児童と一緒に本設校舎の完成を待ちながら約5年間を過ごした。17(同29)年4月から、同町中心部の高台に整備された新校舎(小中併設)で生活を始めた。
 
 もともと防災教育に熱心に取り組んでおり、新校舎が地域の防災拠点としても機能する複合教育施設として整備されたことから、活動を深化。受け継がれた校風、防災の学びや技能を生かそうと、災害発生時の初動対応を行う自主防災組織(自主防)を今年2月に立ち上げた。「助けられる人から助ける人へ」。自分の命を守りつつ、周囲の人も救う姿勢を実践していく。
 
 記念誌の編さんに取り組んでいるのは、同校創立50周年記念事業実行委員会(小笠原慎二委員長)、教職員ら約10人。昨年夏頃から委員らが集まって構成を考え、菊地由紀美副校長(58)が中心となってまとめている。
 
メンバーが話し合いながら編集作業を進めている

メンバーが話し合いながら編集作業を進めている

 
 「足跡、軌跡を振り返ることができる大事な記念誌。思い出を共有できるものをつくりたい」という思いだが、卒業者名簿や卒業アルバムなどの資料を失っているため苦戦。卒業生らにアルバムなど情報提供を求め、寄せられたアルバムから写真を選び、まとめようと奮闘している。入手できたアルバムは39年分で、年度ごとにクラス写真を掲載する予定。また、震災の記録として、同校の防災教育や震災当時の避難行動を紹介する新聞記事なども加える。
 
 記念事業として、昨年10月に同校文化祭に合わせて式典や沿革を紹介する特別展示を実施。展示した写真も記念誌に収める予定で、小笠原委員長(43)や菊地副校長らが、鵜住居の歴史に詳しい同校の学校運営協議会委員の古川幹敏さん(71)の話も聞きながら作成を進める。
 
記念事業として実施した展示で使った写真も掲載する予定

記念事業として実施した展示で使った写真も掲載する予定

 
 同校の卒業生で実行委顧問の川﨑浩二さん(55)は津波で自宅が被災し、思い出の品は残っていない。記念誌の作成に関わる中で、「懐かしい記憶」に触れている。自身の卒業年度のアルバムは被災地域外の同級生が寄せてくれた。「年度ごと、個別だった学校の歩みがひとつになるのが記念誌。一気に見ることができるものは、なかなかない」と発行の意義を強調する。学びやを巣立った人たちが懐かしむだけでなく、「今、学んでいる生徒にも見てほしい。こういう経過があって今あることを知ってほしい」と望む。
 
 編集は終盤に入り、発行に向けて協賛金を募っている。協賛金は2000円からで、記念誌を希望する場合は2000円以上の協賛金が必要。専用フォームから申し込み、指定口座へ振り込む(手数料は自己負担)か、学校に直接持参する。申し込みは23日まで。問い合わせは釜石東中(0193-28-3010)へ。
 

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