釜石市指定文化財(天然記念物)の巨木、同市栗林町の「上栗林のサクラ」が見頃を迎えている。地元町内会の上栗林振興会(三浦栄太郎会長、29世帯)が続ける夜のライトアップも2日から始まった。昼と夜で異なる趣を楽しめる市内最大の一本桜。今年は例年以上のボリュームで咲き誇り、訪れる人たちを喜ばせている。ライトアップは11日ごろまでを予定する。点灯は午後6時半から午後9時半まで。
上栗林集会所に隣接する私有地に自生する同サクラはエドヒガン種。樹齢400年以上と推定され、2006年の市の調査では胸高幹周りが約4.9メートル。07年に市の文化財に指定された。地元では「種蒔(たねまき)桜」と呼ばれ、開花は農事の目安とされてきた。剪定(せんてい)など人の手は一切加えておらず、自然の力で成長。古木ながら樹勢は衰えず、毎年美しい花姿を見せている。
釜石市指定文化財の「上栗林のサクラ」=同市栗林町、5日午後撮影
枝先にボリューム満点の花を咲かせ、来訪者の目を楽しませている
今年は例年より10日ほど早い2日に開花した。この時期としては異例の最高気温23度に達した5日は、朝と昼で開花具合が目に見えて違うほど咲き進み、一気に6分咲きに。地元住民は「いつも開花から2、3日で5~6分ぐらいまで咲き進む。色的には、蕾(つぼみ)が交じるぐらいの段階が薄いピンク色が映えてきれい」と話す。
5日午後に訪れた市内の家族連れも「花色がきれいなうちに1回見ておこうと思って。今が一番なんじゃないかな。もう少しすると色が抜けてきちゃうので…」と、見どころを押さえている様子。春を通り越した暖かな陽気の中で、最高の花見を楽しんでいた。
夜のライトアップは圧巻の光景!日中とは違う趣を醸し出す
同振興会による夜のライトアップは今年で11年目を迎える。2色のLED照明で浮かび上がる見事な枝ぶり、美しい花色は目を見張る光景。陽光に照らされる昼とは違う幻想的な雰囲気が広がる。特に夜は周りの暗さで樹形がくっきりと際立つため、見る角度でさまざまな表情を楽しめるのも魅力の一つとなっている。
ライトアップを始めた当初は東日本大震災の復興工事が盛んな時期で、目の前の県道を行き来する工事関係者らも多数立ち寄るなど、交通整理をするほどのにぎわいだった。新型コロナウイルス感染症の流行が始まってからは道路沿いへの看板掲示も控え、大々的な宣伝は自粛してきた。それでも、同サクラの素晴らしさを知る市民らを中心に、毎年継続して足を運ぶ人たちは多い。
暗闇に浮かび上がる花姿は何とも言えない美しさ
5日は雲の隙間からのぞく月明かりとのコラボも
同振興会の三浦会長(72)は「子どものころからなじみのサクラ。隣に集会所もあり、ここは地域の中心的場所。コロナ禍前は地区住民が集まり、花見会もやっていた」と懐かしむ。コロナも収束傾向にあることから「来年は地区の花見会も復活させたい。コロナ禍前から考えていた、同所でのコンサートなどコラボ企画のイベントも実現できれば」と来シーズン以降を見据える。
雪の残る片羽山など周辺風景とのマッチングも魅力的な桜写真を見せる振興会の三浦栄太郎会長(左)と川崎悦三郎さん
上栗林振興会では末永い桜の保全、継承を願う
釜石市内から同所へのアクセスは、鵜住居町の国道45号寺前交差点から県道釜石遠野線を橋野町方面に進行。栗林町上栗林地区、沿線右手に矢印形の標識が見える。