橋野鉄鉱山・三番高炉跡周辺で「長屋跡」確認 発掘調査成果を一般公開 遺物展示は12/8まで


2023/10/10
釜石新聞NewS #地域 #観光

国史跡「橋野高炉跡」で行われる発掘調査の一般向け現地説明会

国史跡「橋野高炉跡」で行われる発掘調査の一般向け現地説明会

 
 釜石市が本年度実施した「橋野鉄鉱山」高炉場跡の発掘調査の成果が9月30日、一般に公開された。同調査は市が2018年から進める「橋野高炉跡範囲内容確認調査」の一環。昨年度から着手している三番高炉跡周辺の調査で、高炉西側にあったとされる長屋の建物跡を確認。水路跡などを含む調査遺構からは作業員の生活を物語る陶磁器や飲料瓶、文房具などが見つかった。
 
 調査は7月から10月までの予定で実施。1860年代初頭(江戸時代末期)に描かれた高炉絵巻にある、三番高炉西側(川沿い)の長屋3棟の遺構確認を目的に試掘調査が行われた。想定地4カ所のうち3カ所を試掘したところ、最も南側で長屋建物跡1棟を確認。絵巻に描かれている地点とおおむね一致する。今回の調査では柱穴の並びから約12坪の規模が検出されたが、1892(明治25)、94(同27)年の建物記録では15坪の長屋が記録されていることから、さらに大きい可能性がある。
 
 遺構内からは「鍛冶炉」の下部構造と考えられる粘土塊や炭跡が見つかり、銑鉄を製品化する延べ鉄を作っていた可能性がある。周辺からは鍛冶用フイゴの羽口とみられる破片も見つかった。今後、土間などの間取り構造を調べていく予定。長屋跡の試掘ではこの他、斜面部に土留め用と推定される石垣も確認されており、付近に建物遺構が埋蔵されている可能性があるという。
 
長屋建物跡が確認された発掘現場。遺構内から鍛冶炉の痕跡(写真黄丸)が見つかった

長屋建物跡が確認された発掘現場。遺構内から鍛冶炉の痕跡(写真黄丸)が見つかった

 
長屋想定地の斜面部で見つかった石垣。土留め用に石を積んだものか?

長屋想定地の斜面部で見つかった石垣。土留め用に石を積んだものか?

 
 今回は補足調査として、一番高炉(南)から三番高炉(北)に続く水路跡、高炉場の入り口・大門跡などについても調査が行われた。地中に埋まっている水路の両側の石垣には、人が横断するために長い石が架けられているのが確認された。暗渠(あんきょ、カルバート)と呼ばれる構造で、渡された石の下を水が流れていたと推定される。水路内部では鉄鉱石や鉄さびで変色した土、石が見られたほか、鉄銭を作る際に溶かした鉄を鋳型に流すための鉄製しゃもじの一部も出土した。
 
写真下(南)~上(北)に石垣が連なる水路跡。高炉に風を送るフイゴを水車の力で動かすため、3基の高炉沿いに水を流していた

写真下(南)~上(北)に石垣が連なる水路跡。高炉に風を送るフイゴを水車の力で動かすため、3基の高炉沿いに水を流していた

 
写真左:水路幅は約1.2メートル(場所により増)。同右:発掘した水路内部。鉄分でさびた石などが見える

写真左:水路幅は約1.2メートル(場所により増)。同右:発掘した水路内部。鉄分でさびた石などが見える

 
暗渠構造の水路部分。横に渡した石の下を水が流れる(写真黄丸)

暗渠構造の水路部分。横に渡した石の下を水が流れる(写真黄丸)

 
 出土遺物は橋野鉄鉱山インフォメーションセンターで12月8日まで公開されている。鉄銭やヤスリ、フイゴの羽口片など製鉄に関する出土品のほか、作業員の暮らしに関わるものが見られる。墨つぼに筆を入れる筒がついた携帯用の文房具「矢立て」、硯(すずり)の破片は初出土。他に、今のノート代わりとなる石盤、きせる、紅皿、陶磁器の破片、ランプのかさ、ビール瓶など、江戸末期から昭和初期の生活用品が多数、出土している。
 
今回の発掘調査で見つかった出土遺物。左下は鉄製しゃもじの一部。右上はフイゴの羽口片

今回の発掘調査で見つかった出土遺物。左下は鉄製しゃもじの一部。右上はフイゴの羽口片

 
遺物は橋野鉄鉱山インフォメーションセンターで12月8日まで展示

遺物は橋野鉄鉱山インフォメーションセンターで12月8日まで展示

 
 現地説明会で調査成果を報告した市世界遺産課の髙橋岳主査は「絵巻とほぼ同じ位置に長屋建物があったことが確認できた。来年度以降の本格的な調査で建物内部の間取り、鍛冶炉の作業状況が分かるかもしれない」と期待する。
 
 説明会に参加した野田町の男性(75)は「毎回、新しく分かることがあって面白い。今回は高炉で作った鉄でお金も作っていたことを初めて知った。話を聞いたり遺物を見たりすると、当時の操業の様子に想像が膨らむ」と話した。

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