12月1日は「鉄の記念日」 近代製鉄発祥の地・釜石で関連イベント多数開催
「鉄の記念日」にちなんだ企画展=鉄の歴史館
12月1日は「鉄の記念日」。江戸時代末期の1857(安政4)年12月1日、大島高任が現釜石市甲子町大橋に建設した洋式高炉で日本初の鉄鉱石を用いた製鉄(連続出銑)に成功したことにちなみ、日本鉄鋼連盟が1958(昭和33)年に制定した。同市では記念日の前後1週間を「鉄の週間」として、鉄にまつわる各種イベントを開催している。
大平町の鉄の歴史館では11月27日、名誉館長の小野寺英輝さん(岩手大理工学部准教授)による講演会が開かれた。釜石から複数の技術者が派遣された官営八幡製鉄所(現北九州市)が開業120年を迎えるにあたり、「釜石の技術が八幡でどう生かされたのか」にスポットをあてた。
「必要とされた釜石の製鉄技術」と題し講演する小野寺英輝名誉館長(岩手大理工学部准教授)
八幡製鉄所はドイツの最新技術や設備を導入し、1901(明治34)年2月に操業を開始したが、過多な銑鉄生産で在庫が過剰となり、稼働停止命令が下された。04(同37)年4月に第2次操業を開始するも、わずか17日で高炉が閉塞。低品質のコークス、人的ミスによる送風の停止などが要因とされた。対策を託されたのが、釜石鉱山田中製鉄所で木炭からコークス銑生産への移行に成功した野呂景義。関係設備の改善で良質なコークスの安定供給が可能となり、わずか2か月後に第3次操業が開始された。野呂は後に高炉の大改修も行い、八幡を一大製鉄所に押し上げた。
小野寺さんは、創業のため釜石から派遣された6人の技術者についても紹介。いずれも工手学校や帝国大工科大を卒業、実践的職能を身に付けた人たちで、こうした人材が各地の工業の最前線に立つことで、日本の近代化が推し進められていったことも説明した。「釜石の技術が本格的銑鋼一貫製鉄所の稼働に果たした役割は大きい。特に野呂は近代化を急ぐ日本にとって、なくてはならない技術の持ち主であった」と強調した。
釜石の技術が八幡製鉄所発展の礎を築いたことを学ぶ講演会の聴講者
鉄の歴史館では特別企画展「釜石から八幡へ―日本の製鉄、近代化の軌跡―」を開催中。大島高任の長男で、八幡製鉄所の初代技監として創業に尽力した道太郎が1897(明治30)年、同製鉄所建設に関する出張中にベルリンから投函した英文の手紙、田中製鉄所で野呂景義が設計したコークス窯の下部構造と考えられるれんがの一部(日本製鉄所蔵)など普段は公開されない資料、八幡と釜石の関わりを解説したパネルなどが並ぶ。来年1月10日まで開催(毎週火曜日、12月29日~1月3日休館)。
普段は公開されていない収蔵品も見られる企画展
甲子町大橋の国登録有形文化財「旧釜石鉱山事務所」は、1951(昭和26)年の建設から70年を迎えた。その歴史をたどる企画展が12月6日まで開かれている。建物は54(同29)年に西側を増築した形状が今に残り、2008(平成20)年に寄贈を受けた釜石市が、昭和の事務所を再現した展示や貴重な鉱山関連資料を一般公開している。
建設から70年を迎えた「旧釜石鉱山事務所」
鉄筋コンクリート(外壁は型枠コンクリートブロック)造り、2階建ての建物は、日鉄鉱業が釜石鉱業所総合事務所として建設。1979(昭和54)年、子会社・釜石鉱山の設立で同総合事務所となった。2007(平成19)年、事務所を大松に移転後、日鉄鉱業が建物を市に寄贈。市は09(同21)年から、寄託された鉱山関連の資料を展示公開する施設として運営を始めた。建物は13(同25)年に国登録有形文化財(建造物)に指定されている。
釜石鉱山事務所が歩んだ歴史を紹介する企画展
企画展では、大島高任が洋式高炉による連続出銑に成功して以降の鉱山の歴史をなぞりながら、各時代の事務所の場所や形状をパネルで解説。鉱山の経営移管に伴う事務所の変遷が分かる興味深い展示となっている。現建物に関する資料では、建設時の設計図面、その後の増築や外壁塗装工事などの関連書類のほか、昭和20、40年代の事務所内部の写真も公開されている。
今後予定される鉄の週間行事は下記の通り。
◆12/4(土)午前10時~・釜石PIT 鉄の学習発表会(録画公開)
◆12/5(日)、6(月)午前9時~・鉄の歴史館 県指定文化財「紙本両鉄鉱山御山内並高炉之図」(幕末の高炉操業の絵巻)公開
◆12/5(日)午後1時半~・市立図書館 市民教養講座「鉄の町かまいし歴史講座」
*同館で14日(火)まで「鉄の記念日図書展」開催(月曜休館)
◆12/5(日)まで・シープラザ釜石 鉄のパネル展
◆12/7(火)まで・橋野鉄鉱山インフォメーションセンター 橋野高炉跡発掘調査速報展(御日払所跡出土資料の展示)
◆12/26(日)まで・市郷土資料館 企画展「古銭(おかね)のはなし」
釜石新聞NewS
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