被災地釜石に復興の力を与えてきたSL銀河。その雄姿や汽笛の音に市民が元気をもらってきた

SL銀河 2023年春で運行終了 今季ラストランでファンから惜しむ声

2023年春の運行終了が発表されたSL銀河

2023年春の運行終了が発表されたSL銀河

 

 東日本大震災で被災した釜石市の復興に大きな力をもたらしてきた蒸気機関車「SL銀河」が、2023年春で運行を終了する。JR東日本盛岡支社が復興支援と地域活性化を目的に、14年4月から釜石線(花巻―釜石間、90・2キロ)で運行してきたが、旅客車が老朽化。部品調達が困難なため、運行終了を決断した。11月中旬の同社の発表以降、沿線住民や鉄道ファンからは「残念」との声が聞かれ、今季最終運行となった今月4、5の両日は停車駅や沿線に多くの人が詰めかけた。

 

 山あいの景色とSLのコラボ写真を目当てに鉄道ファンが集う釜石市西端の陸中大橋駅。今季最後の下り運行となった4日は、駅や周辺の撮影スポットで、県内外から訪れた多くの愛好家がカメラを構えた。

 

陸中大橋駅付近でSLの到着を待ちわびるファン

陸中大橋駅付近でSLの到着を待ちわびるファン

 

停車時間を利用して乗客もホームに降り、機関車の迫力をカメラに収める

停車時間を利用して乗客もホームに降り、機関車の迫力をカメラに収める

 

 久慈市の鹿島孝幸さん(46)は写真と動画の2本立て。「インスタグラムに載せる。SL銀河は魅力的な被写体。できれば機関車だけでも何とかして走らせてくれたら」と、いちるの望みをつなぐ。神奈川県川崎市の阿部貴志さん(44)は「ずっと撮りに来たいと思っていた。昔のブルートレインに似た客車が珍しい。なくなるのはもったいない」と話し、運行終了までに「一度は乗ってみたい」と願った。

 

宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」の世界観を醸す旅客車。機関車に引けをとらない人気

宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」の世界観を醸す旅客車。機関車に引けをとらない人気

 

 釜石駅では下り列車の到着時に、市内の虎舞団体によるお出迎えを継続してきた。4日は只越虎舞が威勢のいいお囃子と舞で乗客を歓迎。観光関係者らが釜石グッズや、買い物、宿泊施設で利用可能なクーポン券を配り、おもてなしの気持ちを表した。

 

対面ホームで演舞する虎舞に目がくぎ付け=4日、釜石駅

対面ホームで演舞する虎舞に目がくぎ付け=4日、釜石駅

 

市や釜石観光物産協会職員らが乗客をおもてなし

市や釜石観光物産協会職員らが乗客をおもてなし

 

 盛岡市の清水一博さん(44)は家族3人で初乗車。「仕事柄、新幹線移動が多いが、それとは違ってゆっくり流れる車窓からの景色が最高」と大喜び。「ずっと乗りたがっていた」という長女捺愛(なつめ)ちゃん(3)の願いをかなえるべく、今季ラスト運行に合わせ上下分の切符を取ったが、その後、運行終了のニュースを聞いてびっくり。「震災復興を盛り上げる源みたいなところがあった。寂しい」と残念がった。

 

 上り運行の5日は釜石駅に見送りの人たちが大勢集まった。今季の運行に感謝の横断幕を掲げる人、乗員に声をかけ労をねぎらう人。SL愛にあふれる人たちの熱気がホームいっぱいに広がった。釜石市民吹奏楽団有志は鉄道にちなんだ曲演奏で出発気分を盛り上げた。

 

SLの出発を演奏で盛り上げる釜石市民吹奏楽団有志=5日、釜石駅

SLの出発を演奏で盛り上げる釜石市民吹奏楽団有志=5日、釜石駅

 

SL銀河を愛するファンらが感謝のメッセージ

SL銀河を愛するファンらが感謝のメッセージ

 

運行開始から続く横断幕や大漁旗でのお見送り

運行開始から続く横断幕や大漁旗でのお見送り

 

 釜石駅でのお出迎え、お見送りを先導してきた釜石観光物産協会の澤田政男会長は「県外から人を呼び込むツールとして大きな力があっただけに(運行終了は)非常に残念。コロナ禍でダウンした観光の巻き返しを図ろうと思っていた矢先の発表。今後の影響が懸念される」とし、新たな観光振興策の模索を考える。

 

 SL銀河は、花巻市出身の童話作家宮沢賢治の代表作「銀河鉄道の夜」をモチーフに列車全体をプロデュース。機関車(C58形239号機)は1972年まで山田線や釜石線などで運行し、後に県営運動公園で展示保存されていたものを復元。旅客車(キハ141系)はJR北海道から譲渡された車両を改造。急勾配のある路線でSL運転を可能にするエンジン付き車両で、機関車との協調運転により、春から初冬にかけ土・日曜を中心に運行してきた。

 

被災地釜石に復興の力を与えてきたSL銀河。その雄姿や汽笛の音に市民が元気をもらってきた

被災地釜石に復興の力を与えてきたSL銀河。その雄姿や汽笛の音に市民が元気をもらってきた

 

 花巻市の高橋弘喜さん(60)は運行開始からSL銀河を追っかけ、写真を撮り続けてきた1人。「列車と共に沿線の風景の素晴らしさ、人の良さなど多くの魅力を再発見させてもらった」。新型コロナウイルス禍で仕事も大変だったこの2年は「SLを見て勇気づけられてきた」という。「釜石線は交通の難所を克服し、鉄道が開通したころのロケーションを今に残す貴重な場所。急勾配の峠をSLが走って見せてくれるところはここしかない」と特異性を示し、「夢はまだ捨てていない。また新たな形で走ってくれることを願っている」と希望を込めた。

協定書を手にする野田市長(左から3人目)と青柳理事長(同4人目)

災害時の犠牲者対応で協力を 釜石市、県葬祭業組合と協定

協定書を手にする野田市長(左から3人目)と青柳理事長(同4人目)

協定書を手にする野田市長(左から3人目)と青柳理事長(同4人目)

 

 釜石市は7日、県葬祭業協同組合(青柳均理事長、37事業所)と災害時のひつぎや葬祭用品の供給、遺体搬送などの協力に関する協定を結んだ。同組合は県内自治体と同様の協定締結を進めており、釜石は県と6市村に続き8番目。多数の死者が出るような大規模災害でも遺体の収容が適切に行われるよう態勢を整える。

 

 協定によると、大規模災害発生時に市の要請を受け、同組合は▽ひつぎや遺体の安置に必要な納体袋(のうたいぶくろ)、骨つぼなど葬祭用品の供給▽遺体安置施設などの提供▽遺体の収容や搬送の業務―について可能な範囲で協力する。円滑な協力が行えるよう、広域の応援体制や情報収集伝達体制の整備にも努める。

 

協定書に署名する野田市長、青柳理事長

協定書に署名する野田市長、青柳理事長

 

 締結式は釜石市役所で行われ、野田武則市長と青柳理事長が協定書に署名し取り交わした。野田市長は東日本大震災で遺体の搬送や安置、埋葬などの対応に苦慮したことを振り返り、「惨事は二度と繰り返したくないが、震災の教訓として、いざという時に備えて事前に対応することが必要。亡くなられた方への追悼、遺族の思いに応えられるような体制を確保したい」と意義を強調した。

 

 同組合が社会貢献活動の一環として市に協定締結を申し出た。青柳理事長は「地元に寄り添った支援を行うことができると考えた。スムーズな連携体制を整え、死者の尊厳を損なうことなく誠心誠意対応していきたい」と話した。

生徒はメモを取りながら水島さんの話に耳を傾けた

魅力発見の視点養う 釜石商工高で地域理解につなげる講座

地域の魅力や働く意義について考える釜石商工高1年生

地域の魅力や働く意義について考える釜石商工高1年生

 

 地域を見つめる視点を養う「地域魅力発見講座」が9日、釜石市大平町の釜石商工高(菊池勝彦校長、生徒234人)で行われた。県の「高校の魅力化促進事業」の一環。釜石商工生として地域のためにできることを考える視点を持ってもらうのが狙いで、1年生52人が参加した。講師は、起業型地域おこし協力隊(釜石ローカルベンチャー)の水島嘉人(ひさと)さん。市外から移住した経験から見える釜石の魅力、社会人としての職業観などを伝えた。

 

 神奈川県鎌倉市出身の水島さんは東日本大震災の復興支援ボランティア活動を通じて釜石と縁をつなぎ、2020年6月に同隊員に着任。中小企業診断士の資格を生かし、企業の経営をサポートする活動に携わっている。その中で見えた釜石の魅力の一つが、地域愛あふれる経営者の存在。熱い思いを持つ人たちと一緒に地域課題に向き合い、その思いを形にすることができるまち―と強調した。

 

生徒はメモを取りながら水島さんの話に耳を傾けた

生徒はメモを取りながら水島さんの話に耳を傾けた

 

 東京の印刷会社でやりがいを持って働いた経験などを紹介し、「働くことの意味を考え、話し合ってみよう」と促す場面も。収入を得ることや社会貢献、自己実現という意義があるとした上で、▽出会いとつながり▽直感に従う▽まずやってみる▽相手の思いに寄り添う▽誰とでも対等な関係でいる―など社会に出た時に役立つ大切な視点を伝えた。

 

 電気電子科の小野颯大(ふうた)君は「より良いまちにしたいという大人の思いが分かった。釜石について知らないこともあり、歴史を知りたくなった。違う視点から、良いところを見つけ出してみたい」と意識を高めた。

 

 同事業で、2年生は「地域産業理解講座・ワークショップ」に参加。地域産業の課題と解決策を考え話し合う「共有」の機会とした。3年生は課題研究の取り組みの中で、地元企業と共同しリンゴのジェラートやサンマのアヒージョ缶詰を開発。文化祭などで限定販売し、地場産品の魅力を発信した。同校では来年度も、こうした活動を継続する考えだ。

県社交飲食業生活衛生同業組合釜石支部 年末年始に向け会合=6日、ヴィヴィアン(鈴子町)

コロナ禍の窮状に応援の手を 社交飲食業組合釜石支部 市民に来店呼び掛け

県社交飲食業生活衛生同業組合釜石支部 年末年始に向け会合=6日、ヴィヴィアン(鈴子町)

県社交飲食業生活衛生同業組合釜石支部 年末年始に向け会合=6日、ヴィヴィアン(鈴子町)

 

 新型コロナウイルス感染症の影響で、釜石市内の夜営業の飲食店は客足が戻らず、厳しい経営状況が続く。県社交飲食業生活衛生同業組合釜石支部(山﨑公平支部長、17店)は、県が感染防止対策の基準を満たす店に交付する「いわて飲食店安心認証」を全店舗が取得。利用者の理解と協力を求め、「苦しい状況に置かれる飲食店に市民の応援を」と来店を呼び掛ける。

 

 ワクチン接種が進み、県内の新規感染者数も連日ゼロが続くが、酒を提供する市内の飲食店は来店客がまだまだ少なく、経営者の頭を悩ませている。料理店、居酒屋、スナック、カラオケ店などが加盟する同組合釜石支部は6日、年末年始の利用促進へ共通認識を図る会合を開き、感染対策の徹底や客の理解を得るための方策に意見を交わした。

 

 組合員ら15人が出席。盛岡市に拠点を置く同組合から西部邦彦理事長が訪れ、県組合として行った県知事や盛岡市長に対する要望内容を紹介。県内他市の支援策についても情報提供した。県生活衛生営業指導センターの元指導員で、現在も消毒講習などの専門家として活動する赤沼柳子さんは、感染の仕組みや対策の正しい知識を伝授。認証店として客の信頼を得られるようアドバイスした。

 

「正しい知識で感染症対策を」と呼び掛ける赤沼柳子さん(中央)

「正しい知識で感染症対策を」と呼び掛ける赤沼柳子さん(中央)

 

赤沼さんの話に耳を傾ける組合加盟の飲食店店主

赤沼さんの話に耳を傾ける組合加盟の飲食店店主

 

 山﨑支部長によると、釜石では昨春と今秋の2回にわたり飲食関係3団体で救済策を市に陳情。家賃補助などの手厚い支援策と市長名での飲食店応援メッセージ発出を要望したが、窮状改善には至っていない。

 

 東京商工リサーチが10月上旬に行った企業へのアンケートで、年末年始に「忘・新年会を開催しない」と答えた企業は本県で79パーセントに上り、市内の職場や団体も開催を控える傾向が見られる。山﨑支部長は「コロナ前なら予約で埋まる時期だが、今年はゼロ。大人数は期待できないが、何とか少数単位でも来店いただき、地元飲食店を助けてほしい」と訴える。

 

 同組合理事で、かまいし親富幸通り飲食店会会長を務める久保秀俊さんは「これまで市内の飲食店からは1件も感染者が出ていない。それだけ各店とも(対策を)頑張っている。他地域から来た人も釜石の対策徹底に感心している」と話し、店と客双方の協力で地元経済回復に向けた人の流れを生み出したいと願う。

 

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「いわて飲食店安心認証」を受けた店は入り口などに認証マークを掲げる

 

 「いわて飲食店安心認証」は、県が定める28項目のコロナ対策を実践し、現地調査ですべての項目が基準を満たしていると認められた店に交付。認証店は店の入り口や店内に認証マークを掲示している。認証店のスタンプを3つ集めると、抽選で150人にオリジナル県産品ギフトをプレゼントするキャンペーンも実施中(来年2月14日まで)。

11年ぶりの釜石公演で観客を楽しませた吉田正記念オーケストラ

音楽で世界旅行を~吉田正記念オーケストラ 11年ぶりの演奏会で元気届ける

11年ぶりの釜石公演で観客を楽しませた吉田正記念オーケストラ

11年ぶりの釜石公演で観客を楽しませた吉田正記念オーケストラ

 

 吉田正記念オーケストラによる「元気が出る!オーケストラコンサート」(釜石市、一般財団法人自治総合センター主催)は4日、釜石市大町の市民ホールTETTOで開かれた。指揮をする大沢可直さんと同オーケストラは東日本大震災前の2010年10月に同ホールの前身、津波で被災した旧市民文化会館で公演しており、11年ぶりの来演。大編成による迫力ある生演奏で懐かしの名曲を聴かせ、復興する被災地でたくましく生きてきた市民らを音楽という世界旅行にいざなった。

 

 故吉田正(1921~98年)は国民栄誉賞受賞の作曲家。生前、数多くの〝吉田メロディー〟を生みだし、広く大衆に愛されてきた。記念オーケストラはその作品を半永久的に演奏する目的で2001年に結成。大沢さんは、吉田の作品をモチーフにクラシック化した「吉田正交響組曲」をつくり、同オーケストラの音楽監督に就任、国内外で演奏活動を展開している。

 

大編成による多彩な音色、迫力ある生演奏を披露した

大編成による多彩な音色、迫力ある生演奏を披露した

 

 コンサートは2部構成のプログラム。1部は「いつでも夢を」から始まり、吉田メロディーの世界へ誘いだした。4楽章ある同組曲7番では「子連れ狼」「和歌山ブルース」「潮来笠」「夜霧の第二国道」「東京ナイトクラブ」など昭和という時代を懐かしむ曲の数々を熱演。観客たちに若かりし日々を思い出させるような音楽ドラマとして聴かせた。

 

 2部は世界の名曲を味わう時間。「慕情」「太陽がいっぱい」など映画音楽を情感豊かに、「ベサメムーチョ」「キエンセラ」といったラテンの名曲は軽快に奏で、「チャイコフスキー交響曲4番」ではクラシックをなりわいとする交響楽団ならではの迫力ある多彩な音色で魅了した。曲の合間に、話題豊富なトークで観客を楽しませた大沢さん。フランク永井が歌った吉田メロディー「ラブ・レター」では指揮を休んで美声を響かせ、会場を沸かせた。

 

指揮者の大沢さんはユーモアあるトークで観客を喜ばせた。時には歌声も響かせた

指揮者の大沢さんはユーモアあるトークで観客を喜ばせた。時には歌声も響かせた

 

 アンコールは望郷の思いを歌う「異国の丘」。前回の釜石公演後に起こった震災に触れた大沢さんは「ドキドキしながら降り立った釜石、見事に復興していた。たくましい。生きているって素晴らしい。いいホールで音楽を生で楽しんでほしい」と願った。

 

懐かしの名曲がたっぷり詰まったコンサートを楽しんだ観客

懐かしの名曲がたっぷり詰まったコンサートを楽しんだ観客

 

 このコンサートは宝くじの助成で実施。約400枚のチケットは完売した。小川町の菊池忠太郎さん(85)、律子さん(77)夫妻は「すごい迫力。気持ちを表すような強弱のある演奏だった。なじみの曲ばかりで楽しかった。みんな心の中で歌っていたと思う。元気もらった」と笑顔を重ねた。

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広報かまいし2021年12月15日号(No.1774)

広報かまいし2021年12月15日号(No.1774)

 

広報かまいし2021年12月15日号(No.1774)

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【P1】
表紙
【P2-3】
ラグビーイベント
ぼうさいこくたい
【P4-5】
池井戸潤さん来釜
【P6-7】
令和2年度事務組合決算
償却資産申込開始
【P8-9】
新型コロナウイルス感染症に関する情報
子どもはぐくみ通信
【P10-11】
市民のひろば 
国際交流員の紹介
【P12-13】
まちの話題
歴史よもやま話
【P14-17】
水道管の凍結注意
まちのお知らせ
【P18-19】
保健だより
【P20】
江崎グリコ(株)大窪さんの活動紹介

この記事に関するお問い合わせ
釜石市 総務企画部 広聴広報課 広聴広報係
〒026-8686 岩手県釜石市只越町3丁目9番13号
電話:0193-27-8419 / Fax 0193-22-2686 / メール
元記事:https://www.city.kamaishi.iwate.jp/docs/2021120800040/
釜石市

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釜石市公式サイトと連携し、縁とらんすがピックアップした記事を掲載しています。記事の内容に関するお問い合わせは、各記事の担当窓口までお問い合わせください。
釜石市野球協会 2021年度表彰式=4日

釜石市野球協会 今季の活躍、長年の功労で学童選手、故監督2人を表彰

釜石市野球協会 2021年度表彰式=4日

釜石市野球協会 2021年度表彰式=4日

 

 釜石市野球協会(福成和幸会長)は4日、2021年度のシーズン終了にあたり、市内のホテルで表彰式を行った。協会登録チームの代表など23人が出席。各種大会の結果が報告され、顕著な活躍を見せた学童1選手を特別表彰。社会人チームの監督を長年務め、社会福祉にも貢献した1故人に感謝状を贈った。

 

 特別表彰を受けたのは、野球スポーツ少年団「釜石ファイターズ」に所属する唐丹小6年の柏海埼(みさき)君。2県大会で、いずれもフェンスオーバーの3本塁打(ツーラン1、ソロ2)を放つ快挙を見せ、「年間3本塁打賞」を受賞した。投手、捕手としてもチームの主力を担う柏君。表彰式当日は宮城県への遠征試合と重なったため、代理出席した祖父の信太郎さん(77)が表彰状を受け取った。

 

特別表彰を受けた柏海埼君(唐丹小6年)の代理で出席した祖父の信太郎さん(左)

特別表彰を受けた柏海埼君(唐丹小6年)の代理で出席した祖父の信太郎さん(左)

 

 協会への功労などで感謝状を贈られたのは、一般(C級)、OB(壮年)、早起き野球の3チームを擁する「ヨーカクラブ」の監督を務め、本年8月に急逝した佐野一男さん(享年75)。佐野さんは釜石早起き野球リーグへの参加チームとして同クラブを立ち上げ、後にリーグ会長に就任。1998年から福祉貢献を目的に、同リーグ主催で夏の「チャリティーナイター野球」を開催した。会場で寄せられる募金や成人選手のエラーなどに課す罰金ルールで集まった善意を市社会福祉協議会の「まごころ福祉基金」に寄付を続け、2013年には総額100万円を超えた。

 

2011年11月、チャリティーナイター野球の募金を市社協に届けた佐野一男さん(前列左)

2011年11月、チャリティーナイター野球の募金を市社協に届けた佐野一男さん(前列左)

 
震災から5カ月後(11年8月)に行われたチャリティーナイターで野球を楽しむ少年ら

震災から5カ月後(11年8月)に行われたチャリティーナイターで野球を楽しむ少年ら

 

 佐野さんに代わり感謝状を受け取った同クラブ主将の佐々木博貴さん(43)は「監督は、おやじのような存在。チーム内では厳しく、『野球に対する礼儀は絶対に守らないといけない。きれいな野球を』と常に言っていた」と明かし、今後も“佐野野球”の教えを守り抜くことを誓った。

 

 表彰に先立ちあいさつした福成会長は「この10年で野球人口は急激に減少している。根本にあるのは、やはり少子化。小中高は合併チームでの大会出場が増え、今後、社会人チームも減っていく可能性が高い」と指摘。釜石市協会の本年度登録チーム数は、一般10、OB2、中学校3、学童(スポ少)2だった。

 

表彰式で受賞者をたたえる協会登録チームの代表

表彰式で受賞者をたたえる協会登録チームの代表

 

 市内の学童野球は2011年には地区単位で12チームあったが、年々、団員確保が難しくなる状況を見越し、数年前から2チームに集約。浜町から甲子町、唐丹町までをエリアとする釜石ファイターズは、地区ごとの普段の練習と定期的な合同練習の両輪で大会出場を維持する。中学校も近年は1校単独でのチーム編成が難しくなり、2校合同チームでの大会出場が目立つ。協会の下村恵寿理事長は「野球をやりたい子どもたちのためにさまざまな工夫が必要。厳しい状況だが協会としても力を尽くし、釜石の野球を何とか盛り上げていきたい」と意気込む。

釜石市が導入した「シュアトーク」。手話と音声が文字に変換、表示される

手話や音声をリアルタイムで文字に AIシステム「シュアトーク」を窓口で活用、釜石市

釜石市が導入した「シュアトーク」。手話と音声が文字に変換、表示される

釜石市が導入した「シュアトーク」。手話と音声が文字に変換、表示される

 

 釜石市は3日、聴覚障害者とのコミュニケーション環境の向上を図ろうと、人工知能(AI)の技術を使って手話を日本語の文字に変換するシステムの利用を始めた。ソフトバンクなどが開発中の「SureTalk(シュアトーク)」というシステムを入れたタブレット端末を大渡町の市保健福祉センター2階、地域福祉課窓口に設置。端末に向かって手話で話しかけるとリアルタイムで文字に変換して画面に表示され、手話ができなくても円滑なやり取りが可能になる。健聴者の音声も文字に変換する機能が備わっており、加齢に伴い聴力が衰えてくる高齢者らとの会話にも使え、窓口対応の充実に役立つと期待される。

 

 地域福祉課窓口で向かい合って座る職員と聴覚障害者それぞれの目の前に、カメラを搭載した専用のタブレットが置かれ、シュアトークの画面が映る。左側に健聴者の職員と聴覚障害者の姿、右側には会話がチャットで表示される。AIで手話の映像や音声を解析し文字化する仕組みで、画面越しに対話ができる。

 

聴覚障害者と健聴者はシュアトークが入ったタブレット端末を通じて対話ができる

聴覚障害者と健聴者はシュアトークが入ったタブレット端末を通じて対話ができる

 

 例えば、同課窓口に聴覚障害者が訪れた際、職員がタブレットに向かって「どうされましたか」と声をかけると画面にすぐに文字が出た。聴覚障害者が手話で話しかけると、5秒ほど後に「障害者手帳をなくしました」と文字が出た。その後も、「再発行したい」「分かりました。書類を準備します」と会話が続き、職員が手話を理解できなくても、意思を伝達することができた。

 

 市では6月、聴覚障害者への理解促進と手話の普及などを定めた「市手話言語条例」を県内で初めて施行し、それに伴って同システムを導入した。市によると、市内で障害者手帳を所持する聴覚障害者は153人で、うち手話をコミュニケーション手段としているのは6人。一方、手話通訳士は同課職員の1人だけ。有資格職員が不在時には健聴者の職員が筆談で対応してきたが、うまく説明できないこともあった。また、聴覚障害のある人が窓口を訪れる際は健聴者が付き添うケースがほとんどだが、当事者を取り残して話が進み、知るべき情報の理解や納得が十分ではないと感じる場面もあったという。

 

手話通訳士の資格を持つ市地域福祉課の職員もシステム導入を歓迎する

手話通訳士の資格を持つ市地域福祉課の職員もシステム導入を歓迎する

 

 手話通訳士の資格を持つ同課の岩鼻千代美課長補佐は「円滑に意思疎通する手段の一つになる」と導入を歓迎。手話に興味を持つ職員が増えればと期待も寄せる。市では共生社会の実現を目指した取り組みを進めており、村上徳子課長は「聴覚障害のある人も遠慮することなく窓口に来てもらう体制が整った。誰もが社会で活動できるよう、こうした手段を増やしていきたい」と力を込めた。

 

シュアトークの導入は市職員が手話になじむきっかけにもなると期待される

シュアトークの導入は市職員が手話になじむきっかけにもなると期待される

 

 シュアトークは現在、手話の単語約1500を文字化できるが、手話は方言や地域固有の表現があり、AIが学習するために必要な大量のデータがまだそろっていないという。そのためソフトバンクは、同条例を制定した全国11自治体にシステムを1年間無償提供していて、窓口を訪れた人に利用してもらい、手話データなどを収集した上でシステムの精度をあげようとしている。

 

 同社の田中敬之担当課長は「聴覚障害を持つ社員がおり、コミュニケーションのずれを解消したいと開発を始めた」と活用を促す。7月には手話の動作画像の登録機能がついたiPhone(アイフォーン)向けのアプリも発表。「手話を知らない人も動作をまねて登録してもらえれば、いろんな手話を認識できるようになる。AIが手話を学習していくことで変換の精度が向上し、利便性も高まる。言語の一つとして認識が深まれば」と協力を呼びかけていた。

ラグビッグドリーム「絆マッチ」で全力プレーを見せる釜石(赤)と静岡の中学生

震災10年 ラグビーの絆を後世に ラグビッグドリームで子どもたち交流

ラグビッグドリーム「絆マッチ」で全力プレーを見せる釜石(赤)と静岡の中学生

ラグビッグドリーム「絆マッチ」で全力プレーを見せる釜石(赤)と静岡の中学生

 

 「ラグビッグドリーム2021with釜石絆の日」は11月28日、釜石市の釜石鵜住居復興スタジアムで開かれた。釜石ラグビッグドリーム実行委(小笠原順一会長)、釜石ラグビー応援団(中田義仁会長)が主催し、中高生の試合や小学生のラグビークリニックを開催。東日本大震災からの復興が進んだラグビーの聖地・釜石で、子どもたちが仲間との絆を深め、未来への夢や希望を育んだ。

 

 クリニックには県内外のジュニアチームから約100人が参加。スペシャルアドバイザーにワールドカップ(W杯)元日本代表の伊藤剛臣さん(釜石シーウェイブスRFCアンバサダー)、五郎丸歩さん、廣瀬俊朗さん、女子ラグビーでリオデジャネイロ五輪出場の桑井亜乃さん、日本代表9キャップの平野恵里子さん(大槌町出身、釜石高卒)を招き、学年ごと3グループで指導を行った。低・中学年は遊びの要素を取り入れながら、ラグビーの基本動作や練習メニューを体験。高学年は試合形式の練習をし、仲間やアドバイザーと交流を深めた。

 

廣瀬俊朗さん、平野恵里子さんとゲームなどを楽しむ小学3・4年生

廣瀬俊朗さん、平野恵里子さんとゲームなどを楽しむ小学3・4年生

 

五郎丸歩さん(中央)が見守る中、試合形式で行われた5・6年生のラグビークリニック

五郎丸歩さん(中央)が見守る中、試合形式で行われた5・6年生のラグビークリニック

 

 釜石シーウェイブス(SW)ジュニアの小野鳳君(平田小6年)、畠山一気君(階上小同)は「貴重な機会。日本代表(経験者)に会えることは少ないので楽しかった」と感激の表情。キャプテンの佐々木璃音さん(甲子小6年)は「今までできていなかった基本を確認できた。中学生になってもアカデミーでラグビーを続ける。平野選手のように、いつか私も世界(の舞台)で輝ける選手になりたい」と夢を描いた。

 

 「絆マッチ」と題した中学生の試合は、静岡ブルーレヴズラグビースクールと釜石SWアカデミーが対戦した。静岡ブルーレヴズ(前ヤマハ発動機ジュビロ)は2011年、震災から3か月後の6月に釜石市を訪問。被災者のための復興支援活動に奮闘し、被災後初めて試合を行う釜石SWと対戦した。両チームの姿は市民に復興への力を与え、19年のラグビーW杯日本大会釜石誘致という一大目標を掲げる足掛かりとなった。以来、18年8月の同スタジアムオープニングイベントでの記念試合など交流が続く。

 

釜石シーウェイブスアカデミーと静岡ブルーレヴズラグビースクールの一戦

釜石シーウェイブスアカデミーと静岡ブルーレヴズラグビースクールの一戦

 

ゴール前の攻防を抜け出し、釜石がトライ=後半

ゴール前の攻防を抜け出し、釜石がトライ=後半

 

 世代を超え、受け継がれるラグビーの絆。静岡と釜石の中学生はW杯のレガシーが残るスタジアムで持てる力を発揮し、10年後の再対戦を夢見てさらなる精進を誓い合った。中学生の試合の前には、釜石・大船渡の3高校、宮古の2高校がそれぞれ結成した合同チームによる交流マッチも行われた。

 

 11年の交流試合以降、毎年釜石に足を運んできた五郎丸さんは、スタジアム周辺の景色の変遷に10年という復興の歩みの重さを実感。台風の影響で中止されたW杯カナダ対ナミビア戦について、「いつかこの地で実現することを1ラグビー人として願う」。釜石の子どもたちにも思いを寄せ、「この鵜住居から成長した選手が桜のジャージーを着て戦う姿を見てみたい」と期待を込めた。

 

クリニックで小学生にアドバイスする五郎丸さん

クリニックで小学生にアドバイスする五郎丸さん

 

 平野さんは「W杯の成功は子どもたちの力による部分も大きい。間近で見ていることは貴重な経験。ラグビーで培われてきた歴史あるまち釜石に誇りを持ち、これからも胸を張って競技を楽しんでほしい」と願った。

 

 W杯日本大会出場20カ国を各国の国歌でもてなすプロジェクト「スクラムユニゾン」を主導した廣瀬さん(元日本代表キャプテン)はメンバー2人と来釜。絆マッチの前後に、日本と次回W杯開催地フランスの国歌を歌った。「ずっと来たかった釜石」への訪問を喜ぶ廣瀬さんは「W杯で釜石は世界から注目を集めた。ラグビーが根付くこの土地をみんなで支え合い、未来につないでいければ」と協力に意欲を示した。

 

 

 今回のイベントは、市内の小中学生がW杯を記念して定めた9月25日の「絆の日」に合わせて開催予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、この日に延期された。

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大切な人に釜石の特産品を贈ろう!釜石で初のお歳暮市 12業者が出店

初開催のお歳暮市=写真:釜石観光物産協会撮影

初開催のお歳暮市=写真:釜石観光物産協会撮影

 

 一般社団法人釜石観光物産協会(澤田政男会長)主催の「釜石お歳暮市」は11月28日、釜石市大町の市民ホールTETTOで開かれた。新型コロナウイルス禍で人的交流がままならない世情を踏まえ、「地元の味を贈答品に」と初めて企画。開店前から列ができるなど期待が高く、市内のほか県内陸部からの来場者の姿も見られた。

 

 市内を中心に12業者が出店。海産物や水産加工品、菓子、調味料など多彩な商品を持ち寄り、来場者の希望を聞きながらお歳暮用ギフトを提案した。当日発送のほか、後日の注文発送にも対応。複数の店から好みの商品を選び、オリジナルギフトとして送ることも可能で、選択の幅が広がり好評だった。

 

市内の各業者がお薦めの贈答用商品を提案、販売

市内の各業者がお薦めの贈答用商品を提案、販売

 

 松坂商店は水槽に入れた新鮮アワビで旬の海の幸をアピール。麻生三陸釜石工場は自慢の西京漬け(浜千鳥の酒粕使用)を盛り込んだ二段重の豪華おせちを提案。ジェラート販売で人気のかまいしDMCは贈答用に開発した新商品、釜石の味を素材にした三陸氷菓(9種)詰め合わせを販売。栗林町に養鶏農場を建設中のオヤマ(一関市)は鶏肉加工品ギフトで注目を集めた。

 

かまいしDMCの三陸氷菓詰め合わせなど新商品も並び、来場者はじっくりと品定め

かまいしDMCの三陸氷菓詰め合わせなど新商品も並び、来場者はじっくりと品定め

 

良質な鶏肉加工品ギフトなどを販売したオヤマ

良質な鶏肉加工品ギフトなどを販売したオヤマ

 

 甲子町の60代女性は兄弟や友人に贈るギフトを求めて来場。「いろいろ見て比べられるのがいい。せっかくだから釜石の物を送ろうと思って。相手の好みや日持ち、お正月のことも考えて決めたい」と会場内を回った。

 

 今回の企画は、コロナ禍で売り上げ低迷が続く事業者らの応援にも一役買った。販売店舗を持たない大渡町の永野商店は、干物などの贈答セットのほかアウトレット品の格安販売も実施。永野和槻専務(30)は「地元客へのギフト販売の機会はあまり無いので、ありがたい。昨年来の新型コロナの影響で市外の物産展なども中止が相次ぎ、販路が減った。今回は地元への還元もでき、いい機会になった」と喜んだ。

 

I商品の種類や注文方法を丁寧に説明する永野商店

商品の種類や注文方法を丁寧に説明する永野商店

 

 同協会の佐々木一伸事務局次長は「コロナ禍で帰省しにくい状況が続いてきただけに、ふるさとの味を求める人は多い。地元の商品を送って少しでも釜石を感じてもらえたら」と話し、「来年以降も継続開催できれば」と今後を見据えた。

うのすまい・トモス 〜海山連携 年の瀬朝市〜

うのすまい・トモス 〜海山連携 年の瀬朝市〜

うのすまい・トモス 〜海山連携 年の瀬朝市〜
 

うのすまい・トモスで「海山連携 年の瀬朝市」が開催されます。釜石の海と山、市内外のあの人気店が一堂に会する人気の朝市です。鵜住居虎舞の演舞もお楽しみいただけます。皆様のご来場をお待ちしております。

 

【出店事業者】
●Happiece Coffee(コーヒー類)
●株式会社オヤマ(室根からあげ、いわいどりのとりたん)
●おはこざき市民会議(ホヤ焼き 、ホタテ味噌焼き 海産物加工品各種)
●コンコン(フルフルポテト、最強の焼き芋)
●満月(たこ焼き、お好み焼き)
●三陸夢を稔らせる会(舞茸おこわ、お煮しめ、玉こんにゃく)
●味方屋(パンダ焼き、焼き鳥、フランクフルト)
●どんぐり広場(野菜、お菓子)
●ゆいま~る(沖縄おでん、タコライス、タコス)
●お野菜食堂カラコマ(大豆の唐揚げ、揚げ餅ぜんざい、スープ、どんぶり、ホットドリンク)
●クル・クレープ(クレープ)
●三陸ジェラート(ジェラート、ホットレモネード)
●二本松農園(リンゴ、その他)
●橋野ブルーベリー園(ブルーベリージャム)
●寺前ストア(団子)
●あんでるせん(パン)
●釜石ワークステーション(クッキー、マフィン)
●石村工業株式会社(薪ストーブの実演展示)

 

うのすまい・トモス 〜海山連携 年の瀬朝市〜[JPG:430KB]

日時

2021年12月12日(日)
9:00〜12:00 雨天中止
 
10:00〜 鵜住居虎舞 披露

場所

うのすまい・トモス
釜石市鵜住居町4丁目901番2

新型コロナウイルス感染症対策へのご協力のお願い

・会場内では必ずマスクを着用し、こまめな手洗いおよび消毒液のご利用にご協力ください。
・体調のすぐれない方、37.5度以上の発熱のある方は入場をお控えください。
・鵜の郷交流館、いのちをつなぐ未来館での持ち込み飲食はおやめください。

お問い合せ先

うのすまい・トモス
電話:0193-27-5666

株式会社かまいしDMC

株式会社かまいしDMC

釜石の地域DMOとして、地域外からの観光客や繋がり人口の増加と、地域商社として釜石の特産品を域外で販売していくのがミッションです。

問い合わせ:TEL 0193-27-5260 / 〒026-0012 岩手県釜石市魚河岸3-3 / Mail contact@dmo-kamaishi.com / Web

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「グリコワゴン」10年ぶり訪問に釜石っ子大興奮!朝食の約束もしっかりと

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ワゴン車の前でグリコポーズを決める白山小児童

 

 東日本大震災の被災地に元気を届けてきた総合食品メーカー江崎グリコ(大阪市)の「グリコワゴン」が11月下旬、釜石市内の小学校9校を訪問。子どもたちに夢あふれるひとときをプレゼントした。「地域活性化起業人」として同社から釜石市に派遣されている大窪諒さん(31)が、新型コロナウイルス禍でさまざまな楽しみが失われている子どもたちの思い出作りと食育の一助にと企画した。

 

 25日は、大窪さんと市商工観光課の職員ら5人が嬉石町の白山小学校(熊谷直樹校長、児童35人)を訪問した。大窪さんは低、中、高学年の各教室を回り、朝食の大切さを伝えるミニ講義を実施。欠食が体に及ぼす影響を説明し、「成長期のみんなの体は多くのエネルギー、栄養を必要としている。朝食をしっかり食べることで元気に登校でき、勉強にも集中できる。学力アップ効果も期待できる」と話した。

 

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朝食の重要性を教えた食育の講義=3、4年教室

 

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地域活性化起業人として活動する大窪諒さん。「おいしく朝食を食べ元気に登校を」と呼び掛けた

 

 朝食にはご飯やパンの炭水化物のほか、乳製品、卵、納豆などのたんぱく質、味噌汁や野菜ジュースなど「プラス1品」を心がけることもアドバイス。「早寝早起き、朝ごはん」の約束を交わした児童らにグリコの菓子をプレゼントし、家族で朝食を見直すためのリーフレットも添えた。

 

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10年ぶりの釜石訪問となった「グリコワゴン」

 

 この後、校舎前に止めた車両「グリコワゴン」を見学。さまざまな菓子で彩られた車体に児童らは歓声を上げ、記念写真を撮って楽しんだ。岡本羚依さん(3年)は「車のいろいろなところにお菓子が付いていてすごく工夫していると思った。世界に1台しかない車に会えてうれしい。今日の夜、眠れないかも」と大感激。好きな菓子“ビスコ”のプレゼントに目を輝かせ、朝食の約束を守ることも誓った。

 

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車体を装飾する「ポッキー」に笑顔を見せる児童

 

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赤と白で統一された運転、助手席に目がくぎ付け

 

 同車両は「日本中においしさと健康、わくわくした笑顔を」と2010年に製造。直後に東日本大震災が発生し、11年5月、釜石市を皮切りに東北の被災地支援を開始した。その後も全国の自然災害の被災地を中心に訪問を続け、走行距離は11万キロに及ぶ。「東北支援のスタートの地・釜石に、震災10年を経て自分がいるのも何かの縁」と大窪さん。児童らが喜ぶ姿に自身も笑みを広げ、健やかな成長を願った。

 

 大窪さんは20年7月からの同起業人の任期を今月末で終了する。これまで地元企業と釜石の魅力を伝える各種商品の開発に尽力してきた。13日には、この1年半の活動報告会を行う予定。