山田 龍之介 FWリーダー プロフィール
1991.10.12生/188cm/105kg/北海道出身/立教大卒
釜石シーウェイブスRFC公式サイトプロフィールページ
インタビュー日:2020年12月7日(オンライン取材)
企画・編集:釜石まちづくり株式会社
取材・文:市川 香織(釜石まちづくり株式会社)
写真:西条 佳泰(株式会社Grafica)
伸びしろを感じながらも“もっと出来た”という悔しい気持ちが
2019.11.16 コカ・コーラレッドスパークス戦@釜石鵜住居復興スタジアム
ーー昨シーズン(トップチャレンジリーグ:TCL)を振り返って。RWC開催後の熱も冷めやらぬ中でのリーグ開催でした。どんなシーズンだったでしょう?
山田FWリーダー:
ラグビー自体への注目がすごく高くて、それはもの凄くありがたい事だし嬉しい事だと率直に思いました。
だけど、それと“僕らがどういうラグビーをするか?”という事自体は、あまり直接は関係ないのかなとも思っていました。
もちろん、お客さんがたくさん観に来てくれるからには情けないパフォーマンスは出来ないけど、そもそもお客さんがいるかいないかに関わらず、“しっかりと自分たちのラグビーをやる”という事を考えてやっていました。
結果として、目標としていた順位を達成出来たんですけど、内容はまだまだ改善すべき所がいっぱいあって、特に“チームとしてラグビーをする”という事が足りなかったなと、プレーをしていて感じました。
個人個人の良いプレーや、相手のミスに付け込んだりと言った部分で、何とか4位に入ることは出来ましたが、自分達の形や本来持っている実力を出せれば、もっと上の順位を狙えたシーズンだったと思うし。
そういう意味では、“伸びしろ”をすごく感じながらも、“もっと出来たな”という悔しい気持ちと言うか、“もったいなかったな”という気持ちが結構大きかったですね。
ーーそして、昨シーズンはロック(LO)5番で全試合スタメン出場されました。
山田FWリーダー:
春から1年間ずっと試合に出させてもらって、今までいたチームではなかなか1年間を通じて出続けるという事が無かったので、本当に嬉しいしやりがいもすごくあったんですけど、逆にコンディションを保ち続ける難しさを感じました。痛い所は誰もが少しは抱えている中で、試合に向けてコンディションを作っていくので。
ただ、選ばれて試合に出るからには、出られないメンバーの為にも情けないプレーは出来ないし、自分の責任をしっかり果たさなきゃいけないっていう、その責任感とすごく嬉しいという部分とどっちもあったかなという感じです。
ーー全国的に“コロナ禍”でチーム活動が出来ない時期は、どのように過ごされていましたか?
山田FWリーダー:
僕自身、ちょうどこの4月からプロ選手契約に切り替わった所だったんですが、その矢先にチーム活動が休止になり、最初は時間ばかりがたくさんあって、どうしたらいいんだろう…というのがありましたね。
その中で、ラグビーをしてお客さんに観てもらうという関わり方が出来ない中で、僕らはラグビー選手として、どういう風に社会に対して価値を提供して行けるのかという事を考えていて。もちろん、個人で出来るトレーニングはやっていたんですけど、それとは別にSNSとかでファンの皆さんとの繋がりを持っていこうと。
チームがもっと色々な発信をしていけばいいのにな・・・ということを昨年から思っていた中で、コロナ禍において色々なチームや選手が面白い発信をしているのを見て、チーム任せにせずにまずは自分でやってみようと。
発信の少ない「閉じた」チームであることによる心理的な距離に加えて、地理的な距離もある皆さんにも、少しでも僕たちの様子を知ってもらえるように、そうした点をカバーする為に「釜石では今こんな事をしています」などをSNSで発信して行けたらいいなと思い、そういう活動を選手主体で始めてみたりしていました。
釜石シーウェイブスRFC Instagram
今の状況の中で最大限のベクトルを自分に向けて
2020.11.8 秋田ノーザンブレッツRFC戦@あきぎんスタジアム
ーーラグビーへの取り組みに対して、変化した事は何かありますか?
山田FWリーダー:
前々からそういう考えではいたんですけど、今回のコロナ禍を機に、“現状で何が出来るか?”という事をより考えるようになりました。
無いものねだりと言うか、やりたい事とか無い物を求めてばかりではなくて、今ある状況だとか今ある条件の中で、どれだけ最大限のベクトルを向けて自分を高めることに注力出来るか?そういう考えではいました。
ーーそして、今季は“フォワード(FW)リーダー”に就任。早い時期に決まっていたのでしょうか?
山田FWリーダー:
3月の終わりくらいですかね、コロナ禍でチーム活動が休止になる前に2週間くらいだけ活動を出来た期間があって、その時に坂下さん(総監督)からお話をもらい、断る理由もないので、「精一杯やらせてもらいます」という事になりました。
ーーオファーの時は、坂下さんからどのような言葉をかけられたんですか?
山田FWリーダー:
言葉としては「FWリーダーをやってくれ」との一言だったんですけど、僕自身、年齢的な事や昨年ずっと試合に出させてもらっていたという立場で、役職に就く、就かないに関わらず、リーダーシップは発揮して行かなきゃいけない立場にあるとは思っていました。
今回、坂下さんが総監督になられて、全体のミーティングの時に坂下さんの熱い想いを感じ、「やってくれ」というその一言から気持ちも伝わって来たので、その気持ちに応えたいなと思いました。
ーーリーダーになって、“自分に何かを課している”とかそういう事はありますか?それとも、今まで通りの自分で…という感じですか?
山田FWリーダー:
今まで通りではたぶんダメだと思っています。
プロ契約にしてもらった事についてもそうですし、社員選手(企業に勤めながらSWに参加している選手)は日中は仕事を頑張って、それプラス仕事が終わってからラグビーをしているので、そういう選手が仕事をしている間に、プロ契約選手が練習や試合の映像をしっかりと見たりして、練習の時にどうフォーカスしていくのか?という事を考えて行く事もそうですし。
プロ契約選手になったという事も合わせて、FWリーダーとして、プレーで引っ張って行くというのは今まで通りかもしれないですけど、FW全体にアプローチしていく必要があるだろうなと思うので、そこを改善するようにはしています。
2020.10.10 クボタスピアーズ戦@釜石鵜住居復興スタジアム
ーー昨年までは山田選手も働きながらラグビーをされていましたが、プロ契約選手になって、仕事に充てていた時間をチームに還元する・・・という事ですね。
山田FWリーダー:
さっき述べたSNSとかもそうですし、僕自身も家族がいて時間を取られることもあるんですけど、社員選手と比べたら時間はあると思うので、負担を少しでも減らしてあげたりとか、社員選手がラグビーに100%集中出来るような手助けが少しでも出来たらなと思います。
ーー今、“家族”という言葉が出ましたが、コロナ禍になって普段の生活の中で何か変化はありましたか?
山田FWリーダー:
去年1年間は単身赴任で、一人で釜石に来ていたんです。妻は東京の会社で仕事をしているので。
でも、このコロナ禍で、妻がリモートワークで仕事を出来るようになったんですね。それで、妻と子供も釜石に来られて。最初は暫定的に短期間でという感じだったんですけど、調整しながらその期間が段々と伸び、一旦長期的にこのまま釜石でリモートワークをしていいよという事になり、5月くらいからずっとこっちに家族で住んでいます。
家族はずっと東京に住んでいて、コロナ禍によって子供たちは公園とかでも遊べなかったので、こっちでは自然の中でいっぱい遊んだり、貴重な経験が出来ているし、僕も出来るだけそうさせてあげたいなと思い、家族との時間を出来るだけ取るようにしています。
ーーそれから、山田選手は読書家でいらっしゃると思うのですが、この期間に読んだ本でおすすめの本があれば教えてください。
山田FWリーダー:
そうですね、おすすめというか、このコロナ禍になるちょっと前に読んだ、去年のベストセラーで『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』という本があるんですけど。事実を変に曲解するのではなく、きちんとしたデータなどを見ながらしっかりと事実に目を向けましょう・・・という物の考え方の本で、それがすごく今回のコロナ禍において、僕自身その考え方がすごく大事かなと思いましたね。
もちろん、感染症に対する恐れは必要だと思うんですけど、変に怖がるのではなくて、WITHコロナとかいいますけど、しっかりと事実に目を向けてしっかりと向き合うというか。怖い怖いと言っていても感染症がなくなるわけではないので、今ある現状の中で“何が出来るか?”という事をすごく考える役にたちました。個人的には。
“釜石”という町の“僕らシーウェイブス”
2020.9.5 ヤマハ発動機ジュビロ戦@釜石鵜住居復興スタジアム
ーー9月5日のヤマハ戦からプレシーズンがスタートし、あっという間に12月です。ここまでどうでしょうか?
山田FWリーダー:
コロナ禍の中でのスタートだったので、チームとしても個人としてもすごく“手探り感”がある中で、本当にあっという間に12月になったなというのが率直な所です。
ただ、もうシーズンの開幕は1月からと決まっていますし、あと1ヶ月しかない中でコロナ禍が明けてシーズンが開幕するという状況は考えられないので、そこはしっかり切り替えて、コロナと共にやっていかなきゃいけないシーズンだということを、もう一度チームでマインドセットしなきゃいけないのかなと思っています。
ーー須田FWコーチが、シーズン前のFW合宿が“一番重要”と話されていたのですが、その合宿を経てFWの今の状態はいかがですか?
山田FWリーダー:
すごく良いキャンプだったなと思っています。外国人選手の合流が遅かったという事もあって、なかなかプレーの細かい部分が合わないという事が結構あったんですけど、合宿に入って、コロナ禍なので外出も出来ないですから一緒に過ごす時間も自ずと長くなって、その中で外国人選手ともコミュニケーションを取れて、それがプレーにも出て来てだんだんと合うような感触になってきているので、FWとしてのまとまりが得られた合宿だったと思います。
ーープレシーズンの試合をここまで何試合が見させていただいて、スクラムやラインアウトもチームが目指す形が“カチッと”出れば強いなと感じていますが、その辺りはどうですか?
山田FWリーダー:
特にスクラムの部分では、一つ目指す形というのを春先からずっとFWみんなでフォーカスし続けてきて、本当に全員がそこに向かえるようになった時はすごく良いスクラムが今組めていると思います。
合宿で東芝と組んだ時やNECと対戦でもすごく手ごたえがありました。
あとは、ラインアウトも目指す形があるんですけど、まだ少し各々の考えの元でプレーしてしまっている部分があるのかなと思うので、それぞれが自分の良いと思う形でやるよりも、その人にとっては少しやりづらいかもしれないけれども、チームとしてのやり方に100%フォーカスした方が全体としてのパフォーマンスは上がると思うので、その意識を合わせるという点をシーズンに向けてもう少しやって行きたいです。
ーーFWが目指す所を“10”とすると、今はいくつくらいの感触ですか?
山田FWリーダー:
個人的には“5”とか…半分まで来たか来てないかくらいだと思います。
ただ、大きい外国人選手が入って来た事とか、全てがかみ合った時にすごく強い力が出せるFWだとは感じているので、その“伸びしろ”を考えた上でまだ“道半ば”というか、そのくらいじゃないかなと思います。
ーー最後に、今季の抱負をお願いします。
山田FWリーダー:
まず僕個人の話からすると、基本的には今までとそんなには変わらないですが、漠然とした感じになっちゃいますけど、しっかりとチームに対して責任を果たすという事と、スコット(ピアースヘッドコーチ)も選手に対してよく言っているんですけど、釜石SWのジャージに誇りを持ち、パフォーマンスにプライドを持ってやって欲しいと。そこは本当に大事にしなきゃいけない部分だと個人的には思っています。
僕らは、一企業のチームではなくて、“釜石”という町の“僕らSW”なので、その釜石の町を代表して戦っているという事、釜石を代表して戦えることにいつも誇りを持って、チームに対しても釜石に対してもしっかりと責任を果たすという事を考えてやって行きたいです。
チームとしては、トップチャレンジリーグ(TCL)で上位に入ればトップリーグセカンドステージに進出出来るので、まずはそこをしっかりと、TCLで上位に入れるようにという所にフォーカスして、年明けの試合から頑張ります。
チーム活動情報、リーグ戦日程等の最新情報は、先日リニューアルされた釜石SW公式サイトをご覧ください。
https://www.kamaishi-seawaves.com/