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紅葉の橋野に3年ぶりのにぎわい 「水車まつり」で祝う実りの秋 豚汁やそばに舌鼓

人気の餅まきでにぎわう「第16回水車まつり」

人気の餅まきでにぎわう「第16回水車まつり」

 
 農作物の収穫を祝う釜石市橋野町の「水車まつり」は6日、産地直売所・橋野どんぐり広場周辺で開かれた。橋野町振興協議会(和田松男会長)、栗橋地区まちづくり会議(洞口政伸議長)が共催。新型コロナウイルス感染症の影響で2年間の中止を経ての復活開催となり、待ちわびた約430人が餅まきや豚汁の振る舞いなどを楽しんだ。食、文化、自然と地域の魅力を堪能できるイベントは16回目を迎えた。
 
 青空に映える山々の紅葉に囲まれた会場。祭りは恒例の餅まきで幕を開けた。手作りの祝い餅約1千個を軽トラックの荷台から豪快にまいた。老若男女が「こっち、こっち」と手を伸ばし、久しぶりのにぎわい風景が広がった。
 
主催団体の代表らが紅白の祝い餅を豪快にまいた

主催団体の代表らが紅白の祝い餅を豪快にまいた

 
餅まきを楽しむ来場者。まつりを代表する光景

餅まきを楽しむ来場者。まつりを代表する光景

 
 野菜をふんだんに使った豚汁は約300食を用意し、無料で提供。手打ちそば、きびの焼き団子、雑穀おにぎりなどは約100~300食を各100円で販売した。野菜や穀物はいずれも地元産。良質食材と地域の食の技で生まれる味覚を求めて、長蛇の列ができた。2018年から同祭りに協力する鵜住居公民館の自主グループ「そばの三たて会」(奥山英喜会長)は、そば打ちで力を発揮。振興協女性部とともに前日から準備にあたった。全メニューは昼前に完売する盛況ぶりを見せた。
 
豚汁は無料でお振る舞い。この味を求めて多くのファンが訪れる

豚汁は無料でお振る舞い。この味を求めて多くのファンが訪れる

 
きびの焼き団子は炭火で香ばしさアップ。みそだれも食欲をそそる

きびの焼き団子は炭火で香ばしさアップ。みそだれも食欲をそそる

 
 川崎花音さん、心花さん姉妹(鵜住居小4年)は「栄養たっぷりの野菜が入った豚汁、みそだれがかかったきび団子がおいしかった」、いとこの川口梨沙さん(同)は「餅をいっぱい拾った」と笑顔満開。周辺の紅葉にも目を見張り、「赤、黄、オレンジといろいろな色が交ざってきれい。秋だなーって感じる。ずっと見ていたい」と口をそろえた。
 
 甲子町の佐藤高正さん(74)は市広報を見て妻らと初めて来場。「こんなに人出があるとは驚き。一通り食べたが、どれもおいしい。天気もいいし、川と水車、紅葉が織りなす景色は最高」と祭りを満喫。橋野に来る機会はあまりなく、「こういうイベントがあれば足が向く。長く続けてほしい」と望んだ。
 
橋野自慢の味に子どもたちもこの笑顔!箸が進む

橋野自慢の味に子どもたちもこの笑顔!箸が進む

 
赤ちゃんもおいしい豚汁をもぐもぐ。家族で橋野の味を堪能

赤ちゃんもおいしい豚汁をもぐもぐ。家族で橋野の味を堪能

 
 産直近くの親水公園内にある水車小屋では、きねでもみ米をつく実演も。これで精製した米は風味が違うという。この日は来場者が米を持ち込む姿もあった。大きな水車が回る農村風景は今ではなかなか見ることができない。水車の前では記念撮影を楽しむ家族連れらが目立った。水車小屋の裏手には「ママシタの滝」があり、こちらも撮影スポットとなった。
 
かやぶき屋根の水車小屋(左上写真)。来場者は水の力で回る大きな水車の迫力を楽しんだ

かやぶき屋根の水車小屋(左上写真)。来場者は水の力で回る大きな水車の迫力を楽しんだ

 
 水車まつりは、同町で年間を通して行われる「はしの四季まつり」の一つ。コロナ禍で20年からは全祭りの中止が続いていたが、本年は春の八重桜まつり、夏のラベンダーまつりを観賞会という名目で実施。今回の水車まつりは本格復活の第一歩となり、ほぼ例年規模での開催が実現した。
 
 同振興協の和田会長は「市内の感染状況も落ち着いており、『そろそろ動き出したい』との思いがあった。協議会内でも開催への前向きな意見が多く、みんなの強い気持ちが復活を後押しした」と説明。3年ぶりの活気に「よかったねぇ~。ほっとする光景」と目を細め、「来年はニジマス釣り大会を含め、全まつりができるようになれば」と心から願った。

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2基のみこし、曳き船に市民ら感涙 3年ぶりの釜石まつり コロナ禍からの復活に力

釜石まつり(尾崎神社、日本製鉄山神社合同祭)=16日、薬師公園御旅所

釜石まつり(尾崎神社、日本製鉄山神社合同祭)=16日、薬師公園御旅所

 
 釜石市浜町の尾崎神社と桜木町の日本製鉄北日本製鉄所釜石地区山神社の合同祭「釜石まつり」(同実行委主催)は14日から3日間にわたって行われた。新型コロナウイルス感染症の影響で中止が続いていた同市最大の秋祭りが3年ぶりに復活。15日は釜石湾内で曳き船まつり(尾崎神社海上渡御)、16日は市中心市街地で両神社のみこし渡御を繰り広げ、まちに活気をもたらした。参加者、観客ともに大きな喜びに包まれ、地元の宝を再認識。コロナ禍からの脱却に大きな弾みをつけた。
 
曳き船まつり(尾崎神社海上渡御)は4年ぶりの開催=15日、釜石港

曳き船まつり(尾崎神社海上渡御)は4年ぶりの開催=15日、釜石港

 
 尾崎神社奥宮のご神体をみこしに迎え、海上を渡御する曳き船まつりは、江戸時代から続く伝統神事。海上安全や豊漁などを祈願する。コロナ前の2019年も悪天候で中止されたため、今回は4年ぶりの開催。魚河岸の市魚市場前から出港した14隻の船団は尾崎半島青出浜にある奥宮にご神体を迎えに行き、午後0時半ごろ帰港。大漁旗をなびかせた各船は港内を3周した。船には神楽や虎舞の郷土芸能団体が乗り込み、にぎやかなおはやしや舞を披露。みこしを乗せた御召船第18宝生丸(釜石湾漁協)が岸壁に近づくと、見物客が手を合わせた。
 
色とりどりの大漁旗をなびかせ進む漁船=釜石市魚市場前

色とりどりの大漁旗をなびかせ進む漁船=釜石市魚市場前

 
船首でちょうちんを掲げ、舞を見せる錦町虎舞

船首でちょうちんを掲げ、舞を見せる錦町虎舞

 
船が岸壁に近づくと、互いに手を振ったり声を掛け合ったりした

船が岸壁に近づくと、互いに手を振ったり声を掛け合ったりした

 
 北上市の川﨑千鶴子さん(61)は「震災前に見て以来。コロナで気持ちが落ちている時だけに気分が上がる。浜ならではの威勢の良さも魅力」と大喜び。釜石・甲子町に暮らす義母妙さん(84)は「いい天気に爽やかな海風。最高の祭り日和。若いころは自分も船に乗った。その時のことが懐かしく思い出される」と息子夫婦と心を躍らせた。
 
 第18宝生丸の乗組員大向孝哉さん(60)は久しぶりの高揚感を味わい、「毎年のことだから、やっぱりこれがないとね。コロナを吹き飛ばすような活気」と復活を歓迎。サケ、サンマ、イカと不漁続きで漁業は厳しい状況に置かれるが、「とにかく魚がとれることを願うばかり。尾崎の神様に海の環境回復を祈る」と思いを込めた。
 
海上渡御を終えたみこしは浜町の尾崎神社里宮へ

海上渡御を終えたみこしは浜町の尾崎神社里宮へ

 
 両神社の合同みこし渡御には郷土芸能9団体を含む約800人が参加。鈴子町の釜石消防署脇駐車場で合同祭の神事を行った後、午後0時半ごろ行列が出発。大渡町から魚河岸まで市中心部の目抜き通りを2基のみこしが練り歩いた。先導した郷土芸能団体は大町から只越町間の路上で演舞を披露。沿道に詰めかけた大勢の観客の前で魂のこもった舞を見せた。
 
大渡町を練り歩くみこし渡御行列(右下拡大:平田神楽)=16日

大渡町を練り歩くみこし渡御行列(右下拡大:平田神楽)=16日

 
東前太神楽も頭をつけて舞いながら進む

東前太神楽も頭をつけて舞いながら進む

 
親子虎共演!幼児の舞い手も活躍した尾崎町虎舞

親子虎共演!幼児の舞い手も活躍した尾崎町虎舞

 
 薬師公園御旅所で神事を行った両神社のみこしは、並んで通りをゆっくりと進んだ。出迎えた観客はさい銭をあげてみこしに手を合わせ、地域の守り神に感謝。家内安全、商売繁盛、コロナ禍で落ち込んだ景気回復などそれぞれの願いを胸に、異彩を放つみこしを見つめた。
 
尾崎神社(右)と日本製鉄山神社のみこし。3年ぶりの合同渡御が実現

尾崎神社(右)と日本製鉄山神社のみこし。3年ぶりの合同渡御が実現

 
沿道では大勢の市民らが行列を見守った=大町

沿道では大勢の市民らが行列を見守った=大町

 
 小佐野町の佐々木興子さん(78)は「例年より人出も多いよう。お祭り女だからわくわくする」と笑顔満開。いつもは釜石芸能連合会の手踊りで参加するが、今年は同会の参加見送りで観客側に。「人口減少、高齢化も進むが、祭りで釜石が元気になってほしい。次回、参加できるように自分も元気でいたい」と願った。
 
 8月に北九州市から転勤してきたテツゲンの早田大輔さん(36)は初めて同山神社のみこし担ぎに参加。震災やコロナの苦境から立ち上がってきた釜石人の底力に感動し、「皆さんの笑顔が印象的。よそから来た人間も温かく迎えてくれる市民性がありがたい。釜石にいる間はぜひ参加したい」と声を弾ませた。
 
虎舞、神楽の参加団体は山車を引きながら移動

虎舞、神楽の参加団体は山車を引きながら移動

 
 行列は市役所御旅所を経て午後2時半ごろ、魚市場御旅所に到着。神楽、虎舞の6団体が最後の踊りを奉納し、祭りはクライマックスを迎えた。例年行う「大盃の儀」はコロナ感染予防のため取りやめ、代わりに参加者の3本締めで締めくくった。尾崎神社のみこしはご神体を奥宮にかえすため船に乗せられ、神楽、虎舞団体がはやし立てる中、岸壁を離れた。見送りは船が見えなくなるまで続いた。
 
 2歳から祭りに参加する錦町虎舞の阿部龍雅君(16)は「みんなで盛り上がれる祭りはめっちゃ最高。今年はいつも以上」と祭り復活の喜びをかみしめた。踊りの練習は厳しいが、「どんどん頑張ってうまくなりたい。大人になったら踊りを教えられるような、みんなを引っ張っていけるような人になりたい」と夢を描いた。
 
魚市場御旅所ではみこし還御式が行われ、年行司太神楽など6団体が演舞

魚市場御旅所ではみこし還御式が行われ、年行司太神楽など6団体が演舞

 
「白虎」で躍動する只越虎舞

「白虎」で躍動する只越虎舞

 
奥宮にかえるご神体を神楽、虎舞の団体がおはやしで見送った

奥宮にかえるご神体を神楽、虎舞の団体がおはやしで見送った

 
 尾崎神社の佐々木裕基宮司は「沿道でみこしに手を合わせ、ずっと頭を下げられている方もいて胸が熱くなった。震災の年に涙を流して拝んでくださった姿と重なる。祭りを待ち望んだ皆さんの喜びがあふれていた」と目を潤ませた。同神社は300年以上の歴史を誇る六角大みこしを70年ぶりに修復、19年の渡御で初披露した。今回はコロナ禍で担ぎ手の確保が難しいことや、大人数による密回避を考慮し、大みこしの渡御は見送った。「来年こそはコロナが終息し、大みこしが練り歩ければ」と佐々木宮司。
 
 同まつり委はコロナ感染状況や市内経済などへの影響を総合的に判断し、規模縮小、各種感染防止策を講じた上での開催を決めた。事務局によると曳き船まつりは約3千人、みこし渡御は約1万2千人の人出があった。両日とも混乱や事故もなく無事終了した。

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秋恒例の味覚フェス復活! 釜石絆の日イベントと同時開催で3年ぶりのにぎわい

釜石鵜住居復興スタジアムで開催された「釜石まんぷくフェス2022」=25日

釜石鵜住居復興スタジアムで開催された「釜石まんぷくフェス2022」=25日

 
 新型コロナウイルス感染症の影響で中止が続いていた釜石市の味覚イベントが3年ぶりに復活―。釜石まんぷくフェス2022(釜石観光物産協会主催)は9月24、25の両日、釜石鵜住居復興スタジアムで開かれ、多くの来場者でにぎわった。同スタジアムでは、2019年のラグビーワールドカップ(W杯)釜石開催のレガシー(遺産)を継承する「釜石絆の日」イベントを同時開催。25日は秋晴れの下、食とラグビーを楽しむ人たちの笑顔があふれた。
 
 同イベントは「釜石まるごと味覚フェスティバル」として毎年秋に開催してきたが、新型コロナの影響による2年の中止を経た今年は、名称を「釜石まんぷくフェス」と改称。絆の日イベントとの共催により、初めて同スタジアムが会場となった。市内外の食に関わる業者を中心に22店が出店。各地の特産品やご当地自慢のソウルフードを求めて、多くの人たちが足を運んだ。
 
 地元の人気は「釜石ラーメン」。極細縮れ麺と琥珀色に透き通ったしょうゆ味スープが特徴のご当地ラーメンは近年、多くのメディアでも取り上げられ、同市を代表する名物に。同フェスの提供店にも続々と客が訪れた。地元海産物も好評で、ホタテやイカ焼きの香ばしい匂いが来場者の食欲をそそった。
 
大人気の“釜石ラーメン”を求める客が並んだ「川喜」のブース

大人気の“釜石ラーメン”を求める客が並んだ「川喜」のブース

 
焼きホタテやイカ焼きを提供した「松坂商店」

焼きホタテやイカ焼きを提供した「松坂商店」

 
釜石「Kojima Cafe」の巨大綿あめに子どもたちもびっくり!

釜石「Kojima Cafe」の巨大綿あめに子どもたちもびっくり!

 
 釜石市と交流のある県外各市区町からの出店も。同じ製鉄のまちで、東日本大震災以降、名物の焼うどん販売に訪れる福岡県北九州市のブースは今回も長蛇の列が続いた。復興支援で同市から釜石市に派遣された経験を持つ竹内邦彦さん(71)は「この味を求めて何度も足を運んでくれる方もいる」と感激。コロナ禍からの脱却の動きに「縮こまってばかりではいられない。こういうイベントで明かりをともし、まちの活性化につなげていければ」と期待を込めた。
 
北九州市は名物の焼きうどんを提供。大学生ボランティアも奮闘した

北九州市は名物の焼きうどんを提供。大学生ボランティアも奮闘した

 
北九州市のブースには常時、長い列ができた

北九州市のブースには常時、長い列ができた

 
 友好都市(1984年提携)の富山県朝日町も同フェスの常連。昆布かまぼこ、バタバタ茶、翡翠ようかんなど町の特産品を販売した。両市町の縁は、明治から昭和にかけ漁場開拓のため、同町出身者が釜石に移り住んだことが発端。会場では、朝日町出身者やルーツを持つ人たちが懐かしがる様子も見られたという。同町健康課の岩村耕二課長は「(物産交流などは)お互いにいい取り組みを勉強し合える機会。釜石とのご縁は大切にしていきたい」と願った。
 
富山県朝日町の職員らは自慢の特産品を販売。かまぼこの試食も

富山県朝日町の職員らは自慢の特産品を販売。かまぼこの試食も

 
 同フェス初出店となったのは北海道室蘭市。製鉄所、震災復興支援のつながりで、今年の同市市制施行100年、室蘭港開港150年を記念した港まつりに釜石市が出店した縁で実現した。カレーラーメン、豚肉とタマネギを使う“室蘭やきとり”のたれ、鐵(てつ)の素クッキーなどの名産品を販売。室蘭観光協会の矢元宗一郎業務係長は「スタジアムもすごくきれいで、イベント会場としてもいい。今後も物産交流を継続していきたい」と話した。
 
北海道室蘭市は初出店。観光関係者がさまざまな地元名産品をPR!

北海道室蘭市は初出店。観光関係者がさまざまな地元名産品をPR!

 
 紫波町から訪れた佐々木麻衣さん(35)は「テレビの宣伝を見て来た。沿岸部に足を延ばすのは久しぶり。釜石ラーメンは、あっさりスープがおいしくて全部いただいた」とイベントを満喫。長女ららさん(14)は2年前に小学校の修学旅行で訪れて以来の釜石。「海が近くて、おいしい海鮮物があるのが魅力。今日は家族と一緒で楽しい」とほほ笑んだ。
 
おいしいものを食べて笑顔いっぱいの子どもたち

おいしいものを食べて笑顔いっぱいの子どもたち

 
子どもも大人も興味津々!「働く自動車展」

子どもも大人も興味津々!「働く自動車展」

 
 会場では自衛隊、警察、消防の車両や、建設工事で使う重機などに試乗できる「働く自動車展」も開催。家族連れなどでにぎわい、絶好の写真スポットとなった。海上保安庁のヘリコプターはスタジアム上空を展示飛行し、来場者を楽しませた。特設ステージでは地元ゆかりの音楽アーティストによるライブも行われた。主催者によると、2日間の来場者は約4千人。

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「三陸ジオパーク」をもっと分かりやすく 釜石の観光ガイドら魅力伝達の手法を模索

釜石観光ガイド会員らが参加したジオセミナー=旧釜石鉱山事務所

釜石観光ガイド会員らが参加したジオセミナー=旧釜石鉱山事務所

 
 約5億年前からの大地の歴史が育んだ自然や風土、産業が魅力の「三陸ジオパーク」(2013年、日本ジオパークに認定)。“鉄のまち”を生んだ釜石市のジオ資源をより分かりやすく伝えるためのセミナーが21日、甲子町大橋の釜石鉱山周辺で開かれた。地元の観光ガイドや関連機関の職員ら24人が参加。地質学や自然災害科学が専門の岩手大理工学部、越谷信教授を招き、価値の再確認と伝達手法の意見交換を行った。
 
 日本最大級の鉱山を有し、「近代製鉄発祥の地」として知られてきた釜石市。その歴史的価値は同市観光の柱で、三陸ジオパークの見どころの一つとなっている。ジオサイトとして紹介される釜石鉱山では鉄や銅などの鉱石が採掘されたが、その鉱床ができたのが今から約1億2千年前。マグマの上昇で熱を加えられた岩石がさまざまな性質に変化したことによる。同鉱山では50種類以上の鉱物が確認され、中には国内で2カ所しかとれない貴重な石も。
 
釜石鉱山でとれる鉱物について理解を深めるセミナー参加者

釜石鉱山でとれる鉱物について理解を深めるセミナー参加者

 
 ジオパーク認定を受け、同市の観光ガイドはジオの視点を盛り込んだ説明にも力を入れるが、地質など学問的要素が入る内容をいかに分かりやすく伝えるかが課題となっている。その手法を探ろうと今回のセミナーが企画された。釜石観光ガイド会会員で、三陸ジオパーク認定ガイドの資格を持つ菅原真子さん(56)が模擬ツアーを実演。来訪者の興味を引き、理解促進につなげるためのガイドの仕方、今後の発信などについて参加者が意見を交わした。
 
鉱山施設跡を見学したジオツアー。左下は山の斜面に残る鉄鉱石の選鉱場跡

鉱山施設跡を見学したジオツアー。左下は山の斜面に残る鉄鉱石の選鉱場跡

 
三陸ジオパーク認定ガイドの菅原真子さん(右から2人目)が模擬ツアーを実演

三陸ジオパーク認定ガイドの菅原真子さん(右から2人目)が模擬ツアーを実演

 
正面に見えるズリ堆積場は現在、メガソーラー発電所として活用される

正面に見えるズリ堆積場は現在、メガソーラー発電所として活用される

 
 参加ガイドからは「地学の専門用語をかみ砕き、(イメージしやすい言葉に)言い換えてあげることが大事」、「釜石ならではのジオストーリー(物語)を作り発信すべき」という意見が。観光関係機関の職員からは「日常生活につながる部分を導入部にすると、(ハードルが高い)ジオの話にも入りやすい。年間を通して足を運んでもらう機会を増やすことも重要」との助言があった。
 
 越谷教授の地質研究室に所属する同大4年の浅野奈美さん(22)は、若者の視点から観光客誘致のアイデアを提言。「写真映えするスポットの積極的発信、鉱山の湧水が有名メーカーの化粧品に利用されている親近感などが、ここに興味を持たせるきっかけになるのではないか。『ジオパークとは何か』という根本的な周知も必要」と話した。
 
ガイドの説明を聞く(左から)岩手大理工学部の越谷信教授と学生の浅野奈美さん

ガイドの説明を聞く(左から)岩手大理工学部の越谷信教授と学生の浅野奈美さん

 
 越谷教授(63)は、北部と南部で大地の成り立ちが異なる三陸地域の特徴について解説した。太平洋赤道近くの大陸の一部だった南部、海底の砂や泥、礁などが起源の北部は、共に長い年月をかけて移動しアジア大陸と合体。日本列島の分離、隆起や浸食で現在の姿になった。北部、南部の接合部で、急峻な山ができたのが釜石地域。越谷教授は「両方の複雑な要素が一カ所に集約している。まさに4億年ぐらいの歴史を体現できる場所。地元の人が知る魅力を内外に広めてほしい」と期待する。
 
三陸ジオパークの魅力発信について語り合ったフリートーク

三陸ジオパークの魅力発信について語り合ったフリートーク

 
 三陸ジオパークは13年に日本ジオパーク委員会によって認定されたが、17年に行われた4年ごとの審査では「条件付き再認定」となった。関係機関の連携や周知、活用策など課題改善への取り組みを進め、19年には再認定が決まった。来年は3回目の審査の年にあたる。
 
 三陸ジオパーク推進協議会の土澤智事務局長は、国内最大面積(青森県八戸市~宮城県気仙沼市)を誇る同ジオパークについて、「地域ごと異なる素材に共通テーマを持たせる難しさはあるが、いかに一体性を見い出し発信していけるかが課題。再認定を得られるよう、審査に向けた準備もしっかり進めたい」と話した。

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ヒト・モノ・コト…いろんな「であい」を「つなぐ」 TETTOオープンフェスタ【釜石】

初開催の「きっとてっと」で買い物を楽しむ来場者

初開催の「きっとてっと」で買い物を楽しむ来場者

 
 釜石市大町の市民ホールTETTO(谷澤栄一館長)で23日、オープンフェスタ「きっとてっと」が初開催された。地域内のすてきな人、店、もの、体験などに「であう」「つながる」きっかけにしてもらおうと企画。音楽、食、ものづくり、ショッピング…多様な楽しみを味わえる催しが用意され、大人も子どもも幅広い年代が地域の魅力を再発見した。
 
 ロビーやギャラリー、屋根のある広場などホール1階を一体的に使用して開放。釜石市や大槌町を拠点に活動するアーティストと触れ合いながら芸術に親しむワークショップ、衣料品や日用品などを安価で販売するフリーマーケット、大ホールでのカラオケ体験、ベリーダンサーによる公演、ストリートピアノ演奏会といった多彩な催しが繰り広げられた。衣料・雑貨を取り扱う市内事業者、黒豚を使ったギョーザなど飲食のキッチンカーも出店。地元の駄菓子屋と谷澤館長がコラボした縁日は子どもたちに人気だった。
 
掘り出し物探しを楽しむフリーマーケット

掘り出し物探しを楽しむフリーマーケット

 
縁日遊びのコーナーは子どもたちに大人気

縁日遊びのコーナーは子どもたちに大人気

 
特設ステージではベリーダンスなどが披露された

特設ステージではベリーダンスなどが披露された

 
 大槌町の佐々木やよえさん(69)と千葉左登子さん(68)は以前から興味があった鹿皮のキーホルダー作りに挑戦。三つ編みの形が少しゆがんで手作り感たっぷりの出来栄えだったが、「夢中になった。機会があったら、またやりたい」と喜んだ。もう一つ楽しんだのが、フリーマーケットでのモノとの「出合い」。手作りアクセサリーやブランド品の服などに目を留め、「キラキラしたものが大好き。女の子だから」と笑顔を重ねた。
 
鹿皮で作ったキーホルダーの出来栄えに満足げな参加者

鹿皮で作ったキーホルダーの出来栄えに満足げな参加者

 
 人との「出会い」を楽しんだのは、フリマでハンドメイド作品を並べた鵜住居町の小林翔子さん(35)。対面販売は客の声を聞いたり、表情を見ることができ、作品作りのヒントになるという。釜石で実施されるイベントへの参加は今回が初めて。「『初めまして』の人が多く、作品を紹介する機会、情報交換の場になった」と手応えを得た。
 
 イラストレーター西川真央さん(26)=活動名・mao=はポストカードや粘土細工などを販売したほか、似顔絵を通じた交流を提供した。京都出身で、1年前に釜石に移住。観光地域づくり会社で働く傍ら、制作活動に取り組む。対面で似顔絵を描きながら会話を楽しみ、「ものづくりが人とのつながりを生み出す」と実感。同じ会場では日本独自の紡績技術「ガラ紡」で紡いだ糸を使った小物作り、ひも状にした粘土を積み重ねる土器作りも行われていて、親子で参加する姿に「クリエイティブなことに挑戦できて、いい街だな~」と目を細めた。
 
モデルと会話を弾ませながら似顔絵を描くmaoさん

モデルと会話を弾ませながら似顔絵を描くmaoさん

 
 同イベントには、同ホールの阿部美香子さん(43)の実体験が反映された。東日本大震災後にUターンした際、地域になじもうと参加したフリマでの出会いが今も続いていて、「そんな出会いを体験してほしい」と企画。「新しい店は気になるが入りづらい」との声を聞き、「店の人とのつながれば、店舗を訪れるきっかけになる」と催しに盛り込んだ。子育て世代へのリサーチも行い、「いろんな形の出合い」をひとまとめにして開催。多様な人が入り混じる様子を見つめ、「人と直接話しながら、目的外のものに出合う機会になったら、うれしい」と思いを明かした。

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3年ぶり「釜石まつり」10/14~16開催 コロナ対策施し2神社合同みこし渡御

3年ぶりの開催が決まった「釜石まつり」=資料写真(2017年)

3年ぶりの開催が決まった「釜石まつり」=資料写真(2017年)

 
 釜石市の秋を彩る「釜石まつり」は10月14日から3日間、市内東部地区を中心に開催される。新型コロナウイルス感染症の影響で2020、21年は中止されたが、今年は感染症対策を施し、規模を縮小して実施する。15日に開かれた同まつり委員会(委員長=野田武則市長)事務局会議で日程が決定した。
 
 釜石まつりは、浜町の尾崎神社と桜木町の釜石製鉄所山神社の合同祭。1967(昭和42)年の市制施行30周年を機に始まり、同市の秋の一大イベントとして市民に親しまれてきた。委員会は今年、新型コロナの感染状況や、市内経済、郷土芸能の後継者育成への影響などを総合的に判断し、感染症対策をした上での実施を決めた。
 
15日に開かれた釜石まつり委員会事務局会議

15日に開かれた釜石まつり委員会事務局会議

 
 内容はほぼ例年通りだが、最大限の感染防止対策を講じる。渡御行列の参加は市内芸能団体に限定。各団体は参加人数を抑制し、マスクやフェイスガードの着用、手指や道具類の消毒を徹底する。感染対策の責任者を置き、練習参加者の2週間前からの体調確認も行う。各団体には対策費を補助する。
 
 露店は出店数を例年の3分の2程度とし、配置の見直し、出店時間の短縮などで感染リスク低減を図る。各会場ではアナウンスや立て看板などで一般来場者にも対策を呼び掛ける。芸能団体の踊り披露時には、観客との距離を確保する。
 
19年の曳き船まつりは悪天候で中止。今年は4年ぶりの開催となる=資料写真(17年)

19年の曳き船まつりは悪天候で中止。今年は4年ぶりの開催となる=資料写真(17年)

 
2神社合同みこし渡御は例年通り、市内目抜き通りを練り歩く=資料写真(17年)

2神社合同みこし渡御は例年通り、市内目抜き通りを練り歩く=資料写真(17年)

 
 3日間の日程は次の通り。
 
▽10月14日(金) 午後6時~ 尾崎神社宵宮祭(同神社)
 
▽10月15日(土) 午前10時~ 尾崎神社みこし海上渡御「曳き船まつり」(釜石港)/午後5時半~ 日本製鉄(釜石製鉄所)山神社宵宮祭(同神社)
 
▽10月16日(日) 午前8時~ 尾崎神社出御祭(同神社)/午前9時~ 日本製鉄山神社例大祭(同神社)/午前11時20分~ 両神社合同祭神事(鈴子町・釜石消防署横)/午後0時10分~ 合同みこし渡御(鈴子町→大渡町→大町→只越町→魚河岸)/午後3時半~ みこし還御式(魚市場御旅所)

『令和4年釜石まつり』を開催します

『令和4年釜石まつり』を開催します

令和4年釜石まつりを10月14日(金)、15日(土)、16日(日)の3日間の日程で3年ぶりに開催します。
14日は尾崎神社宵宮祭、15日は日本製鉄山神社宵宮祭、曳き船まつり(尾崎神社神輿海上渡御)、16日は両神社神輿合同市内渡御などを予定しています。
※本ページは随時、更新します。

日程

令和4年10月14日(金)~16(日)
・10月14日(金)
尾崎神社宵宮祭 [尾崎神社]18時
 
・10月15日(土)
「曳船まつり」尾崎神社神輿海上渡御 [釜石港内]出港10時 入港13時
尾崎神社例大祭 [尾崎神社]15時虎舞
日本製鉄山神社宵宮祭 [山神社]17時30分
 
・10月16日(日)
尾崎神社出御祭 [尾崎神社]8時
日本製鉄山神社例大祭 [山神社]9時
尾崎神社・山神社合同祭 [釜石消防署横]11時20分
尾崎神社・山神社神輿合同市内渡御出発 [釜石消防署横]12時10分
神輿還御式 [釜石魚市場]15時30分
 
【経路】
◎山神社発(10時10分)※車移動→北日本製鉄所→消防署横着(11時10分)七福神
◎尾崎神社発(8時30分)→市営ビル(浜町)→北日本製鉄所→消防署横着(11時10分)
 
【神輿合同市内渡御】
消防署横(12時10分)→薬師寺御旅所(大渡町)→市役所御旅所(只越町)→魚市場(14時15分)

参加団体

◎尾崎神社神輿を中心に神楽・虎舞など
◎日本製鉄山神社神輿を中心に神楽・鹿踊りなど

縁日広場

縁日広場(露店)を青葉通り(大町)に出店します(15~16日)
令和4年釜石まつり出店要領(PDF/1.4MB)

交通規制・駐車場

※準備中

主催

釜石まつり実行委員会

問い合わせ

釜石まつり実行委員会(釜石観光物産協会 TEL:0193-27-8172)

この記事に関するお問い合わせ
産業振興部 商工観光課 観光物産係
〒026-8686 岩手県釜石市只越町3丁目9番13号
電話:0193-27-8421 / Fax:0193-22-2762 / メール
元記事:https://www.city.kamaishi.iwate.jp/docs/2022091600011/
釜石市

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釜石市公式サイトと連携し、縁とらんすがピックアップした記事を掲載しています。記事の内容に関するお問い合わせは、各記事の担当窓口までお問い合わせください。
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震災11年 トンボの“宝庫”再び 釜石・片岸公園一帯で約20種 愛好家を魅了

トンボの写真を撮影する菊地利明さん=片岸公園

トンボの写真を撮影する菊地利明さん=片岸公園

 
 かつて田畑や沼地が広がり、多くの生き物が見られた釜石市片岸町の防潮堤内側エリア。2011年の東日本大震災の津波で壊滅的な被害を受け、その生息地が失われたが、環境整備が進んだ近年、さまざまな生き物が戻りつつある。昨年完成した沼地を有する片岸公園では今、多種多様なトンボが飛び交い、愛好家を魅了する。同市出身で、甲子町在住のアマチュアトンボ写真家、菊地利明さん(57)に案内してもらった。
 
 宝石のような目玉(複眼)など、その美しさや格好良さにひかれ、子どものころからトンボを追いかけてきた菊地さん。社会人になると写真撮影も始めた。仕事で一時、釜石を離れたが、その間もトンボの“宝庫”片岸町に継続的に足を運んできた。震災前、一帯では約30種のトンボが見られたという。
 
トンボを目で追い、シャッターチャンスを狙う

トンボを目で追い、シャッターチャンスを狙う

 
 震災の津波は一瞬にして生息環境を奪った。「もう元には戻らないかもしれない―」。堤防が決壊し、干潟のようになった同所を目の当たりにした菊地さんは、絶望的な状況に心を痛めた。その後、復興工事が進められ、震災から10年が経過した昨年、新しい防潮堤と水門の整備が完了。鵜住居川沿いの一角には、市民の憩いの場と減災機能を兼ね備えた「片岸公園」が整備された。
 
防潮堤、水門近くに整備された片岸公園。津波で堤防が決壊し、海水や砂が流れ込んだ状態(右下:11年4月撮影)からここまで復興を遂げた

防潮堤、水門近くに整備された片岸公園。津波で堤防が決壊し、海水や砂が流れ込んだ状態(右下:11年4月撮影)からここまで復興を遂げた

 
 トンボの幼虫(ヤゴ)は小魚やオタマジャクシなどの水生生物をえさとし、成虫はハエやカ、アブなどを食べる。生息のためには水辺と草地がある環境が必要。片岸公園はその両方を満たす生態園的役割も果たす。園内では今年、水辺の多様な植物が大きく成長。トンボの生息環境が整ってきたことで、多くの種類が目撃されている。
 
片岸公園で見られるトンボ(上段/左:シオカラトンボ、右:ショウジョウトンボ、下段/左:ノシメトンボ、右:ミヤマサナエ)

片岸公園で見られるトンボ(上段/左:シオカラトンボ、右:ショウジョウトンボ、下段/左:ノシメトンボ、右:ミヤマサナエ)
 
飛ぶ姿も魅力!飛翔能力が高い「ギンヤンマ」。右下は個体確認のため一時捕獲したオス

飛ぶ姿も魅力!飛翔能力が高い「ギンヤンマ」。右下は個体確認のため一時捕獲したオス

 
 ここでトンボが飛ぶ姿を見られるのは5~11月ごろ。種類によってピーク時期が異なり、今はギンヤンマ、シオカラトンボ、ショウジョウトンボ、アキアカネ―などが見られる。菊地さん一番のお薦めは、複眼と腹部斑紋の青色が美しい「マダラヤンマ」(国の準絶滅危惧種、本県レッドデータブックBランク=絶滅の危機が増大している)。羽の付け根がオレンジ色の「ネキトンボ」は元々、東北以南に分布するが、「ここ数年で岩手県内でも見られるようになった。地球温暖化の影響なのか、北へ生息域を広げてきている」と注目する。
 
菊地さんイチオシ!「マダラヤンマ」。腹部の青色の繊細なまだら模様が目を引く

菊地さんイチオシ!「マダラヤンマ」。腹部の青色の繊細なまだら模様が目を引く

 
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羽の付け根のオレンジ色、腹部の赤が鮮やかな「ネキトンボ」

 
 今シーズン、菊地さんが同公園とその周辺で目撃しているトンボは約20種。大型種の「オオルリボシヤンマ」、震災前にも見たことがなかったという「チョウトンボ」「ミヤマサナエ」も見ることができた。トンボは水辺を求め遠くまで飛ぶこともあり、これまで見られなかった種を“飛来”という形で見ることもあるという。
 
上段/左:タイリクアカネ、右:ナツアカネ、下段/左:交尾するアジアイトトンボ(前がオス)、右:セスジイトトンボ

上段/左:タイリクアカネ、右:ナツアカネ、下段/左:交尾するアジアイトトンボ(前がオス)、右:セスジイトトンボ

 
遊歩道からトンボを探す菊地さん

遊歩道からトンボを探す菊地さん

 
震災から11年が経過し、トンボの生息に必要な環境がそろった

震災から11年が経過し、トンボの生息に必要な環境がそろった

 
 再び、この場所でトンボが見られるようになったことを喜ぶ菊地さん。「公園はできたばかり。さらに環境が安定していけば、他から飛んできたトンボがすみつく可能性もある。いろいろな種類が増えていけば」と期待。遊歩道が整備され、観察しやすい環境となったことも歓迎し、「よく見るときれいなトンボがたくさんいる。散歩がてらゆっくり観察してみては。トンボは益虫で昔から人間の役に立ってきた。“勝ち虫”といわれ、日本人の歴史とも関わりが深いトンボにぜひ親しんでほしい」と話す。
 
※記事中トンボ写真=菊地利明さん提供

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「魚河岸ジェラート」に新メニュー 釜石産トマトのうまみ凝縮「すずこまシャーベット」

魚河岸ジェラート部の新メニュー「すずこまシャーベット」

魚河岸ジェラート部の新メニュー「すずこまシャーベット」

 
 釜石市魚河岸の魚河岸テラスで提供されている地域の味を取り入れたジェラートに今夏、地元農家が育てたトマト「すずこま」を使ったメニューが仲間入りした。トマトのうまみを凝縮し、レモン果汁を加えてフルーティーに仕上げた、その名は「すずこまシャーベット」。きれいな赤い色をした見た目も印象的な一品で、10月頃まで楽しめるという。
 
 指定管理者のかまいしDMCが運営する店舗「魚河岸ジェラート部」では常時10種類程度を販売。釜石特産の甲子柿、浜千鳥の酒かす、藤勇醸造のみそを使った菓子などを用いて地元色を前面に押し出した豊かな味わいがそろう。
 
すずこまを使ったシャーベットを開発した新沼さん

すずこまを使ったシャーベットを開発した新沼さん

 
 新メニューは、湯むきしたトマトを角切りにし種ごと煮込み、砂糖やレモン汁を加えてペースト状にしたものを、ベースのシャーベット(水に砂糖を加えて凍結させた冷菓)に混ぜて仕上げた。「そのまんま、すずこまで勝負」と自信を見せるのは、開発を担当した同社の新沼貴子さん(54)。「酸味が強めのトマトで、素材本来の味を生かすため加糖は最小限にとどめ、うまみと爽やかさのバランスを崩さないようこだわった。牛乳など動物性タンパク質を使っていないので、ベジタリアンやビーガン(完全菜食主義者)の方も楽しめる」とアピールする。
 
 すずこまは東北農業研究センター(盛岡市)などが開発した加熱調理用トマトで、抗酸化作用を持つリコピンを多く含む。生食でも味わえるが、火を通しても煮崩れしない、赤みがあせないなどの特徴があるという。釜石市が推奨する農産物の一つで、2021年度から市内の生産農家4人が試験栽培に取り組んでいる。
 
試食した生産者の佐々木さん(左)と二本松さんの評価は上々

試食した生産者の佐々木さん(左)と二本松さんの評価は上々

 
 8月31日に魚河岸テラスで発表会があり、生産者が試食した。鵜住居町の二本松誠さん(58)は「トマトの味が濃い。うまみがぎゅっと詰まっていておいしい」と太鼓判。すずこまは、「芽かき」作業が不要など栽培時に手間がかからず、40グラムほどの小ぶりな実が“鈴なり”になり、一定の収量も見込める。橋野町の佐々木かよさん(71)は加工品への活用が広がるのを歓迎。自身は遊休農地を活用するため栽培に協力していて、「生産者として作りがいがある。特産へと育ち、釜石を知ってもらうきっかけになれば」と期待した。
 
 すずこまシャーベットは、シングル280円。ジェラート部の開店時間は午後2時~同4時まで(月曜定休)。
 
地元色を押し出した豊かな味わいを提供する「魚河岸ジェラート部」

地元色を押し出した豊かな味わいを提供する「魚河岸ジェラート部」

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震災乗り越え群落形成へ 絶滅危惧植物「ミズアオイ」釜石・片岸町で2年目の開花

片岸公園内の沼地で花を咲かせる「ミズアオイ」

片岸公園内の沼地で花を咲かせる「ミズアオイ」

 
 東日本大震災前、釜石市片岸町の水田地帯に自生していた絶滅危惧植物「ミズアオイ」。津波による被災でその姿を消していたが、震災から11年が経過した今年、群落復活の兆しを見せ始めている。市が整備した遊水池と公園内の沼地で発芽が見られ、8月下旬からは青紫色の花が開花。訪れる人の目を楽しませる。市民らは自然の再生力に驚きながら、かつての原風景復活に期待を寄せる。
 
 ミズアオイは水田地帯や沼地に生える1年草の植物。古くから全国で見られたが、除草剤の使用や水路整備などの成育環境の変化で数が減り、国の準絶滅危惧種、本県レッドデータブックAランク(絶滅の危機にひんしている)に指定される。
 
背丈20~40センチの柔らかい茎の先端に複数の花をつける

背丈20~40センチの柔らかい茎の先端に複数の花をつける

 
青紫色の花被片は6枚。黄色の雄しべとのコントラストが美しい

青紫色の花被片は6枚。黄色の雄しべとのコントラストが美しい

 
 片岸町では約50年前、防潮堤内側の水田地帯にミズアオイの大群落があったが、年々その数は減少。2000年代には所々で見られる程度になっていた。07年、水路改修で生息域を追われる水生生物のために、市内の環境保護団体「かまいし環境ネットワーク」が休耕田を利用してビオトープ(生物生息空間)を整備。土を掘り起こしたことで眠っていたミズアオイの種が芽生え始めた。“水田雑草”とも言われるミズアオイは、田おこしのような土壌のかき回しが発芽条件の一つとされる。
 
 10年には同所で群落が確認できるまでになっていたが、翌11年の震災津波で一帯は壊滅的な被害を受けた。同ネットワークは12年、ミズアオイの復活プロジェクトを始動。専門家らの助言で、かつて群落が確認された場所を重機で掘り、津波で堆積した砂や泥の下にある田んぼの土を採取。栗林町に移し発芽実験を行ったところ、土中に残っていた種からの発芽に成功した。後に鵜住居町田郷の休耕田への移植、漁業用水槽での育成によって命をつないだ片岸のミズアオイは、昨年完成した「片岸公園」の沼地に土ごと返された。
 
震災復興で新設された防潮堤の内側にある「片岸公園」。水辺には多様な植物が生える

震災復興で新設された防潮堤の内側にある「片岸公園」。水辺には多様な植物が生える

 
10年ぶりに古里・片岸に戻り、群落を見せ始めたミズアオイ

10年ぶりに古里・片岸に戻り、群落を見せ始めたミズアオイ

 
 一方で、同じく昨年完成した遊水池では、整備で土が掘り起こされたことで土中に眠っていたとみられる種が自然発芽。片岸公園、遊水池ともに昨年、今年と2年連続で開花が確認された。
 
 3日、現地を訪れた盛岡市の松森猛さん(72)は「自然の回復力は素晴らしい。加えて(保護のため)手を入れてくれた人たちがいたのはありがたいこと」と感心。50年ほど前、仕事の関係で片岸町に暮らしたことがあるが、「その時は全然分からなかった。ミズアオイという植物自体も今回初めて知った。花もきれい」と新たな発見を喜んだ。
 
室浜に向かう高台道路下付近に整備された遊水池

室浜に向かう高台道路下付近に整備された遊水池

 
10年の眠りから覚め、発芽・開花した遊水池のミズアオイ

10年の眠りから覚め、発芽・開花した遊水池のミズアオイ

 
遊水池で自然発芽したミズアオイを愛でる「かまいし環境ネットワーク」の加藤直子代表

遊水池で自然発芽したミズアオイを愛でる「かまいし環境ネットワーク」の加藤直子代表

 
 保護活動に取り組んできた同ネットワークの加藤直子代表(75)は「すごい生命力」とミズアオイが持つ強さに驚嘆。長年、一帯の自然環境を注視してきた経験から「水があり、植物、昆虫、野鳥と豊富な生物が共存する環境があるからこそ、ミズアオイも育つことができるのではないか。その環境を整えてあげることが大事。また眠りに入る可能性もあるが、しばらくは自然のまま見守りたい」と話した。花はあと1週間ぐらいは楽しめそうだ。
 
3日は、前日のニュース番組での紹介もあり、見学者が続々と訪れた=3日、片岸町・遊水池

3日は、前日のニュース番組での紹介もあり、見学者が続々と訪れた=3日、片岸町・遊水池

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企業版ワーケーション受け入れ好調の釜石を視察 北海道・富良野市の観光関係者ら、応用へ手応え

ワーケーションの現場視察で釜石市を訪れた富良野市の関係者ら

ワーケーションの現場視察で釜石市を訪れた富良野市の関係者ら

 
 新型コロナウイルス禍で注目されるのが、仕事と休暇を組み合わせた労働形態「ワーケーション」。全国各地で普及に向けアイデア合戦が繰り広げられる一方、一過性にとどまらず都市から地方への人の流れを定着できるか試行錯誤が続く。美しいラベンダー畑など雄大な自然を抱く観光地、北海道富良野市もワーケーションによる「持続可能な観光(サスティナブル・ツーリズム)」に着目するが、発展途上。2018年以降4年連続で「世界の持続可能な観光地100選」に選ばれた釜石市の取り組みからヒントを探ろうと、富良野の市職員や観光関係者ら9人が5日から2泊3日の日程で来釜、現場を視察した。
 
 富良野はテレビドラマ「北の国から」のロケ地として知られ、コロナ禍前は延べ約190万人が訪れる人気観光地。ただ、ドラマファンらは50代以上と年齢が高めで、観光の先細りを防ぐため、若年者といった新しい客層の取り込みを模索する。美瑛町など近隣市町村と地域連携DMOを設立しているが、独自の取り組みを推進する必要性を認識。宿泊費助成などでワーケーション客の受け入れを進め、今年度、現時点での実績は約40人。全体ビジョンや戦略が固まっておらず、提供する体験プログラムの開発などが課題だという。
 
釜石情報交流センターや市民ホールがある中心市街地を視察

釜石情報交流センターや市民ホールがある中心市街地を視察

 
 釜石でワーケーション事業を担うのは、観光地域づくり法人「かまいしDMC」(河東英宜代表取締役)。ワーケーション施設を開設するだけでなく、市の観光振興ビジョン「釜石オープン・フィールド・ミュージアム構想」をもとに、釜石に生き、暮らす人、そのなりわいに光を当て、それらをプログラム化し、固有の自然や歴史、文化を学ぶことができる仕組みを作っている。地域交流を通じた新たな価値創造につながると期待が高まり、今年はこれまでに延べ約250人が利用する。
 
根浜海岸では震災後の地域づくりに理解を深めた

根浜海岸では震災後の地域づくりに理解を深めた

 
いのちをつなぐ未来館では利用状況を聞いた

いのちをつなぐ未来館では利用状況を聞いた

 
 今回の視察では5日に、河東代表取締役らの案内で大町の釜石市民ホール、鵜住居町のいのちをつなぐ未来館、根浜海岸などをめぐり、東日本大震災後の復興まちづくりや防災、海を生かした観光の取り組みなどの説明を受けた。かまいしDMCが指定管理する魚河岸の魚河岸テラスで、観光まちづくりの実践を聞き取った。
 
 河東代表取締役は「利用者は日常と離れた学び直しの機会に注目している。観光資源のない釜石が持続可能な観光づくりを進めるには体験プログラムを磨いていくしかない。地域のことを深く学び、関わることで繰り返し来る。それが釜石の観光」と強調。企業や団体をターゲットにニーズを聞きながらプログラムを充実させてきた経緯などを伝えた。
  
魚河岸テラスではワーケーション普及に向け意見交換した

魚河岸テラスではワーケーション普及に向け意見交換した

  
 富良野の10人は、釜石市内全域を「屋根のない博物館」に見立てた同構想に興味を持った様子。法人立ち上げの資金、プログラムの開発法、観光協会といった既存組織との連携などについて熱心に質問した。翌日には地元漁師が案内する漁船クルーズ体験を控え、富良野市企画振興課の松野健吾主査(51)は「富良野には応用できる地域資源、素材がある。やり方を工夫すれば魅力的なプログラムを作れる」と実感を込めた。
 
 同商工観光課の本田寛康課長(49)は「ワーケーションを企業単位で受け入れている成功事例が釜石。手法をまねれば、できるものでもない。参考にし、ワーケーション実践者を引き付けるものを見つけたい」と刺激を受けた。知名度を生かした観光に、持続可能性を見据えた取り組みを加えるには「民間の力が必要」と再認識。「地域の産業に密着し、実践者も地域も喜ぶ取り組みにしたい」と前を向いた。

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お帰り!釜石の夏 港彩る大輪の花に歓声 3年ぶりの納涼花火に市民ら笑顔

釜石港を彩る「釜石納涼花火2022」=11日

釜石港を彩る「釜石納涼花火2022」=11日

 
 新型コロナウイルス感染症の影響で2年間中止が続いていた釜石市の納涼花火大会(市、釜石観光物産協会主催)が今年復活。11日夜、釜石港で開かれた。東日本大震災犠牲者の鎮魂、新型コロナの早期終息などを願い、午後7時から約1時間にわたり約3千発を打ち上げ。港周辺に設けた4つの観覧場所合わせて約1万人が夏の風物詩を楽しんだ。
 
 例年、盆入り前に行われる同市の納涼花火。3年ぶりの開催となる今年は、観客の期待も大きく、開始1時間前から各観覧場所に家族連れや若者グループなどが続々と集まった。魚河岸の市魚市場エリアと港町の陸中海岸グランドホテル付近には出店も並び、久しぶりの夏風景が広がった。
 
 午後7時。協賛企業や団体の紹介後、秋田県大仙市「大曲の花火協同組合」の4社17人による花火の打ち上げが始まった。港町の桟橋から3~5号玉、創作花火、スターマインなどの各種花火が打ち上げられたほか、小型船が移動しながら仕掛ける水中花火が次々と繰り出された。多彩な色や形、複数の花火を組み合わせた演出に観客は魅了され、目に焼き付けるとともにスマートフォンのカメラに美しい光景を収めた。
 
花火の光で桟橋のクレーンが浮かび上がる光景は釜石ならでは!

花火の光で桟橋のクレーンが浮かび上がる光景は釜石ならでは!

 
月明かりとコラボする水中花火。海面に映る光とも華やかに競演

月明かりとコラボする水中花火。海面に映る光とも華やかに競演

 
多くの人がスマホカメラを片手に観覧。美しい光景を記憶と記録に残す

多くの人がスマホカメラを片手に観覧。美しい光景を記憶と記録に残す

 
 家族3人で訪れた花巻市の髙橋理央さん(24)は初めて釜石の花火を観賞。岸壁から間近で見る水中花火に感動し、「すごい迫力。他の地域にはない特別感」と声を弾ませた。ここ2年、コロナ禍で各地の花火大会が中止されてきたが、「感染防止対策もしっかりしつつ、地域の活性化につながるイベントを開催していけるようになれば」と願った。
 
 同級生4人で申し合わせ、浴衣姿で訪れた植田杏奈さん(釜石中3年)は「3年前に見た時より豊富な色合いで、迫力も全然違った。すごくきれい」と感激。中学最後の夏休みは、来春の高校受験に向けた勉強で大忙し。「久しぶりにみんなで集まれて良かった。いい思い出もできて、これからの受験勉強も頑張れそう」と力を蓄えた様子。地域のにぎわい復活も喜んだ。
 
市魚市場エリアの観覧会場で花火を楽しむ観客

市魚市場エリアの観覧会場で花火を楽しむ観客

 
岸壁から見る水中花火は音とともに迫力満点!右奥にはライトアップされた釜石大観音も

岸壁から見る水中花火は音とともに迫力満点!右奥にはライトアップされた釜石大観音も
 
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嬉石方面より撮影/撮影:西条佳泰(株式会社Grafica)

 
 釜石観光物産協会によると、今年の人出はコロナ前とほぼ同等。各会場では手指の消毒のほか、出店の配置を工夫するなど観客が密にならないような対策を講じた。「久しぶりの花火大会を皆さん楽しみにしていたようで、人出は予想以上。事故もなく無事に終えられたことが何より」と同協会。
 
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嬉石方面より撮影/撮影:西条佳泰(株式会社Grafica)