危機対応について意見を出し合うシンポジウム
釜石市と東京大学社会科学研究所(大沢眞理所長)が危機対応研究の覚書を締結したことを受けた東京大学釜石カレッジ「危機対応学シンポジウム」は14日、大町の釜石PITで開かれた。市内で漁業の復活や農業振興、地域コミュニティーづくりなどに取り組む団体や行政の関係者6人が活動内容を紹介。聴講した市民ら約90人も巻き込みながら危機やピンチの捉え方、これからの希望について意見を出し合い、危機対応学という新たな視点への考えを深めた。
同研究所の玄田有史教授が「釜石と希望学のこれから―『危機対応学』始めます」と題して趣旨を説明した。危機は予測したり管理したりできないが、対応することはできると強調した上で、「将来に一切の危機のない世界を想定するのは難しい。今後起こり得る危機に何とか対応できるという見通しや手応えの得られる社会に希望は生まれるはず。危険(リスク)を機会(チャンス)に換える力を持とう」と呼び掛け。東大の危機対応の研究と釜石の人たちが経験してきた危機対応にまつわる話がつながった時に生み出されるものへの期待感を示し、「釜石の数々の危機対応の経験を全国と世界が必要としている」と意義を語った。
シンポジウムでは6人が▽日ごろの活動を象徴▽活動の中の危機やピンチ▽これからの希望を表現―する3枚の写真を紹介しながら意見を交わした。ネクスト釜石の君ケ洞剛一さんは「個性で貢献」とのタイトルで水産業の展望を紹介。仮設住宅でのイベント開催や高校生のボランティア活動のサポート、農業などの後継者不足解消への取り組みなど報告のほか、海を生かした観光の再生への思いを語る人もいた。
市内で子どもの居場所づくりなどに取り組む一般社団法人三陸ひとつなぎ自然学校の柏﨑未来さんはピンチと感じたとき、「ピンチはチャンス、チャンスはチャレンジ、チャレンジはチェンジ」という自身のお気に入り曲のフレーズを何度もつぶやき、「ピンチがあれば次の自分に変われる」と意識することで危機を乗り越えていると紹介。子どもたちの笑顔があふれる1枚を未来への希望として挙げ、「生き生きした釜石になることが夢。震災後、愛着を持って釜石に住もうという子が増えてきているのが誇り。将来の釜石を背負っていく子どもたちに、前向きな背中を見せていきたい」と活動への意欲を話した。
(復興釜石新聞 2016年11月19日発行 第539号より)
東京大学社会学研究所
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