近代製鉄発祥の地
釜石市橋野町 橋野高炉跡
橋野鉄鉱山・高炉跡の世界遺産登録決定!
2015年7月5日、ドイツのボンにて開催されていた第39回世界遺産委員会にて、釜石市の橋野鉄鉱山・高炉跡を構成資産とする「明治日本の産業革命遺産」の世界遺産登録が決定いたしました。
【世界遺産登録決定】明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業
日本で最初の洋式高炉
釜石では平安時代頃より製鉄が行われていましたが、花崗岩に含まれる砂鉄が原料でした。1727年(享保12年)、盛岡藩の阿部友之進によって釜石の西方(現在の大橋地区)で良質な磁鉄鉱が発見されましたが、藩はその開発を禁じました。
時は流れて幕末の安政4年、盛岡藩士であった大島高任により大橋に西洋式高炉が建造されると、大島は国内で初めて鉄鉱石を原料とした連続生産に成功。その日が12月1日(新暦で1858年1月15日)であったことから、現在でも12月1日は「鉄の記念日」として大島の功績を讃えています。ここに釜石が「日本の近代製鉄発祥の地」と呼ばれる所以があり、ここから日本の産業革命が始まったと言っても過言ではありません。
左:大橋磁石岩絵図 / 右:大島高任(写真=釜石市/転載禁止)
大橋鉄鉱山(写真=釜石市/転載禁止)
明治初期〜国内初の製鉄所と製鉄事業の模索
明治になると、新政府によって大橋の鉄鉱山を活かした製鉄事業が模索され、1880年(明治13年)には官営釜石製鉄所が国内初の製鉄所として操業を開始。これに伴い、1872年(明治5年)には測量から製図まで日本人のみで作られた国内初の海図が釜石港で作成され、1880年(明治13年)には国内で3番目となる鉄道が釜石に開通しており、日本近代の黎明期における釜石の重要さを物語っています。
明治初期の官営製鐵所(写真=釜石市/転載禁止)
工部省釜石鉄道同型(写真=釜石市/転載禁止)
官営製鉄所は残念ながらわずか3年で閉鎖。その後、「鉄商」と言われた東京の田中長兵衞に払い下げられ、初代所長に横山久太郎が就任しました。そして、官営時代から在籍していた釜石出身の高橋亦助らが、大島がつくったものと同型の高炉を含む小高炉2基を築造して試験操業を重ね、1886年(明治19年)10月16日、49回目にして連続操業に成功します(この10月16日は、釜石製鉄所の創立記念日とされています)。
49回目にして出銑に成功した高炉(写真=釜石市/転載禁止)
明治中期〜鉄鋼業の本格化
その後、田中製鉄所は高炉を増設して大きく発展していきます。そのような中、1894年(明治27年)、帝国大学工科大学教授野呂景義が官営時代の高炉を改修し、燃料も木炭からコークスにかえることに成功し、たたら製鉄での生産量を追い越しました。この成功をもとに、八幡製鉄所の建設が議会を通り、その建設には釜石からも職工や技師が派遣されました。
25t高炉(写真=釜石市/転載禁止)
昭和〜戦後の復興と発展〜現在
その後、明治から大正、昭和にかけて、鉄鋼業と製鉄技術の発展とともに釜石製鉄所の規模も大きくなっていき、日本の近代化を支えてきましたが、1945年(昭和20年)7月14日の日本本土初の艦砲射撃と、8月9日の2度目の艦砲射撃で製鉄所は壊滅状態となり、釜石の市街も甚大な被害を受けました。
艦砲射撃後の只越町〜大町〜大渡町周辺(写真=釜石市/転載禁止)
戦後は、ようやく1948年(昭和23年)に第十高炉の火入れ式が行われると、本格的な操業を再開。開業時の東海道新幹線にも用いられた高品質のレールを主力とする国内有数の製鉄所として発展していきます。1963年(昭和38年)には釜石の人口もピークを迎えますが(約9万1000人)、東海、君津といった新製鉄所の建設や合理化とともにその規模は縮小を続け、1989年(平成元年)に釜石製鉄所の高炉の火は消えてしまいました。現在では、自動車のタイヤに用いられるスチールコード用線材などを製造していますが、その品質は世界でもトップクラスであり、今も「釜石ブランド」が守られています。
昭和23年 第十高炉火入れ(写真=釜石市/転載禁止)
世界遺産〜明治日本の産業革命遺産
大島高任が建造した橋野高炉跡は、今日も悠久の時を刻みながら現存しており、国の文化財(史跡)に指定されているほか、「明治日本の産業革命遺産」の構成資産として、2015年7月5日、ドイツのボンにて開催された第39回世界遺産委員会において世界遺産登録が決定しました。
市内では、橋野高炉を原寸大で再現した模型や貴重な歴史資料などが展示されている「釜石市立鉄の歴史館」や、橋野高炉跡に隣接した青ノ木グリーンパーク内の「釜石市橋野鉄鉱山インフォメーションセンター」にて、国内における鉄づくりの歴史や釜石の鉄との歩みについて学ぶことができます。
釜石市立鉄の歴史館
釜石市橋野鉄鉱山インフォメーションセンター
《橋野高炉跡 – Google ストリートビュー》
《関連リンク》
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