震災後も息づく豊かな自然〜鵜住居川河口で野鳥観察会、カモ、サギ、トビなど30種を確認
鵜住居川河口近くの浅瀬に集まる「アオサギ」の群れ。観察会では上空を飛ぶ姿も見られた
釜石市の鵜住居川河口周辺で13日、「水辺の鳥観察会」が開かれた。市生活環境課が行う、自然に親しむ市民のつどい事業の一環。「野鳥の宝庫」として知られる、この場所での野鳥観察会は震災後初めてで、参加者は現在の生息状況や震災前後の河川環境の違いが野鳥に与える影響などについて理解を深めた。
ガイド役の釜石野鳥の会(臼澤良一会長、8人)会員を含め、約20人が参加。鵜住居復興スタジアムの施設内で、同河川周辺で見られる野鳥について学んだ後、実際の観察に向かった。工事中の水門付近からスタジアム側の堤防沿いを歩き、水辺に憩う鳥や上空を飛び交う鳥の姿を肉眼や双眼鏡、フィールドスコープで追った。
双眼鏡などで野鳥の姿を観察する参加者
水面に浮かぶ複数種のカモ、中州に集まるアオサギ、風に乗って滑空するトビなど大小さまざまな鳥が見られた。急降下時には時速300キロにもなるというハヤブサ、翼と尾に生えた黄色い羽根が特徴のカワラヒワも確認でき、参加者は野鳥の会会員の解説に興味深げに聞き入った。
翼を広げ、悠々と飛び回る「トビ」。複数羽が見られた
1時間余りの観察で留鳥と渡り鳥計約30種類を確認。この日は時間の都合で行けなかったが、対岸の片岸側にも足を延ばせば、さらに多くの種類が見られるという。
大渡町の小田嶋祐希さん(27)は、狩りの際に野を擦るように地面すれすれを飛ぶことが和名の由来とされるタカの仲間「ノスリ」に感激。「じっくり見られたし、解説も勉強になった。これだけ種類が多く見られるということは、自然が豊かな証拠。大きなワシとかも見てみたい」と次の機会に期待した。
県内有数の野鳥生息地として知られてきた鵜住居川河口周辺は、2011年の震災津波で大きな被害を受け、川の形状が一変。野鳥のすみかとなる豊富な木々やヨシ(アシ)原も失われた。9年以上が経過し、現在のスタジアム前の河川環境は徐々に戻りつつあるが、片岸町の防潮堤内側を含む震災前の広範囲な生息域に近づくには、まだ時間がかかるとみられる。
津波で多くの植物が失われた鵜住居川=2011年4月
鳥の隠れ家となる草地が再生してきた現在の鵜住居川
臼澤会長(72)は「個体数は減っているが、周辺にもっと草木が生い茂るようになれば、震災前のような種類、数が見られるようになるのではないか。水門付近に整備中の片岸公園には生態園をイメージした池も造られている。4、5年後には、多くの野鳥が集まるゾーンができてくるのでは」と話した。
復興釜石新聞(合同会社 釜石新聞社)
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