見ごろを迎えた「陽子の庭」で咲き誇るバラ

美しく色づいたバラ見ごろ 釜石・甲子町「陽子の庭」 菊池さん夫妻が公開

見ごろを迎えた「陽子の庭」で咲き誇るバラ

見ごろを迎えた「陽子の庭」で咲き誇るバラ

 
 釜石市甲子町の菊池秀明さん(74)、陽子さん(75)夫妻の自宅庭園で、赤や黄、ピンクなど美しく色づいたバラが見ごろを迎えている。「陽子の庭」と名付け、毎年一般公開。今年もあす6月1日から10日まで開放する。
 
 公開は7年目。約2600平方メートルの敷地には、約150種のバラに加え、サツキやアヤメ、シャリンバイなど季節の草花が植えられている。こつこつと作り続けているバラ園では、濃いローズ色の大輪種「聖火」、咲き始めと開花後の花色が大きく変わる品種の代表格と言われる「チャールストン」などが一斉に咲き始め、香りや色など種類の違いを楽しむことができる。
 
色も大きさも異なるさまざまなバラを楽しむことができる

色も大きさも異なるさまざまなバラを楽しむことができる

 
バラ、アヤメ、サツキ…花々の競演も見所の一つ

バラ、アヤメ、サツキ…花々の競演も見所の一つ

 
 ツツジなどで彩った日本庭園、華やかに咲き誇るバラと可憐に咲く野の花が混植されたイングリッシュガーデンなど雰囲気の異なる庭を巡る楽しみもある。庭を一望できる「見晴らし台」がお目見え。周囲に広がる自然風景や街の様子など高台からの眺めは解放感が抜群だ。
 
枝を長く伸ばすモッコウバラも見ごろを迎える

枝を長く伸ばすモッコウバラも見ごろを迎える

 
高台にある見晴らし台から街の様子を眺めることができる

高台にある見晴らし台から街の様子を眺めることができる

  
 心安らぐ庭を目指す陽子さんは「バラは次々と新種が出ていて、すたれがない。花との出会いを思い思いに楽しんでもらえたら」と願う。庭の維持は年々大変さを増すが、夫婦で力を合わせて整備。訪れた人たちから「きれいだね」「良かったよ」と声を掛けられると、「疲れが解消。頑張ろうという気になる。皆さんのおかげで続けられる」と目を細めた。
 
こつこつと手作りした庭を開放している菊池夫妻

こつこつと手作りした庭を開放している菊池夫妻

 
 見学時間は午前9時~午後4時。入場無料。4日には水晶でできた楽器クリスタルボウルの演奏会、5日はmia&リアスバンド(シャンソン、ジャズ)によるミニコンサートを予定する。いずれも午前11時から。問い合わせは菊池さん(電話0193・27・2141)へ。

釜石商工高で行われた釜石コンパス。生徒たちは講師の話に熱心に耳を傾けた

夢への進路 社会人に学ぶ 釜石商工高でキャリア教育授業・釜石コンパス

釜石商工高で行われた釜石コンパス。生徒たちは講師の話に熱心に耳を傾けた

釜石商工高で行われた釜石コンパス。生徒たちは講師の話に熱心に耳を傾けた

  
 釜石商工高(伊東道夫校長、生徒201人)で24日、社会人から多様な生き方や価値観を学ぶキャリア教育授業「Kamaishiコンパス」が行われた。3年生87人が、先輩から働く喜びや心構えなどを聞き取り。対話を通じて将来・進路を考えた。
  
 製造業や水産加工業、福祉施設、薬局など市内7事業所の社会人8人による対面型講座のほか、保育士2人とつないだオンライン講座を用意。生徒は関心のある講座を1つ選んで、講師を囲み、進路や将来を決めた転機、現在の仕事のやりがいなどを聞いた。
 
講師には釜石商工高卒業生も。後輩たちに進路選択のヒントを伝えた

講師には釜石商工高卒業生も。後輩たちに進路選択のヒントを伝えた

 
 同校では3年生の8割が就職を希望。地元で働くことを望む生徒も多いというが、職種を決めることができずにいたり、進路に迷いを持つ生徒も少なくない。同校OGで日鉄テックスエンジ東北支店に入社4年目の八幡千夏さん(21)も進路選択で困った経験があり、気になる企業や自分に合う仕事の探し方を助言。自ら進んで調べたり、周囲の大人の意見に耳を傾ける姿勢が必要だと指摘した。高校時代には学んでいない電気設計という業務に携わるが、▽地域に貢献できる▽新しいことに挑戦できる―と前向きに捉えることも大事と強調。高校時代にやっておくこととして、「やっぱり勉強はした方がいい。特に数学。やったことはいつか役立つ場面がくる。必ず生きてくるので、いろんな知識を増やして」と伝えた。
 
 総合情報科の阿部紅愛(くれあ)さんは、「やりたいことはあるが自分に合っているか」と迷いを抱える。希望する職種について「大変だよ」と聞いたことが、足踏みさせているという。講師の「自分で人生を楽しくすることが大事」とのアドバイスが印象に残ったといい、「とりあえず、やってみようと思う。県外に就職して、いろんなものにも触れてみたい」と刺激を受けた。
 
社会人との個別対話は生徒の不安や悩みを和らげる機会に

社会人との個別対話は生徒の不安や悩みを和らげる機会に

 
 講師と1対1で向き合う時間も設けられ、生徒たちは積極的に質問を投げかけた。地元で高齢者と関わる仕事をすると決意を固めたのは機械科の鈴木瑛斗君。「人と話すのが好きで、楽しく働ける仕事だと思う。今のうちからコミュニケーション力を磨き、準備していく」と意欲を高める。趣味の釣りや幼少期から続けるラグビーを楽しめる環境に愛着を持ち、「家を守り、地域を担える人に」と未来を描く。
  
 同授業は釜石市と、市内の高校や民間団体で構成する実行委員会が連携して取り組む高校生のキャリア構築支援事業。生き方やキャリアの多様性を知り、視野を広げてもらおうと、2015年度に始まり8年目。本年度は同校と釜石高で計7回実施することにしている。

根浜シーサイドで行われたコアラキャンプで食を満喫する子どもたち

釜石と豪州 五輪後もつながり継続 コアラキャンプ〜オンラインで食・文化交流

k-camp01

根浜シーサイドで行われたコアラキャンプで食を満喫する子どもたち

 
 東京五輪・パラリンピックでオーストラリアを相手国に復興「ありがとう」ホストタウンに登録され、交流活動を続けてきた釜石市。両地域をオンラインで結び、音楽・食・スポーツなどで交友を深めるイベント「コアラキャンプ」(同プロジェクト主催)が21、22日に開かれた。新型コロナウイルス感染拡大防止のため、参加は関係者らに制限したが、イベントの模様はネット配信され、一般市民らも自宅などで楽しんだ。
 
 鵜住居町の根浜シーサイドキャンプ場と、シドニー、パース、ブリスベンなどオーストラリア各地の会場をオンラインでつないだ交流プログラムを実施。オーストラリア大使館(東京都)、市国際交流課の職員らが運営に協力した。
 
k-camp02

野田市長(左から2人目)やオーストラリア大使館関係者らは両地域の友好継続に期待を寄せる

 
 釜石会場には約50人が集った。イベントは21日午後6時にスタートし、同大使館の徳仁美さんが「皆さんは大切な友人。両国が深めてきた交流を継続できてうれしい」とあいさつ。通訳のマット・ダグラスさんは「キャンプを楽しむポイントは食。自然豊かな環境で、オージー・ビーフとワインを味わおう」と盛り上げた。
 
 野田武則釜石市長は青少年を中心としたスポーツ、文化交流、観光面での連携など友好関係の発展に期待。「コロナが収まったら、ぜひ釜石に」と呼び掛け、相互に訪問できる日が来ることを願った。
 
k-camp03

オーストラリアと三陸産の食材が提供されたバーベキュー

 
k-camp04

「外で食べるの、いいよね」。おいしい牛肉や海産物が食欲をそそる

 
 パース・スワンリバーと釜石を結んだバーベキューでは、オージー・ビーフの愛称で日本の食卓にも並ぶオーストラリア産牛肉、ラム肉などが提供された。三陸産のホタテやイカ焼き、刺し身などもお目見え。両地域の時差は1時間程度で、参加者は互いの様子を紹介し合い、雄大な景色を感じながら味わった。
 
 ジャズミュージシャンらによるオンラインライブがあり、イベントのために作った楽曲などを紹介。釜石会場では音楽家の小島ケイタニーラブさんが、NHKみんなのうた「毛布の日」、「荒城の月」などを歌った。パースにある天文台とつないだ星空交流も。北半球、南半球の星座の違いや星にまつわる物語を交換した。
 
k-camp05

自然の中でおいしいもの味わいながら音楽も楽しんだ

 
 佐々木篠さん(小佐野小5年)は「外でご飯が食べられて楽しい。海も近くていい。いつか友達とキャンプしたり、花火がしたい」とにっこり。語学に関心があり、学校で英語の授業を楽しんでいるといい、「覚えた言葉で海外の人と交流してみたい」と目を輝かせた。
 
 22日は、オーストラリア各地の家庭を結んだ「朝ごはん(Brekkie)」紹介やシドニー在住のヨガ講師とつないで朝ヨガを体験。釜石シーウェイブス(SW)RFC選手らによるラグビー体験もあった。
 
k-camp06 

コロナ禍で参加者を限定して開催。交流を継続させる方法を模索する

 
k-camp07

参加者はモニターに映された様子を見ながら交流を楽しんだ

  
 釜石市が同国を相手国に選んだのは、東日本大震災当時に釜石SWに所属していた同国出身のスコット・ファーディー選手が救援活動に尽力したり、震災後の海外派遣事業で中学生を受け入れるなど心を寄せていることに謝意を表すため。2017年11月のホストタウン登録以来、同国と青少年を中心とした交流活動を行ってきた。ここ数年はコロナの流行が続き、オンライン交流を企画。中学生らが動画メッセージをやり取りしたり、小学生はパラ選手から東京大会の様子などを聞き取ったりした。
 
 同キャンプは20年12月に続き、2回目の開催。市では「世界とつながるKAMAISHI―を目指し、継続的に釜石とオーストラリアの交流を深めるよう事業を展開していく」としている。

セラピー犬との触れ合いイベントで記念撮影を楽しむ子ども=TETTO

人間と動物の共生社会実現へ セラピー犬と触れ合い&ペット防災学ぶ

セラピー犬との触れ合いイベントで記念撮影を楽しむ子ども=TETTO

セラピー犬との触れ合いイベントで記念撮影を楽しむ子ども=TETTO

 
 セラピー犬との触れ合いを通して、犬の適正飼養やペット防災について学ぶ催しが22日、釜石市大町の市民ホールTETTOで開かれた。釜石市を拠点に活動する動物愛護団体「人と動物の絆momo太郎」(鈴子真佐美代表)が主催。認定NPO法人日本レスキュー協会(兵庫県)のセラピー犬が訪れ、来場者と交流。災害時、ペットとの避難を円滑に行うための日ごろの備えを教える講話も行われた。
 
 病院や福祉施設、災害被災地などで人の心と体のケアを補助するセラピー犬。この日は同協会で特別な訓練を受け各地で活動実績のある、にこり(ゴールデンドゥードル11歳、雌)、はっぴー(ラブラドール・レトリーバー6歳、雌)、りょうま(雑種8歳、雄)の3頭が来釜。来場者はしつけの行き届いた犬たちに感心しながら、体をなでたり記念撮影を楽しんだりし、心身ともに癒やされた。
 
モフモフの「にこり」に大人も子どももメロメロ

モフモフの「にこり」に大人も子どももメロメロ

 
“お手”も上手に。愛くるしい「はっぴー」の姿にみんな笑顔!

“お手”も上手に。愛くるしい「はっぴー」の姿にみんな笑顔!

 
赤ちゃんに優しいまなざしを向ける「りょうま」

赤ちゃんに優しいまなざしを向ける「りょうま」

 
 同協会員によるペット防災の講話では、災害時に飼い主とペットが安全安心に避難するための備えについて説明があった。ポイントは4つ。▽所有明示(鑑札、狂犬病予防注射済票、マイクロチップなどの装着)▽健康管理(ワクチン接種、寄生虫や感染症予防、シャンプー・ブラッシングケア)▽しつけとコミュニケーション▽持ち出し品の用意・備蓄。
 
 環境省のガイドラインでは、災害時に置き去りにされたペットの徘徊や野生化を防ぐため、飼い主との「同行避難」が推奨される。避難先ではケージでの飼養が必要となる場合が多く、普段から慣れさせておくことが重要。「ケージ=自分だけのスペース」と認識しリラックスできると、慣れない場所でも大きなストレスを感じずに過ごせるようになるという。また、日常的にさまざまな環境、人、音などに慣れておくことで、災害による急な環境変化にも順応できるようになる。
 
長い時間、ケージに入っていても落ち着きをみせるりょうま。普段から安心できる場所として慣れさせてあげることが大事

長い時間、ケージに入っていても落ち着きをみせるりょうま。普段から安心できる場所として慣れさせてあげることが大事

 
災害に備え用意しておくと安心なペット用品を展示。ペット用非常持ち出し袋のプレゼントも

災害に備え用意しておくと安心なペット用品を展示。ペット用非常持ち出し袋のプレゼントも

 
 ペット用支援物資は届くまでに時間がかかる場合があるため、最低5日分の食料と水、薬、ペットシーツなど必要な物をまとめて持ち出せるよう準備しておくことも必要。会場では、非常持ち出し品の展示も行われ、スタッフが来場者にアドバイスを行った。
 
 ペット同伴可能な避難所は全国で増えつつあるが、現状では屋内に持ち込めないケースが多い。飼い主は事前に、地域の避難所の受け入れ可否の確認、一時的な預け先の確保をしておくと安心。
 
 東日本大震災時、愛犬との避難を経験した平田の60代女性は避難所には入れず、親戚の家で世話になった。「災害があるたびに飼い主が苦労している姿を目にする。人と一緒に避難できる場所が少しでも増えるといい」と願う。当時は非常時の持ち出し品も準備しておらず、他の飼い主からペットフードを分けてもらった。「ペットの命を守るのは飼い主の責任。これを機に再度見直したい」と気を引き締めた。
 
 以前、犬を飼っていた上中島町の70代女性は、多頭飼育や虐待などペットを取り巻く問題にも心を痛め、「小さいころから絵本や動物との触れ合いを通して命の尊さを教えることで、大人になっても家族の一員として大切にできる気持ちが育つのでは。今回のような催しがもっとあれば」と期待を寄せる。
 
子どもたちはセラピー犬との触れ合いに大喜び!

子どもたちはセラピー犬との触れ合いに大喜び!

 
はっぴーとのジャンケン対決も楽しんだ来場者

はっぴーとのジャンケン対決も楽しんだ来場者

 
 主催団体の鈴子代表は「海外では公共施設などに犬と一緒に入れたり、人間と動物の共生への理解が進む。日本ではまだまだだが、今回、この会場で動物イベントができたことは大きな一歩」と喜ぶ。ペット同伴が社会的に認められるようになるには、飼い主のきちんとしたしつけが絶対条件。「いろいろな場所に行っても無駄吠えをしない、犬同士でけんかをしない―など、犬の社会化ができていないと実現は不可能。こういうイベントなどで飼い主が日ごろのトレーニングの重要性に気付き、積極的に取り組むきっかけにもなれば」と話した。

釜石市民ホールギャラリーで開催中の「3つの国の小児病棟で出会った笑顔」展

みんな同じ笑顔だった…ウクライナ、ロシアの小児病棟の子どもたち 釜石で写真展

釜石市民ホールギャラリーで開催中の「3つの国の小児病棟で出会った笑顔」展

釜石市民ホールギャラリーで開催中の「3つの国の小児病棟で出会った笑顔」展

 
 ウクライナ、ロシア、ベラルーシ3国の小児病棟などで撮られた笑顔の子どもたちの写真を紹介する「3つの国の小児病棟で出会った笑顔」展が、釜石市大町の市民ホールTETTOギャラリーで開かれている。NPO法人日本ホスピタル・クラウン協会(名古屋市、大棟耕介理事長)が主催。観覧無料、29日まで。
 
 ホスピタルクラウンとは、小児病棟で入院中の子どもたちにクラウン(道化師)がパフォーマンスを行う活動で、病気と闘う子どもたちに笑顔を届けている。同協会には約120人のクラウンが所属。東日本大震災や熊本地震などの災害被災地でも活動し、地域住民を元気づけた。
 
東日本大震災後に大船渡市で行われた活動の様子。後列左から2人目が大棟理事長=NPO法人日本ホスピタル・クラウン協会提供

東日本大震災後に大船渡市で行われた活動の様子。後列左から2人目が大棟理事長=NPO法人日本ホスピタル・クラウン協会提供

 
 大棟理事長は2005年から4年間ロシアに通い、小児病院や障害者施設で道化師の姿でパフォーマンスを披露。08年から6年間はウクライナを訪れ、12年と13年にはベラルーシを訪問した。そんな思い入れのある地域で今起こる現実、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻に心を痛め、企画したのが今回の展示。「現在のウクライナは悲惨な戦争の状況を伝えるものばかり。だが、少し前まで、3つの国の病院の中には同じ笑顔があった。その事実を知ってほしい」とメッセージを寄せる。
 
 会場には、大棟理事長らのパフォーマンスを楽しむ3カ国の子どもたちを写した50点が並ぶ。穏やかな笑み、はにかみ、喜び―さまざまな表情を見ることができる。どの国で撮られたのか表記はなく、あえて「まぜこぜ」に展示しているのが特徴。笑顔に国境はない―。そんな思いを込めている。
 
3カ国の小児病棟で撮影された子どもたちの笑顔が並ぶ

3カ国の小児病棟で撮影された子どもたちの笑顔が並ぶ

 
来場者に展示写真やクラウン活動を説明する梅沢さん(右)

来場者に展示写真やクラウン活動を説明する梅沢さん(右)

 
 釜石での展示を担当するのは、クラウンネーム「だぁちゃん」として活動する甲子町の梅沢義明さん(51)。西東京市出身で、震災を機に15年に大槌町復興推進隊の一員として移住した。17年夏ごろからクラウンとして本格始動。県内を中心に子どもたちと触れ合ってきた。今回、釜石市がウクライナ支援を表明していることから、同協会に写真展の開催を申し入れた。
 
風船の剣を握り笑顔を見せる子どもたち=NPO法人日本ホスピタル・クラウン協会提供

風船の剣を握り笑顔を見せる子どもたち=NPO法人日本ホスピタル・クラウン協会提供

 
 「かつて風船の剣を持っていた子どもたちが、今、本物の銃を手にして戦っているかもしれない」。展示されている写真が撮影されてから約10年が経過。梅沢さんは「…切ない。今のウクライナでは病院が機能していない。何気ない写真だが、みんな笑うことができていた。『同じ笑顔』ということに注目してもらい、何かを感じてほしい。平和、笑顔を取り戻してほしい」と願う。
 
 同協会ではウクライナへの支援金や応援メッセージを募っていて、展示会場にチラシなどを用意。集まった支援金はウクライナ・ジトーミル州の小児病院に届ける予定という。
  
 この写真展は、6月1~17日まで、大槌町文化交流センター「おしゃっち」でも開かれる。展示や支援金への協力に関する問い合わせは梅沢さん(電話070・2645・1624)へ。

震災津波を乗り越え、毎年花を咲かせる根浜のハマナス=21日撮影

根浜海岸を彩る紅紫の大輪 震災津波に耐えた「ハマナス」今年も開花!

震災津波を乗り越え、毎年花を咲かせる根浜のハマナス=21日撮影

震災津波を乗り越え、毎年花を咲かせる根浜のハマナス=21日撮影

 
 釜石市鵜住居町、根浜海岸の松林の一角に自生する「ハマナス」が今年も咲き始めた。2011年の東日本大震災で津波に襲われながらも奇跡的に生き残った地域の宝。紫がかった濃いピンク色の花が海辺風景に彩りを添える。花は6月上旬ごろまで楽しめそうだ。
 
 震災前、ハマナスやハマボウフウなどの海浜植物が自生し、美しい景観を広げていた同海岸。津波で約1・3キロの砂浜の半分以上が流失し、多くの植物が姿を消したが、防潮堤内側の松林では生き残ったハマナスが、毎年花を咲かせている。今年も1週間ほど前から咲き始め、通行するドライバーや防潮堤を散歩する人たちの目を楽しませている。
 
日当たりのいい場所で元気に育つハマナス。周辺には震災後に植樹されたマツの苗木も育つ

日当たりのいい場所で元気に育つハマナス。周辺には震災後に植樹されたマツの苗木も育つ

 
ハマナスはバラ科の落葉低木。香りの良い花は香水の原料にも

ハマナスはバラ科の落葉低木。香りの良い花は香水の原料にも

 
ハマナス
 
 地元の旅館「宝来館」の女将(おかみ)岩崎昭子さんは、震災から約2カ月後に津波で倒されながらも芽吹き始めたハマナスを発見。必死に生きようとする姿に被災した自身も大きな力をもらった。当初、確認できたのは5~6株程度だったが、がれきの撤去が進み、周辺の緑が増えてきた2年目以降、群生が分かるようになってきたという。
 
 「根浜の原風景を取り戻したい」と願う地元住民らの思いを受け、市内外の支援者も再生活動に協力。北海道の支援団体などが根浜のハマナスから取った種を地元で育成し、苗を根浜に戻す取り組みを進め、群生範囲は徐々に拡大してきた。
 
青い海、白い砂浜、新緑に映えるハマナスの花

青い海、白い砂浜、新緑に映えるハマナスの花

 
赤く膨らんだつぼみもこれから次々に咲き出す

赤く膨らんだつぼみもこれから次々に咲き出す 

 
 岩崎さんら地元有志は昨春、根浜ハマナスプロジェクト実行委を立ち上げ、市民と共に進める再生活動を本格化。2年目の今年もすでに種まきや苗木の植樹が行われ、多くの人たちがハマナスへの関心を高めている。
 
4月16日に行われた種まきイベントで笑顔を輝かせる岩崎昭子さん(前列左から2人目)

4月16日に行われた種まきイベントで笑顔を輝かせる岩崎昭子さん(前列左から2人目)

 
 プロジェクトの代表を務める岩崎さんは、18年から地元由来の海浜植物再生に学校ぐるみで取り組む釜石東中の生徒らにも元気をもらう。「きれいな鵜住居を未来につないでいきたいと願う子どもたちに私たちも励まされる。みんなで思いを共有しながら、また一歩一歩、魅力的な古里を作り上げていければ」と期待を込める。

感染症、熱中症予防のため、適宜マスクのつけ外しを行うなど対策を講じ実施した栗林小の運動会

コロナ禍吹き飛ばす躍動 「思いをひとつに」栗林小運動会 保護者も全面協力

熱中症予防のため、適宜マスクのつけ外しを行うなど対策を講じ実施した栗林小の運動会<

感染症、熱中症予防のため、適宜マスクのつけ外しを行うなど対策を講じ実施した栗林小の運動会

 
 釜石市内の小学校は21日、運動会のピークを迎えた。新型コロナウイルス禍でさまざまな制限がある中、各校とも感染防止対策を徹底し開催。栗林小(八木澤江利子校長、児童33人)では練習から本番まで各種対策に力を入れ、児童らの安全確保に努めた。事前準備、当日の進行には保護者が全面協力。児童らは運動会ができる喜びを感じながら、思い切り躍動した。
 
 同校の今年の運動会スローガンは「全力・団結 思いをひとつに」。開会式で児童会長の小笠原虹南さん(6年)は「全校児童33人が自分の目標を持ち、競技に取り組みます。一人一人の頑張りに注目してほしい」とあいさつ。運動会実現に協力し、支えてくれる人たちへの感謝の気持ちを表し、「笑顔で終われるような最高の運動会に」と呼び掛けた。
 
 プログラムは全13種目。徒競走や玉入れのほか、趣向を凝らしたさまざまな競技で赤、白の組団が得点を競い合った。同校伝統の「栗林旋風」は、長い棒を持った親子が2カ所のコーンを回りながら走り、次の親子にバトンタッチするリレー競技。4~6年生が父母らと息を合わせ、スピード感あふれるレースを展開した。表現種目、組団応援パフォーマンス対決などもあり、これまでの練習の成果を存分に発揮した。
 
4~6年生の親子競技「栗林旋風」。棒を持つ手には手袋をして感染対策

4~6年生の親子競技「栗林旋風」。棒を持つ手には手袋をして感染対策

 
1~3年生の表現種目。ダンスや縄跳びを交え栗小の元気を発信!

1~3年生の表現種目。ダンスや縄跳びを交え栗小の元気を発信!

 
勝利への気合い十分!赤組の応援パフォーマンス

勝利への気合い十分!赤組の応援パフォーマンス

 
 同校では大型連休明けから運動会の練習を本格化。密な接触を避け、マスクを外した時には声を出さない、みんなで共有する道具は軍手をはめて使う、活動の前後には手洗い、うがいを徹底する―などの感染対策を講じ、各家庭では毎日の健康観察に気を配った。
 
 そして迎えた当日―。児童らは朝から心も体も弾み、楽しみでしょうがないといった様子だったという。「コロナ禍で日々の生活も制限が多い。感染対策をしながらではあるが、のびのびと体を動かせる場ができたことが本当にうれしい」と八木澤校長。運動会は子どもたちの成長に欠かせない行事。仲間と協力し種目をやり遂げることで絆が深まり、リーダーシップやフォロアーシップも育つ。八木澤校長は会の成果を糧に「互いの良さを認め合って、全体として高め合っていければ」と今後の児童らに期待した。
 
栗林小運動会
 

運動会入場門を手作り 栗林小の学校活動に保護者、地域の力

 
保護者らが手作りした入場門。同校PTA伝統の取り組み

保護者らが手作りした入場門。同校PTA伝統の取り組み

 
 栗林小では運動会の入場門を毎年、児童の保護者が手作りしている。父親らが中心となり、山から丸太を切り出して皮むき。地元の建設業者に設計図面を引いてもらい、精巧に作り上げる。
 
 組団陣地の間に建てられた門は、全体がなだらかな半円を描くアーチ形。上部の文字や絵などは児童が担当し、約3カ月かけて完成させた。当日は、見事な出来栄えの門が各種目の入退場に花を添えた。
 
斜めから見ると技術の高さに驚かされる入場門。前日夕方に、父親たちが力を合わせて設置した

斜めから見ると技術の高さに驚かされる入場門。前日夕方に、父親たちが力を合わせて設置した

 
 保護者らは運動会開催中も運営に協力。道具出しやグラウンドの水まき、決勝係などを担い、スムーズな進行を支えた。PTA会長の小笠原亮さん(36)は「協力体制が自然とできているのが一番すごいこと。これは脈々とつながれている栗橋地域の力。これからも子どもたちのベストを考え、支えていければ」と意を強くした。
 
親子競技で思い出づくり。笑顔満開!5・6年生の「にっこりカメラ」

親子競技で思い出づくり。笑顔満開!5・6年生の「にっこりカメラ」

 
1・2年生の「くじびき!じゃんけん!おやこでゴー!」

1・2年生の「くじびき!じゃんけん!おやこでゴー!」

 
 同校の運動会では例年、各地区で取り組む郷土芸能の披露も行われるが、コロナ禍を考慮し、ここ3年は休止中。市内の感染状況を見ながらの判断となるが、今年は11月に改めて発表会を行う予定。

100歳の佐藤敏子さん(前列中)、長寿を喜ぶ親族ら

すこぶる元気、佐藤敏子さん(釜石・野田町)100歳 「好きなことをやってきた」

100歳の佐藤敏子さん(前列中)、長寿を喜ぶ親族ら

100歳の佐藤敏子さん(前列中)、長寿を喜ぶ親族ら

 
 釜石市野田町の佐藤敏子さんが20日、100歳の誕生日を迎え、市から特別敬老祝い金5万円と記念品の羽毛肌掛け布団、野田武則市長が筆をとった「寿」の額入り祝い状が贈られた。自宅では実妹や親族らが集まって、「ますます元気に」と佐藤さんの長寿を祝った。
 
 市保健福祉部の小笠原勝弘部長が佐藤さん宅を訪問。祝い金などを受け取った佐藤さんは「わざわざ来てもらって、申し訳ない気持ち。(親族や地域住民ら)みんなに世話になり、いたわられて、ここまできた。この年で祝ってもらうなんて、本当は恥ずかしい」とはにかんだ。
 
小笠原部長から祝い金などを受け取った佐藤さん(右)

小笠原部長から祝い金などを受け取った佐藤さん(右)

 
 佐藤さんは1922(大正11)年に東京で生まれ、2歳頃に父親の仕事の関係で釜石に移り住んだ。20歳で小学校教員となり、釜石や大槌の学校で60歳まで働いた。教員生活を始めた頃は太平洋戦争中で、初任地中妻小に勤務していた45(昭和20)年4月、児童が遠野市に集団疎開することになり引率。同年9月に戻ったため、米英連合軍による2度の艦砲射撃を実際には経験していないが、変わり果てたまちの様子に心を痛めたという。
 
 退職後はボランティア活動に励み、障害者施設などで洗濯物をたたんだり、布巾づくりに取り組んだ。ものづくりが好きで木目込み人形、ステンドグラス、墨絵など習い事に熱中。通信教育で習字や色鉛筆画などにも挑戦した。新型コロナウイルス禍で外出の機会は減っているが、現在もコーラスに行ったりと、「好きなことをやる」という充実した日々を過ごす。
 
祝いに訪れた人たちを見送ろうと外に出る佐藤さん

祝いに訪れた人たちを見送ろうと外に出る佐藤さん

 
 旅行も好きな佐藤さん。沖縄以外の日本各地を巡ったという。93歳の時には、教え子たちに招待され東京で行われた同窓会に参加。年賀状のやり取りも続いていて、「いい生徒、仲間に恵まれ、素晴らしい教員生活を送ることができた。本当にいい思い出」と穏やかな笑みを浮かべた。
 
 佐藤さんは「コロナさえなければ、みんなで旅行したいね」と、すこぶる元気。自力で歩き、家事のほとんどを自分でこなす。妹の井上市子さん(83)、中島澄子さん(81)=ともに小川町=は買い物などをサポートしていて、「元気で頭のいい姉。何でも自分でやるのがすごい。好きなことを好きなように楽しんでいるのがいいんだろうね。まだまだ頑張って」と寄り添う。
 
 釜石市の高齢化率(65歳以上)は4月末現在で40・3%。100歳以上は佐藤さんを含め29人(男性1人、女性28人)おり、最高齢は106歳の女性。

「釜石グローバルラウンジ」で空手に挑戦する参加者

世界とつながるKAMAISHI実現へ 和文化、スポーツ体験で国際交流―グローバルラウンジ

「釜石グローバルラウンジ」で空手に挑戦する参加者

「釜石グローバルラウンジ」で空手に挑戦する参加者

 
 日本文化やスポーツなど体験活動を通して外国人と交流しようと、釜石市国際交流課が月1回開催している「釜石グローバルラウンジ」。本年度2回目となる活動が15日、大町の青葉ビルであった。今回のテーマは「空手」。参加した約20人の市民や外国人のほとんどが空手は初体験で、国籍の垣根を越えて「楽しさ」を分かち合った。
  
 同課の佐々木義友課長(51)が空手経験者で、講師を務めた。参加者はしっかりと準備体操をして体をほぐした後、空手の基本となる「突き」「蹴り」などの動作を体験。拳を何度も突き出し、10回目に「エイ!」と気合を入れた。予想以上の全身運動に「息が切れる」「難しい」と声が漏れた。空手は礼に始まり礼に終わる―。武道を体得する上で大切になる「礼儀を重んじる」という心構えも学んだ。
  
「エイ!」と拳を突き出す参加者。下半身から手に力を伝えるのがコツ

「エイ!」と拳を突き出す参加者。下半身から手に力を伝えるのがコツ

 
「難しい。けど、楽しい」。熱心に蹴りの動作を繰り返した

「難しい。けど、楽しい」。熱心に蹴りの動作を繰り返した

 
 甲子町のセラ・クライナーさん(26)は米国出身で、高校のALT(外国語指導助手)として昨年11月に釜石に来た。交流を求めているが、見知らぬ土地で不安もある中、グローバルラウンジは「安全に交流ができる場所で、参加しやすい」という。空手に触れるのは初めてで、「筋肉を使って動くのが楽しかった。もっとやりたい」と明るい表情を見せた。そんなクライナーさんと意気投合していたのは、中学校の英語教員で鵜住居町の黄川田真紀さん(25)。同級生だと分かると、どんどん会話を広げていた。
 
 参加者同士が名前を聞き合う時間があり、只越町の櫻庭えまちゃん(6)は緊張しながらも、積極的に交流。「こわかったけど、やさしかった」とはにかんだ。母理恵さん(45)よると、通っているこども園で英会話を学んでいるというが、外国人と直接触れ合う機会がなく、慣れる場になればと参加。「気が強いようで、引っ込み思案なところもある。物おじせず、世界に視野を向けられるようになってほしい」と見守った。
 
自己紹介では「カタコト」でも名前を伝えようと気持ちを込めた

自己紹介では「カタコト」でも名前を伝えようと気持ちを込めた

 
 同課によると、現在釜石で暮らす外国人は約200人。6割はベトナム人で、水産加工に携わる技能実習生が多い。新型コロナウイルス禍で入国が限定されているものの、今後は徐々に緩和されるとの見方もある。「(外国人が)これだけ住んでいるのだから、気軽に国際交流をしてほしい」と同課主任の東洋平さん(43)。だが、「言葉の壁」から外国人同士、または出身国同士で固まる傾向があるという。 
  
 多言語を耳にするきっかけに―と始まったのが、グローバルラウンジ。昨年度までは在住外国人、アイルランドと米国出身の市国際交流員のほか、海外生活を経験した市民を講師に、話を聞く形式で行ってきたが、思うような交流は進まなかった。そこで、本年度は「一緒に体を動かし、経験できるものに」と方向転換。4月には釜石鵜住居復興スタジアムでラグビー体験を楽しんだ。
 
体験活動を終え、笑顔を見せる参加者。気軽な国際交流の広がりが期待される

体験活動を終え、笑顔を見せる参加者。気軽な国際交流の広がりが期待される

  
 グローバルラウンジは毎月第2日曜日に実施。次回は6月12日で、内容は未定。市ホームページや同ラウンジのフェイスブックで情報を発信していく。同課では「世界とつながるKAMAISHIの実現、多文化共生社会の推進につながる取り組み。気軽に参加を」と呼び掛ける。
 
 

「オリジナル安否札」を手渡しながら防災を呼び掛けた「夢団」の活動

届け!「防災」の願い 釜高生 うのスタ震災伝承活動で「オリジナル安否札」配布

「オリジナル安否札」を手渡しながら防災を呼び掛けた「夢団」の活動

「オリジナル安否札」を手渡しながら防災を呼び掛けた「夢団」の活動

 
 釜石高の生徒有志で結成する防災・震災伝承グループ「夢団~未来へつなげるONE TEAM~」(30人)は8日、釜石市の釜石鵜住居復興スタジアムで防災啓発活動を行った。ジャパンラグビーリーグワン2部、釜石シーウェイブス(SW)RFCのホーム戦に合わせて実施。観戦客に東日本大震災の経験を伝え、新たに作成した「オリジナル安否札」の配布などで災害への備えの大切さを呼び掛けた。
 
 スタジアムでの試合開催時に伝承活動を続けている夢団。今季4回目の活動となったこの日は、12人が参加した。施設内に建つ震災の教訓を伝える祈念碑の前では、矢内舞さん、戸澤琉羽さん(ともに3年)が「語り部」活動。鵜住居で起こった当時の出来事などを伝え、命を守る行動、日ごろの備えの重要性を訴えた。
 
スタジアム内の祈念碑の前で行った震災伝承の「語り部」活動

スタジアム内の祈念碑の前で行った震災伝承の「語り部」活動

 
震災時、スタジアムの場所にあった鵜住居小、釜石東中の児童生徒の避難行動などを説明する戸澤琉羽さん。背後には高台移転した現校舎が見える

震災時、スタジアムの場所にあった鵜住居小、釜石東中の児童生徒の避難行動などを説明する戸澤琉羽さん。背後には高台移転した現校舎が見える

 
 メンバーの発案で作成したオリジナルデザインの安否札は、この日が初お披露目。災害避難時に玄関に掲示し、すでに避難したことを知らせる安否札は、家族や地域の犠牲を減らすことにつながる。B5判サイズで、表面には避難場所、裏面には連絡先や伝言を書き込める欄を設け、活用の仕方も記載した。メンバーは観戦客らに直接手渡し、防災意識を高めるのに一役買った。
 
安否札の使い方を説明する夢団メンバー(右)

安否札の使い方を説明する夢団メンバー(右)

 
 安否札を配った佐々木結咲さん(2年)は「初めて知った人もいるよう。今日は県外から来ている人も多く、震災の経験を伝えるにはいい機会。教訓を広め、防災を身近にしてもらい、これからの被害を少しでも小さくできたらいい」と願った。
 
 「夢団」は2019年12月に結成。同スタジアムが会場となったラグビーワールドカップ(W杯)開催時に、震災の教訓と復興支援への感謝を伝えようと活動した生徒らが、継続的な活動をしたいと団体を立ち上げた。生徒のアイデアで作成し、W杯来場者に配った「津波伝承うちわ」は団に受け継がれ、今も伝承活動で生かされる。これまでに6千枚を配り切り、今回の安否札作成に合わせて1千枚を増刷。2種のツールでさらなる防災力向上を促す。
 
この日は増刷した「津波伝承うちわ」も配られた

この日は増刷した「津波伝承うちわ」も配られた

 
 語り部を担当した矢内さんは震災時6歳。唐丹町の自宅が津波で全壊し、仮設住宅で7年間を過ごした。自身の経験も盛り込み、感じたことを伝える中で口にしたのは、多くの支援に対する感謝と助け合いの精神。「災害時は近隣はもちろん、見ず知らずの人でも助け合いや声掛けが重要」とし、「話を聞いた人が家庭や地域で広めてくれて、多くの人が防災知識を身に付けるきっかけになれば」と期待した。
 
自身の被災体験を交え、震災の教訓を伝えた矢内舞さん(右)

自身の被災体験を交え、震災の教訓を伝えた矢内舞さん(右)

 
 東京都の平木香織さん(38)は「当時、幼かった子たちが怖い思いをしながら逃げたこと。今、こうして自分たちの経験を次につなげようとする姿。話を聞いていると涙が出そうになった」と思いを共有。平木さんの母博美さん(65)=兵庫県神戸市在住=は、阪神・淡路大震災で実家が半壊した経験を持つ。「釜石の『津波てんでんこ』は有名。多くの子どもたちが助かったのは、家庭や地域で受け継がれてきたからなのだろう。率先して逃げられるのは(避難が)体に染みついている証拠」と地域の力を実感。全国で大規模災害が多発する現状に「重要なのは防災と減災。自然は止められないが、どう対処できるかを知っていることで被害を減らせることは確か」と話した。

鵜住居川へのアユの稚魚放流=8日、栗林町

水ぬるむ春 釜石・鵜住居川、甲子川にアユの稚魚放流 解禁は7月

鵜住居川へのアユの稚魚放流=8日、栗林町

鵜住居川へのアユの稚魚放流=8日、栗林町

 
 釜石市の鵜住居川、甲子川に今年もアユの稚魚が放流された。大船渡市の盛川漁業協同組合の施設で中間育成され、体長10センチ弱に育った稚魚を関係者が放流。稚魚の成育保護のため、両河川は6月1日から全魚種が禁漁となる。解禁日は甲子川が7月3日、鵜住居川が7月10日。
 
 鵜住居川では8日、鵜住居川漁業協同組合(川崎公夫代表理事組合長、組合員160人)が重量にして400キロの稚魚を放流した。鵜住居町日ノ神橋付近から橋野町の産地直売所「どんぐり広場」付近まで約20カ所に、稚魚を積んだトラック2台が移動しながら放流。組合員約30人が2班に分かれて同行し作業にあたった。
 
バケツリレーでアユの稚魚を川まで運ぶ鵜住居川漁協の組合員ら

バケツリレーでアユの稚魚を川まで運ぶ鵜住居川漁協の組合員ら

 
橋の近くなど各ポイントで放流作業を行った

橋の近くなど各ポイントで放流作業を行った

 
大きく育つよう願いを込めて放流。解禁日に期待

大きく育つよう願いを込めて放流。解禁日に期待

 
 稚魚は体長約8~9センチ、重さは平均8・8グラム。水に放たれると、上流方向へ元気に泳ぎ出した。同河川の放流は組合費、一般釣り客の遊漁料のほか、地元地域会議や河川工事業者からの協賛金で賄われる。今年の事業費は約160万円。
 
 川崎組合長(72)は「昨年は生育も良く、解禁日には20センチぐらいに成長。釣果も良かった。今年も昨年並みに推移すれば」と期待。釣り客には密漁の禁止、ごみの持ち帰りの徹底など「法やマナーを守って楽しんでほしい」と呼び掛ける。
 
 鵜住居川での釣りには組合員証か遊漁券が必要。遊漁券(日券、年券あり)は、市内の釣具店や流域の小売店など赤いのぼり旗を掲げた販売所で購入できる。
 
甲子川へのアユの稚魚放流=12日、松倉橋付近

甲子川へのアユの稚魚放流=12日、松倉橋付近

 
 一方、甲子川のアユの稚魚の放流は12日に行われた。甲子川鮎釣協力会(安久津吉延会長)、甲子地域会議、クボタ環境サービスの3者で実施。総重量300キロを小川川との合流地点から甲子町洞泉までの区間、約20カ所に放流した。約50人が上流と下流に分かれ、トラック2台について作業にあたった。事業費は約115万円。
 
 この日の甲子川の水温は15度。関係者によると水量も例年並みで、稚魚にとってもいい環境。同協力会会員の甲子町「釣具オヤマ」店主、小山哲平さん(45)は「放流を続けることで魚がいる河川環境が保たれる。自然産卵を促すため下流域を9月15日以降、禁漁にするなど、資源保全の取り組みを続けている」と話す。
 
稚魚を積んだトラックからホースを延ばす参加者

稚魚を積んだトラックからホースを延ばす参加者

 
甲子川鮎釣協力会メンバーらが放流作業を担った

甲子川鮎釣協力会メンバーらが放流作業を担った

 
 河川漁協のない甲子川は入漁料を徴収しないため、稚魚の放流は同協力会に寄せられる釣り人らの協力金で支えられる。300キロの放流は3年連続。極端な大雨や低温などがなければ、アユは解禁日には15~18センチほどに成長する見込み。
 
 鵜住居、甲子の両河川では、この後、ヤマメやイワナの稚魚の放流も予定される。

nishiwalk01

みんなで歩こう!釜石横断駅伝ウオーク 陸中大橋-釜石駅間を4日に分け踏破目指す

新緑が深まる甲子地区でウォーキングを楽しむ参加者

新緑が深まる甲子地区でウォーキングを楽しむ参加者

 
 釜石市西部地区の住民らが12日から、JR釜石線の陸中大橋駅(甲子町)から釜石駅(鈴子町)までを歩く「釜石横断駅伝ウォーキング」に取り組んでいる。健康増進、地域の風景と他地区の住民との交流を楽しんでもらおうと、甲子、小佐野、中妻の3公民館が合同で企画。約17キロの距離を31日までの4日間に分けて歩く。
 
 初日は陸中大橋駅で出発式があり、中妻公民館の菊池拓朗館長が「自分たちが住む地区以外を歩く機会は少ない。無理せず、ゆっくりと、周りの景色を楽しみながらウォーキングしてほしい」と激励した。参加者約20人を代表し、小佐野地域会議の黒田至議長が「私たち若人は楽しみながら友情を深めます」と選手宣誓。午前9時半過ぎ、「エイエイオー」の掛け声とともに出発した。
 
ゆっくりと歩いて景色を楽しみ、会話を弾ませる参加者

ゆっくりと歩いて景色を楽しみ、会話を弾ませる参加者

 
ヤエザクラ、タニウツギなど自生する花木を間近でめでる楽しみも

ヤエザクラ、タニウツギなど自生する花木を間近でめでる楽しみも

 
 新緑が深まり心地よい春風が吹く中、大松の釜石鉱山まで約4・3キロを約1時間半かけて歩いた。自生する花木や住宅から顔をのぞかせる草花、川のせせらぎなど、「ここに、こんなのがあったのね」などと新たな発見を楽しみながら散策。コースとなった国道沿いの歩道には空き缶などがあり、ごみを拾って「SDGsだね」と環境保全や持続可能な社会づくりへ意識を高める人もいた。
 
 中妻町の70代女性は「歩けるか不安があったけど、会話したり景色を見たりしながらで楽しかった。みんなでやる―というのが新鮮。よく歩いた」と、すがすがしい表情。この日着用していたTシャツにプリントされていた「五葉山」の文字を示して、「次の目標は登山」と元気だった。
 
1回目のゴール地点で笑顔を見せる参加者。「次回もここで会いましょう」と約束した

1回目のゴール地点で笑顔を見せる参加者。「次回もここで会いましょう」と約束した

 
 17日は釜石鉱山からセブンイレブン甲子町店まで4・8キロをウォーキング。24日は、午前9時半に同店に集合して定内公園まで4・1キロを歩く。31日は同公園から4・1キロ先のゴール、釜石駅を目指す。希望日のみの参加も可能だが、全日程に参加した人には「完歩賞」が贈られる。
 
参加すると「よくできました」シールがもらえる。4つたまると「完歩賞」につながる

参加すると「よくできました」シールがもらえる。4つたまると「完歩賞」につながる

 
 3地区の公民館による合同事業は昨年始まった。スポーツ大会や甲子柿を使った干し柿づくり体験は今年も継続。ほかに、日向ダム見学やソフトボール大会など新たな交流活動の実施を予定している。