「復興の火」に点火する達増知事=22日、宮古駅前で
東京五輪の聖火を東日本大震災の被災地に展示する「復興の火」が22、23の両日、本県をめぐった。22日は、20日に運行を再開したばかりの三陸鉄道で宮古から釜石駅までの鉄路を縦断。釜石からはJR東日本が釜石線で運行する「SL銀河」にリレーし、花巻駅までを巡回した。沿線の住民らは、ゆらめく炎に五輪の成功を願い、震災からの復興完遂へ思いを重ねた。
出発式典は宮古市栄町の宮古駅前で行われ、地元住民ら約500人が震災犠牲者に黙とうをささげた。達増拓也知事は「復興への歩みはたゆまず進んでいる。国内外からの支援への感謝、復興への誓いをこの火に込め、岩手から送り出す」と宣言し、聖火皿に点火。その後、ランタンに移した火を三鉄の特別列車で運んだ。
聖火は宮古駅を皮切りに、陸中山田駅、大槌駅、釜石駅、上有住駅、遠野駅、花巻駅の駅前7カ所で展示。小雨模様の中、各地で住民らが大漁旗や小旗を振って歓迎し、家族連れなどが列をつくって記念撮影した。
聖火のランタンを受け取り、「SL銀河」に託す野田市長=釜石駅で
釜石駅には午前11時ごろ到着。駅前の「復興の鐘」の下に置かれた聖火を撮影しようと並ぶ家族連れなど長い列ができた。
6月18日に釜石市で予定される聖火リレーのランナーに決まっている三上雅弘さん(56)=北九州市任期付職員=は「復興の火」の前で妻真江子さん(58)と仲良く記念撮影。「新型コロナウイルス感染拡大で聖火リレーができるかどうか心配」としながらも、「この火が震災で被災した東北各地をめぐると思うと感慨深い。この手でしっかりと勇気をつなぎたい」と力を込めた。
小佐野小を卒業し来月から釜石中に進む宮本一輝君(12)は「聖火はもっと大きなものかと思っていた」としながらも、「コロナに負けず、みんなを元気にしてほしい」と願いを込める。妹の聖良さん(10)は「この目で聖火が見られるのは一生に一度。すごく楽しみにしていた」と声を弾ませた。
感染が広がる新型コロナウイルス防止のため記念写真におさまる家族連れもマスク姿で
家族4人で足を運んだ赤坂柊馬君(平田小6年)と弟の瑛丈君(同4年)は「『復興の火』という名前がすごい。小さな炎だけど見られて良かった」と口をそろえる。盛岡市に単身赴任している父敦史さん(40)は「初めてオリンピックを身近に感じることができた。前回の東京五輪が行われたのは私が生まれる前。大イベントをこうして体感できる子どもたちがうらやましい」と目を細めた。
西東京市から駆け付けた会社員辻本一夫さん(56)と妻由加里さん(56)は「SL銀河」の大ファン。毎年1回は本県に足を運び、SLの旅を楽しんでいる。「来るたびに被災地の復興を感じる。今回は五輪の火と記念撮影できてラッキー」と喜んだ。
釜石駅前からホームに運ばれた聖火をSLの乗務員に託した野田武則市長は「小雨模様の中、こんなに多くの人が集まり、東京五輪への関心の高まりを感じた。コロナウイルスに打ち勝ち、成功してほしい」と願った。
(復興釜石新聞 2020年3月25日発行 第878号より)
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