「潤さんも喜んでいると思う」。店頭に並んだ戦災記録誌を見つめる岩切久仁さん=釜石市大町・桑畑書店

釜石艦砲射撃76年 記憶語り継ぐ戦災記録集「かまいしの昭和20年」再版

亡夫の遺志を継ぎ、長女とともに戦災記録誌を再版した岩切久仁さん=釜石市大町・桑畑書店

亡夫の遺志を継ぎ、長女とともに戦災記録誌を再版した岩切久仁さん=釜石市大町・桑畑書店

 

 太平洋戦争末期、釜石市が米英軍による2度の艦砲射撃で甚大な被害を受けてから今年で76年を迎えた。8月8日、艦砲射撃による戦禍から逃れた故岩切潤さん(享年82)の体験談をつづった記録誌が市内の書店に並んだ。「伝えねばなんねんだ」。戦争体験者が減る中で、戦災の記憶を語り継ぐ大切さを口にしていた岩切さんの遺志を継ぎ、遺族が再版した。

 

 記録誌は、2015年に岩切さんが自費出版した「戦後70年に想う かまいしの昭和20年-艦砲射撃を生き延びて」。艦砲射撃や避難した防空壕(ごう)での様子、疎開先での暮らしぶりなど当時釜石国民学校(現釜石小)5年生だった岩切さんの実体験を、艦砲射撃を受けた市内の風景などの写真や被弾図など資料を交え書き記している。

 

再版された「かまいしの昭和20年-艦砲射撃を生き延びて」

再版された「かまいしの昭和20年-艦砲射撃を生き延びて」

 

 初版は800部発行し、全て市や図書館、戦没者慰霊祭の参列者らに寄贈した。岩切さんは同時期に市内の小中学校や老人クラブなどでの講演活動も開始。戦争体験者として記憶の継承に精力的に取り組もうとした矢先、17年9月に急逝した。生前、関心のある人たちが購入という形で記録誌を手にし、「地域の歴史や平和について考えてほしい」と望んでいたという。

 

 そういった遺志を、長女晃子さん(54)=東京都杉並区=と妻久仁(くに)さん(78)=釜石市小佐野町=が引き継ぎ、再版した。新たに850部を発行。約670部を市内の中学3年生に贈る。残りは市内の桑畑書店、盛岡市のさわや書店などで販売する。A4判36ページで、1部990円(税込み)。

 

「潤さんも喜んでいると思う」。店頭に並んだ戦災記録誌を見つめる岩切久仁さん=釜石市大町・桑畑書店

「潤さんも喜んでいると思う」。店頭に並んだ戦災記録誌を見つめる岩切久仁さん=釜石市大町・桑畑書店

 

 8日、桑畑書店を訪れ、店頭に本が並ぶ様子を見守った久仁さん。「家で多くは語らなかった。心の中で思っていたんだなと思う。70年たって語ろうとしたようだけど・・・」と本を見つめる。11年に東日本大震災を経験した岩切さんは、戦後復興の歩みに震災復興への思いを重ね合わせ、「戦災と震災は語り継がなければなんねんだ」と繰り返し言っていたという。久仁さんは「潤さん、喜んでいると思う。手に取って読んで、感じ、考えてもらえたら」と願う。

 

 太平洋戦争末期の1945(昭和20)年、釜石市は7月14日と8月9日の2度にわたって米英連合軍から艦砲射撃を受けた。市街地は焼け野原になり、市民ら780人以上が犠牲になるなど大きな被害を出した。

優良表彰を受けた会社の代表者、南三陸沿岸国道事務所の関係者ら

優良業務・工事6社表彰 南三陸沿岸国道事務所~地域の安全安心守る 意欲新たに

優良表彰を受けた会社の代表者、南三陸沿岸国道事務所の関係者ら

優良表彰を受けた会社の代表者、南三陸沿岸国道事務所の関係者ら

 

 国土交通省東北地方整備局が本年度、釜石市鵜住居町に新設した「南三陸沿岸国道事務所」(五十嵐俊一所長)で3日、優良業務・優良工事等表彰式が行われた。昨年度まで三陸沿岸道路などの整備や管理業務を担った南三陸国道事務所が発注し、同年度内に完了した業務や工事が対象。技術力が優秀で創意工夫があった優良業務施工会社2社、工事成績が優秀で卓越した技術や創意工夫があった優良工事施工会社3社、品質確保・向上に貢献した下請け会社1社の功績をたたえた。事故防止対策協議会の設立総会も開催。関係者が労働災害などの事故発生の未然防止につなげる取り組みを確認した。

 

 表彰式で五十嵐所長は「災害対策を含めた地域の安全安心の提供、アフターコロナの地域振興の推進には建設業界の生産性向上、働き方改革、担い手育成・確保が必要。改革プロジェクトへの取り組みに理解と支援を」とあいさつ。各社の代表に表彰状を手渡した。

 

 優良工事事務所長表彰を受けた小澤組(釜石市)の本間康幸さんが、受賞者を代表し謝辞。「地域の安全に寄与し社会資本の整備に貢献することが使命。技術力を高め、一層精進していく」と誓った。

 

 事故防止対策協の設立総会には同事務所の職員、発注工事や業務関係者ら約40人が出席。規約、事業計画、事故防止対策方針を決めた。「死亡災害ゼロ、公衆災害ゼロ」を重点目標とし、▽物損公衆災害の事故防止対策▽安全規制訓練▽新型コロナウイルス感染症拡大防止対策―を徹底する。

 

労働災害・事故防止に向けた対策を確認する協議会の設立総会

労働災害・事故防止に向けた対策を確認する協議会の設立総会

 

 具体的な活動としては、無事故達成日数の表示や安全旗の掲揚など事故防止意識の高揚のほか、安全管理講習会の開催など啓発活動、安全パトロールの実施、安全管理に優れた工事や円滑な工事などを実施した企業や個人の表彰も行う。

 

南三陸地域の道路管理新拠点で業務推進

 

道路管理拠点として釜石市鵜住居町に開設された南三陸沿岸国道事務所

道路管理拠点として釜石市鵜住居町に開設された南三陸沿岸国道事務所

 

 三陸沿岸国道事務所は、東日本大震災からの早期復興リーディングプロジェクトとして整備を進めてきた三陸沿岸道路の管理をより集中して適切に行える体制の構築を目指し新設された。管理区間は三陸沿岸道の山田南IC-鳴瀬奥松島IC間(延長約175キロ)、国道45号の大槌町―陸前高田市間(同約81キロ)、東北横断自動車道釜石秋田線の釜石JCT-東和IC間(同67キロ)の総延長約323キロ。同事務所の開設に合わせ、花巻市に花巻維持出張所、大船渡市に大船渡維持出張所、宮城県石巻市に三陸道維持出張所も設け、管理業務に当たる。

 

 新事務所の業務は道路の維持・防災工事、舗装修繕、安全対策工事など路上作業が多く、利用者や周辺の配慮が求められる。災害対応や除雪など一般交通の安全確保に向けた適切な稼働体制の整備も必要で、重点目標における取り組み方針の徹底に努める。

 

 表彰を受けた会社は次の通り。

 

【優良業務事務所長表彰】
▽大槌山田地区道路台帳整備業務国際航業・北栄調査設計設計共同体(盛岡市)=大槌山田地区道路台帳整備業務(主任技術者・花田睦実)▽日本工営北東北事務所(同)=南三陸水文調査(同・高橋昌弘)
  
【優良工事事務所長表彰】
▽テラ(遠野市)=南三陸国道災害復旧工事(監理技術者兼現場代理人・昆雅也)▽小田島組(北上市)=同国道管内防災施設他工事(同・及川裕明)▽小澤組(釜石市)=同国道維持補修工事(同・本間康幸)
  
【下請企業事務所長表彰】
▽長屋産業(仙台市)=同国道災害復旧工事(主任技術者・進藤繁勝)

勢いよくスタート!海水浴客の熱い視線が注がれる

2年ぶり根浜にアスリート集結~釜石オープンウォータースイミング~

海水浴客らも見守る中、行われた釜石オープンウォータースイミング=1日、根浜海岸

海水浴客らも見守る中、行われた釜石オープンウォータースイミング=1日、根浜海岸

 

 第5回釜石オープンウォータースイミング(OWS)2021根浜(同実行委主催)が1日、釜石市鵜住居町の根浜海岸特設会場で開かれた。新型コロナウイルス感染防止対策を講じ、2年ぶりに開催。小学4年生から70代まで大会最多の234人がエントリーし、自分の泳力に合わせた距離で完泳とベストタイム更新を目指した。

 

 競技は500メートル、1キロ、3キロ、5キロの種目で、海上に設置したブイを周回するコースで行われた。水温22度、気温27度(午前5時半現在)。午前9時からの競技開始後は、真夏の日差しが照りつけた。波は穏やかで、良好なコンディション。選手らはこれまで積み重ねた練習を糧に持てる力を存分に発揮した。

 

スタートエリアに向かう選手。通路での〝激励のハイタッチ〟はコロナ対策のため、今年は中止に

スタートエリアに向かう選手。通路での〝激励のハイタッチ〟はコロナ対策のため、今年は中止に

 

勢いよくスタート!海水浴客の熱い視線が注がれる

勢いよくスタート!海水浴客の熱い視線が注がれる

 

 かまいしSCに所属する熊谷凜音さん(平田小4年)は同大会初参加。500メートルに挑んだ。「海で1回練習はしたけど、やっぱり深くて水の濁りもあるので怖かった。もっと練習してまた出てみたい」と、さらなるレベルアップを誓った。

 

 今大会には、世界ジュニア選手権(15~19歳)日本代表選手に選ばれた高校、大学生ら5人が参加。海外で予定されていた選手権大会はコロナの影響で中止されたが、日本水泳連盟が強化事業の一環で選手を釜石に派遣した。大阪府の太成学院大高2年、岩住宏一郎さん(17)は5キロのトップでゴールし、「波の影響もなく真っすぐ泳げた感じ。課題としている前半のペースアップにも挑戦したが、結構いけた。80点ぐらいの出来」と手応えを実感。「頑張って世界で戦える選手になりたい」と高みを目指した。

 

競技力強化のため、釜石大会に参加した世界ジュニア選手権日本代表選手ら

競技力強化のため、釜石大会に参加した世界ジュニア選手権日本代表選手ら

 

 海など自然水域での長距離泳でタイムを競うOWSは、2016年の岩手国体で初めて正式競技として採用された。会場となった根浜海岸では、翌17年から国体のレガシー(遺産)を引き継ぐ形で地元主導の大会を開始し、回を重ねる。

 

 大会審判長を務める西原義勝さん(72)=釜石水泳協会会長=は「中高生の参加が増えてきた。県水泳連盟も選手育成に前向き。一般の水泳愛好者の参入も促しながら競技人口の底辺拡大を図り、当初目標の大会参加者350人を達成できれば。選手らの宿泊による観光面の経済効果にも期待したい」と今後を見据える。

 

 県水泳連盟は今大会の成績を基に、今年の三重とこわか国体水泳競技OWS(9月8日、尾鷲市)に出場する本県代表選手を決定。男子は大畠雄太朗さん(不来方高1年)=花巻SF所属=、女子は平賀雛さん(花巻南高2年)=同=が選ばれた。

海中映像を見ながら水中ドローンの役割を学ぶ

三陸の海をもっと学ぼう!中学生対象に釜石でサマースクール開催

県漁業取締船「岩鷲」を見学したカレッジ参加者

県漁業取締船「岩鷲」を見学したカレッジ参加者

 

 次代を担う中学生に郷土が誇る海への関心を高めてもらおうと、「三陸マリンカレッジ~Summer School~」が7月31日、釜石市平田の岩手大釜石キャンパスなどで開かれた。県沿岸広域振興局と東京大大気海洋研究所国際沿岸海洋研究センター(大槌町)が主催。沿岸部の中学生ら13人が三陸の水産業や海洋環境、海上保安業務の一端に触れ、好奇心をかきたてられた。

 

 県と同センターは、震災で海に親しむ機会の減った子どもたちが興味を持つきっかけにと、昨年度初めて同カレッジを開催。1泊2日の合宿学習で知りたいことを絞り込み、同大研究者らのサポートを受けながら調査、実習を重ね、成果を発表する一連の取り組みを行った。今回は2年目の本開催を前に、導入部としてサマースクールを企画した。

 

 この日は4プログラムを体験。県水産技術センターでは、アワビの種苗生産・放流など本県を代表する養殖水産物の資源管理について学んだ。平田漁港の岸壁では、水中カメラで海底の様子や魚を観察。近年、活躍する水中ドローンの説明も受けた。県漁業取締船「岩鷲」では、普段見られない船内の装備機器を見学。業務内容について聞いた。釜石海上保安部の協力で海の安全講習もあり、救命胴衣の着用、応急的な救命器具作りを体験した。

 

海中映像を見ながら水中ドローンの役割を学ぶ

海中映像を見ながら水中ドローンの役割を学ぶ

 

ペットボトルを使った応急救命器具作りを体験

ペットボトルを使った応急救命器具作りを体験

 

 佐々木奈碧人君(大平中3年)は「水産技術センターの方からアワビの話を聞いたり、普段乗れない取締船に乗せてもらったり、全てが新鮮な体験だった。海についてもっと知りたくなった。この後行われるマリンカレッジにも参加してみたい」と興味をそそられた様子。

 

 昨年度の同カレッジには6人が参加。地元の海の環境と天気、生物との関係、カキの養殖棚に集まる生物、地元の海で捕れる魚とその漁獲法など、それぞれに興味をもった分野で学習に取り組んだ。サマースクールでは、昨年度の受講生が自身の経験や感想を語った。

 

 本年度の三陸マリンカレッジは11月に同センターでの合宿を予定。1人1人テーマを決めて、専門家の話を聞いたり関係施設での実地学習を行ったりして、冬休み中にレポートをまとめる。学習成果発表会は来年1月に開催する計画。県の担当者は「学校とは違った勉強ができる。沿岸部の海に関心のある中学生にどんどん参加してほしい」と呼び掛ける。参加者は秋から募集を始める。

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広報かまいし2021年8月15日号(No.1766)

広報かまいし2021年8月15日号(No.1766)

 

広報かまいし2021年8月15日号(No.1766)

広報かまいし2021年8月15日号(No.1766)

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【P1】
根浜海岸海開きイベント

【P2-3】
新型コロナワクチン接種情報

【P4-5】
分娩に関する方針
地震津波訓練週間

【P6-7】
新市庁舎建設への取り組み

【P8-9】
地域活性化起業人の紹介 ほか

【P10-11】
三陸ジオパークシンポジウム&フェスタ
まなびい釜石 ほか

【P12-13】
こどもはぐくみ通信~釜石の公園・遊び場~
市民のひろば

【P14】
まちの話題

【P15-17】
まちのお知らせ

【P18-19】
保健案内板

【P20】
歴史よもやま話

この記事に関するお問い合わせ
釜石市 総務企画部 広聴広報課 広聴広報係
〒026-8686 岩手県釜石市只越町3丁目9番13号
電話:0193-27-8419 / Fax 0193-22-2686 / メール
元記事:https://www.city.kamaishi.iwate.jp/docs/2021080600056/
釜石市

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海に関わる現場での活動に思いを新たにする受賞者ら

海事産業の安全、発展願う 「海の日」実行委 功労者に表彰伝達

海事産業の発展や漁業振興に尽力した個人、団体などをたたえた表彰式

海事産業の発展や漁業振興に尽力した個人、団体などをたたえた表彰式

 

 今年は7月22日となった「海の日」。釜石市「海の日」実行委員会(会長・野田武則市長)、市漁業協同組合連合会(小川原泉会長)主催の海事功労者・優良漁船等表彰式は27日、大町の市民ホールで行われ、海事功労者13人と水揚げ優良漁船、優良買い受け人などの功績をたたえた。昨年は新型コロナウイルス感染症の影響で中止しており、2年ぶりの実施となった。

 

 式には約50人が出席し、野田市長が「海の日を契機に海の恩恵に感謝し、古里の海を守り続けたい」、小川原会長は「水産物の安定供給の確保、水産業の健全な発展に向け、まい進する」とあいさつ。受賞者に表彰状と記念品が手渡された。

 

海に関わる現場での活動に思いを新たにする受賞者ら

海に関わる現場での活動に思いを新たにする受賞者ら

 

 受賞者を代表し、永年勤続功労として国土交通大臣表彰を受けた及川工務店(新浜町)工事長の藤本利一さん(62)が謝辞。「日々の活動を評価していただき、身に余る光栄。受賞の喜びを忘れることなく、微力だが地域社会の向上と発展のため、それぞれの分野で精進していく」と誓った。

 

国土交通大臣表彰の伝達を受ける藤本利一さん

国土交通大臣表彰の伝達を受ける藤本利一さん

 

 受賞者は次の通り。

 

【東北地方整備局関係表彰】
▽国土交通大臣表彰 藤本利一(及川工務店)、浄土ヶ浜をきれいにする会▽東北地方整備局長表彰 田子浩(宮古潜建)、洋野町立種市小▽釜石港湾事務所長表彰 宮城建設、信田勝也(宮城建設)

 

【第2管区海上保安本部関係表彰】
▽第2管区海上保安本部長表彰 佐藤君夫(会社員)▽釜石海上保安部長表彰 佐々木哲也、仲鉢敏克、木村嘉人、船砥秀市(海上保安協会釜石支部)▽海上保安協会東北地方本部長表彰 細川廣行(同)

 

【釜石市「海の日」実行委員会表彰】
◇藤枝宏

 

【優良漁船等表彰】
◇水揚げ優良漁船(沿岸漁業)▽地元=嶋福丸、第八勇漁丸、第三漁裕丸、秀漁丸、第三幸栄丸▽回来=崎浜稲荷丸、第十八権現丸、第十七天王丸、第三大盛丸、第十海光丸、天洋丸◇同(定置網漁業)▽地元=沖網漁場、白崎漁場、汐折漁場、三貫漁場、秋三丁目漁場、四丁目漁場、金島漁場、大建漁場、ほっちょうか漁場、小松漁場▽回来=鬼間ケ崎漁場◇同(サンマ棒受網漁業)▽回来=第八珠の浦丸、第一安房丸◇同(まき網漁業)▽回来=第八十一海幸丸、第三十八海幸丸、第三十三海幸丸◇優良回来船問屋 平庄、回船問屋マルワ、伊藤商店、玉木商事◇優良買い受け人 平庄、玉木商事、伊藤商店

 

【釜石市長表彰】
◇水揚げ優良漁船等▽地元=嶋福丸、第八勇漁丸、第三漁裕丸、釜石湾漁業協同組合▽回来=崎浜稲荷丸、第十七天王丸、第十海光丸、鬼間ケ崎漁場、第八珠の浦丸、第八十一海幸丸◇優良回来船問屋 平庄◇優良買い受け人 平庄

鉱物室で多様な岩石について説明を受ける参加者

〝鉄のまち〟を支えた釜石鉱山に興味津々 三陸ジオの観点から学ぶ

釜石公民館歴史講座 釜石鉱山の成り立ちに驚きと発見

 

公民館の歴史講座で釜石鉱山周辺を散策する参加者

公民館の歴史講座で釜石鉱山周辺を散策する参加者

 

 釜石市大町の釜石公民館(小原圭子館長)は7月30日、同館の事業「みなとかまいし歴史講座」の一環として、三陸ジオパークへの理解を深めるミニツアーを行った。同市のジオサイトの1つ、甲子町大橋の「釜石鉱山」を17人が訪問。釜石繁栄の源となった宝の山に理解を深め、〝近代製鉄発祥の地〟釜石の誇りを再認識した。

 

 市内で3人目、本年4月に資格を取得した「三陸ジオパーク認定ガイド」の藤井静子さん(71)=釜石観光ガイド会事務局次長=が講師を務めた。現地に向かうバスの中で、大島高任によって大橋に洋式高炉が造られた背景を自作の紙芝居などで説明。到着後、旧釜石鉱山事務所周辺を歩き、三陸の大地の成り立ち、金属鉱床がもたらされた理由を解説した。

 

ガイドの藤井静子さんから三陸の成り立ちを学ぶ

ガイドの藤井静子さんから三陸の成り立ちを学ぶ

 

 三陸の大地は、現在の早池峰山から釜石市小川町、栗林町の山中を通る斜めのラインを境に、北部と南部で異なる起源を持つ。南部は赤道付近にあったゴンドワナ大陸から分離した島が、北部は海底にたまった堆積物がそれぞれプレートの移動で北上し衝突。さらにアジア大陸とぶつかった後、地殻変動によって日本列島が大陸から分離し、現在の配置になったとされる。

 

 藤井さんは約5億年前から始まる三陸の歴史を説明。南部は衝突による隆起で険しい山ができ、釜石鉱山は約1億2千万年前に地表付近に上昇してきたマグマと石灰岩などが反応して、豊かな鉱物が形成されたことを紹介した。同事務所内の展示室では「ナウマンの地質図」などを示し、三陸ジオにおける同鉱山の価値をアピール。鉄鉱石は1993(平成5)年まで136年間採掘され、釜石の製鉄業を支え続けたことを明かした。

 

旧釜石鉱山事務所の展示を見学。興味津々で見入る

旧釜石鉱山事務所の展示を見学。興味津々で見入る

 

 鈴子町の松本真弓さん(71)、夕向有子さん(75)は「製鉄業繁栄の背景に、この地に鉱物資源を生む自然界の壮大な変遷があったことに驚く。こんな小さい地域のことから世界が広がるのは不思議な感覚。子どもたちに話せば、夢が膨らむのでは」と話し、太古の地球活動に思いを巡らせた。

 

 ガイドの藤井さんは「釜石が鉄のまちとして栄えたのは、大地の恵みがあったからこそ。釜石の製鉄の歴史と合わせ、三陸ジオにももっと目を向けてもらえれば」と期待を込めた。

 

「鉱山(やま)の宝探し」に子どもも大人も夢中!鉱物標本で夏休みの思い出

 

「何の石かな?」目を凝らし、鉱石を探す子ども

「何の石かな?」目を凝らし、鉱石を探す子ども

 

 釜石鉱山の歴史や鉱物について学ぶ夏休み特別企画「鉱山(やま)の宝探し」(釜石市主催)が7月31日、甲子町大橋の旧釜石鉱山事務所周辺で行われた。市内の親子など30人が参加。日本で初めて洋式高炉による連続出銑に成功した地で、当時の光景を想像しながら釜石の鉄づくりに理解を深めた。

 

 講師は市世界遺産課課長補佐の森一欽さん。始めに同事務所で座学を行い、鉱山の成り立ちや製鉄の歴史を紹介した。同鉱山が発見されたのは1727(享保12)年。南部藩士大島高任は1858(安政4)年、この地に洋式高炉を築き、鉄鉱石を原料とした連続出銑に日本で初めて成功する。1880(明治13)年、鈴子で官営釜石製鉄所が操業を開始すると、同鉱山で採掘された鉄鉱石は専用輸送機関・工部省鉱山寮釜石鉄道(日本で3番目の鉄道)で同製鉄所まで運ばれた。

 

 同鉱山では削岩機で穴を開け、火薬を詰め込んで発破する「坑道掘り」が行われた。1回の発破で掘り進められるのは約1メートル。坑道を全てつなげた総距離は約1千キロに及ぶという。参加者は鉱物室で、鉱山から採れるさまざまな種類の岩石を見学。この後の〝宝探し〟に備えた。

 

鉱物室で多様な岩石について説明を受ける参加者

鉱物室で多様な岩石について説明を受ける参加者

 

 一番のお楽しみ、鉱石の採取は敷地内の一角で行われた。ターゲットは「鉄鉱石」「柘榴(ざくろ)石」「黄銅鉱」「灰鉄輝石」「緑簾(りょくれん)石」「石灰石」など。色や模様を頼りに探し、表面から分からない石は職員に割ってもらって確認した。拾った石は段ボール製の箱に収め、名称を添えて鉱物標本にした。

 

世界遺産課の職員に割ってもらった石を観察

世界遺産課の職員に割ってもらった石を観察

 

 家族4人で参加した新田壮偉君(甲子小2年)は鉄鉱石を見つけ、「磁石が石にくっつくのを初めて見た。鉱石を探すのは面白い」と興味をそそられた様子。「きらきらした石が好き」と話す兄壮真君(同6年)は「5種類ぐらい見つけた。釜石の地質にも興味がある。将来は海外に行って、珍しい石とかを掘って研究してみたい」と夢を描いた。

 

選鉱で出た廃石が積み上げられた堆積場(高さ120メートル)と人工の滝に囲まれ記念撮影

選鉱で出た廃石が積み上げられた堆積場(高さ120メートル)と人工の滝に囲まれ記念撮影

 

 甲子町の佐野茂樹さん(62)は「子どものころ石拾いをした記憶があって、懐かしく思って」と夫婦で参加。「知らなかったことも分かりやすい説明で教えてもらい、とても参考になった。ここはまさに宝の山。時間を見つけてまた来てみたい」。作った標本は「しばらくは眺めて楽しむ。親戚の子とかにも見せてあげたい」と笑った。

「岩手緊急事態宣言」の発令に伴う釜石情報交流センターの対応について

 

8月12日に発令された「岩手緊急事態宣言」に伴う釜石市の指針により、釜石情報交流センターの利用を以下の通り制限させて頂きます。皆様のご理解をよろしくお願いいたします。

新型コロナウイルス感染症「岩手緊急事態宣言」 – 岩手県

情報交流センターへのご入館について

「岩手緊急事態宣言」の発令期間中、一般の方のご入館は釜石市民(市内に通勤・通学等されている方を含む) に限定させて頂きます。ただし、以下の場合を除きます。
・ミッフィーカフェにご来店のお客様
・グッズのご購入のみのお客様
・災害等の緊急事態時
・安全確保上必要な時
・多目的トイレ及び授乳室に限ったご利用
・施設の管理運営業務での立入り
・その他、管理者が許可した場合

施設(会議室等)の貸館について

施設の貸館利用についても、釜石市民(市内に通勤・通学等されている方を含む)に限定させて頂きます。 利用申請者・代表者だけでなく、利用者全員が対象となります。
(会議等のスタッフ及び参加者全員が市民に準ずる方で構成される必要があります)

ミッフィーカフェかまいし』 にお越しのお客様について

入館規制はございませんが、カフェの営業スペース内に限っての滞在をお願いします。お手洗い・グッズ売り場のご利用は可能です。

対象期間

2021年8月13日~当面の間
(岩手県緊急事態宣言が解除され感染拡大の状況が改善されるまで)

フェリアス釜石

釜石まちづくり株式会社

釜石まちづくり株式会社(愛称 フェリアス釜石)による投稿記事です。

問い合わせ:0193-22-3607
〒026-0024 岩手県釜石市大町1-1-10 釜石情報交流センター内 公式サイト

コロナ対策で規模を縮小して行われた戦没者追悼式

戦後76年 出征兵士、釜石艦砲犠牲者らの御霊慰める~市戦没者追悼式~

コロナ対策で規模を縮小して行われた戦没者追悼式

コロナ対策で規模を縮小して行われた戦没者追悼式

 

 太平洋戦争末期、釜石市が米英海軍による2回目の艦砲射撃を受けた日から76年となる9日、市主催の戦没者追悼式が大町の市民ホールTETTOで行われた。参列者を市内の遺族に限定するなど新型コロナウイルス感染防止策を講じ、2年ぶりの開催。56人が参列し、戦争で犠牲になった全ての人々を悼み、非戦の誓いを新たにした。

 

 式辞に立った野田武則市長は「2度にわたる艦砲射撃で多くの尊い命が奪われた。その中に外国人もいたことを決して忘れてはならない。恒久平和の確立へ努力することが国内で唯一の歴史(2度の砲撃被害)を持つ当市に課せられた使命」と述べた。

 

 満州に出征した父(当時27)を亡くした浜町の西村征勝さん(77)=市遺族連合会会長=が、遺族を代表し追悼のことば。「数万人とも言われる日本兵士の亡きがらが異国の地で眠っている現状に胸が締め付けられる思い。一日も早く帰国を果たし、古里で安らかに眠る日が来ることを願う。遺族の高齢化が進み、戦争の悲惨さやつらい教訓が風化しつつある。二度と悲劇を繰り返さないという決意を確実に次の世代に伝えねば」と誓った。参列者は祭壇に花を手向け、犠牲者の冥福を祈った。

 

遺族を代表し、追悼のことばを述べる西村征勝さん

遺族を代表し、追悼のことばを述べる西村征勝さん

 

白菊を手向け、戦災犠牲者の御霊を慰める参列者

白菊を手向け、戦災犠牲者の御霊を慰める参列者

 

 満州に赴いた父(当時33)を亡くした尾崎白浜の佐々木郁子さん(78)は、当時1歳。生前の父の姿は、母や代用教員をしていたころの教え子らから伝え聞くことでしか知るすべはなく、「父親という存在自体がよく分からなかった。若いころは、父が生きていれば自分の生き方もまた違ったのかなと思ったりした」という。「世界では内乱や紛争が絶えない。罪もない一般市民が犠牲になるのは心が痛む。〝平和〟というものほど難しいことはない。人類の永遠の課題」と話した。

 

 同追悼式は新型コロナ感染拡大の影響で昨年度は中止。本年度は、例年行ってきた平和への思い作文コンクール入賞者の朗読、「翳った太陽」を歌う会の献唱、遺族ら一般参列者の送迎バス運行を中止するなど、感染防止策を徹底して開催した。式典時間に参列できない市民らに配慮し、式終了後、午後3時まで献花できるようにした。

 

釜石が受けた艦砲射撃に関する資料展示

釜石が受けた艦砲射撃に関する資料展示

 

 ロビーでは、市郷土資料館所蔵の釜石艦砲に関する資料を展示した。1945年7月14日、8月9日に受けた砲撃状況を示すパネル、焼け野原となった市街地の写真などに加え、戦災犠牲者に関する情報提供を求めるコーナーも。市が確定した艦砲射撃の犠牲者780人以外で、可能性のある191人について特定のための情報提供を呼び掛けたほか、遺族を探して市に寄せられた出征兵士の写真も公開された。

 

写真の男性の情報をお寄せ下さい。お心当たりの方は 釜石市郷土資料館までご連絡を

写真の男性の情報をお寄せ下さい。お心当たりの方は釜石市郷土資料館までご連絡を

 

 写真の裏には、「岩手県釜石市尾崎町 髙橋政男」と記されており、写真を所持していた人が遺族に返したいとの意向で市に提供したという。写真提供者の家は、かつて出征兵士の宿泊所だったため、戦地に赴く途中で宿泊した人だと思われる。心当たりのある人は市郷土資料館(電話0193・22・2046)まで連絡してほしいとのこと。

釜石を発信!「○○(まるまる)のまち」で商品開発続々、かまいしDMC

釜石を発信!「○○(まるまる)のまち」で商品開発続々、かまいしDMC

釜石を発信!「○○(まるまる)のまち」で商品開発続々、かまいしDMC

 

 釜石市の観光地域づくり法人かまいしDMC(河東英宜社長)は、「○○(まるまる)のまち釜石」を発信する新商品の開発に力を入れている。食品加工製造会社や南部鉄器メーカーなど市内外の異業種連携で生み出した海の幸たっぷりの冷凍パエリア、釜石の地層や文化を模した具材を詰め込んだジオ弁を相次いで発売。「鉄と魚のまち」、三陸ジオパークをPRする商品に次いで、「ラグビーのまち」にちなんだ製品の企画も進行中だ。河東社長は、まちを表現する“○○”に当てはめた多様なものづくりを続け、地域を盛り上げていく考えだ。

 

三陸ジオパークPR 地形や文化を表現した「おかず」詰め込むジオ弁

 

一つ一つの料理に関する説明を確認しながらジオ弁を味わう野田市長(左)ら=8月5日、釜石市役所

一つ一つの料理に関する説明を確認しながらジオ弁を味わう野田市長(左)ら=8月5日、釜石市役所

 

 かまいしDMCが、弁当製造や宅配事業を展開するマルワマート(大町)と共同開発したのは「釜石ジオ弁当」。食を通して釜石とジオパークの特長、伝統文化の魅力をアピールしようと企画した。

 

 食材の多くは地元、県産品を活用。花崗(かこう)岩の奇石が敷き詰められた景勝地・御箱崎千畳敷を釜石産ドンコのフライ、ワカメとイカのカレー風炒めで伝統芸能・虎舞を表現するなど、ジオや文化にちなんだ趣向を凝らした「おかず」を考案した。器の“木製わっぱ”には2017年に平田尾崎半島で発生した林野火災の焼損材(スギ)を活用。プラスチックごみの課題解決に向け、環境に配慮した取り組みも導入した。

 

 8月5日には市役所で野田武則市長らが試食。大漁旗をデザインした包装紙の裏面に、おかず一つ一つを紹介する「釜石マップ」があり、確認しながら味わった野田市長は「具材がいっぱいあって飽きない。すごく楽しい」と評価した。

 

釜石の地形や文化を表現した“おかず”が詰め込まれた「釜石ジオ弁当」=8月5日、釜石市役所

釜石の地形や文化を表現した“おかず”が詰め込まれた「釜石ジオ弁当」=8月5日、釜石市役所

 

 修学旅行や企業研修などで訪れた人たちの利用を想定。開発を進めた地域活性化起業人の大窪諒さん(31)は「できるだけ市内事業者の食材を使い、地産地消を目指した。楽しく食べて釜石のことを学んでほしい」と期待した。

 

開発に関わった女性たちも出来栄えを確認。手ごたえを感じていた=8月5日、釜石市役所

開発に関わった女性たちも出来栄えを確認。手ごたえを感じていた=8月5日、釜石市役所

 

 釜石ジオ弁当は1個1000円(税込み)。注文はマルワマートで平日午前8時半~午後2時の間、25個以上から受け付ける(土日・祝日は要相談)。利用日の1週間前までの予約が必要。問い合わせは同社(電話0193・24・3726/FAX0193・55・5108)へ。 

 

「鉄と魚のまち」PR 南部鉄器付き「うにパエリア」

 

海の幸たっぷりのパエリア。試食した女性たちの評価も上々=7月20日、根浜シーサイド

海の幸たっぷりのパエリア。試食した女性たちの評価も上々=7月20日、根浜シーサイド

 

 ジオ弁当に先立ち、開発・販売されているのが「三陸釜石うにパエリア」。新名物にと売り出す「うにしゃぶ」の濃厚スープを使った海の幸たっぷりの冷凍パエリア(800グラム)と南部鉄器製のオリジナル鍋(直径24センチ)を専用ギフト箱に入れて届け、「鉄と魚のまち釜石」を発信する。

 

 パエリアは県産米を使い、うにしゃぶのスープで少し芯が残る程度に炊き上げ、タイのほぐし身やバジルを混ぜ込んだ。具材は県産ホヤ、エビ、イカ、アサリなど魚介に、ブロッコリーやパプリカなど彩り野菜も加えた。鍋は手になじむ取っ手などにこだわった職人技を感じる一品だ。

 

異業種連携で生み出した商品で「鉄と魚のまち」をPRする関係者=7月20日、根浜シーサイド

異業種連携で生み出した商品で「鉄と魚のまち」をPRする関係者=7月20日、根浜シーサイド

 

 鵜住居町の根浜海岸観光施設・根浜シーサイドで7月20日、試食会を開催。「冷凍とは思えないぐらいおいしい」「ウニの風味が豊かで、香りもいい」「家族に贈りたい」などと好評だった。

 

 かまいしDMC、麻生三陸釜石工場(片岸町)、及源鋳造(奥州市)の3者による異業種連携で生まれた商品。開発を進めた大窪さんは「コロナ禍で外食が制限される今だからこそ、ちょっぴり豪勢な料理を家庭で味わったり、大切な人への贈り物にしてほしい」と期待する。

 

「三陸釜石うにパエリア」。南部鉄器の鍋とパエリアの具材が一緒

「三陸釜石うにパエリア」。南部鉄器の鍋とパエリアの具材が一緒

 

 三陸釜石うにパエリアは1セット1万2500円(送料込み、沖縄と離島への配送なし)。かまいしDMCが運営する「岩手釜石オンラインショップ」か、根浜シーサイドで購入できる。

ハマユリの種を手に笑顔でポーズを決める釜石小児童、長谷川代表理事(右)、野田市長(左)

宇宙から帰還、釜石市の花ハマユリの種~花咲く未来に期待

ハマユリの種を手に笑顔でポーズを決める釜石小児童、長谷川代表理事(右)、野田市長(左)

ハマユリの種を手に笑顔でポーズを決める釜石小児童、長谷川代表理事(右)、野田市長(左)

 

 東日本大震災から10年となる今年。被災地の復興を宇宙から発信する「東北復興宇宙ミッション2021」が行われた。被災地から集めたメッセージ、花や農作物の種などを国際宇宙ステーション(ISS)に打ち上げる取り組みで、釜石市も参加。宇宙を旅した市の花ハマユリの種が帰還し、7月26日、市に引き渡された。種は市の担当部局が育て、市内の学校や公園に植える予定。

 

 宇宙ミッションは福島、宮城、岩手の被災3県の市町村で結成する実行委員会の主催。一般財団法人ワンアース(茨城県龍ケ崎市)が企画し、事務局を務める。震災の記憶と教訓、復興支援への感謝を伝えるメッセージや写真、植物の種などを宇宙に送り、3月11日には野口聡一飛行士がISSからメッセージを発信した。

 

 ハマユリの種は平田・佐須地区の岩場から採取。震災の津波で水没したが、その年の夏に花を咲かせ、復興に向かう住民らの支えになったという。6月に米航空宇宙局(NASA)のロケットで宇宙に飛び、ISSに約1カ月“滞在”。7月10日に地上へ戻った。

 

長谷川代表理事(左)から種を受け取る子どもたち

長谷川代表理事(左)から種を受け取る子どもたち

 

 受領式は市役所で行い、実行委事務局長を務める同法人の長谷川洋一代表理事が野田武則市長や釜石小の6年生3人に種を手渡した。長谷川代表理事は「地域を元気に、他のまちと交流していけるか、種を生かした取り組みを考えてほしい。本当の意味はこれから始まる」と期待。野田市長は「大事に育てていく。花に関わる子どもたちの成長も楽しみにしたい」と感謝した。

 

 小澤和史君は「宇宙に行った貴重な種をありがとうございます」とお礼の言葉。防災マップ作りなど震災学習に取り組んでいることを伝え、「震災の出来事、経験した人の思いを語り継ぎたい」と気持ちを強めた。そもそもハマユリの花を見たことがないという佐々木友香さん、関悠汰君は「きれいに咲いたのを見たい」と期待を膨らませた。

稲木誠さんの手記「降伏の時」の複製などが並ぶ

釜石艦砲射撃76年 記録と記憶をつなぐ郷土資料館企画展~市民団体は戦災資料館の再建要望

 76年前の8月9日、釜石市は米英連合軍による2度目の艦砲射撃を受け、市街地は壊滅した。本州で初めて艦砲射撃に襲われた7月14日と合わせて、少なくとも781人もの命が奪われた。時は流れ、当時のことを知る人は少なくなる中、「戦禍の記録と記憶を後世に」つなぐため、鈴子町の市郷土資料館で毎年恒例の戦災資料を集めた企画展が開かれている。反戦平和などを訴える16の市民団体は、今年も震災資料館の再建などを市に要望。「続けることで、過去の事実を知り受け止め、考えてくれる人がいれば。未来に伝えていくために」。そんな思いをくみ取り、地域の歴史を振り返る日に―。

 

捕虜収容所長の手記など集め企画展 郷土資料館「戦争捕虜の記憶、後世に」

 

釜石市郷土資料館で開催中の企画展「釜石の捕虜収容所」

釜石市郷土資料館で開催中の企画展「釜石の捕虜収容所」

 

企画展は「釜石の捕虜収容所」がテーマ。当時、市内2カ所に収容所があり、写真やパネルなど約60点の資料で解説する。初展示となったのは、終戦時に収容所長を務めた故稲木誠さん(1988年死去)が書き残した手記「降伏の時」(複製)。敗戦の日から捕虜を連合軍に引き渡すまでの1カ月をつづっている。戦後、稲木さんが元捕虜のオランダ人と手紙をやり取りして交流し、戦時中の立場を超えて築いた新しい関係を紹介する資料も並んでいる。

 

稲木誠さんの手記「降伏の時」の複製などが並ぶ

稲木誠さんの手記「降伏の時」の複製などが並ぶ

 

 手記に見入っていた盛岡市の藤村幸雄さん(72)は「記憶は消えるが、記録はいつまでも残り説得力がある。当時を知る人が少なくなる今、長い歴史の中にある出来事を、これからを生きる人たちは知るべき。この先のヒントになるものがあるはず」とうなずいた。

 

 釜石は太平洋戦争末期の1945年に2度、連合国艦船による集中砲撃を受け、焦土と化した。戦争捕虜や戦犯裁判の調査を行うPOW研究会などによると、終戦時、市内にいた捕虜は746人。収容中に死亡した65人のうち、32人が艦砲射撃で犠牲になった。

 

戦時中、釜石市内2カ所にあった捕虜収容所を解説する

戦時中、釜石市内2カ所にあった捕虜収容所を解説する

 

 企画展は8月30日まで。午前9時半~午後4時半(最終入館同4時)。入館料は大人200円、小中高校生と障害者手帳を持つ人は無料。同館では「手記により詳細を知る機会が少なかった地域の歴史を掘り下げることができた。戦争という日常とはかけ離れた現実を出発点としながらも、新しい道を作る行動を起こすことの大切さを学ぶ機会に」と来場を呼び掛けている。

 

戦災資料館の再建要請 釜石市平和委員会「平和をつなぐ行動を」

 

戦災資料館の再建などを市に要請する市民団体代表ら=8月4日、釜石市役所

戦災資料館の再建などを市に要請する市民団体代表ら=8月4日、釜石市役所

 

 8月4日には釜石市平和委員会(岩鼻美奈子会長)など15団体が、東日本大震災の津波で全壊した戦災資料館の再建や戦災遺構の保存、戦災教育の充実などを市に要請した。岩手・戦争を記録する会(斉藤三郎代表)も同席し、同様の要請を行った。

 

 市役所を訪れたのは団体関係者ら7人。戦中、釜石艦砲で捕虜など外国人も犠牲になっていることを踏まえた慰霊の場となる追悼碑の建立も要望した。戦災遺構の保存に向け積極的な取り組みの必要性を訴える人も。「あるものすべてが生かされているとは思えない。残されたものを生かしつつ、郷土資料館の展示を充実させてほしい」と求めた。

 

野田市長に要請書を手渡す岩鼻会長(中)、斉藤代表(右)=8月4日、釜石市役所

野田市長に要請書を手渡す岩鼻会長(中)、斉藤代表(右)=8月4日、釜石市役所

 

 要請書を受け取った野田武則市長は戦災資料館の再建について、「単独の施設は計画していない。郷土資料館の中で充実させたい」と回答するにとどめた。犠牲者の慰霊と歴史をつなぐ思いは変わらないことを強調し、「釜石艦砲戦災誌を全面的に見直し、改訂版を出したいと考えている」とした。

 

 戦争を知る人が減り続ける中、「戦争の惨禍を二度と残したくない」と思いを強める団体関係者ら。岩鼻会長は「資料館が果たす役割は大きい。再建して歴史をしっかり伝える必要がある」と指摘する。釜石艦砲の体験者らの証言をまとめた記録映画製作の動きがあるといい、「今やらないと、不可能になる時がくる。子どもたちには平和な世界を手渡したい。平和を望む思いをつなぐため、行動し続けなければいけない」と力を込めた。