釜石の防災、インドネシアへ 在メダン総領事市長表敬 津波からの復興共有、交流発展願う
インドネシアと釜石の交流発展へ期待を寄せる田子内進総領事(後列中)と野田武則市長(同左)ら
インドネシア・在メダン日本国総領事館の田子内進総領事(59)=久慈市出身=は10日、釜石市役所を訪れ、野田武則市長と懇談した。同国では、学校や地域住民が防災教育について学ぶプロジェクトが進行中。この取り組みに釜石市などが協力しており、防災を通じた交流発展への期待感を共有した。
同国は、2004年のスマトラ沖大地震・インド洋津波で甚大な被害を受けた。最大の被災地・スマトラ島最北端にあるアチェ州のバンダ・アチェ市には津波博物館があり、この災害と教訓を伝えている。一方、田子内氏によると、同地震から20年近くたち「震災はなかった」というフェイクニュースを信じる若者もいるといい、住民らの防災意識の低下が課題になっている。映像などの資料に住民が自由に触れられるようアーカイブ館の充実に力を入れていることも紹介。「記憶をつなぐ取り組みが大切。日本にできることがある」と思いを明かした。
休暇に合わせ妻亜矢子さん(50)と里帰り中の田子内氏。同国で進むJICA(国際協力機構)の草の根技術協力事業を活用した「バンダ・アチェ市における地域住民参加型津波防災活動の導入プロジェクト」に、釜石の一般社団法人根浜MIND(マインド)が協力していることから、視察を兼ねて足を延ばした。
懇談ではプロジェクトの進み具合や今後の展開について説明された
懇談には、同法人の岩﨑昭子代表理事や細江絵梨さん(JICA事業プロジェクトマネジャー)、常陸奈緒子さん(同サブマネ)らが同席し、取り組み状況を報告した。プロジェクトの目標は、アチェ市で住民主体の防災プログラムをつくり実践すること。昨年9月から事業は始まっており、博物館スタッフや教育者、防災関係者らにオンライン講義を実施し、釜石の復興まちづくりの経験や教育現場の取り組み、伝承活動のノウハウを届けている。
アチェ市の中学生を対象にしたプログラムの実施も計画。準備のため、5月下旬に現地に出向く細江さんは「釜石の経験を生かした持続可能なプログラムをアチェに伝えられたら。プロジェクトは2025年までの3年間と長いが、相互に訪問したり交流も深めていきたい」と見据える。岩﨑代表理事は「防災を通して学び合えたら。私たちも学び直し成長したい」と熱を込めた。
野田市長から記念品などを受け取る田子内総領事(右)
野田市長も「風化は避けられないが、次の世代に伝えなければいけない」と強調し、避難を啓発する韋駄天競争や伝承者の養成といった取り組みを紹介。津波被災地として「互いの記憶を共有、交流できる機会があれば」と期待した。
説明を受け、田子内氏は「防災に携わる人は危機感を持っている。記憶が失われないよう活動を続ける釜石の事例はぴたりとはまる。アチェからインドネシア全体に広がる取り組みになれば。プロジェクトがスムーズに進むよう、後押しする」と約束した。
根浜地区の高台にある震災津波記念碑などを見て回った
田子内氏はこの後、鵜住居町の津波伝承施設いのちをつなぐ未来館を見学。高台造成地に整備された根浜地区の復興団地では同法人の佐々木雄治事務局長から高台移転を決めた経緯やまちづくりの視点を聞き取った。
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