釜石・橋野で「農業入門塾」開講 野菜栽培の基礎知識習得へ 10月まで10品目に挑戦
農業入門塾で野菜苗の植え方を教わる受講生ら
県沿岸広域振興局農林部主催の「農業入門塾」が5月31日、釜石市橋野町で開講した。野菜栽培の基礎知識を座学と実践で学ぶ講座で3年目の実施。新規就農、定年帰農、産直向け栽培など多様な形態での就農促進、遊休農地の有効活用を図り、地域農業を活性化させる狙いがある。本年度は釜石大槌地域から8人が受講している。
過去2年は大槌町が会場だったが、今年は釜石市で開催。開講式は栗橋ふるさと伝承館で行われた。受講生と指導者ら16人が参加。眞島芳明農林部長は「野菜栽培を楽しみながら農業への理解を深め、興味を持ってもらえれば」とあいさつした。講師3人が紹介され、受講生が自己紹介した。
座学は産直・橋野どんぐり広場隣の「栗橋ふるさと伝承館」が会場
県大船渡農業改良普及センター上席農業普及員の菊地淑子さんが座学の講師。作付け計画の立て方、土壌改良、肥料の与え方、苗の植え方などを説明した。この後、実践用の畑に移動。くわを使って土を耕し畝を作る方法、雑草抑制や地温上昇、土壌水分保持に効果的なシート「黒マルチ」の張り方、殺菌・殺虫剤の使い方など一連の手順を参加者が学び、各自の区画で作業に挑戦した。この日はピーマン、ナス、スイカの苗を植えた。
講師が畝の作り方を指導。くわの扱い方も伝授
畝に黒マルチを張る。マルチは早く収穫したい場合に効果的
同市鵜住居町の女性(58)は昨年から家庭菜園を開始。数種類植えてみたが、うまく実らない野菜もあり、「ちゃんと勉強したい」と同塾を初受講。「植え方の順序や殺虫剤の分量など知らなかったことを学べて今後に役立ちそう。自分で野菜を作って食べるのは格別。収穫が楽しみ」と目を輝かせた。
大槌町の小林正造さん(75)は東日本大震災を経験し、農作物の自給自足は災害時にも役立つことを実感。初めてのことをやってみたいという思いもあり、昨年から受講を開始した。「きちんと系統立てて教えてもらえるのでありがたい。昨年は食べきれないくらい、いっぱいとれた」と基礎を習う大切さを感じた様子。親から引き継いだが手付かずになっている畑があり、「そちらでも少し栽培してみようと思う」と意欲を示した。
収穫を楽しみに苗の植え付け。参加者同士、作業を協力し合う姿も
苗の根元に支柱を立て生育を補助。畑の周りには電気柵を巡らし野生動物の侵入を防ぐ
講座は10月まで全10回の予定で、今後は病害虫防除の方法や育苗、農作業の安全なども学ぶ。受講生に割り当てられている区画は一人約0.7アール。2回目以降はエダマメ、サツマイモ、キャベツ、ハクサイ、ニンジン、ダイコンのほか、釜石大槌地域ではまだ栽培の少ないブロッコリーも植える。種から育てるものもある。
同振興局農林部地域農業活性化グループの山口貴之さん(農学博士)は「過去の受講生の中には塾終了後、農業を始めた方もいる。専業だけでなく、副業や産直向け栽培などいろいろな形で次につなげてもらえれば」と期待を寄せる。
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