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「三陸ジオパーク」をもっと分かりやすく 釜石の観光ガイドら魅力伝達の手法を模索

釜石観光ガイド会員らが参加したジオセミナー=旧釜石鉱山事務所

釜石観光ガイド会員らが参加したジオセミナー=旧釜石鉱山事務所

 
 約5億年前からの大地の歴史が育んだ自然や風土、産業が魅力の「三陸ジオパーク」(2013年、日本ジオパークに認定)。“鉄のまち”を生んだ釜石市のジオ資源をより分かりやすく伝えるためのセミナーが21日、甲子町大橋の釜石鉱山周辺で開かれた。地元の観光ガイドや関連機関の職員ら24人が参加。地質学や自然災害科学が専門の岩手大理工学部、越谷信教授を招き、価値の再確認と伝達手法の意見交換を行った。
 
 日本最大級の鉱山を有し、「近代製鉄発祥の地」として知られてきた釜石市。その歴史的価値は同市観光の柱で、三陸ジオパークの見どころの一つとなっている。ジオサイトとして紹介される釜石鉱山では鉄や銅などの鉱石が採掘されたが、その鉱床ができたのが今から約1億2千年前。マグマの上昇で熱を加えられた岩石がさまざまな性質に変化したことによる。同鉱山では50種類以上の鉱物が確認され、中には国内で2カ所しかとれない貴重な石も。
 
釜石鉱山でとれる鉱物について理解を深めるセミナー参加者

釜石鉱山でとれる鉱物について理解を深めるセミナー参加者

 
 ジオパーク認定を受け、同市の観光ガイドはジオの視点を盛り込んだ説明にも力を入れるが、地質など学問的要素が入る内容をいかに分かりやすく伝えるかが課題となっている。その手法を探ろうと今回のセミナーが企画された。釜石観光ガイド会会員で、三陸ジオパーク認定ガイドの資格を持つ菅原真子さん(56)が模擬ツアーを実演。来訪者の興味を引き、理解促進につなげるためのガイドの仕方、今後の発信などについて参加者が意見を交わした。
 
鉱山施設跡を見学したジオツアー。左下は山の斜面に残る鉄鉱石の選鉱場跡

鉱山施設跡を見学したジオツアー。左下は山の斜面に残る鉄鉱石の選鉱場跡

 
三陸ジオパーク認定ガイドの菅原真子さん(右から2人目)が模擬ツアーを実演

三陸ジオパーク認定ガイドの菅原真子さん(右から2人目)が模擬ツアーを実演

 
正面に見えるズリ堆積場は現在、メガソーラー発電所として活用される

正面に見えるズリ堆積場は現在、メガソーラー発電所として活用される

 
 参加ガイドからは「地学の専門用語をかみ砕き、(イメージしやすい言葉に)言い換えてあげることが大事」、「釜石ならではのジオストーリー(物語)を作り発信すべき」という意見が。観光関係機関の職員からは「日常生活につながる部分を導入部にすると、(ハードルが高い)ジオの話にも入りやすい。年間を通して足を運んでもらう機会を増やすことも重要」との助言があった。
 
 越谷教授の地質研究室に所属する同大4年の浅野奈美さん(22)は、若者の視点から観光客誘致のアイデアを提言。「写真映えするスポットの積極的発信、鉱山の湧水が有名メーカーの化粧品に利用されている親近感などが、ここに興味を持たせるきっかけになるのではないか。『ジオパークとは何か』という根本的な周知も必要」と話した。
 
ガイドの説明を聞く(左から)岩手大理工学部の越谷信教授と学生の浅野奈美さん

ガイドの説明を聞く(左から)岩手大理工学部の越谷信教授と学生の浅野奈美さん

 
 越谷教授(63)は、北部と南部で大地の成り立ちが異なる三陸地域の特徴について解説した。太平洋赤道近くの大陸の一部だった南部、海底の砂や泥、礁などが起源の北部は、共に長い年月をかけて移動しアジア大陸と合体。日本列島の分離、隆起や浸食で現在の姿になった。北部、南部の接合部で、急峻な山ができたのが釜石地域。越谷教授は「両方の複雑な要素が一カ所に集約している。まさに4億年ぐらいの歴史を体現できる場所。地元の人が知る魅力を内外に広めてほしい」と期待する。
 
三陸ジオパークの魅力発信について語り合ったフリートーク

三陸ジオパークの魅力発信について語り合ったフリートーク

 
 三陸ジオパークは13年に日本ジオパーク委員会によって認定されたが、17年に行われた4年ごとの審査では「条件付き再認定」となった。関係機関の連携や周知、活用策など課題改善への取り組みを進め、19年には再認定が決まった。来年は3回目の審査の年にあたる。
 
 三陸ジオパーク推進協議会の土澤智事務局長は、国内最大面積(青森県八戸市~宮城県気仙沼市)を誇る同ジオパークについて、「地域ごと異なる素材に共通テーマを持たせる難しさはあるが、いかに一体性を見い出し発信していけるかが課題。再認定を得られるよう、審査に向けた準備もしっかり進めたい」と話した。

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ヒト・モノ・コト…いろんな「であい」を「つなぐ」 TETTOオープンフェスタ【釜石】

初開催の「きっとてっと」で買い物を楽しむ来場者

初開催の「きっとてっと」で買い物を楽しむ来場者

 
 釜石市大町の市民ホールTETTO(谷澤栄一館長)で23日、オープンフェスタ「きっとてっと」が初開催された。地域内のすてきな人、店、もの、体験などに「であう」「つながる」きっかけにしてもらおうと企画。音楽、食、ものづくり、ショッピング…多様な楽しみを味わえる催しが用意され、大人も子どもも幅広い年代が地域の魅力を再発見した。
 
 ロビーやギャラリー、屋根のある広場などホール1階を一体的に使用して開放。釜石市や大槌町を拠点に活動するアーティストと触れ合いながら芸術に親しむワークショップ、衣料品や日用品などを安価で販売するフリーマーケット、大ホールでのカラオケ体験、ベリーダンサーによる公演、ストリートピアノ演奏会といった多彩な催しが繰り広げられた。衣料・雑貨を取り扱う市内事業者、黒豚を使ったギョーザなど飲食のキッチンカーも出店。地元の駄菓子屋と谷澤館長がコラボした縁日は子どもたちに人気だった。
 
掘り出し物探しを楽しむフリーマーケット

掘り出し物探しを楽しむフリーマーケット

 
縁日遊びのコーナーは子どもたちに大人気

縁日遊びのコーナーは子どもたちに大人気

 
特設ステージではベリーダンスなどが披露された

特設ステージではベリーダンスなどが披露された

 
 大槌町の佐々木やよえさん(69)と千葉左登子さん(68)は以前から興味があった鹿皮のキーホルダー作りに挑戦。三つ編みの形が少しゆがんで手作り感たっぷりの出来栄えだったが、「夢中になった。機会があったら、またやりたい」と喜んだ。もう一つ楽しんだのが、フリーマーケットでのモノとの「出合い」。手作りアクセサリーやブランド品の服などに目を留め、「キラキラしたものが大好き。女の子だから」と笑顔を重ねた。
 
鹿皮で作ったキーホルダーの出来栄えに満足げな参加者

鹿皮で作ったキーホルダーの出来栄えに満足げな参加者

 
 人との「出会い」を楽しんだのは、フリマでハンドメイド作品を並べた鵜住居町の小林翔子さん(35)。対面販売は客の声を聞いたり、表情を見ることができ、作品作りのヒントになるという。釜石で実施されるイベントへの参加は今回が初めて。「『初めまして』の人が多く、作品を紹介する機会、情報交換の場になった」と手応えを得た。
 
 イラストレーター西川真央さん(26)=活動名・mao=はポストカードや粘土細工などを販売したほか、似顔絵を通じた交流を提供した。京都出身で、1年前に釜石に移住。観光地域づくり会社で働く傍ら、制作活動に取り組む。対面で似顔絵を描きながら会話を楽しみ、「ものづくりが人とのつながりを生み出す」と実感。同じ会場では日本独自の紡績技術「ガラ紡」で紡いだ糸を使った小物作り、ひも状にした粘土を積み重ねる土器作りも行われていて、親子で参加する姿に「クリエイティブなことに挑戦できて、いい街だな~」と目を細めた。
 
モデルと会話を弾ませながら似顔絵を描くmaoさん

モデルと会話を弾ませながら似顔絵を描くmaoさん

 
 同イベントには、同ホールの阿部美香子さん(43)の実体験が反映された。東日本大震災後にUターンした際、地域になじもうと参加したフリマでの出会いが今も続いていて、「そんな出会いを体験してほしい」と企画。「新しい店は気になるが入りづらい」との声を聞き、「店の人とのつながれば、店舗を訪れるきっかけになる」と催しに盛り込んだ。子育て世代へのリサーチも行い、「いろんな形の出合い」をひとまとめにして開催。多様な人が入り混じる様子を見つめ、「人と直接話しながら、目的外のものに出合う機会になったら、うれしい」と思いを明かした。

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3年ぶり「釜石まつり」10/14~16開催 コロナ対策施し2神社合同みこし渡御

3年ぶりの開催が決まった「釜石まつり」=資料写真(2017年)

3年ぶりの開催が決まった「釜石まつり」=資料写真(2017年)

 
 釜石市の秋を彩る「釜石まつり」は10月14日から3日間、市内東部地区を中心に開催される。新型コロナウイルス感染症の影響で2020、21年は中止されたが、今年は感染症対策を施し、規模を縮小して実施する。15日に開かれた同まつり委員会(委員長=野田武則市長)事務局会議で日程が決定した。
 
 釜石まつりは、浜町の尾崎神社と桜木町の釜石製鉄所山神社の合同祭。1967(昭和42)年の市制施行30周年を機に始まり、同市の秋の一大イベントとして市民に親しまれてきた。委員会は今年、新型コロナの感染状況や、市内経済、郷土芸能の後継者育成への影響などを総合的に判断し、感染症対策をした上での実施を決めた。
 
15日に開かれた釜石まつり委員会事務局会議

15日に開かれた釜石まつり委員会事務局会議

 
 内容はほぼ例年通りだが、最大限の感染防止対策を講じる。渡御行列の参加は市内芸能団体に限定。各団体は参加人数を抑制し、マスクやフェイスガードの着用、手指や道具類の消毒を徹底する。感染対策の責任者を置き、練習参加者の2週間前からの体調確認も行う。各団体には対策費を補助する。
 
 露店は出店数を例年の3分の2程度とし、配置の見直し、出店時間の短縮などで感染リスク低減を図る。各会場ではアナウンスや立て看板などで一般来場者にも対策を呼び掛ける。芸能団体の踊り披露時には、観客との距離を確保する。
 
19年の曳き船まつりは悪天候で中止。今年は4年ぶりの開催となる=資料写真(17年)

19年の曳き船まつりは悪天候で中止。今年は4年ぶりの開催となる=資料写真(17年)

 
2神社合同みこし渡御は例年通り、市内目抜き通りを練り歩く=資料写真(17年)

2神社合同みこし渡御は例年通り、市内目抜き通りを練り歩く=資料写真(17年)

 
 3日間の日程は次の通り。
 
▽10月14日(金) 午後6時~ 尾崎神社宵宮祭(同神社)
 
▽10月15日(土) 午前10時~ 尾崎神社みこし海上渡御「曳き船まつり」(釜石港)/午後5時半~ 日本製鉄(釜石製鉄所)山神社宵宮祭(同神社)
 
▽10月16日(日) 午前8時~ 尾崎神社出御祭(同神社)/午前9時~ 日本製鉄山神社例大祭(同神社)/午前11時20分~ 両神社合同祭神事(鈴子町・釜石消防署横)/午後0時10分~ 合同みこし渡御(鈴子町→大渡町→大町→只越町→魚河岸)/午後3時半~ みこし還御式(魚市場御旅所)

『令和4年釜石まつり』を開催します

『令和4年釜石まつり』を開催します

令和4年釜石まつりを10月14日(金)、15日(土)、16日(日)の3日間の日程で3年ぶりに開催します。
14日は尾崎神社宵宮祭、15日は日本製鉄山神社宵宮祭、曳き船まつり(尾崎神社神輿海上渡御)、16日は両神社神輿合同市内渡御などを予定しています。
※本ページは随時、更新します。

日程

令和4年10月14日(金)~16(日)
・10月14日(金)
尾崎神社宵宮祭 [尾崎神社]18時
 
・10月15日(土)
「曳船まつり」尾崎神社神輿海上渡御 [釜石港内]出港10時 入港13時
尾崎神社例大祭 [尾崎神社]15時虎舞
日本製鉄山神社宵宮祭 [山神社]17時30分
 
・10月16日(日)
尾崎神社出御祭 [尾崎神社]8時
日本製鉄山神社例大祭 [山神社]9時
尾崎神社・山神社合同祭 [釜石消防署横]11時20分
尾崎神社・山神社神輿合同市内渡御出発 [釜石消防署横]12時10分
神輿還御式 [釜石魚市場]15時30分
 
【経路】
◎山神社発(10時10分)※車移動→北日本製鉄所→消防署横着(11時10分)七福神
◎尾崎神社発(8時30分)→市営ビル(浜町)→北日本製鉄所→消防署横着(11時10分)
 
【神輿合同市内渡御】
消防署横(12時10分)→薬師寺御旅所(大渡町)→市役所御旅所(只越町)→魚市場(14時15分)

参加団体

◎尾崎神社神輿を中心に神楽・虎舞など
◎日本製鉄山神社神輿を中心に神楽・鹿踊りなど

縁日広場

縁日広場(露店)を青葉通り(大町)に出店します(15~16日)
令和4年釜石まつり出店要領(PDF/1.4MB)

交通規制・駐車場

※準備中

主催

釜石まつり実行委員会

問い合わせ

釜石まつり実行委員会(釜石観光物産協会 TEL:0193-27-8172)

この記事に関するお問い合わせ
産業振興部 商工観光課 観光物産係
〒026-8686 岩手県釜石市只越町3丁目9番13号
電話:0193-27-8421 / Fax:0193-22-2762 / メール
元記事:https://www.city.kamaishi.iwate.jp/docs/2022091600011/
釜石市

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震災11年 トンボの“宝庫”再び 釜石・片岸公園一帯で約20種 愛好家を魅了

トンボの写真を撮影する菊地利明さん=片岸公園

トンボの写真を撮影する菊地利明さん=片岸公園

 
 かつて田畑や沼地が広がり、多くの生き物が見られた釜石市片岸町の防潮堤内側エリア。2011年の東日本大震災の津波で壊滅的な被害を受け、その生息地が失われたが、環境整備が進んだ近年、さまざまな生き物が戻りつつある。昨年完成した沼地を有する片岸公園では今、多種多様なトンボが飛び交い、愛好家を魅了する。同市出身で、甲子町在住のアマチュアトンボ写真家、菊地利明さん(57)に案内してもらった。
 
 宝石のような目玉(複眼)など、その美しさや格好良さにひかれ、子どものころからトンボを追いかけてきた菊地さん。社会人になると写真撮影も始めた。仕事で一時、釜石を離れたが、その間もトンボの“宝庫”片岸町に継続的に足を運んできた。震災前、一帯では約30種のトンボが見られたという。
 
トンボを目で追い、シャッターチャンスを狙う

トンボを目で追い、シャッターチャンスを狙う

 
 震災の津波は一瞬にして生息環境を奪った。「もう元には戻らないかもしれない―」。堤防が決壊し、干潟のようになった同所を目の当たりにした菊地さんは、絶望的な状況に心を痛めた。その後、復興工事が進められ、震災から10年が経過した昨年、新しい防潮堤と水門の整備が完了。鵜住居川沿いの一角には、市民の憩いの場と減災機能を兼ね備えた「片岸公園」が整備された。
 
防潮堤、水門近くに整備された片岸公園。津波で堤防が決壊し、海水や砂が流れ込んだ状態(右下:11年4月撮影)からここまで復興を遂げた

防潮堤、水門近くに整備された片岸公園。津波で堤防が決壊し、海水や砂が流れ込んだ状態(右下:11年4月撮影)からここまで復興を遂げた

 
 トンボの幼虫(ヤゴ)は小魚やオタマジャクシなどの水生生物をえさとし、成虫はハエやカ、アブなどを食べる。生息のためには水辺と草地がある環境が必要。片岸公園はその両方を満たす生態園的役割も果たす。園内では今年、水辺の多様な植物が大きく成長。トンボの生息環境が整ってきたことで、多くの種類が目撃されている。
 
片岸公園で見られるトンボ(上段/左:シオカラトンボ、右:ショウジョウトンボ、下段/左:ノシメトンボ、右:ミヤマサナエ)

片岸公園で見られるトンボ(上段/左:シオカラトンボ、右:ショウジョウトンボ、下段/左:ノシメトンボ、右:ミヤマサナエ)
 
飛ぶ姿も魅力!飛翔能力が高い「ギンヤンマ」。右下は個体確認のため一時捕獲したオス

飛ぶ姿も魅力!飛翔能力が高い「ギンヤンマ」。右下は個体確認のため一時捕獲したオス

 
 ここでトンボが飛ぶ姿を見られるのは5~11月ごろ。種類によってピーク時期が異なり、今はギンヤンマ、シオカラトンボ、ショウジョウトンボ、アキアカネ―などが見られる。菊地さん一番のお薦めは、複眼と腹部斑紋の青色が美しい「マダラヤンマ」(国の準絶滅危惧種、本県レッドデータブックBランク=絶滅の危機が増大している)。羽の付け根がオレンジ色の「ネキトンボ」は元々、東北以南に分布するが、「ここ数年で岩手県内でも見られるようになった。地球温暖化の影響なのか、北へ生息域を広げてきている」と注目する。
 
菊地さんイチオシ!「マダラヤンマ」。腹部の青色の繊細なまだら模様が目を引く

菊地さんイチオシ!「マダラヤンマ」。腹部の青色の繊細なまだら模様が目を引く

 
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羽の付け根のオレンジ色、腹部の赤が鮮やかな「ネキトンボ」

 
 今シーズン、菊地さんが同公園とその周辺で目撃しているトンボは約20種。大型種の「オオルリボシヤンマ」、震災前にも見たことがなかったという「チョウトンボ」「ミヤマサナエ」も見ることができた。トンボは水辺を求め遠くまで飛ぶこともあり、これまで見られなかった種を“飛来”という形で見ることもあるという。
 
上段/左:タイリクアカネ、右:ナツアカネ、下段/左:交尾するアジアイトトンボ(前がオス)、右:セスジイトトンボ

上段/左:タイリクアカネ、右:ナツアカネ、下段/左:交尾するアジアイトトンボ(前がオス)、右:セスジイトトンボ

 
遊歩道からトンボを探す菊地さん

遊歩道からトンボを探す菊地さん

 
震災から11年が経過し、トンボの生息に必要な環境がそろった

震災から11年が経過し、トンボの生息に必要な環境がそろった

 
 再び、この場所でトンボが見られるようになったことを喜ぶ菊地さん。「公園はできたばかり。さらに環境が安定していけば、他から飛んできたトンボがすみつく可能性もある。いろいろな種類が増えていけば」と期待。遊歩道が整備され、観察しやすい環境となったことも歓迎し、「よく見るときれいなトンボがたくさんいる。散歩がてらゆっくり観察してみては。トンボは益虫で昔から人間の役に立ってきた。“勝ち虫”といわれ、日本人の歴史とも関わりが深いトンボにぜひ親しんでほしい」と話す。
 
※記事中トンボ写真=菊地利明さん提供

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「魚河岸ジェラート」に新メニュー 釜石産トマトのうまみ凝縮「すずこまシャーベット」

魚河岸ジェラート部の新メニュー「すずこまシャーベット」

魚河岸ジェラート部の新メニュー「すずこまシャーベット」

 
 釜石市魚河岸の魚河岸テラスで提供されている地域の味を取り入れたジェラートに今夏、地元農家が育てたトマト「すずこま」を使ったメニューが仲間入りした。トマトのうまみを凝縮し、レモン果汁を加えてフルーティーに仕上げた、その名は「すずこまシャーベット」。きれいな赤い色をした見た目も印象的な一品で、10月頃まで楽しめるという。
 
 指定管理者のかまいしDMCが運営する店舗「魚河岸ジェラート部」では常時10種類程度を販売。釜石特産の甲子柿、浜千鳥の酒かす、藤勇醸造のみそを使った菓子などを用いて地元色を前面に押し出した豊かな味わいがそろう。
 
すずこまを使ったシャーベットを開発した新沼さん

すずこまを使ったシャーベットを開発した新沼さん

 
 新メニューは、湯むきしたトマトを角切りにし種ごと煮込み、砂糖やレモン汁を加えてペースト状にしたものを、ベースのシャーベット(水に砂糖を加えて凍結させた冷菓)に混ぜて仕上げた。「そのまんま、すずこまで勝負」と自信を見せるのは、開発を担当した同社の新沼貴子さん(54)。「酸味が強めのトマトで、素材本来の味を生かすため加糖は最小限にとどめ、うまみと爽やかさのバランスを崩さないようこだわった。牛乳など動物性タンパク質を使っていないので、ベジタリアンやビーガン(完全菜食主義者)の方も楽しめる」とアピールする。
 
 すずこまは東北農業研究センター(盛岡市)などが開発した加熱調理用トマトで、抗酸化作用を持つリコピンを多く含む。生食でも味わえるが、火を通しても煮崩れしない、赤みがあせないなどの特徴があるという。釜石市が推奨する農産物の一つで、2021年度から市内の生産農家4人が試験栽培に取り組んでいる。
 
試食した生産者の佐々木さん(左)と二本松さんの評価は上々

試食した生産者の佐々木さん(左)と二本松さんの評価は上々

 
 8月31日に魚河岸テラスで発表会があり、生産者が試食した。鵜住居町の二本松誠さん(58)は「トマトの味が濃い。うまみがぎゅっと詰まっていておいしい」と太鼓判。すずこまは、「芽かき」作業が不要など栽培時に手間がかからず、40グラムほどの小ぶりな実が“鈴なり”になり、一定の収量も見込める。橋野町の佐々木かよさん(71)は加工品への活用が広がるのを歓迎。自身は遊休農地を活用するため栽培に協力していて、「生産者として作りがいがある。特産へと育ち、釜石を知ってもらうきっかけになれば」と期待した。
 
 すずこまシャーベットは、シングル280円。ジェラート部の開店時間は午後2時~同4時まで(月曜定休)。
 
地元色を押し出した豊かな味わいを提供する「魚河岸ジェラート部」

地元色を押し出した豊かな味わいを提供する「魚河岸ジェラート部」

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震災乗り越え群落形成へ 絶滅危惧植物「ミズアオイ」釜石・片岸町で2年目の開花

片岸公園内の沼地で花を咲かせる「ミズアオイ」

片岸公園内の沼地で花を咲かせる「ミズアオイ」

 
 東日本大震災前、釜石市片岸町の水田地帯に自生していた絶滅危惧植物「ミズアオイ」。津波による被災でその姿を消していたが、震災から11年が経過した今年、群落復活の兆しを見せ始めている。市が整備した遊水池と公園内の沼地で発芽が見られ、8月下旬からは青紫色の花が開花。訪れる人の目を楽しませる。市民らは自然の再生力に驚きながら、かつての原風景復活に期待を寄せる。
 
 ミズアオイは水田地帯や沼地に生える1年草の植物。古くから全国で見られたが、除草剤の使用や水路整備などの成育環境の変化で数が減り、国の準絶滅危惧種、本県レッドデータブックAランク(絶滅の危機にひんしている)に指定される。
 
背丈20~40センチの柔らかい茎の先端に複数の花をつける

背丈20~40センチの柔らかい茎の先端に複数の花をつける

 
青紫色の花被片は6枚。黄色の雄しべとのコントラストが美しい

青紫色の花被片は6枚。黄色の雄しべとのコントラストが美しい

 
 片岸町では約50年前、防潮堤内側の水田地帯にミズアオイの大群落があったが、年々その数は減少。2000年代には所々で見られる程度になっていた。07年、水路改修で生息域を追われる水生生物のために、市内の環境保護団体「かまいし環境ネットワーク」が休耕田を利用してビオトープ(生物生息空間)を整備。土を掘り起こしたことで眠っていたミズアオイの種が芽生え始めた。“水田雑草”とも言われるミズアオイは、田おこしのような土壌のかき回しが発芽条件の一つとされる。
 
 10年には同所で群落が確認できるまでになっていたが、翌11年の震災津波で一帯は壊滅的な被害を受けた。同ネットワークは12年、ミズアオイの復活プロジェクトを始動。専門家らの助言で、かつて群落が確認された場所を重機で掘り、津波で堆積した砂や泥の下にある田んぼの土を採取。栗林町に移し発芽実験を行ったところ、土中に残っていた種からの発芽に成功した。後に鵜住居町田郷の休耕田への移植、漁業用水槽での育成によって命をつないだ片岸のミズアオイは、昨年完成した「片岸公園」の沼地に土ごと返された。
 
震災復興で新設された防潮堤の内側にある「片岸公園」。水辺には多様な植物が生える

震災復興で新設された防潮堤の内側にある「片岸公園」。水辺には多様な植物が生える

 
10年ぶりに古里・片岸に戻り、群落を見せ始めたミズアオイ

10年ぶりに古里・片岸に戻り、群落を見せ始めたミズアオイ

 
 一方で、同じく昨年完成した遊水池では、整備で土が掘り起こされたことで土中に眠っていたとみられる種が自然発芽。片岸公園、遊水池ともに昨年、今年と2年連続で開花が確認された。
 
 3日、現地を訪れた盛岡市の松森猛さん(72)は「自然の回復力は素晴らしい。加えて(保護のため)手を入れてくれた人たちがいたのはありがたいこと」と感心。50年ほど前、仕事の関係で片岸町に暮らしたことがあるが、「その時は全然分からなかった。ミズアオイという植物自体も今回初めて知った。花もきれい」と新たな発見を喜んだ。
 
室浜に向かう高台道路下付近に整備された遊水池

室浜に向かう高台道路下付近に整備された遊水池

 
10年の眠りから覚め、発芽・開花した遊水池のミズアオイ

10年の眠りから覚め、発芽・開花した遊水池のミズアオイ

 
遊水池で自然発芽したミズアオイを愛でる「かまいし環境ネットワーク」の加藤直子代表

遊水池で自然発芽したミズアオイを愛でる「かまいし環境ネットワーク」の加藤直子代表

 
 保護活動に取り組んできた同ネットワークの加藤直子代表(75)は「すごい生命力」とミズアオイが持つ強さに驚嘆。長年、一帯の自然環境を注視してきた経験から「水があり、植物、昆虫、野鳥と豊富な生物が共存する環境があるからこそ、ミズアオイも育つことができるのではないか。その環境を整えてあげることが大事。また眠りに入る可能性もあるが、しばらくは自然のまま見守りたい」と話した。花はあと1週間ぐらいは楽しめそうだ。
 
3日は、前日のニュース番組での紹介もあり、見学者が続々と訪れた=3日、片岸町・遊水池

3日は、前日のニュース番組での紹介もあり、見学者が続々と訪れた=3日、片岸町・遊水池

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企業版ワーケーション受け入れ好調の釜石を視察 北海道・富良野市の観光関係者ら、応用へ手応え

ワーケーションの現場視察で釜石市を訪れた富良野市の関係者ら

ワーケーションの現場視察で釜石市を訪れた富良野市の関係者ら

 
 新型コロナウイルス禍で注目されるのが、仕事と休暇を組み合わせた労働形態「ワーケーション」。全国各地で普及に向けアイデア合戦が繰り広げられる一方、一過性にとどまらず都市から地方への人の流れを定着できるか試行錯誤が続く。美しいラベンダー畑など雄大な自然を抱く観光地、北海道富良野市もワーケーションによる「持続可能な観光(サスティナブル・ツーリズム)」に着目するが、発展途上。2018年以降4年連続で「世界の持続可能な観光地100選」に選ばれた釜石市の取り組みからヒントを探ろうと、富良野の市職員や観光関係者ら9人が5日から2泊3日の日程で来釜、現場を視察した。
 
 富良野はテレビドラマ「北の国から」のロケ地として知られ、コロナ禍前は延べ約190万人が訪れる人気観光地。ただ、ドラマファンらは50代以上と年齢が高めで、観光の先細りを防ぐため、若年者といった新しい客層の取り込みを模索する。美瑛町など近隣市町村と地域連携DMOを設立しているが、独自の取り組みを推進する必要性を認識。宿泊費助成などでワーケーション客の受け入れを進め、今年度、現時点での実績は約40人。全体ビジョンや戦略が固まっておらず、提供する体験プログラムの開発などが課題だという。
 
釜石情報交流センターや市民ホールがある中心市街地を視察

釜石情報交流センターや市民ホールがある中心市街地を視察

 
 釜石でワーケーション事業を担うのは、観光地域づくり法人「かまいしDMC」(河東英宜代表取締役)。ワーケーション施設を開設するだけでなく、市の観光振興ビジョン「釜石オープン・フィールド・ミュージアム構想」をもとに、釜石に生き、暮らす人、そのなりわいに光を当て、それらをプログラム化し、固有の自然や歴史、文化を学ぶことができる仕組みを作っている。地域交流を通じた新たな価値創造につながると期待が高まり、今年はこれまでに延べ約250人が利用する。
 
根浜海岸では震災後の地域づくりに理解を深めた

根浜海岸では震災後の地域づくりに理解を深めた

 
いのちをつなぐ未来館では利用状況を聞いた

いのちをつなぐ未来館では利用状況を聞いた

 
 今回の視察では5日に、河東代表取締役らの案内で大町の釜石市民ホール、鵜住居町のいのちをつなぐ未来館、根浜海岸などをめぐり、東日本大震災後の復興まちづくりや防災、海を生かした観光の取り組みなどの説明を受けた。かまいしDMCが指定管理する魚河岸の魚河岸テラスで、観光まちづくりの実践を聞き取った。
 
 河東代表取締役は「利用者は日常と離れた学び直しの機会に注目している。観光資源のない釜石が持続可能な観光づくりを進めるには体験プログラムを磨いていくしかない。地域のことを深く学び、関わることで繰り返し来る。それが釜石の観光」と強調。企業や団体をターゲットにニーズを聞きながらプログラムを充実させてきた経緯などを伝えた。
  
魚河岸テラスではワーケーション普及に向け意見交換した

魚河岸テラスではワーケーション普及に向け意見交換した

  
 富良野の10人は、釜石市内全域を「屋根のない博物館」に見立てた同構想に興味を持った様子。法人立ち上げの資金、プログラムの開発法、観光協会といった既存組織との連携などについて熱心に質問した。翌日には地元漁師が案内する漁船クルーズ体験を控え、富良野市企画振興課の松野健吾主査(51)は「富良野には応用できる地域資源、素材がある。やり方を工夫すれば魅力的なプログラムを作れる」と実感を込めた。
 
 同商工観光課の本田寛康課長(49)は「ワーケーションを企業単位で受け入れている成功事例が釜石。手法をまねれば、できるものでもない。参考にし、ワーケーション実践者を引き付けるものを見つけたい」と刺激を受けた。知名度を生かした観光に、持続可能性を見据えた取り組みを加えるには「民間の力が必要」と再認識。「地域の産業に密着し、実践者も地域も喜ぶ取り組みにしたい」と前を向いた。

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お帰り!釜石の夏 港彩る大輪の花に歓声 3年ぶりの納涼花火に市民ら笑顔

釜石港を彩る「釜石納涼花火2022」=11日

釜石港を彩る「釜石納涼花火2022」=11日

 
 新型コロナウイルス感染症の影響で2年間中止が続いていた釜石市の納涼花火大会(市、釜石観光物産協会主催)が今年復活。11日夜、釜石港で開かれた。東日本大震災犠牲者の鎮魂、新型コロナの早期終息などを願い、午後7時から約1時間にわたり約3千発を打ち上げ。港周辺に設けた4つの観覧場所合わせて約1万人が夏の風物詩を楽しんだ。
 
 例年、盆入り前に行われる同市の納涼花火。3年ぶりの開催となる今年は、観客の期待も大きく、開始1時間前から各観覧場所に家族連れや若者グループなどが続々と集まった。魚河岸の市魚市場エリアと港町の陸中海岸グランドホテル付近には出店も並び、久しぶりの夏風景が広がった。
 
 午後7時。協賛企業や団体の紹介後、秋田県大仙市「大曲の花火協同組合」の4社17人による花火の打ち上げが始まった。港町の桟橋から3~5号玉、創作花火、スターマインなどの各種花火が打ち上げられたほか、小型船が移動しながら仕掛ける水中花火が次々と繰り出された。多彩な色や形、複数の花火を組み合わせた演出に観客は魅了され、目に焼き付けるとともにスマートフォンのカメラに美しい光景を収めた。
 
花火の光で桟橋のクレーンが浮かび上がる光景は釜石ならでは!

花火の光で桟橋のクレーンが浮かび上がる光景は釜石ならでは!

 
月明かりとコラボする水中花火。海面に映る光とも華やかに競演

月明かりとコラボする水中花火。海面に映る光とも華やかに競演

 
多くの人がスマホカメラを片手に観覧。美しい光景を記憶と記録に残す

多くの人がスマホカメラを片手に観覧。美しい光景を記憶と記録に残す

 
 家族3人で訪れた花巻市の髙橋理央さん(24)は初めて釜石の花火を観賞。岸壁から間近で見る水中花火に感動し、「すごい迫力。他の地域にはない特別感」と声を弾ませた。ここ2年、コロナ禍で各地の花火大会が中止されてきたが、「感染防止対策もしっかりしつつ、地域の活性化につながるイベントを開催していけるようになれば」と願った。
 
 同級生4人で申し合わせ、浴衣姿で訪れた植田杏奈さん(釜石中3年)は「3年前に見た時より豊富な色合いで、迫力も全然違った。すごくきれい」と感激。中学最後の夏休みは、来春の高校受験に向けた勉強で大忙し。「久しぶりにみんなで集まれて良かった。いい思い出もできて、これからの受験勉強も頑張れそう」と力を蓄えた様子。地域のにぎわい復活も喜んだ。
 
市魚市場エリアの観覧会場で花火を楽しむ観客

市魚市場エリアの観覧会場で花火を楽しむ観客

 
岸壁から見る水中花火は音とともに迫力満点!右奥にはライトアップされた釜石大観音も

岸壁から見る水中花火は音とともに迫力満点!右奥にはライトアップされた釜石大観音も
 
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嬉石方面より撮影/撮影:西条佳泰(株式会社Grafica)

 
 釜石観光物産協会によると、今年の人出はコロナ前とほぼ同等。各会場では手指の消毒のほか、出店の配置を工夫するなど観客が密にならないような対策を講じた。「久しぶりの花火大会を皆さん楽しみにしていたようで、人出は予想以上。事故もなく無事に終えられたことが何より」と同協会。
 
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嬉石方面より撮影/撮影:西条佳泰(株式会社Grafica)

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知って楽しい「三陸ジオパーク」 釜石の子どもたちが郷土の魅力再発見!!

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自分で作ったアンモナイトのレプリカを手に笑顔を見せる親子

 
 ジオパークの観点から郷土の自然や歴史を知るイベント「釜石ふしぎ発見~化石発掘?!ジオの魅力大調査~」が6日、釜石市大平町の市立鉄の歴史館で開かれた。市商工観光課、世界遺産課が共催する夏休み自由研究応援企画の第2弾。市内の小学生と保護者18人が参加し、講話やものづくりを通して三陸ジオパークの面白さを体感した。
 
 青森県八戸市から宮城県気仙沼市まで約220キロに及ぶ三陸ジオパークは国内最大の面積を誇る。2013年に日本ジオパークとして認定された。釜石市のジオサイト(見どころ)は釜石鉱山、橋野鉄鉱山、千丈ヶ滝、根浜海岸、箱崎半島千畳敷、両石の明治、昭和の津波記念碑―の6つ。約5億年前の地球活動から始まる三陸の歴史、長い年月をかけて形成された地形や景観、地下資源など多様な遺産に触れることが出来る。
 
最初に市商工観光課の職員から三陸ジオパークについて学んだ

最初に市商工観光課の職員から三陸ジオパークについて学んだ

 
 イベントでは市商工観光課の佐々木収主事が同ジオパークについて解説。▽旧釜石鉱山事務所にある「ナウマンの地質図」は三陸の成り立ちを物語る重要な資料であること▽両石町水海川の上流にある「千丈ヶ滝」周辺では、3~4億年前に赤道近くで生えていた植物“リンボク”の化石が見つかっていること―などを挙げ、参加者は太古の地球活動に思いをはせた。
 
 講話の後は順番に3つのメニューを体験。熱湯で軟らかくなるゴム素材を型に詰めて作るアンモナイトのレプリカ製作、VR(仮想現実)ゴーグルでの三陸ジオサイト巡り、手製の鋳型に溶かしたスズを流し込んでキーホルダーを作る鋳造体験と、ジオの一端に触れる時間を楽しんだ。
 
VRゴーグルで三陸のジオサイトを体験する子どもたち(右側)

VRゴーグルで三陸のジオサイトを体験する子どもたち(右側)

 
職員に教わりながら、キーホルダーの鋳型作り

職員に教わりながら、キーホルダーの鋳型作り

 
230度に熱して溶かしたスズを鋳型に流し込む様子を見学

230度に熱して溶かしたスズを鋳型に流し込む様子を見学

 
 小佐野小3年の千葉栞奈さんは「自分の住んでいるまちに(ジオに関わる)いろいろな場所があることを初めて知り、びっくりした。海のところ(千畳敷)に行ってみたい」と好奇心をそそられた様子。甲子小5年の髙橋龍之助君は「釜石にもジオサイトがあるのはうれしい。VRでいろいろな所を詳しく見ることができた。化石にも興味がある」と学びを深めた。
 
 参加者が体験した三陸ジオパークのVRゴーグルは、鵜住居町の根浜海岸レストハウスでも体験できる。施設内には三陸ジオを紹介する展示物もある。鉄の歴史館のキーホルダーを作る鋳造体験は事前予約が必要。問い合わせは同館(電話0193・24・2211)へ。
 
鋳型に流したスズは5分ほどで固まり、左下のようなきれいな形になる

鋳型に流したスズは5分ほどで固まり、左下のようなきれいな形になる

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夜の列車でサファリ気分を満喫!? 三陸鉄道 シカ被害逆手に初の運行企画

三陸鉄道が初めて運行した「ナイトジャングルトレイン」=9日

三陸鉄道が初めて運行した「ナイトジャングルトレイン」=9日

 
 生息域・数の拡大で人間の生活領域への進出が目立つ本県のニホンジカ―。衝突事故で列車の遅延や車両故障などの被害を受ける三陸鉄道(石川義晃社長、本社・宮古市)は、この現状を逆手にとった“シカ見学”ツアー列車を発案。9日夜、釜石―大槌間で初運行した。暗闇の中で野生動物を見つける非日常体験に乗客は大興奮。同社社員も驚く盛り上がりを見せた。
 
 若手運転士のアイデアで実現した企画列車は、その名も「ナイトジャングルトレイン」。シカの目撃が多い夕方から夜にかけて運行され、県内外から家族連れなど35人が乗車した。オリジナルヘッドマークを付けた列車は、午後6時45分ごろ、釜石駅を出発。まだ明るさが残る往路から、沿線の草むらでは複数のシカが見られた。
 
シカの顔がデザインされたオリジナルヘッドマークを付けた車両

シカの顔がデザインされたオリジナルヘッドマークを付けた車両

 
「いた、いた!」車窓からシカを見つける乗客

「いた、いた!」車窓からシカを見つける乗客

 
 車内では同社の金野淳一運行本部長が沿線に生息する野生動物について紹介。シカのほかキツネやタヌキ、クマ、キジなどさまざまな種類が見られる一方で、線路への侵入が列車運行に支障をきたしている現状も説明した。ゲストの盛岡市動物公園ZOOMOの辻本恒徳園長はニホンジカの生態について解説。草食のシカが2メートルのフェンスを飛び越えるような筋肉を持つ理由など、興味深い話が乗客を引き付けた。
 
シカの生態について教える盛岡市動物公園ZOOMOの辻本恒徳園長

シカの生態について教える盛岡市動物公園ZOOMOの辻本恒徳園長

 
 すっかり暗くなった復路では、最もシカが多く見られる山間ポイントの両石町水海地内で列車を低速走行。車内の明かりを消して乗客がライトで外を照らすと、目が光るシカの姿が各所で浮かび上がった。子どもも大人もシカ探しに夢中になり、ちょっとしたナイトサファリ気分を味わった。
 
窓を開け、ライトを照らしてシカを探す

窓を開け、ライトを照らしてシカを探す

 
線路沿いの草むらにたたずむニホンジカ=三陸鉄道社員が車内から撮影

線路沿いの草むらにたたずむニホンジカ=三陸鉄道社員が車内から撮影

 
 大船渡市から参加した田村恵佑君(5)は「6匹ぐらい見たよ。シカ、大きかった」と初めての遭遇体験にご満悦。母暢子さん(34)は「大船渡でもシカの出没はあるが、あえて見に行こうとはしないので、こういう機会は新鮮。夜の乗車やライトでシカを探すのも面白かった」と列車ならではの楽しさを実感。「また乗ってみたい」と親子で口をそろえた。
 
 「小さいのから大きいのまで、かなり見ました。人生初の経験」と笑う花巻市の小松義次さん(72)。三鉄社員の苦労やシカの生態など学びも深め、有意義な時間を満喫した。震災前は沿線の鵜住居町に暮らしていたこともあり、「懐かしくてね。車とは違う車窓の景色も楽しめた」と魅力いっぱいのツアーを喜んだ。
 
 同社によると、野生動物と列車の衝突はニホンジカが群を抜いて多く、釜石―宮古間がJRから移管された2019年度は同シカだけで126件と急増(前年度26件)。増加傾向は続き、21年度は最も多い162件の発生があった。線路内への侵入を防ぐネットの設置など対策も講じるが、完全には防ぎきれないのが実情。衝突時の後始末の労力や車両修理費用の負担も大きい。
 
車内では夕食の弁当が提供された

車内では夕食の弁当が提供された

 
大槌駅のホームでは停車時間に豚汁のサービスも

大槌駅のホームでは停車時間に豚汁のサービスも

 
 生態系に必要な野生動物と共存し、同鉄道の利用促進を図る今回のチャレンジ企画。車内での弁当提供、大槌駅での豚汁サービスを含む旅行代金は、いわて旅応援プロジェクトの割引適用で実質2500円。乗客募集には定員(35人)の倍の申し込みがあったという。金野運行本部長は予想以上の乗客の反応に、「こんなに喜んでもらえるとは。次回の開催もぜひ検討していきたい」と大きな手応えを感じていた。

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“先輩”ラベンダー園 橋野町青ノ木のフラワーガーデンは16日から刈り取り体験

ラベンダーの開花時期を迎えた「橋野鉄鉱山フラワーガーデン」=10日

ラベンダーの開花時期を迎えた「橋野鉄鉱山フラワーガーデン」=10日

 

※降雨が予報されており、16日の開催は中止となりました。(7/15追記)
 
 釜石市橋野町青ノ木の「橋野鉄鉱山フラワーガーデン」では、あす16日から3日間、園内に植えられているラベンダーの刈り取り体験を楽しむことができる。橋野町振興協議会(和田松男会長)と栗橋地区まちづくり会議(洞口政伸議長)が共催する夏恒例の観賞イベント。「ラベンダーのさわやかな香りに包まれながら、涼しげな花や周辺の緑豊かな自然を楽しんで」と来場を呼び掛ける。
 
 2015年に同振興協によって整備されたラベンダー畑には、約700株のグロッソラベンダーが育つ。今年は年数を重ねて勢いが衰えた株を取り除き、挿し木や株分けで増やした約200株を新たに植栽。若い株は育成途中のため、畑全体の花の数は昨年より少ないが、春先から剪定(せんてい)をするなど手入れをしてきた株は順調に生育。天候や気温にもよるが、イベント期間中には最も香りを楽しめる6~7分咲きになると見込まれる。
 
刈り取り体験ができるラベンダー畑

刈り取り体験ができるラベンダー畑

 
10日の撮影時は1~2分咲き。晴れて気温が上がれば一気に開花が進む

10日の撮影時は1~2分咲き。晴れて気温が上がれば一気に開花が進む

 
 期間中は、はさみで刈り取ったラベンダーを一束300円で持ち帰ることができる。会場では株分けした苗や地元住民が手作りした匂い袋なども販売される。同振興協のスタッフが花や茎の活用法や苗の育て方をアドバイスする。
 
 畑の手入れを続ける同振興協の小笠原明彦さん(66)は「ラベンダーの香りは寝付きを良くし、深い睡眠を得られることで知られる。他にもさまざまな用途で活用できるので、試してみては」と勧める。
 
2020年の刈り取り体験の様子。いい香りに包まれて…

2020年の刈り取り体験の様子。いい香りに包まれて…

 
 同ガーデンは橋野鉄鉱山インフォメーションセンターの隣にある。刈り取り体験は16~18日の午前10時~午後3時まで受け入れる。花の観賞は時間外でも可能。イベントの問い合わせは、同振興協事務局(TEL090・4639・3225)へ。