チューリップの芽、シカに食べられる〜大町青葉通り住民、もうすぐ開花も落胆


2020/03/18
復興釜石新聞アーカイブ #地域

シカに食い荒らされた青葉通りの花壇。住民らはシカの侵入を防ぐ対策に苦慮している

シカに食い荒らされた青葉通りの花壇。住民らはシカの侵入を防ぐ対策に苦慮している

 

 釜石市中心市街地の住民らが整備を行っている大町青葉通りの花壇で、芽を出し始めたチューリップのほとんどがシカに食べられる被害に遭った。季節によって多彩な花を植栽し、道行く人の目を楽しませていただけでなく、活動する住民らの交流の場にもなっていた花壇。住民らは「手を掛けて頑張ってきたのに…がっくり」と肩を落としている。

 

 同通り沿いに立つ大町復興住宅2号棟(29戸)と3号棟(34戸)の入居者を中心に、周辺の地域住民も参加する「あおば花っこ会」(山﨑太季子代表)が3年ほど前から整備する。花を通したコミュニティーづくりを目的に、2号棟の前にある6つの花壇に植栽。月1回集まり花壇の手入れをしている。

 

 花壇には昨年秋に200株近いチューリップを植えていた。活動を始めた頃から食害には遭っていたが、ほとんどを食べられるのは初めてのこと。同通り周辺は日中、交通量が多いためシカは深夜から早朝にかけ出没し、一部を残し食い荒らされてしまった。

 

 かろうじて残ったチューリップを守ろうと、プランターに植え替える対応も。花が大好きで、彩り豊かな花壇の整備を楽しんできた2号棟の今出ヒデ子さん(84)は「もう少しで花が咲くはずだったのに残念」と、ため息交じりにつぶやいた。

 

 花壇周辺はシカの足跡やフンが残っており、山﨑代表は「食害防止の対策が必要だと話していたが、市が管理する花壇を借りて活動しているので対応に困っている」と苦慮。ただ、ハーブ系植物のある花壇などは被害が少なく、「何か手だてにつながるかも。いろんな知恵を借りながら活動を続けていきたい」と模索している。

 

 市中心部では東日本大震災後、シカが多く目撃され、農林業被害だけでなく一般住家の庭木などの食害もある。市農林課林業振興係によると、被害に関する相談などは一定程度あるが横ばい。シカ用防護網や電気柵の設置など対策に取り組んできた。

 

 釜石地域は急峻(きゅうしゅん)な山に囲まれ、山と住家の距離が比較的近い。住民の中には「ある程度の被害は仕方がない」と諦め声を漏らす人も。特に街なかは多様な人が行き交うため、防護網や柵の設置は難しい面もある。

 

 市ではシカが山から下りてくると見られるルートにわなを設置し捕獲する対策も実施。その数は年間1千頭を超え、最近街なかでの目撃は少なくなっている。

 

 今回の青葉通りでの被害について、同係の川崎克係長は「わなを設置していないところを見つけ、下りて来たのかもしれない」と対策の難しさをにじませる。

 

 市内ではシカだけでなくハクビシンなどの食害も発生。鳥獣被害に関する問い合わせや相談を受けている川崎係長は「助言したり、できることを考えていく」とした。

 

(復興釜石新聞 2020年3月11日発行 第874号より)

 

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