東北吹奏楽コンクールに向け練習に励む釜石市民吹奏楽団=28日夜
釜石市民吹奏楽団(山内真紀人団長、団員60人)は、9月4日に福島県いわき市で行われる第65回東北吹奏楽コンクール職場・一般の部に本県代表として出場する。同団の東北大会進出は1986年以来、36年ぶり5回目。全日本コンクールの東北代表が選ばれる高みの舞台。団員らは東日本大震災で受けた支援への感謝を胸に、最高の音を響かせようと練習に励む。
同団は7月31日に北上市で行われた第60回岩手県吹奏楽コンクールに沿岸地区代表として出場。県内5地区から10団体が出場する中、評点で1位、最高賞の金賞を受賞した。2位で金賞のパシフィック・ブラス・オルケスタ(盛岡地区)とともに東北コンクールへの出場権を獲得した。
団は週2~3回、市民ホールTETTOで練習中
釜石市吹は本年度の全日本コンクール課題曲5曲の中から「ジェネシス」(鈴木英史作曲)を選択。自由曲は「Comet(コメット)」(堀田庸元同)とし、沿岸地区予選、県大会に挑んできた。86年以降も県大会での金賞受賞はあったが、東北大会出場には手が届かずにいた同団。今年、堂々トップの成績で目標の舞台への切符を手にした。
県大会は新型コロナウイルス感染防止対策のため、会場で他団体の演奏を聞くことができず、結果発表もメール通知となった。団員らは帰宅後、個々に結果を知った。「まさに青天のへきれき。ここ数年では一番いい演奏ができた実感はあったが、驚きの方が先だった」と山内団長(48)。指揮者としても団をまとめる立場で、「自分たちが目指してきたことと審査員が求めることが合致したのでは」と分析する。
指揮者として演奏全般も指導する山内真紀人団長(左)。音の響かせ方のイメージを伝える
大小さまざまな金管楽器を奏でるメンバー
同団は1978年創立。コンクールへの出場のほか、定期演奏会、各種イベントへの出演など多彩に活動し市民に愛される。2011年の震災では活動拠点としていた市民文化会館が津波で浸水。団の楽器も失われるなど大きな被害を受けた。一旦は1年間の活動休止を宣言したが、支援に駆け付けた県内外のブラス仲間の演奏に心を動かされ、3か月後には練習を再開。翌年5月には定期演奏会開催にこぎ着けた。旧大松小音楽室を借りて練習を続け、16年の県コンクールでは11年ぶりに金賞を受賞。同年の定期演奏会は通算50回目を数えた。
合奏練習前にはパートごとに音出し。個々の演奏も入念にチェック
現団員の中には過去の東北大会出場経験者も。ホルンの多田由佳さん(68)は4回の東北大会を経験、高橋一見さん(64)は入団した86年に出場している。2人とも今回の決定を知った時は「まさか。信じられない」と目を疑ったそうだが、再びの大舞台に喜びもひとしお。「みんな張り合いができ、目標に向かって頑張っている。自分も無事に吹き切れれば」と多田さん。高橋さんも「いつも通り平常心で。気持ち良く演奏できれば」と気負いはない。
東北大会出場を報告した釜石市民吹奏楽団役員5人(中央)=22日
22日には、山内団長ら役員5人が野田武則市長に東北大会出場を報告した。山内団長は「オールアマチュアで代表になれたのは大きい。釜石は元々、新日鉄釜石、釜石南高の全国、東北大会出場を含め、吹奏楽の土壌があった地域。今回も反響をいただいている」と注目の高さを実感。目標の一つだった東北大会で、「これまでの積み重ねを存分に発揮し、震災後の支援への恩返しをしたい」という団員の強い思いを代弁した。
県吹奏楽コンクールで獲得した金賞トロフィーや賞状を披露
野田市長は「震災からよくぞここまで復活し、素晴らしい成績を収められた。これを糧にさらに上位を目指してほしい。皆さんの頑張りは他の文化活動団体の励みになる」とエールを送った。