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目指せ!ラグビーアマ代表入り 今秋、仏へ派遣 釜石で選考会 市内外の経験者41人挑戦

釜石鵜住居復興スタジアムで行われたラグビーアマ代表選考会

釜石鵜住居復興スタジアムで行われたラグビーアマ代表選考会

  
 9月にフランスで初開催される「ワールドアマチュアラグビーフェスティバル」に、日本代表としてチーム「いわて釜石ラグビーフットボールクラブ」を派遣するラグビー国際交流推進事業実行委員会(小泉嘉明会長)は11日、釜石市鵜住居町の釜石鵜住居復興スタジアムで選手選考会を行った。県内外から経験者41人が参加。体力や技術、コミュニケーション力を確認するミニゲームなどに挑んだ。
  
 同フェスティバルは、同国で開幕するラグビーのワールドカップ(W杯)に合わせて実施。W杯出場国を中心に20カ国が参加する。会場の一つになっているのが釜石の姉妹都市ディーニュ・レ・バン市で、出場の打診があった。そこで、市や県などで同実行委を組織し、釜石と縁があることなどを条件に選手を公募。全国から47人の応募があった。
 
参加選手たちは実戦形式のミニゲームでアピール

参加選手たちは実戦形式のミニゲームでアピール

  
 この日は、釜石シーウェイブス(SW)の元選手12人を含む19歳から58歳までの経験者が参加。ランニングなどの体力、パスやタックルなどの基本スキル、スクラムやラインアウトなどポジション別スキルを確かめるテストに臨んだ。実戦形式のゲームも行い、連係を確認。「いいよ。ナイス」「ハイ!パス…こっち」などと積極的に声をかけ合いながら、それぞれ強みをアピールした。
 
審査員(写真右下)はさまざまな視点から参加選手の動きを確認した

審査員(写真右下)はさまざまな視点から参加選手の動きを確認した

  
 昨季まで釜石SWでWTB(ウイング)として活躍した同市桜木町の会社員佐々木絃さん(25)は、高校時代の仲間から誘われて応募。「年齢層が広め。それぞれのラグビーがあり、みんなで目指すラグビーの完成度を高められたら、面白いチームになりそう」と、気持ちのいい汗を流した。メンバーに選ばれたら、「海外のアマはインパクトあるプレーが多いイメージ。日本代表としての意地を見せたい」と笑った。
 
「多様な考えを持つ人と作り上げるラグビーは楽しい」と佐々木絃さん(右)

「多様な考えを持つ人と作り上げるラグビーは楽しい」と佐々木絃さん(右)

  
 トップリーグ(当時)に所属したヤマハ発動機ジュビロの選手だった池町信哉さん(34)も挑戦者の一人。東日本大震災直後に釜石SWとの復興祈願試合のために来釜して以来、毎年のようにチームで訪れていた。「ここでプレーするのは特別なこと。そして、記念すべき世界大会の日本代表。選ばれたら、恥じないプレー、釜石ここにありというプレーをしたい」と熱く語った。
  
ラグビー、釜石へ熱い思いを持つ池町信哉さん(右)

ラグビー、釜石へ熱い思いを持つ池町信哉さん(右)

  
 釜石SWの元主将で市スポーツ推進課の佐伯悠主任(38)は、チームスタッフとして選考会をサポート。楽しみながら、本気でプレーする参加者の様子に「初めて会ったのにコミュニケーションをとりながら、しっかりとしたプレーをしていた。大会が楽しみ」と頬を緩めた。限られた時間の中でチームを作り上げる難しさはあるが、「同じ方向を目指し、立ち向かってくれる仲間たち」に期待は上向き。「大会を通じて復興支援への感謝、岩手と釜石のパワーを世界に伝える」と意気込んでいる。
  
選考会を終え、すがすがしい表情の参加者たち

選考会を終え、すがすがしい表情の参加者たち

  
 実行委では今後、書類審査(経験や経歴、釜石への愛、競技への熱意などの評価)と選考会(基礎的な技術力や判断力、適応力、協調性などの評価)を踏まえ、選手27人を選ぶ。コーチやメディカルスタッフらを合わせて選手団は35人となる見通し。メンバー決定後は、うのスタでの合宿なども行って大会に臨む。
 
 

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楽しみ尽くす 浜千鳥・釜石 パーティー、4年ぶり開催 合言葉は「酒、時々…」

多様な浜千鳥の味を楽しむパーティーは4年ぶりに開かれた

多様な浜千鳥の味を楽しむパーティーは4年ぶりに開かれた

  
 釜石市小川町の酒造会社浜千鳥(新里進社長)は13日、「浜千鳥のすべてを楽しむパーティー」を大町のホテルクラウンヒルズ釜石で開いた。新型コロナウイルス禍での休止を経て4年ぶりの開催。待ちわびた約120人が集い、蔵人が精魂込めて造った多様な清酒の風味を堪能した。
   
 パーティーは今回で31回目。冒頭であいさつした新里社長は、大槌町産の酒米「吟ぎんが」と地下水を使用した「源水」を紹介し、「地域おこしの酒で、ここに来れば飲める。地域を元気にする取り組みに関わることができてうれしい」と熱弁。久しぶりの顔合わせに気分も上々で、「いろんな酒があり、すべて飲み干すと呑(の)まれてしまう。『酒、時々、水』を合言葉に飲めば、爽やかに楽しめる」と来場者にすすめた。
  
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来場者に自慢の酒をアピールする新里社長(中)

   
 源水の開発で協力したソーシャル・ネイチャー・ワークス(大槌町)の藤原朋代表取締役がミニ講演。開発の物語に加え、今回、酒と合わせて提供する料理の食材となった「ジビエ(野生鳥獣の肉)」を活用した町おこしプロジェクトを紹介した。
 
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「源水」誕生のストーリーなどを紹介する藤原さん

  
 2つの取り組みに共通するのが、地域住民を巻き込んだ「対話」と、行政や関係者らとの「協働」。課題だと思っていることは「みんなで話し合えば、なんとかできる。そして専門性のある人と取り組めば前に進む」と実感を込めた。今後の目標は、ただ事業や産業をつくるのではなく、「100年続く文化をつくること」と強調。この熱い思いを、参加者らは程よい“食前酒”にした。
 
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卓上には夏限定の「純米うすにごり 銀河のしずく」「源水」などが並んだ

  
 源水をはじめ、岩手県最上級のオリジナル酒米「結の香(ゆいのか)」を原料とする「純米大吟醸結の香」、米焼酎「纜(ともづな)」、梅酒、非売品の「大吟醸古酒」など約20種類がずらり。14日蔵出しの「純米うすにごり 銀河のしずく」も一足早く並んだ。漆塗りの杯で味わう立ち呑み処(どころ)「いわて漆亭」もお目見え。5種類の酒を判別する利き酒もあり、参加者はじっくりと味の違いを確かめていた。
 
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20種を超える浜千鳥の銘柄がずらり…お気に入りは?

 
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漆塗りの杯で美酒と会話を楽しむ立ち飲みコーナー

 
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利き酒も行われ、ゲーム感覚で舌の鋭敏さを競った

  
 遠野市の小林裕介さん(34)は「転勤族で、その地で造られている酒を飲みたいから参加した。浜千鳥はご飯を食べながら、おいしく飲める。全部、いい酒。年1回でなく、定期的にやってほしい」と望んだ。
  
 合間には、同社に酒米を供給する大槌酒米研究会の佐々木重吾会長、同社醸造部長で杜氏(とうじ)の奥村康太郎さんが昨年の酒米の出来と酒造りの手応えを紹介。佐々木会長が太鼓判を押す酒米で造った酒について、奥村さんは「米の膨らみ、柔らかみを味に表すことができた。酒造りでは最終的に米を溶かすが、溶けすぎると雑味が出て、溶けないと薄く、そっけない印象になる。じわじわと溶けていき、いい仕上がりになった」と自信を見せた。
 
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酒米、酒造りへの思いを明かす佐々木会長(右)、奥村さん

  
 日本酒が大好きな小笠原いづみさん(55)は“ここぞとばかり”に飲み比べを楽しんでいる様子。「酒造りに携わる人たちの思いを知ると、より味わい深い」と杯を傾けた。大槌町で暮らし、源水の誕生を歓迎。「町の酒といえるものができてうれしい」と頬を桃色に染めていた。
   
 同社は今年、創業100周年。地域に根差した“うまい”酒を造り続けながら、新たなチャレンジもしていく―。新里社長らは、会場に広がる喜ぶ顔を力にする。
 

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SL銀河 最後の勇姿 沿線各所で万感の見送り ライトアップの宮守「めがね橋」では感動の別れ

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11日夜、大勢の人たちに見送られ、10年にわたる運行を終えた「SL銀河」=宮守・めがね橋

 
 震災復興を後押しし、被災地に夢と希望を届け続けた「SL銀河」。10年にわたり人々を魅了してきた釜石線のシンボルは、ラストランでも「いかに愛された列車であるか」を強く印象付けた。3、4日の最終定期運行、10、11日の団体ツアー列車による引退運行では、沿線各地で地元住民や全国から駆け付けた鉄道ファンが別れを惜しんだ。11日夜、遠野市の宮守川橋りょう、通称「めがね橋」では大勢の人たちが最後の勇姿を目に焼き付け、感謝の言葉、拍手で列車を見送った。
 
 晴天に恵まれた最終定期運行の3、4日。残り少ない機会を映像や写真に収めようと、各駅や沿線の人気撮影スポットには多くの鉄道ファンが集った。新緑に包まれたカーブ路線の走行が見られる釜石市甲子町大松、釜石鉱山メガソーラー発電所付近では、県外から訪れた人や地元住民らがカメラを構えた。
 
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最終定期運行では最後尾の客車に「ありがとう」と記されたヘッドマークが取り付けられた=3日下り、釜石鉱山メガソーラー発電所付近

 
 つい最近までJRの線路工事の請負業務に従事していた大松在住の男性(80)は、震災後の釜石を復興まで支え続けてくれたSL銀河に感謝。これまで各地で撮りためた写真を見せながら、「震災復興の大きな力になった。できれば、まだ続けてもらえればいいんだが。諸事情を考えるとJRとしては限界なのかな…」。51年にわたった自身の仕事人生の終止符にSLの運行終了を重ね、特別な思いで列車を見つめた。
 
 茨城県日立市の布施勝一さん(67)、由美子さん(63)夫妻は、2016年ごろから月1回ペースで撮影に足を運び続けた。「煙の多さが魅力的。次はこう撮りたいと回を重ねてきた」と勝一さん。宮沢賢治の童話「銀河鉄道の夜」をモチーフにした客車に引かれる由美子さんは「初めて見た時は感動した。デザイン、ブルーのグラデーション…。他にはないもの」。胸に刻まれた思い出は数知れず。「このSLがなければ釜石に来ることはなかったかもしれない」と口をそろえ、見納めとなる姿を記憶と記録に残した。
 
 団体ツアー客を乗せた10、11日の運行。10日は花巻発釜石行きの下り運転。釜石市の玄関口、陸中大橋駅には到着時刻の午後2時35分を前に、列車を出迎えようとする人たちが次々に車で乗り入れた。手作りのメッセージボード、うちわ、JR特製手旗を携え到着を待ちわびる人たち。列車が到着すると、これまで撮りためたSL写真を乗務員にプレゼントするファンも。ホームは大勢の人たちでごった返した。
 
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10日、陸中大橋駅でSL銀河の到着を待つ親子連れや子ども

 
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手旗を振って最後の下り運転の列車を出迎えた

 
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宮城県から駆け付けた家族は列車を追い、洞泉駅でも通過車両に手を振った

 
 文字通りの“ラストラン”となった上り運転の11日―。この日は夜にかけての運行となり、釜石駅出発は午後2時40分。別れの涙を象徴するかのような雨模様の市内には午後、SL銀河の見送りを呼び掛ける防災無線が響いた。沿線には通過時刻に合わせ市民らが駆け付け、10年の感謝を込め列車に手を振った。沿線各地区の生活応援センターでは見送り用の手旗を希望者に事前配布。当日、小佐野駅には約80人が集まり、釜石に元気をくれたSLとの別れを惜しんだ。高齢女性は「寂しいね…。涙が出るね」と目を潤ませた。
 
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11日、小佐野駅を通過する列車に手を振る地域住民ら(写真提供:小佐野地区生活応援センター)

 
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降りしきる雨の中、力強く進むSL銀河(写真上:枯松沢橋りょう、同下:同橋りょう手前)

 
 ラストランを一層盛り上げたのは遠野-花巻間の夜間運行。最大の見せ場、宮守の「めがね橋」は、辺りが暗くなるとライトアップされ、到着を待つ人たちの期待感を高めた。午後7時8分に遠野駅を出発した列車は午後8時すぎ、同橋に姿を現し、蒸気や煙を吐きながらゆっくりと走行。列車を見上げる人たちはサイリウムライトやスマホをかざし、盛んに手を振った。
 
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ライトアップされためがね橋で最後の勇姿を見せるSL銀河

 
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横断幕やサイリウムライトで感謝の気持ちを表す遠野市民ら

 
 花火も上がる中、列車は橋の上で約3分間停車。どこからともなく「今までありがとうー」「おつかれさまでしたー」などと声が上がった。機関車は何度も長い汽笛を鳴らし見物客に応えた。機関車に乗り込んだJR社員も車内から明かりを照らし、「ありがとうございました」とお礼の言葉が発せられると一帯は大きな感動に包まれた。走り去る際には「また、走ってくれよー」「待ってるよ。またねー」などの声が響き、自然と大きな拍手が湧き起こった。
 
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機関車からも明かりが…。互いに感謝の気持ちを伝え合った(写真上)。乗客も心温まる光景を脳裏に刻んだ(同下)。写真提供=多田國雄さん

 
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宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」をほうふつとさせる光景が広がった(写真提供=多田國雄さん)

 
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「また、いつか…」。復活への希望も込め、列車に別れを告げる

 
 紫波町から家族5人で訪れた佐々木琉君(7)は「小さいころからずっと見てきた。今日はすごく感動した」。自宅そばに釜石線の踏切があり、運行シーズン中は毎週土日が楽しみで仕方なかったという。「こんなに緊張して動画を撮ったのは初めて。涙があふれそうだったが、ぐっとこらえた」と母絵美さん(39)。SL銀河の運行開始後、琉君ら2人の子どもに恵まれた。「子どもたちの成長はSL銀河と共にあった。乗務員さんが一生懸命手を振って、汽笛を鳴らしてくれたことは忘れられない」と声を詰まらせた。
 
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大人も子どもも盛んにライトを振ってお見送り

 
 釜石市小川町の八幡三郎さん(78)、良子さん(75)夫妻は写真が趣味。「私たち世代は修学旅行も集団就職も東京までSLだった。どうしても引かれるものがある」と、追っかけてきた。ラストランはめがね橋でカメラを構え、「多くの人が見送る光景に胸がいっぱいになった。本当に終わりなんだなぁ」。寂しさをにじませつつ、「今までで一番のSLだった」と三郎さん。この10年を振り返り、「釜石にみんなが来てくれるきっかけになり、人と人との出会いも生んだ。子どもたちにも夢を与えてくれた」と実感。運行終了が同市の今後に及ぼす影響も懸念し、「釜石は次、何があるのか?人口減少も進む。定期でなくてもいい。単発でも走ってくれれば」と復活ランを願った。
 
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八幡三郎さん撮影の一枚。川面に反射する青い光が美しい(写真提供:八幡さん)

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SL銀河、ラストラン 活気・元気・楽しみ…「ありがとう」 沿線には大漁旗の花道 岩手・JR釜石線

釜石駅を発つSL銀河の最終列車。線路脇ではファンらが手を振り、大漁旗が揺らめいた=11日

釜石駅を発つSL銀河の最終列車。線路脇ではファンらが手を振り、大漁旗が揺らめいた=11日

 
 観光列車「SL銀河」がJR釜石線(花巻―釜石駅間)を駆け抜けた―。東日本大震災後の沿岸被災地を活気づけようと、10年間走行。4日に定期運行を終え、11日の団体客向け臨時列車としての運行を最後に引退した。ラストシーズン、4両編成の客車176席は、毎便ほぼ満席。始発の釜石駅や沿線では雄姿を目に焼き付けようと大勢の住民や鉄道ファンらでにぎわった。そこで聞こえたのは、「ありがとう」「さみしい」「また…いつか」と別れを惜しみ、再会を望む声。さまざまな思いを胸に、ラストランを見つめていた。
 
 SL銀河は、2014年4月から土日を中心に運行。蒸気機関車「C58形239号機」と宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」をイメージした客車が人気を呼び、約7万4000人が乗車した。被災地の観光客増に一役買っていたが、客車の老朽化などから引退することに。ラストとなる今シーズンの定期運行は6月4日まで上下計24本で、すべての切符が即日完売した。
 
釜石行きの定期列車の最終便を出迎える大漁旗=3日

釜石行きの定期列車の最終便を出迎える大漁旗=3日

 
乗客や見物客らでごった返す釜石駅ホーム=3日

乗客や見物客らでごった返す釜石駅ホーム=3日

  
 3日は、花巻発釜石行きの定期列車の最終便。にこにこ顔でホームに降り立ったのは埼玉県羽生市の南柊羽(しゅう)さん(井泉小3年)と杜和君(5)兄弟。「客車の内装がすごい。煙もいい匂い。かっこよかった。乗れて、めっちゃうれしい」と大興奮だった。父博宣さん(43)によると、諦めかけていたところでやっと手にした乗車の機会。「(杜和君の)誕生日プレゼントにもなった」と破顔した。
 
「やっと!」。大好きなSLに乗れて大喜びの南さん一家=3日

「やっと!」。大好きなSLに乗れて大喜びの南さん一家=3日

 
記念品配布や手旗、虎舞、横断幕などラストシーズンのおもてなし

記念品配布や手旗、虎舞、横断幕などラストシーズンのおもてなし

 
 最終シーズンは沿線でのもてなしにも力が入った。釜石駅ホームでは市内の虎舞伝承団体が交代制で演舞を披露し、10日は「只越虎舞」の出番。副会長の榊原航さん、佐藤隆汰さん(いずれも28)は「釜石ならではのお出迎えを」と威勢よく、にぎやかな踊りを見せた。郷土芸能を発信する機会になっていたことから運行終了は「残念」と感じているが、「虎舞はまちを活気づけ、人をつなぐ」と確信していて、活動を継承し地域を盛り上げる思いを強めていた。
 
釜石駅近くの甲子川橋梁を走るSL銀河=10日

釜石駅近くの甲子川橋梁を走るSL銀河=10日

 
 これが本当のラストラン―。11日の最終便は釜石発花巻行きの臨時列車。多くの人でごった返すホームで、「今までありがとう」と手書きのメッセージを掲げたのは、釜石駅がある鈴子町の町内会員たち。町内会長の松本眞弓さん(72)、高橋光子さん(75)夕向有子さん(77)は線路脇にも立ってSLに手を振り続けてきた。観光客や「撮り鉄」との触れ合いが思い出深く、日課が無くなるような「さみしさ」もありながら、「いろんな楽しみ、元気をもらった」と感謝した。
 
「思い出の中で走り続ける」と感謝を伝える鈴子町内会員=11日

「思い出の中で走り続ける」と感謝を伝える鈴子町内会員=11日

 
最終列車の出発の合図をする(左から)達増拓也岩手県知事、野田武則釜石市長、高橋恒平釜石駅長=11日

最終列車の出発の合図をする(左から)達増拓也岩手県知事、野田武則釜石市長、高橋恒平釜石駅長=11日

 
見送りに応える機関士。「また会いましょう」と釜石駅構内にメッセージを残す=11日

見送りに応える機関士。「また会いましょう」と釜石駅構内にメッセージを残す=11日

 
「ありがとう」。多くの人が見守る中、高らかに汽笛を鳴らし、煙を上げて走るSL銀河=11日

「ありがとう」。多くの人が見守る中、高らかに汽笛を鳴らし、煙を上げて走るSL銀河=11日

 
 釜石駅近くの甲子川橋梁は人気の撮影スポットだが、東京都立川市の大嶋朋子さん(47)は「撮り鉄」「乗り鉄」を控えて見送りに徹した。「SL銀河お見送り大作戦」と銘打ち、呼びかけに応えた20人ほどの仲間と河川敷から大漁旗を振り、最終便の花道を鮮やかに染めた。「甲子川は復興の象徴。震災を忘れさせる場所であり、思い出させる場所だ」。ここで最終便を見届けることにしたのは、ある機関士が話したそんな言葉が心に残ったから。汽笛が山にこだまし、きれいに響くことも理由の一つ。「また帰って来いよ」と聞こえてくるのだとか。SLをきっかけに岩手県内で多彩な縁ができたといい、再訪を望んだ。
 
甲子川橋梁付近の河川敷で最終列車を待ち構える「SL銀河お見送り大作戦」

甲子川橋梁付近の河川敷で最終列車を待ち構える「SL銀河お見送り大作戦」

 
 この活動には、SLに69回も乗った盛岡市の川村瑠成さん(上田中3年)の姿も。「夢は機関士。いつか、また釜石線を走ってほしい。その時に運転したい」とうなずき、前を向いた。
 

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広報かまいし2023年6月15日号(No.1810)

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広報かまいし2023年6月15日号(No.1810)

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【P1】
表紙

【P2-5】
Meetup Kamaishi 2023

【P6-7】
受けよう、がん検診

【P8-9】
土砂災害に備えましょう

【P10-11】
こどもはぐくみ通信
市民のひろば

【P12-13】
春の叙勲、厚生労働大臣特別表彰
まちの話題

【P14-17】
まなびぃ釜石
まちのお知らせ

【P18-19】
保健案内板
保健だより

【P20】
イベント案内

この記事に関するお問い合わせ
釜石市 総務企画部 広聴広報課 広聴広報係
〒026-8686 岩手県釜石市只越町3丁目9番13号
電話:0193-27-8419 / Fax 0193-22-2686 / メール
元記事:https://www.city.kamaishi.iwate.jp/docs/2023061400020/
釜石市

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釜石市公式サイトと連携し、縁とらんすがピックアップした記事を掲載しています。記事の内容に関するお問い合わせは、各記事の担当窓口までお問い合わせください。
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釜石・橋野で「農業入門塾」開講 野菜栽培の基礎知識習得へ 10月まで10品目に挑戦

農業入門塾で野菜苗の植え方を教わる受講生ら

農業入門塾で野菜苗の植え方を教わる受講生ら

 
 県沿岸広域振興局農林部主催の「農業入門塾」が5月31日、釜石市橋野町で開講した。野菜栽培の基礎知識を座学と実践で学ぶ講座で3年目の実施。新規就農、定年帰農、産直向け栽培など多様な形態での就農促進、遊休農地の有効活用を図り、地域農業を活性化させる狙いがある。本年度は釜石大槌地域から8人が受講している。
 
 過去2年は大槌町が会場だったが、今年は釜石市で開催。開講式は栗橋ふるさと伝承館で行われた。受講生と指導者ら16人が参加。眞島芳明農林部長は「野菜栽培を楽しみながら農業への理解を深め、興味を持ってもらえれば」とあいさつした。講師3人が紹介され、受講生が自己紹介した。
 
座学は産直・橋野どんぐり広場隣の「栗橋ふるさと伝承館」が会場

座学は産直・橋野どんぐり広場隣の「栗橋ふるさと伝承館」が会場

 
 県大船渡農業改良普及センター上席農業普及員の菊地淑子さんが座学の講師。作付け計画の立て方、土壌改良、肥料の与え方、苗の植え方などを説明した。この後、実践用の畑に移動。くわを使って土を耕し畝を作る方法、雑草抑制や地温上昇、土壌水分保持に効果的なシート「黒マルチ」の張り方、殺菌・殺虫剤の使い方など一連の手順を参加者が学び、各自の区画で作業に挑戦した。この日はピーマン、ナス、スイカの苗を植えた。
 
講師が畝の作り方を指導。くわの扱い方も伝授

講師が畝の作り方を指導。くわの扱い方も伝授

 
畝に黒マルチを張る。マルチは早く収穫したい場合に効果的

畝に黒マルチを張る。マルチは早く収穫したい場合に効果的

 
 同市鵜住居町の女性(58)は昨年から家庭菜園を開始。数種類植えてみたが、うまく実らない野菜もあり、「ちゃんと勉強したい」と同塾を初受講。「植え方の順序や殺虫剤の分量など知らなかったことを学べて今後に役立ちそう。自分で野菜を作って食べるのは格別。収穫が楽しみ」と目を輝かせた。
 
 大槌町の小林正造さん(75)は東日本大震災を経験し、農作物の自給自足は災害時にも役立つことを実感。初めてのことをやってみたいという思いもあり、昨年から受講を開始した。「きちんと系統立てて教えてもらえるのでありがたい。昨年は食べきれないくらい、いっぱいとれた」と基礎を習う大切さを感じた様子。親から引き継いだが手付かずになっている畑があり、「そちらでも少し栽培してみようと思う」と意欲を示した。
 
収穫を楽しみに苗の植え付け。参加者同士、作業を協力し合う姿も

収穫を楽しみに苗の植え付け。参加者同士、作業を協力し合う姿も

 
苗の根元に支柱を立て生育を補助。畑の周りには電気柵を巡らし野生動物の侵入を防ぐ

苗の根元に支柱を立て生育を補助。畑の周りには電気柵を巡らし野生動物の侵入を防ぐ

 
 講座は10月まで全10回の予定で、今後は病害虫防除の方法や育苗、農作業の安全なども学ぶ。受講生に割り当てられている区画は一人約0.7アール。2回目以降はエダマメ、サツマイモ、キャベツ、ハクサイ、ニンジン、ダイコンのほか、釜石大槌地域ではまだ栽培の少ないブロッコリーも植える。種から育てるものもある。
 
 同振興局農林部地域農業活性化グループの山口貴之さん(農学博士)は「過去の受講生の中には塾終了後、農業を始めた方もいる。専業だけでなく、副業や産直向け栽培などいろいろな形で次につなげてもらえれば」と期待を寄せる。

親子で協力しながら丁寧に苗を植え付けた

釜石発・ラベンダー畑、ただいま整備中! 市民ら植栽 香り、彩り豊かな景色を思い描き

花が香る風景を想像しながら植栽する釜石市民ら

花が香る風景を想像しながら植栽する釜石市民ら

 

 釜石市が整備を進める甲子町の観光農園で10日、ラベンダーの植栽イベントが催された。市、取り組みを後押しするフランスの自然派化粧品メーカーの日本法人「ロクシタンジャポン」(東京都千代田区、木島潤子社長)の共催で、市民ら約150人が参加。地元農家が育てた野菜の販売や木工教室、餅まきなどもあり、豊かな自然の中で交流を楽しんだ。

 

 ラベンダー畑の整備は、釜石の姉妹都市、南仏ディーニュ・レ・バン市でラベンダー栽培が盛んなことがきっかけ。市民が自然に触れる場をつくろうと2021年度に始動し、道の駅釜石仙人峠そばの遊休農地(1.2ヘクタール)で、土づくりと植栽を重ねている。

 

 この取り組みを同社が応援。ディーニュ市が創業者の出身地だったことを縁に東日本大震災の復興支援を継続し、昨年5月には市と観光農園の整備支援を柱とする連携協定を結んでいる。

 

「ミミズ、見っけ」。苗の植え付けも水やりも楽しんで作業

「ミミズ、見っけ」。苗の植え付けも水やりも楽しんで作業

 

 この日は、みんなで協力し、畑にラベンダー苗約170株を植え付けした。苗は、ディーニュ市から届いた種を地元農家が育成したもの。順調に成育すれば、紫と白の2色のかれんな花を楽しめる。

 

 農園近くに暮らす佐藤節子さん(75)は夫恵寿さん(73)と参加。「ラベンダーはいい香りだし、植えるのも楽しい。元気に育ってほしい」と願った。隣接する市民農園で野菜づくりに挑戦中で、週の半分は通っているといい、「いろいろな人と話したり、情報交換できる場所。花が咲けば、もっといい環境になる。ひとつ楽しみが増えた感じ」と目を細めた。

 

親子で協力しながら丁寧に苗を植え付けた

親子で協力しながら丁寧に苗を植え付けた

 

 かまいしこども園(藤原けいと園長)の年中・年長児約30人がお手伝い。景気づけに、かわいらしい虎舞も披露した。桝澤天真ちゃん(5)と有井洸里ちゃん(6)は「きれいに咲いて、みんな喜ぶように。元気に育ってね」と期待していた。

 

かわいい虎舞でイベントを盛り上げたかまいしこども園の園児たち

かわいい虎舞でイベントを盛り上げたかまいしこども園の園児たち

 

 参加者は作業後、釜石地方森林組合による木工教室や同社の空き容器を使ったインテリア小物づくりなども楽しみながら、交流。餅まき、シイタケやブロッコリーなど地場産の野菜まきは盛り上がり、高く手を伸ばした子どもも大人も「とれた」「うれしい」と笑顔だった。

 

「こっちも」。豪快にまかれた餅や野菜に手を伸ばす参加者ら

「こっちも」。豪快にまかれた餅や野菜に手を伸ばす参加者ら

 

ものづくりを楽しむ参加者。ディーニュ市の紹介ブースもあった

ものづくりを楽しむ参加者。ディーニュ市の紹介ブースもあった

 

 市はラベンダー畑を段階的に広げ、2年後のフルオープンを目指している。野田武則市長は「まだまだこれから。ディーニュ市やロクシタンの支援に感謝し、立派な農園にしたい。交流の歴史を市民が理解し、深化させたい」と強調。木島社長は「まるでプロバンス…そんな景色が数年後、釜石に広がるのを夢見ている。景色を楽しむ人の流れを生み出せたら、うれしい」と未来を思い描いた。

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6月3日は橋野高炉跡の国史跡指定日 市民ら環境美化活動と記念講演で郷土の宝に理解

「みんなの橋野鉄鉱山」環境美化活動=3日

「みんなの橋野鉄鉱山」環境美化活動=3日

 
 釜石市橋野町の世界遺産「橋野鉄鉱山」で3日、高炉跡周辺の環境美化活動が行われた。市民らに史跡への関心、保護意識を高めてもらおうと市が主催する7年目の活動。市内外から25人が参加し、草刈りや落ち葉、枯れ枝の回収などを行った。講演会も開かれ、郷土の先人についても理解を深めた。
 
 「みんなの橋野鉄鉱山」と題した同行事は、世界遺産内の高炉場跡(橋野高炉跡)が国史跡に指定された1957(昭和32)年6月3日にちなんで、指定60周年となった2017年から行われている。
 
 今年は一番高炉と二番高炉周辺で活動。重点的に行われたのは高炉脇を流れていた水路の清掃。石垣の間や底部の草を刈ったほか、落ち葉などを回収した。高さのある石垣の上部の足場に土を入れ、踏み固める作業も行われた。同所では3基の高炉が稼働し、それぞれに風を送る装置「フイゴ」が併設されていた。フイゴは水車の力で動かすため、近くの二又沢川から水を引いた水路が南北に約400メートルにわたって延びていた。
 
水路跡の石垣の除草作業にあたる参加者

水路跡の石垣の除草作業にあたる参加者

 
高炉跡の周りも雑草を取り除いてきれいにした

高炉跡の周りも雑草を取り除いてきれいにした

 
 清掃後、同鉄鉱山インフォメーションセンターで記念講演会が開かれた。講師は市世界遺産課課長補佐の森一欽さん。釜石で洋式高炉による連続出銑に成功した盛岡藩士・大島高任(1826-1901)と、国内最大級とされる三閉伊一揆で農漁民を率いた釜石・栗林村出身の三浦命助(1820-64)にスポットを当て、2人の生涯の分岐点となった1853(嘉永6)年6月3日をキーワードに講演した。
 
 大島高任は釜石での高炉建設の前年1856(安政3)年に、水戸藩那珂湊で反射炉による大砲の鋳造に成功しているが、そのきっかけとなったのが53年6月3日のペリーの浦賀来航。一方、三浦命助は53年5月に勃発した2度目の三閉伊一揆で、南下してきた先発隊に6月3日、大槌で合流したとされている。
 
 同時代を生き、地元民とともに大きな困難に立ち向かった両者だが、森さんは「2人は敵対する関係だったと思う。実際に本人同士が会ったということもあり得ないのではないか」と自身の推論を述べた。
 
三浦命助、大島高任にスポットを当てた記念講演

三浦命助、大島高任にスポットを当てた記念講演

 
郷土に功績を残した先人2人の話に聞き入った

郷土に功績を残した先人2人の話に聞き入った

 
 住田町の小学校教諭㓛刀稔也(くぬぎとしや)さん(26)は、5年生が取り組む郷土学習で地元の「栗木鉄山」をテーマにした学習を進行中。製鉄について自身も学びを深めたいと、今回の橋野鉄鉱山行事に参加した。「大島高任や初めて知った三浦命助のことなど大変勉強になった。子どもたちの学習に役立てたい」。環境美化活動にも精力的に取り組み、「地域の人たちが力を合わせ、世界遺産を守っていこうと主体的に活動する姿勢が素晴らしい」と感銘を受けていた。

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正確かつ素早く!救助技術訓練の成果を確認 釜石大槌消防本部 県大会へ、選考会でメンバー決定

救助技術の練度を確認する釜石大槌地区消防本部の選手

救助技術の練度を確認する釜石大槌地区消防本部の選手

  
 釜石大槌地区行政事務組合消防本部(佐々木昌貴消防長)は5月30日、消防救助技術岩手県大会に向け最終メンバーを決める効果測定(選手選考会)を釜石市鈴子町の釜石消防署訓練棟施設で行った。県大会でエントリーする陸上の部4種目(個人1、団体3)で実施。選手は訓練で磨いた技術と体力を発揮し、課題をチェックした。
  
県大会に向けたメンバー選考会に臨む消防署員ら 

県大会に向けたメンバー選考会に臨む消防署員ら

   
 釜石、大槌の2署から19人(うち女性2人)が参加した。成果が披露されたのは、消防の基本技能となる15メートルの「はしご登はん」、高所に張られた長さ20メートルのロープを渡って対面する塔上の要救助者を助け出す「ロープブリッジ救助」(4人一組)、8メートルの煙道をくぐって要救助者を外に助け出す「ほふく救助」(3人一組)、地下やマンホールなどでの災害を想定したもので空気呼吸器を着装して降下しロープを用いて要救助者を引き揚げる「引揚救助」(5人一組)の4種目。それぞれ動作の正確さや速さを競った。
 
同僚らが見守る中、垂直に設けられたはしごを登る選手  

同僚らが見守る中、垂直に設けられたはしごを登る選手

  
水平に張られたロープを渡って助け出すロープブリッジ救助

水平に張られたロープを渡って助け出すロープブリッジ救助

  
ほふく救助で鍛錬の成果を見せる隊員ら

ほふく救助で鍛錬の成果を見せる隊員ら

   
 選手は5月上旬からそれぞれ鍛錬を重ねてきた。「頑張れよ」「いけるぞ、よし」「いいね、ナイス」。同僚らの声援を受けながら力を尽くし、上位入賞の17人の県大会出場が決まった。
  
 釜石署の大津果穂さん(22)は、はしご登はんで入賞。「2年目で初めての県大会。緊張すると思うが、しっかり成果を出せるようにしたい」と上を向いた。ロープブリッジの前川柊哉さん(25)は「目指すは東北大会出場。努力が必要で、訓練を重ねたい」と強調。ほふく救助に参加した多田和佳菜さん(23)は「悔いのないよう練習の成果を出し切った。訓練を通じて技術は向上している。実際の活動に生かせるよう、これからも取り組む」と前を見据えた。
   
 大槌署の大久保太陽さん(21)が臨んだ引揚救助は、装備の不調などで審査が中止となった。消化不良の様子で、選考会後に先輩署員の助言も受けながら競技の流れを確認。「こういうこともあるが、実際の現場であってはいけない。一人一人の動き、チーム全体の流れを見直す」と気を引き締めた。
  
引揚救助に臨む署員は息の合った動きを見せた

引揚救助に臨む署員は息の合った動きを見せた

   
 県大会は、6月28日に矢巾町の県消防学校で開かれる。同本部の選手らが目指す東北地区指導会は7月26日に山形県鶴岡市、全国大会は8月25日に北海道札幌市で行われる。また、水上の部は7月19日に東北地区指導会(宮城県利府町)が予定され、同本部は「溺者救助」(3人一組)に選手を派遣する。

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大槌産酒米「吟ぎんが」に理解 釜石・浜千鳥の酒造り体験塾で80人が田植えに挑戦!

酒米の田植えでスタートした「浜千鳥酒造り体験塾」=5月28日、大槌町

酒米の田植えでスタートした「浜千鳥酒造り体験塾」=5月28日、大槌町

 
 釜石市小川町の酒造会社、浜千鳥(新里進社長)が行う「酒造り体験塾」が今年もスタート。5月28日、同社に酒米を供給する大槌町の農家の田んぼで田植え体験会が開かれた。県内外から約80人が参加。地元の酒米「吟ぎんが」で仕込む酒の味わいに期待を膨らませながら、丁寧に苗を植え付けた。秋には稲刈り、冬には仕込み作業などを体験する。
 
 作業の安全、豊作を祈る神事では、同社醸造部の田村真央さん(28)が田んぼにくわ入れ。参加者の代表が植え始めの儀式を行った。田んぼの所有者で、大槌酒米研究会(5個人、1法人)会長の佐々木重吾さん(66)が苗の植え方を説明した後、参加者が一列に並び、昔ながらの手植え作業に挑戦した。
 
新里進社長らが神前に玉串をささげ豊作を祈願。醸造部・田村真央さんがくわ入れした(左下)=写真提供:浜千鳥

新里進社長らが神前に玉串をささげ豊作を祈願。醸造部・田村真央さんがくわ入れした(左下)=写真提供:浜千鳥

 
佐々木重吾さん(左)から苗の植え方を教わる参加者=写真提供:浜千鳥

佐々木重吾さん(左)から苗の植え方を教わる参加者=写真提供:浜千鳥

 
 この日の天候は曇り。途中から雨も降り出したが、「曇天のほうが苗が乾かず、田植えには好都合」と佐々木さん。泥に足を取られて転んでしまう参加者もいて、泥まみれの子どもたちは周囲の笑みを誘った。約1時間半の作業で、7アールの田んぼはきれいな青苗の列で埋まった。
 
酒米「吟ぎんが」の苗を手植え。雨の中、作業に励んだ

酒米「吟ぎんが」の苗を手植え。雨の中、作業に励んだ

 
泥まみれも楽しい思い出。子どもたちも一生懸命頑張りました!

泥まみれも楽しい思い出。子どもたちも一生懸命頑張りました!

 
 東京都から参加した前川さやかさん(28)は大槌町出身。和食居酒屋で副店長を務めており、店では全国の日本酒を提供している。「酒匠」として酒の勉強を重ねる中、「原料の米についても学びたい」と体験塾に足を運んだ。田植えは小学校の体験学習以来。「すごく大変だったが、お酒を飲むのも売るのもより楽しみになった」と貴重な体験を喜んだ。最近は「全国的に地元の米を使ったこだわりの地酒が増えている」といい、来店客の注目度も高い。「浜千鳥は海産物に合う酒としてお薦めしている。まだあまり知られていないところもあるので、さらに広めたい」と意気込んだ。
 
 釜石市の小國賢太さん(釜石中2年)は両親と共に幼児のころから同体験会に参加。「昨年は学校のテストと重なり来られなかったので久しぶりの田植え。めっちゃ疲れた。手植えだけだった昔は本当に大変だっただろう」と想像を巡らせた。
 
慣れてくると作業もペースアップ。植え終わるまであと一息

慣れてくると作業もペースアップ。植え終わるまであと一息

 
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 同研究会メンバーの今年の作付面積は合わせて約20ヘクタール。30代の新規就農者も参入し、会では後継者育成にも力を入れる。昨年、浜千鳥に供給された大槌産吟ぎんがは約78トン(前年対比約6トン増)。佐々木さんは「(天候などが順調に推移し)今年もさらに良くなってくれれば」と願う。
 
 吟ぎんがは岩手オリジナル酒米として普及が図られ、県内の多くの酒蔵で使われる。沿岸で栽培しているのは大槌地域だけ。今では、浜千鳥が吟ぎんがで仕込む商品は全て大槌産米が使われ、同社商品全体の5割を占める。コロナ禍の3年間は宴会などの減少で同社の販売数も落ち込んだ。新里社長は「コロナの収束で需要も回復傾向にある。これまでは生産調整を余儀なくされるなど苦しい状況が続いたが、今年は増産できる見込み。この地区の酒米が豊作になるよう祈る」と期待をにじませる。同社は今年、創業100周年を迎える。
 
最後の記念写真は出来上がった酒のボトルラベルに使われる

最後の記念写真は出来上がった酒のボトルラベルに使われる

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今年も広がる夢空間 色とりどりのバラに来場者感激 甲子町「陽子の庭」10日まで一般公開

木立ち性、つる性のバラが咲き誇る「陽子の庭」=4日、甲子町洞泉

木立ち性、つる性のバラが咲き誇る「陽子の庭」=4日、甲子町洞泉

 
 釜石市甲子町洞泉の私設ガーデン「陽子の庭」がバラの開花時期に合わせ、今年も一般公開されている。菊池秀明さん(75)、陽子さん(76)夫妻が自宅周辺の敷地に設けている手作りの庭園には約160種のバラが植えられていて、色や形、香りの異なる花が訪れる人たちに癒やしの空間を提供している。10日まで公開(午前9時~午後4時まで)。最終日は水晶でできた楽器の演奏も行われる。
 
 菊池さん夫妻が開放している庭は広さ約700坪。山の斜面を造成し、15年ほど前から夫婦二人三脚でこつこつと造り上げてきた。園内は傾斜に沿って設けられた小道が連なり、エリアごとに日本庭園風、イングリッシュガーデン風などさまざまな趣を楽しむことができる。園内には豊富な草木に加え、季節ごと開花時期の異なる複数の花が植えられている。
 
順路案内に従って小道を進むと園内の魅力をくまなく楽しめる

順路案内に従って小道を進むと園内の魅力をくまなく楽しめる

 
 1年の中で最も華やかな様相を見せるのが多くのバラが開花するこの時期。バラは庭造りを始めて4~5年後、陽子さんが植え始め、友人からも“つるバラ”を提供されたことなどで年々、規模を拡大。つるを這わせる棚は、今では見事なバラのトンネルを形づくる。3年前からはバラ専用のスペースを確保し、さまざまな品種を育てている。
 
つるバラを這わせたアーチは圧巻。夢いっぱいの空間が広がる

つるバラを這わせたアーチは圧巻。夢いっぱいの空間が広がる

 
さまざまな品種のバラを一堂に集めたエリア。見比べも面白い

さまざまな品種のバラを一堂に集めたエリア。見比べも面白い

 
 早咲きのバラは例年、5月25日ごろから咲き始めるが、今年は10日ほど早く開花。遅咲きも早まるのではと心配されたが、こちらは例年並みで、6月1日からの一般公開では多くの品種の競演が見られている。期間最初の日曜日となった4日は、市内外から多くの観賞客が訪れ、美しく咲き誇るバラに笑顔を広げた。
 
左:ウルメールムンスター/左:ジュピレデュプリンスドゥモナコ

左:ウルメールムンスター/左:ジュピレデュプリンスドゥモナコ

 
左:ゴールデンボーダー/右:プリンセス・アン

左:ゴールデンボーダー/右:プリンセス・アン

 
左:ホットココア/右:ピンクサマースノー

左:ホットココア/右:ピンクサマースノー

 
 市内野田町から足を運んだ20代、30代の女性2人は、目にも鮮やかな色合いと豊かな香りにうっとり。「日常を忘れる癒やしの空間。気持ちが穏やかになり幸せな気分」と口をそろえた。広大な敷地で多種類を育てる菊池さん夫妻に、「とても2人でやっているとは思えない。バラは管理が難しく手間がかかると言われるが、すごく手入れが行き届いていて素晴らしい」と感心しきり。「地域の貴重な資源。ぜひ継続してほしい」と願った。
 
 庭造りは秀明さんの定年退職を機に始まった。当初は日本庭園だけで完結するつもりだったが、東日本大震災で被災した方から庭石の活用を提案され、譲り受けた石を組んでロックガーデンを造成。園内の草木もほとんどが託されたもので、夫妻の手によって新たな地で息を吹き返した。今や同庭の代名詞にもなっているバラは、毎年少しずつ種類を増やしてきた。
 
水も流れる和風テイストのロックガーデン。秀明さんら男性3人で1カ月かけて造り上げた

水も流れる和風テイストのロックガーデン。秀明さんら男性3人で1カ月かけて造り上げた

 
4日は家族連れや友人グループなどが次々に来訪

4日は家族連れや友人グループなどが次々に来訪

 
 6月の一般公開は今年で8年目。近年は10日間で約700人が訪れるなど、市内外の人たちに愛される人気スポットとなっている。陽子さんは「見てくれる人、支援してくれる人のおかげで続けてこられた。2人とも年を重ね作業は大変だが、お客さまの声に励まされ、何とか頑張っている」。秀明さんは「まずは10回まで、あと2年はできれば。後のことはそれから考えるべ」。陽子さんと顔を見合わせ仲良く笑う。
 
自宅庭を開放する菊池秀明さん、陽子さん夫妻

自宅庭を開放する菊池秀明さん、陽子さん夫妻

 
4日は花空間でmia&リアスバンドのミニコンサートも行われた

4日は花空間でmia&リアスバンドのミニコンサートも行われた

 
 園内ではこの後、バラに続きアジサイ(6月末~7月中旬)やヤマユリ(7月上旬~中旬)も開花する。今回の公開期間後も見学者を受け入れる。場所は、市街地から向かう場合は国道283号を釜石鉱山方面に西進。道の駅釜石仙人峠を過ぎて車を走らせると、右手に誘導看板が見える。

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分列行進、放水訓練4年ぶりに 釜石市消防団消防演習 団員ら防火、防災へ志高く

4年ぶりに分列行進を行った釜石市消防団消防演習=5月28日

4年ぶりに分列行進を行った釜石市消防団消防演習=5月28日

 
 釜石市消防団(坂本晃団長、団員533人)は5月28日、2023年度の消防演習を市内3会場で行った。新型コロナウイルス感染症の影響で20年度以降、中止や規模を縮小しての開催となっていたが、本年度は分列行進や放水訓練を再開。団員らが士気を高めるとともに、市民への防火思想の普及を図った。
 
 鈴子町の消防庁舎駐車場で行われた開会行事には団員310人と来賓、関係者55人が参加した。東日本大震災の犠牲者に黙とうをささげた後、統監の野田武則市長が訓示。地震や集中豪雨など大規模自然災害への対応、火災予防や早期鎮圧という消防任務の重要性を改めて示し、「有事の際、何よりも頼れるのは地域の消防団。より一層、火災予防啓発活動や日ごろの訓練に精励されるよう願う」と述べた。
 
統監の野田武則市長の訓示(左下写真)を受け、気を引き締める団員ら

統監の野田武則市長の訓示(左下写真)を受け、気を引き締める団員ら

 
姿勢を正し敬礼。真剣なまなざしで演習に臨む

姿勢を正し敬礼。真剣なまなざしで演習に臨む

 
 災害現場や火災予防で優秀な活動をした団員や部をたたえる「釜石市長表彰」では、14人の団員に功績章、5つの部に竿頭綬(かんとうじゅ)が贈られた。在職3年以上で職務精励、消防技能に優れた団員8人には「市消防団長表彰」として精勤章が授与された。
 
 本年度の新入団員は5人。代表の第5分団第2部の佐々俊樹さん(26)が坂本団長から辞令を受け、「良心に従って誠実に消防の義務を遂行する」と宣誓した。最後に、統監らによる観閲が行われ、整列した団員の服装などを見て回った。
 
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竿頭綬を受ける各部の代表ら/左下写真は功績章(右)、精勤章の授与

 
新入団員を代表し辞令を受けた第5分団第2部の佐々俊樹さん(手前)

新入団員を代表し辞令を受けた第5分団第2部の佐々俊樹さん(手前)

 
統監を先頭に行われた観閲

統監を先頭に行われた観閲

 
 分列行進は大町の目抜き通りで行われた。4年ぶりのパレードを見ようと沿道に集まった市民らを前に、参加した全団員と消防車両38台が整然と行進。坂本団長以下団本部、各分団が訓練で培った規律ある行動を見せ、団の心意気を示した。市内9小学校、1中学校が加入する市少年消防クラブから児童生徒12人も行進に加わった。
 
坂本晃団長(左)のもと分列行進を行う団員/市少年消防クラブの児童生徒も行進し、防火思想の普及に協力(右下写真)

坂本晃団長(左)のもと分列行進を行う団員/市少年消防クラブの児童生徒も行進し、防火思想の普及に協力(右下写真)

 
久しぶりの分列行進で士気を高める団員ら

久しぶりの分列行進で士気を高める団員ら

 
 初めて分列行進を見学した平田の菊池さやかさん(38)は団員や消防車両の数に驚き、「これだけ多くの方が市の消防のために働いてくれていることを知り、とても安心したし、頼もしいと感じた。震災で被災した時は消防団の方々に大変お世話になった。若い世代の団員がもっと増えて活躍してくれたらいいですね」と期待。消防車が大好きという長男創太ちゃん(2)はたくさんの車両に大興奮。「かっこよかった」と目を輝かせた。
 
消防車はライトを点滅させながらゆっくりと進む

消防車はライトを点滅させながらゆっくりと進む

 
圧巻の車列に沿道の子どもたちは大喜び。盛んに手を振って応援

圧巻の車列に沿道の子どもたちは大喜び。盛んに手を振って応援

 
 演習の最後は放水訓練。千鳥町の甲子川河川敷に8つの分団の車両が一列に並び、川に向かって一斉に放水した。団員らは訓練で身に付けた技能を発揮。火災発生時の消火活動を迅速、確実に行うことへさらなる意識を高めた。
 
放水訓練も4年ぶりの実施。高々と水柱が上がる(写真提供:釜石市消防課)

放水訓練も4年ぶりの実施。高々と水柱が上がる(写真提供:釜石市消防課)

 
 釜石市内では今年に入り6件の火災が発生。3月の建物火災で1人が亡くなっている。発生件数は昨年1年間の5件を既に上回っており、団や消防本部ではさらなる予防、警戒活動へ気を引き締める。