橋野鉄鉱山周辺の八重桜並木の下を散策する人たち=14日
釜石市橋野町青ノ木の春を彩る「橋野鉄鉱山八重桜まつり」は14日、同鉄鉱山インフォメーションセンター駐車場で開かれた。橋野町振興協議会(菊池郁夫会長)、栗橋地区まちづくり会議(洞口政伸議長)が主催。花の観賞のほか、地元住民による食の振る舞いが好評の同まつりは、新型コロナウイルス禍で2020年以降、中止が続いていたが、今年4年ぶりに復活。恒例の餅まきや豚汁の提供に来訪者が笑顔を広げた。
同まつりは両組織が共催する「はしの四季まつり」の一つ。国内最古の洋式高炉跡を有し、2015年に世界遺産登録された「橋野鉄鉱山」周辺に連なる八重桜並木の開花に合わせ、登録前から行われている。11年の東日本大震災後は甲子町から会場まで無料送迎バスが運行され、来場者増に拍車をかける。今年は大型バス2台に計約70人が乗車して訪れた。
釜石観光ガイド会(瀬戸元会長)会員の案内で高炉場跡を見学するツアーでは、八重桜を愛(め)でながら史跡エリアに向かった。2人のガイドが先導。参加者は3基の高炉や水路、山神社跡などが残る現場で、日本の近代化の礎を築いた当時の鉄づくりについて学んだ。
釜石観光ガイド会会員の案内で高炉場跡に向かう
ガイドから同所の鉄づくり、世界遺産の価値について学んだ
お楽しみの餅まきには大勢の人たちが集まった。同振興協の菊池会長(68)は「振興協議会では皆さまをお迎えするために、4月末に周辺の道路清掃を行うなど準備を進めてきた。夏にはラベンダーまつり、秋には水車まつりなども開催する。ぜひ橋野に足を運んでいただきたい」とあいさつ。地域の代表や来賓がトラックの荷台に上がり、約1500個の餅をまいた。約100個には地元の産地直売所「橋野どんぐり広場」で使える金券が入れられた。
毎回好評の餅まき。久しぶりのにぎわい風景が広がった
豚汁のお振る舞いには今回も長い列ができた。振興協女性部が腕を振るう豚汁は地元産の野菜をふんだんに使い、手作りみそで仕上げる自慢の一品。今年は生シイタケや山菜(ワラビ、フキ、ウド)も入り、一層うまみが増した味に…。来訪者はそのおいしさに大満足といった様子で箸を進めた。
橋野の恵みが詰まった豚汁を300食お振る舞い
お振る舞いに長い列ができた会場内=橋野鉄鉱山インフォメーションセンター駐車場
会場には市内で人気のキッチンカー2台が出店。どんぐり広場の出前産直も行われた。産直は開店と同時に人だかりができた。客のお目当ては旬の山菜。コゴミ、シドケ、ヒメタケ、ウルイなどが並び、あっという間に売り切れた。定番商品の漬物や団子のほか、おにぎりも販売された。大槌町のバンド「ZENBEY絆」は歌で楽しませ、新曲の「橋野音頭」も披露した。
「橋野どんぐり広場」の出前産直。旬の山菜が次々に売れた
新曲「橋野音頭」などで楽しませたバンド「ZENBEY絆」
同所の八重桜は1980年代に釜石ライオンズクラブが植樹。今年は他の桜同様、開花が早まり、大型連休最終日の7日に満開を迎えた。翌8日は季節外れの雪に見舞われ、地面が白く染まった。雪の影響で花色の濃さが若干落ちたが、まつり当日まで何とか花は残り、桜吹雪が舞う中でのイベント開催となった。
栗林町の佐々里沙さん(32)は家族3人で来訪。「たくさんの桜が目の保養になる。ここは公園もあるので子連れで楽しめる場所。まつりには初めて来た」と話し、親子の休日を満喫した。送迎バスを利用し、毎回来ているという東前町の70代女性は「ここの豚汁は最高。今年は特にもおいしかった。餅も何個か拾えた」と喜びの笑顔。コロナ禍でまつりがない時も桜だけは見に来ていた。「きれいな花を見ると気持ちが晴れる。夫を亡くしたばかりで落ち込んでいたが、やっぱり外に出た方がいい」と、少し心の元気も取り戻した様子。
この日は昼どきを中心に約500人が訪れ、まつりを楽しんだ。菊池会長は「コロナ禍前に近い人出。リピーターが増えているのもありがたい。迎える側もみんな一生懸命やってくれて、地域に久しぶりの活気が生まれた」と話した。