「伝統を継ぐ」と思いを込め、しし踊りを披露する小佐野小児童
釜石市小川地区に伝わる郷土芸能「小川しし踊り」が、小佐野小(千田有美校長、児童285人)の運動会で披露された。廃校になった地域の小学校から受け継ぎ演舞するのは5、6年生107人。鹿頭(ししがしら)をかぶった児童が笛や太鼓の音に合わせ大地を跳ねたり踏みしめながら勇壮に、色鮮やかな衣装に身を包んだ子どもたちはりりしく舞った。「もっといい踊りを」と後輩につなぐ高学年の勇姿がキラリ。小佐野町の同校校庭に詰めかけた保護者らから拍手が沸き起こった。
鮮やかな衣装を身に着けた踊り手たちは凛とした姿が印象的
同校は2005年に旧小川小と統合。小川小伝統のしし踊りを引き継ぐため伝承活動委員会や特設クラブを設け、学習発表会や地域の交流イベントで演舞を披露してきた。統合から13年目の17年、新たな伝統の一歩にしようと運動会での公開を開始。委員会などはなくなったが、授業に取り入れ高学年が継承し、運動会のプログラムとして定着している。
5月の大型連休後から小川しし踊り保存会(佐々木義一会長)の指導(3回)を受けながら、授業と授業の間の休み時間(中休み)や昼休みも利用したりと毎日練習を重ねてきた5、6年生。「腰をしっかり落としてから跳びはねるとかっこいい」「指先に目線を合わせながら動くと踊りがきれいに見える」といった助言をかみしめつつ、力強く舞った。
鹿頭をかぶった児童は幕をはためかせながら、格好いい舞いを披露
半被姿の手踊りグループも元気いっぱい跳びはねて躍動した
踊りを盛り上げる笛や太鼓のおはやしグループ。軽快な音を響かせた
頭のリーダー、櫻庭蒼天(そうま)さん(6年)は最後尾で踊る「しんがり」役もこなし、「楽しい。最高」と心地よい汗を流した。手踊りのリーダー、照井美莉愛(みりあ)さん(同)も高学年としての自覚を持って、心を一つに踊り切ったとすがすがしい表情。「伝統を受け継ぐことができ、いい思い出になった。(後輩たちには)もっといい踊りをしてほしい」と期待した。
「子どもたちは、地域の伝統を受け継ぎたいと頑張ってきた。元気な踊りを見てもらうことで地域に恩返ししたいという気持ちもある」と千田校長。そんな思いを全身で表現する児童を優しく見守り、「小佐野小にいた証し。学校を離れても思い出が体に染みて、誇りに思ってもらえたら」と願った。
コロナの5類移行を受け、久々ににぎやかな風景が戻った小佐野小の運動会
新型コロナウイルス感染症が「5類」に移行してから初めての運動会。声出しの応援復活や家族の参観に制限を設けず、マスク着用も個人の判断など久々に平時に近い形で行われた。プログラムは午前のみで、従来あった昼食時間は設けず実施。保護者への意向調査を踏まえた形だという。
プログラムは全16種目。赤、白に分かれた児童は応援合戦、「天下分け目の小佐小合戦」と題した団体種目で力を合わせて競技を繰り広げた。ラストラン間近のJR釜石線を走るSL銀河をモチーフに趣向を凝らした種目も。リレーや徒競走では元気よく校庭を走った。
運動会スローガン「正々堂々」にちなんだ旗で応援合戦
仲間と力を合わせて競技を楽しむ子どもたち
力いっぱい競技する児童を家族らが笑顔で見守った
「運動会ができることに感謝を」と、どの種目にも本気で挑んだ子どもたち。カメラなどを向けた家族らから、たくさんの声援が送られた。