釜石港湾口防波堤、世界最大水深の威容取り戻す〜ケーソン据え付け完了、震災前の機能をほぼ回復


2017/12/12
復興釜石新聞アーカイブ #防災・安全

最後のケーソンが防波堤に到着、慎重な作業を関係者が見守った

最後のケーソンが防波堤に到着、慎重な作業を関係者が見守った

 

 東日本大震災の津波で損壊した釜石港湾口防波堤(総延長1960メートル)の復旧工事は11月29日、堤の本体となるケーソンの最後の1基が据え付けられ、震災前の機能をほぼ回復した。国土交通省釜石港湾事務所(下澤治所長)はさらにケーソン上部のコンクリート工事を進め、本年度内に復旧事業を完了する。

 

 震災の津波で南堤(670メートル)は18基中8基(370メートル)、北堤(990メートル)は39基のうち29基(870メートル)が土台からずれるなど損壊。開口部(300メートル)の基底部も壊れた。

 

ドローンで空撮した最後のケーソン据え付け作業=釜石港湾事務所提供

ドローンで空撮した最後のケーソン据え付け作業=釜石港湾事務所提供

 

 最後のケーソンは北堤の北側から6基目。幅20メートル、長さ30メートル、高さ15メートルの箱型で、重量は約6320トン。製作した泉ケーソンヤードから約500メートルを専用船で引いてゆっくり運び、函内に注水して海底のマウンドに仮設置した。

 

 ケーソンは2隻のクレーン船で、幅30メートルの間にゆっくりはめ込まれた。堤上の測量機、海中の映像モニター、上空のドローンなどで、うねり、風の影響を確認するなど作業は慎重に進められた。

 

 今後、傾斜やひずみの有無を確認し、バラスト(石)を投入して固定する。

 

 釜石港湾事務所の下澤所長は「地域のためにと一生懸命がんばってきた。港湾機能を保ちながらの工事で、航路を切り替えるのも大変だった。旧防波堤と同じ設計だが、より粘り強い構造にした。完成により釜石港の荷役がスムーズになり、利活用が促進されれば」と願った。

 

 世界最大水深(63メートル)の防波堤としてギネス記録にも登録された釜石湾口防は、1978年から30年をかけ、1500億円余りの巨費を投じて2008年度に完成した。

 

 12年から始まった復旧事業には約650億円を投入。深部工区が多く、集中する復旧事業で資機材が不足するなどの制約の中で、工法を工夫し事業のスピードアップを図った。

 

(復興釜石新聞 2017年12月2日発行 第644号より)

 

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