住民同士の交流、つながりを生み出そうと初めて開かれた平田地区の「つながるカフェ」
高齢化率(65歳以上)が40%(9月末現在)となる釜石市。一人で暮らす高齢者も年々増えているが、新型コロナウイルス禍で地域との交流が減り、健康面や孤立の悩みを抱える人も少なくない。そんな中、住民同士の交流を促す場をつくろうと、平田地区生活応援センターで11月25日、「つながるカフェ」が開かれた。おしゃべりを楽しむだけでなく、困り事の相談会、地元中学生との世代間交流の機会も用意。継続実施を予定し、住民同士の支え合いを深めながら安心して住み続けられる地域づくりを目指す。
市、地区内にある特別養護老人ホーム「あいぜんの里」を運営する社会福祉法人清風会が主催し、市社会福祉協議会が協力する。初めて開かれたカフェには住民17人、住民サポーター6人が参加。市の保健師、介護関係者らも加わった。住民らはマスクをしたままだが、思い思いに語らった。
認知症がテーマの劇を熱演する大平中3年生
世代間交流も目的の一つで、大平中(蛸島茂雄校長、生徒106人)の3年生33人が、認知症をテーマにした劇を披露。タイトルは「たがら(「宝」がなまった語)息子」で、認知症に苦しむ高齢女性の心情や同居家族の葛藤、地域の絆などを描いた。子どもたちが懸命に演じる姿に、参加者らは「守る側になったのか、すごいね」「心強い」と感心していた。
3年生は総合的な学習の時間を活用し、3年間、同法人の支援を受けながら認知症サポーター養成講座や介護技術体験などに取り組み、福祉について学んできた。劇はその集大成。高齢女性役の小笠原のゑさん、その息子を演じた猪又一星君は「難しい内容だったが、認知症への理解が深まっていく姿が伝わるよう工夫した。学びを生かし、地域の人と交流しながら暮らしていきたい」と声をそろえた。
大平中生は福祉学習を紹介する展示も行い、地域に成果を発信した
同センターによると、平田地区の約1600世帯のうち、高齢者世帯は400以上あり、その半数が独居世帯だという。地域内での見守り体制の底上げにつながればと開かれたカフェに、独り暮らしの70代男性は「こうした集まりへの参加は初めて。積極的な声掛けがあり来てみたが、同世代と交流できる場でいいね。子どもたちの劇も面白いし、触れ合いで元気をもらう」と喜んだ。
おしゃべりを楽しみ、笑顔を広げるカフェ参加者
つながるカフェは年度内に2回目の開催を予定する。専門的な知識を持つ保健師や介護関係者らによる健康や生活に関する相談も受け付け、住民同士で情報を交換、共有し知識を得ながら交流を深めていく場とする考え。同センターの小笠原達也所長は「参加者にも見守る側、見守られる側がいるが、立場にこだわらず地域に積極的に関わることで、住み続けたいと思ってもらうきっかけになれば」と期待する。