タグ別アーカイブ: 産業・経済

震災からの復興状況を確認するため釜石地方森林組合を視察した安倍晋三首相。前列右端は久保知久組合長

安倍首相「林業振興、全面支援」〜復旧の釜石地方森林組合を視察

震災からの復興状況を確認するため釜石地方森林組合を視察した安倍晋三首相。前列右端は久保知久組合長

震災からの復興状況を確認するため釜石地方森林組合を視察した安倍晋三首相。前列右端は久保知久組合長

 

 安倍晋三首相は20日、東日本大震災からの復興状況を確認するため本県を訪れた。山田町、大槌町に足を運んだ後、釜石市片岸町の釜石地方森林組合を視察。鉄と木材を組み合わせたものづくりなどについて説明を受け、「地域のなりわいとなる林業の振興に力を入れたい。国として全面的に復興を支援する」と前向きな姿勢を示した。首相の被災地訪問は36回目で第4次政権発足後は初めて。本県を訪れたのは今年3月以来で、通算10度目。

 

 同組合では久保知久組合長(70)や高橋幸男参事(53)らが安倍首相を出迎え、久保組合長は「震災ですべてを流されたが、国の支援でここまで復旧することができた」と感謝の意を伝えた。

 

 高橋参事は、地元産木材と鉄を組み合わせてブランド化を目指す「mori―to―tetsu(森と鉄)」について説明。首相は、「暮らしのすぐそばで釜石というまちを感じてほしい」との願いが込められたテーブルに触れ、椅子に腰かけてみた。

 

鉄と木のコラボ製品について髙橋幸男参事(右)から説明を受ける安倍首相

鉄と木のコラボ製品について髙橋幸男参事(右)から説明を受ける安倍首相

 

 釜石リージョナルコーディネーター(釜援隊)として同組合に派遣されている手塚さや香さんは「世界遺産にもなった鉄と木を活用した」と強調。林業後継者育成を目的に同組合が開講している林業スクールの受講者が、この3年間で50人になったことも報告した。

 

 高橋参事は「組合が存続の危機に立たされた時も国の支援に報いるために林業の6次化を進め、鉄と木のコラボを考えた」と説明。森林所有者の高齢化や資金難で伐採後の再造林が進んでいない現状にも触れ、「地方自治体が導入を進めている森林環境税を再造林にも使えるようにしてほしい」と要望した。

 

 安倍首相は「林業の再生は重要だ」とした上で、「地域の心の支えとなっている木や鉄を活用したものづくりに共感する。地域の外からやって来た人と知恵を出し合い、なりわいの芽が育っている。地域の意欲なくして復興はない。復興に向かって全力で前へ進もうとするみなさんを全面的に支援していきたい」と今後の展開に期待を示した。

 

(復興釜石新聞 2017年12月23日発行 第650号より)

 

復興釜石新聞

復興釜石新聞(合同会社 釜石新聞社)

復興釜石新聞と連携し、各号紙面より数日の期間を設け記者のピックアップ記事を2〜3点掲載しています。

問い合わせ:0193-55-4713 〒026-0044 岩手県釜石市住吉町3-3

コンテナ専用船は今後毎週、釜石港に入る

外資コンテナ定期便就航祝う〜釜石と中・韓を直接結ぶ、輸出促進 本県経済成長に期待

外国貿易コンテナ定期航路開設を祝い、期待を込めてテープカットする関係者

外国貿易コンテナ定期航路開設を祝い、期待を込めてテープカットする関係者

 

 釜石港と中国、韓国とを直接結ぶ外国貿易コンテナ航路定期便の就航を記念する式典が17日、同港公共ふ頭で行われた。式典には関係者約60人が出席し、同日朝に着岸した韓国の大手船会社南星海運の定期便を前に、野田武則市長(釜石港湾振興協議会会長)ら8人がテープカット。運航開始を祝い、釜石港の輸出入促進による本県経済の成長に期待を膨らませた。

 

 第1船の「STAR EXPRESS(スターエクスプレス)」(9520トン)は17日午前9時ごろ、ガントリークレーンが設置された公共ふ頭に着岸した。全長約143メートル、全幅22・6メートルで、953TEU(20フィートコンテナ換算)を積載できる。今回は空コンテナを陸揚げ。冷凍魚、線材、パルプなどを収納したコンテナ40個を積み、午後4時ごろ、次の寄港地・茨城県の常陸那珂港に向かった。

 

コンテナ専用船は今後毎週、釜石港に入る

コンテナ専用船は今後毎週、釜石港に入る

 

 定期航路は中国の上海、寧波から韓国・釜山、新潟、苫小牧、八戸を経て釜石に入港。常陸那珂などを経て上海へと周回する。同航路には同型コンテナ船5隻が就航。釜石には毎週金曜日に寄港する。また、南星海運は釜山を拠点に中国北部、東南アジアへの接続航路も確保する。

 

 式典で野田武則市長は「港湾、復興道路の整備とともに、湾口防波堤で港内の静穏が守られる釜石港は企業の関心を集めている。歴史的瞬間を迎え、南星海運に感謝する」とあいさつした。

 

 ソウルから駆けつけた南星海運の金庸圭(キム・ヨンギュ)社長は「当社は創立65年。24隻のうち15隻を日本、韓国、中国、東南アジアの38港に運航させる。これから、直航運航の強みを生かし、釜石港のさらなる発展に協力したい」と意欲を語った。

 

 釜石港は東日本大震災の1カ月後には国際フィーダーコンテナ定期航路を再開し、年々取扱量を増やしてきた。昨年12月には本県初の1港2船社体制が整い、貿易手段の選択肢が拡大した。

 

 課題は受け入れ機能の向上だったが、大型荷役機械のガントリークレーンが今年9月に供用開始。県は同ふ頭に、冷凍食料品などのコンテナに接続するリーファー電源(本設16口、仮設12口)を整備した。

 

 釜石港のコンテナ取扱量は02年の16TEUに始まり、11年には256TEU、12年1759TEU、14年2631TEUと順調に増加。今年は11月3日現在で3034TEUに達した。今回の外貿定期航路就航で、さらに取扱量の上積みが促進される。

 

(復興釜石新聞 2017年11月22日発行 第641号より)

 

復興釜石新聞

復興釜石新聞(合同会社 釜石新聞社)

復興釜石新聞と連携し、各号紙面より数日の期間を設け記者のピックアップ記事を2〜3点掲載しています。

問い合わせ:0193-55-4713 〒026-0044 岩手県釜石市住吉町3-3

「私らしく」はたらく第一歩!おしごと大相談会

「私らしく」はたらく第一歩!おしごと大相談会

 「私らしく」はたらく第一歩!おしごと大相談会

 


働いてみたいけど不安、という方も、ちょっと話をきいてみようかなという方も大歓迎!

※この事業は「労働力発掘人材マッチング事業」の一環で実施します

 

 「私らしく」はたらく第一歩!おしごと大相談会

「私らしく」はたらく第一歩!おしごと大相談会

ファイル形式: PDFファイル
データ容量: 14,722 KB
ダウンロード


 

日時

11月7日(火) 10時30分~12時(10時15分集合)

場所

イオンタウン釜石 2Fイベントスペース

対象

お仕事に興味のある女性

内容

・「適職診断コーナー」知らなかった自分を発見!
・「企業とのグループトーク」気になる企業と本音トーク!
その他、専門家によるキャリア相談ブースやプチ勤務先輩ママとのお話ブースもあります

参加料

無料(無料託児あり)

申し込み

10月31日(火)まで
◆電話の場合  市商業観光課雇用対策室 27-8421
◆メールの場合kankou@city.kamaishi.iwate.jp
※氏名、年齢、電話番号、託児の有無(有りの場合はお子さんの年齢と人数)をお伝えください。

このページに関するお問い合わせ
釜石市 産業振興部 商業観光課 雇用対策室
〒026-8686 岩手県釜石市只越町3丁目9番13号
電話: 0193-27-8421 / Fax: 0193-22-2762 メール
元記事:https://www.city.kamaishi.iwate.jp/kurasu/rodo/rodonitsuite/detail/1213640_2295.html
釜石市

釜石市

釜石市公式サイトと連携し、縁とらんすがピックアップした記事を掲載しています。記事の内容に関するお問い合わせは、各記事の担当窓口までお問い合わせください。
活力あるまちづくりへ決意を新たにした釜石商議所創立70周年記念式典

活力ある地域社会の実現へ、960事業所・地域経済を支える〜釜石商工会議所創立70周年

活力あるまちづくりへ決意を新たにした釜石商議所創立70周年記念式典

活力あるまちづくりへ決意を新たにした釜石商議所創立70周年記念式典

 

 釜石商工会議所(山崎長也会頭)の創立70周年記念式典は26日、釜石市大町の釜石PITで開かれた。終戦直後に設立し、度重なる試練を乗り越えながら地域経済の発展とともに歩んだ歴史を振り返り、歴代役員ら組織運営に尽くした功労者を表彰。節目の年を祝うとともに、東日本大震災からの復興と活気あるまちづくりに一層努めていく決意を新たにした。

 

 同商議所は1924(大正13)年創設の釜石商工会をルーツとし、製鉄業や水産業の隆盛とともにまちの発展が進む中、戦後の47(昭和22)年に社団法人釜石商工会議所として発足。チリ地震津波の襲来、産業の構造転換に伴う製鉄業の相次ぐ合理化、石油危機、バブル経済の崩壊による不況など社会・経済状況の変化や数多くの困難に見舞われながらも総合経済団体として幅広い活動を展開し、地域経済振興をけん引してきた。

 

 震災では、当時1046あった会員事業所の65%が被災し、只越町にある同商議所会館も被害を受けた。ほかの施設を間借りして被災会員事業所の再開に向けた伴走型の支援にあたり、1年後に会館を再建。現在は約960事業所が会員となり地域経済を支えている。

 

 式典には、同商議所役員、議員、職員をはじめ国、県、市の行政関係者、県内の商工団体関係者など合わせて約150人が出席。式辞に立った山崎会頭は創立からの歴史をたどりながら「幾多の困難を乗り越えてきた先輩方の英知と遺業を継承し、地域資源を最大限活用した豊かで活力ある地域社会の実現に向け一丸となってまい進する」と力を込めた。

 

 引き続き、歴代会頭事業所、元役員功労者、永年勤続の役員・議員、優良会員(創業当初からの会員事業所)を表彰。震災直後から釜石の復旧復興に尽力したとして県外の4商議所に感謝状を贈った。

 

 組織運営に尽くし、表彰を受ける功労者

組織運営に尽くし、表彰を受ける功労者

 

 東北経済産業局、県、日本商工会議所が来賓代表として祝辞。野田武則市長は「地域経済の活性化と市民の幸せは表裏一体。企業には後継者不足や人材育成といった問題が山積しており、商議所の今後の尽力を切に願う。70周年を契機に未来を見据えた発展を」と期待した。

 

 式典に合わせて記念誌も発刊した。A4判カラーの115ページ。会員のインタビューなどで歩みをたどる内容で、1200部作成し会員、関係機関に配布する。記念事業として、今年5月に尾崎半島で起きた山林火災からの山林再生や地域振興につながればと願いを込め、焼けたスギを使った置物を作製。記念品として出席者に配った。

 

(復興釜石新聞 2017年9月30日発行 第626号より)

 

復興釜石新聞

復興釜石新聞(合同会社 釜石新聞社)

復興釜石新聞と連携し、各号紙面より数日の期間を設け記者のピックアップ記事を2〜3点掲載しています。

問い合わせ:0193-55-4713 〒026-0044 岩手県釜石市住吉町3-3

テープカットでガントリークレーンの稼働を祝う出席者。背後のクレーンの高さに圧倒される

復興けん引、高まる期待〜岩手と大阪の絆の証し、ガントリークレーン稼働開始

テープカットでガントリークレーンの稼働を祝う出席者。背後のクレーンの高さに圧倒される

テープカットでガントリークレーンの稼働を祝う出席者。背後のクレーンの高さに圧倒される

 

 東日本大震災からの復興支援のため大阪府から本県に無償譲渡され、釜石港に設置された大型荷役機械「ガントリークレーン」の供用開始式が23日、釜石市港町の同港公共ふ頭マイナス11メートル岸壁で行われた。これまで稼働してきたジブクレーンの約3倍の作業効率を誇る大型クレーンの導入で、同港の取扱貨物量は飛躍的な増大が見込まれ、関係者はコンテナ物流の活発化による本県経済振興へ期待を高める。

 

 県、市、釜石港湾振興協議会が主催した式典には約100人が出席した。達増拓也県知事は「本県港湾の震災復興のシンボルとして大いに活用させていただきたい」と大阪府(松井一郎知事)に感謝。同協議会会長の野田武則市長は「多くの企業の関心が釜石港に向けられる中で、歴史的な瞬間を迎えることができた」と喜びを表した。

 

 同府の竹内廣行副知事に記念品を贈り、出席者の代表11人でテープカット。コンテナ陸揚げのデモンストレーションを披露し、本県初導入となるガントリークレーンの供用開始を祝った。

 

 同クレーンは高さ56メートル(アーム伸長時76メートル)、重さ557トン。最大で44・5トンをつり上げることができ、1時間あたり20フィートコンテナ25~40個の積み下ろしができる。岸壁に設置されたレール上を走行するため、タイヤ移動式のジブクレーンに比べ、スピーディーな処理能力を持ち、大型コンテナ船にも対応可能となった。

 

 県は昨年7月から岸壁補強工事を進め、2列の移動用レール(延長178メートル)を敷設。先月、5日間かけてクレーンを堺泉北港から海上輸送し、岸壁への移設工事を行った。受け入れのための事業費は約9億円。

 

 同クレーンは1995年の阪神淡路大震災を受け、翌年、府が堺泉北港に整備。被災した神戸港の復興や関西の物流確保に活躍した3基のうち、現在運用されていない1基が本県に贈られた。クレーンには両府県章が並べて表示されている。

 

 竹内副知事は「岩手と大阪の絆の証し。東北の復興、経済成長、産業活性化に役立つことを期待する。復興後も岩手との交流を続け、互いに助け合っていければ」と願った。

 

 釜石港は震災後の2011年7月に国際フィーダー定期航路が開設されて以来、コンテナ貨物取扱量が大幅に増加。昨年12月に本県初の1港2船社体制となり、貿易手段の選択肢が広がった。今後、同港と海外の港を直接結ぶ新たな外貿ダイレクト航路が開設される見通しで、荷役能力向上は大きな強みになる。

 

(復興釜石新聞 2017年9月27日発行 第625号より)

 

復興釜石新聞

復興釜石新聞(合同会社 釜石新聞社)

復興釜石新聞と連携し、各号紙面より数日の期間を設け記者のピックアップ記事を2〜3点掲載しています。

問い合わせ:0193-55-4713 〒026-0044 岩手県釜石市住吉町3-3

買い物客に商品をPRする学生インターン

就業体験で味噌醤油 需要調査〜女学生が藤勇醸造で、商品売り込みにも挑戦

 買い物客に商品をPRする学生インターン

買い物客に商品をPRする学生インターン

 

 釜石市大渡町のみそ、しょうゆ製造販売業、藤勇醸造(藤井徳之社長)は3日、学生インターンによる店頭販売を港町のイオンタウン釜石で行った。県内の民間企業で学生が就業体験を行う「IWATE実践型インターンシップ」(NPO法人wiz主催)の一環で、受け入れ先となった同社が学生に託したミッションは「老舗醸造会社のマーケティング」。これに応え、2人の学生が買い物客にアンケート調査を行いながら同社の商品を売り込んだ。

 

 同社でのインターンシップに参加するのは、一橋大社会学部2年の佐藤冬佳さん(北海道札幌市出身)と立教大経営学部1年の宮﨑まはるさん(愛媛県松山市出身)。8月中旬から1カ月間釜石に滞在し、市内飲食店へのしょうゆ・みその使用状況調査や販促活動に取り組んでいる。

 

 店頭販売はこの日で3回目。同社が8月から発売を始めた「本醸造かけしょうゆ」(210ミリリットル)を紹介しながら買い物客に積極的に声を掛け、普段使っているしょうゆのボトルサイズや商品を選ぶ基準などを聞き取った。

 

 宮﨑さんは普段学んでいることに生かせると参加。「地域の生の声を聞けるので楽しい。消費者の顔が見える仕事もいいなと実感。こうしたコミュニケーションは将来、働いた時にきっと役立つ。人を幸せにする仕事に就きたい」と職業観を広げた。

 

 店頭での調査は今回で一段落。今後は消費者を招いた座談会を企画中で、佐藤さんは「立案、進行など全てを任せてもらい、実践できるチャンス。学生インターンならではの視点と切り口で関わった結果を資料としてしっかり残したい」と意気込んだ。

 

 創業115年になる同社では震災以降、創業当初からのロングセラー商品を消費者ニーズや健康志向に配慮して販売手法を変えたり、「十割糀(こうじ)みそ」「しょうゆ糀」など新たな発酵食品やスイーツなど商品開発に力を入れている。こうした攻めの取り組みの根底にあるのは「しょうゆ・みそ市場の縮小や発酵食文化の衰退への懸念などの危機感だ」と小山和宏専務。今回初めて学生インターンを受け入れ、初となるマーケティングを行っているところだが、手応えを感じた様子。「聞き取った一言一言が参考になる。データとしてまとめ報告してもらうことで、商品開発につながるヒントをもらえれば」と期待している。

 

 学生2人が企画する座談会「藤勇ティータイム」は9月12日午後3時から大町の小島カフェで開催。オリジナル発酵食などを提供することにしており、現在参加者を募っている。参加費は無料。問い合わせ、参加申し込みは藤勇醸造(電話0193・22・4177)へ。

 

(復興釜石新聞 2017年9月9日発行 第619号より)

 

復興釜石新聞

復興釜石新聞(合同会社 釜石新聞社)

復興釜石新聞と連携し、各号紙面より数日の期間を設け記者のピックアップ記事を2〜3点掲載しています。

問い合わせ:0193-55-4713 〒026-0044 岩手県釜石市住吉町3-3

「これからがスタート。まちの力になりたい」と前を向く人首廣作さん

アンジェリック 大町に本設店舗、再出発〜人首さん、支援に感謝 お菓子で表す

「これからがスタート。まちの力になりたい」と前を向く人首廣作さん

「これからがスタート。まちの力になりたい」と前を向く人首廣作さん

 

 東日本大震災の津波で釜石市嬉石町にあった店舗が全壊し、大只越町の仮設店舗などで営業を続けてきた洋菓子店「アンジェリック」が7日、大町の本設店舗に移り再スタートを切った。13日からはケーキの販売を始め、本格的にオープンする。店主の人首(ひとかべ)廣作さん(54)は「これからどうするか。うれしさよりも経営の不安が大きい」としつつ、「多くの人の支援でここまで来た。まちなかに店を構えることができたから精いっぱいやらせてもらう。終わりではなくスタート。まちをにぎやかにするため力になりたい」と意気込む。

 

 嬉石町の店舗は父親の金平さんが1961年、和洋菓子を製造する「朝日屋菓子店」として創業した。人首さんは首都圏で電気設備の整備修理などを行う会社で働いていたが、将来は古里に戻るとの思いもあり転職。首都圏の洋菓子店で8年修業し、30歳の時に古里に戻り、朝日屋の洋菓子部「アンジェリック」をスタートさせた。

 

 震災の津波では店舗兼工房が全壊。菓子づくりの道具や設備、レシピをすべて失った。金平さん(享年75歳)と共に母親の英子さん(同71歳)も亡くした。

 

 当初は生活することで精いっぱいだったが、震災直後、がれきとなった店舗の様子を見に行った時、当時幼稚園児だった長男の颯眞君から「パパ、ケーキ作るんだよね」と聞かれ、「もう一度働く姿を見せたい」と再建を決意。2011年12月、鈴子町の商業施設と大只越町の仮設商店街に工房や店舗をオープンした。

 

 その際、修業時代の仲間らから菓子づくり設備の提供を受けるなどの支援を受けた。以前雇っていた従業員らからは、レシピのメモ書きなども寄せられた。人のつながりをこれまで以上に感じ、感謝の気持ちを表すため、「釜石をPRし、まちに貢献できる商品を作りたい」と考えながら営業を続けた。

 

 再開から1年ほどは仮営業でも客足は順調だったが、まちの復興が徐々に進み、立ち寄ることのできる場所が増えると、人の流れが分散。ケーキなどの生菓子だけでは長く続けられないとの思いから、焼き菓子など日持ちし、お土産やギフト用の商品づくりに力を入れ、鉄鉱石をイメージさせる菓子や地元企業と連携した新商品を開発、販売してきた。

 

「アンジェリック」と大きな文字が目を引く新店舗

「アンジェリック」と大きな文字が目を引く新店舗

 

 それから6年。ようやくこぎつけた本設店舗でのプレオープンに、人首さんは「本設での出発でも、たくさんの人に助けてもらった。自分にできることは、おいしいものをつくること。小さい力だが、地域のため力になれることがあるはず。しっかり前を向いていく」と力を込めた。

 

 新店舗は市街地中心部の大町にあり、周辺には居酒屋、ホテル、復興公営住宅などが建ち並ぶ。生前、金平さんは「(人首さんが作った)ケーキをまちなかで売れば喜ばれるのに」と、よく口にしていたという。「よくやった、良かったな」。そんな両親の喜ぶ姿を思い浮かべ、13日のグランドオープンを迎える。

 

 13日〜15日はケーキなどをオープン価格で販売。来店者へ記念品も用意。営業時間は午前9時から午後7時。

 

(復興釜石新聞 2017年9月9日発行 第619号より)

 

復興釜石新聞

復興釜石新聞(合同会社 釜石新聞社)

復興釜石新聞と連携し、各号紙面より数日の期間を設け記者のピックアップ記事を2〜3点掲載しています。

問い合わせ:0193-55-4713 〒026-0044 岩手県釜石市住吉町3-3

釜石港に今季初水揚げされたサンマ=8月30日午前5時50分(写真説明)

『秋の主役』サンマ初水揚げ〜不漁予測も釜石に活気

釜石港に今季初水揚げされたサンマ=8月30日午前5時50分(写真説明)

釜石港に今季初水揚げされたサンマ=8月30日午前5時50分(写真説明)

 

 釜石市の新浜町魚市場に8月30日朝、秋の訪れを告げるサンマが今季初めて水揚げされた。昨年の初船を上回る34トンを水揚げ。例年と比べ魚体は小さめというものの、待ちに待った〝秋の主役〟の到来に浜は活気づいた。

 

 水揚げしたのは、富山県の大型サンマ船第8珠の浦丸(199トン、17人乗り組み)。北海道の東方沖で操業し、2昼夜をかけて釜石まで運んできた。入札の結果、型が小さいこともあり、昨年より260~150円安い1キロ当たり370~350円で取引された。

 

 待ちに待ったサンマの初水揚げに野田武則市長らも駆け付け、飲み物などを差し入れて船を歓迎。「製氷施設も新しく造った。今後も釜石港にサンマを水揚げしてほしい」と期待した。

 

 同船は昨季も釜石にサンマを8千万円近く水揚げしている。猟田雄輔漁労長(64)は「昨年より漁模様が薄く、魚体も小ぶり。他の船も仕方なく小さいのを水揚げしている」と心配するものの、「釜石にはよくしてもらっており、昨季は花咲港(北海道)よりも多く水揚げした。今後も釜石に水揚げしたい」と話した。

 

 釜石魚市場のサンマの水揚げ量は、東日本大震災があった2011年は2171トン(2億4710万円)、翌12年は2436トン(1億3735万円)、13年は1053トン(1億4093万円)と低迷。14年は5260トン(5億199万円)と大きく回復したものの、15年は2224トン(3億8879万円)、昨年は1841トン(4億84万円)と再び下降線を描いている。

 

(復興釜石新聞 2017年8月30日発行 第617号より)

 

復興釜石新聞

復興釜石新聞(合同会社 釜石新聞社)

復興釜石新聞と連携し、各号紙面より数日の期間を設け記者のピックアップ記事を2〜3点掲載しています。

問い合わせ:0193-55-4713 〒026-0044 岩手県釜石市住吉町3-3

小雨模様の中、釜石港に到着したガントリークレーン=17日

大阪府が復興支援で無償譲渡、ガントリークレーン到着〜釜石港 来月下旬の稼働目指す、コンテナ物流増大に期待

小雨模様の中、釜石港に到着したガントリークレーン=17日

小雨模様の中、釜石港に到着したガントリークレーン=17日

 

 東日本大震災からの復興支援のため、大阪府から本県へ無償譲渡された大型荷役機械ガントリークレーンが17日、釜石港に到着した。県内の港では初の導入。現在、同港にあるクレーンの3倍の荷役能力があり、貨物取扱量の飛躍的な増大に期待がかかる。岸壁への設置工事や夜間用照明施設の整備、試運転などを経て、来月下旬の稼働開始を目指す。

 

 巨大なガントリークレーンは高さ56メートル(アーム伸長時76メートル)、重さ59トン。1時間当たり30~40個のコンテナを積み下ろしすることができる。現在稼働するジブクレーンの約3倍の能力があり、釜石港の荷揚げ効率は飛躍的にアップする。

 

 新品価格は約10億円。堺泉北港には、阪神淡路大震災で被災したのを受けて1996年度に3基設置されたが、現在運用していない1基が本県に贈られた。

 

 当初は12日の到着予定だったが、台風の影響で遅れた。大型の台船に積まれ、大阪府の堺泉北港を13日に出発。17日午前9時40分ごろ、海上を覆う濃霧の中から巨大な姿をゆっくりと現した。小雨模様の中、岸壁では県や市の関係者、荷役作業を請け負う物流業者ら約30人が出迎えた。

 

 ガントリークレーンが稼働する釜石港の公共ふ頭では、県が昨年夏から改良工事に着手。約8億円を投じ、クレーン用移動レールを敷くなど受け入れ準備を進めてきた。冷蔵冷凍コンテナに電気を供給するリーファーコンセントも現在の16口から仮設で8口を増設し、24口とする。

 

 同港では現在、海外の大手海運2社がフィーダー(枝線)船を定期運航し、コンテナ取扱量も順調に増加。今年は、2年前に記録した県内港最多の4420個(20フィート換算)を超える5千個以上を目指す。本年度中に中国や韓国と結ぶコンテナ定期便の就航も予定する。

 

 県沿岸広域振興局土木部の杣(そま)亨部長は「クレーンが無事到着し、ほっとしている。震災からの復興のシンボルの一つとして、釜石のみならず三陸沿岸全体の復興推進の弾みになれば」と期待する。

 

(復興釜石新聞 2017年8月23日発行 第615号より)

 

復興釜石新聞

復興釜石新聞(合同会社 釜石新聞社)

復興釜石新聞と連携し、各号紙面より数日の期間を設け記者のピックアップ記事を2〜3点掲載しています。

問い合わせ:0193-55-4713 〒026-0044 岩手県釜石市住吉町3-3

「農地の日」にちなんだ活動で汗を流した農業委員ら

カボチャでラグビーW杯を盛り上げ、釜石市農業委員会〜鵜住居の遊休地に植え付け

「農地の日」にちなんだ活動で汗を流した農業委員ら

「農地の日」にちなんだ活動で汗を流した農業委員ら

 

 釜石市農業委員会(二本松誠会長)は20日、鵜住居町田郷の遊休農地でカボチャの苗の植え付けと草刈り作業を行った。今回植え付けたのは「ロロン」という品種で、ラグビーボールのような形をしたカボチャ。2019年のラグビーワールドカップ(W杯)釜石開催に向けた盛り上げの一助になればと、試験的に栽培する。

 

 県農業会議が2013年に設定した「農地の日」(7月15日)にちなんだ取り組み。釜石市では景観保全、農地の有効活用、地域住民の交流を狙いに、市内各地にある遊休農地でソバ栽培などを試みてきた。昨年は今回と同じ農地(約20アール)で品種が異なるカボチャを植え付けたが、台風による大雨の影響で全滅。今年は品種を変え再挑戦することにした。

 

実りに期待を込め「ロロン」の苗を植え付けた

実りに期待を込め「ロロン」の苗を植え付けた

 

 この日の作業には委員ら約20人が参加。約10アール分の農地に、甲子町の農業、佐々木四郎さん(70)が育てた苗90株を植え付けた。農地として守るため、残りの約10アールは草刈りをした。

 

 ユニークな形のロロンは2キロ程度の大玉となり、上品な甘さと滑らかな舌触りが特徴。苗を育てた佐々木さんも今回、自身の畑に約90株を植え付けており、「イチゴやメロンなどを栽培してきたが、カボチャは初めての挑戦。味がいいと聞いているので、収穫が楽しみ」と話した。

 

 二本松会長は一足早くロロンに着目し、自身の畑で栽培しており、1週間後に収穫できる見込みだという。同委員会としての取り組みは試験栽培だが、「ラグビーカボチャが市内の産直に並べば、W杯に向けた地域の盛り上がりにつながると思うので、ぜひ成功させたい。この取り組みにより、市内で作付けする農家が増えてくれれば」と期待を寄せた。

 

 今後は協力して間引き作業などを行い、10月に収穫する予定。

 

(復興釜石新聞 2017年7月22日発行 第607号より)

 

復興釜石新聞

復興釜石新聞(合同会社 釜石新聞社)

復興釜石新聞と連携し、各号紙面より数日の期間を設け記者のピックアップ記事を2〜3点掲載しています。

問い合わせ:0193-55-4713 〒026-0044 岩手県釜石市住吉町3-3

今季初の集荷会に収穫したウメの実を持ち込んだ生産者ら

今季初の梅を集荷、「そう、うまくは…」と苦笑い〜量は昨年を大幅に下回る

今季初の集荷会に収穫したウメの実を持ち込んだ生産者ら

今季初の集荷会に収穫したウメの実を持ち込んだ生産者ら

 

 釜石市、大槌町のウメ生産者らでつくる釜石地方梅栽培研究会(前川訓章会長、19人)の今季初となる集荷会が6月29日、栗林町の栗林地区基幹集落センターであった。生産者は青緑の実を持ち込み、次々に計量。ウメは梅酒の原料として小川町の酒造会社浜千鳥(新里進社長)に提供する。

 

 生産者によると、今年は例年どおり開花したが、その後の天候は雨が少なく乾燥した日が多かったり、受粉もうまく進まず、昨年度の集荷量約5500キロを大幅に下回り、2~3千キロにとどまる見込みだという。

 

 今回は96キロを出荷する前川会長は「例年650キロほど取れていたのに、今年はあと二、三十キロにしかならない。まるっきりだめ。前の年が良かったからと期待していたが、そううまくはいかない」と苦笑い。梅の実の一番いい時期に一度に買い取ってもらう取り組みは生産者にとってメリットになっていて、遊休農地の活用にと仲間入りする人も増えているという。「兼業農家が多く、楽しみながら無理せずやっていければ、いい」と話した。

 

 同研究会は生産農家と浜千鳥などが良質なウメの栽培や安定した生産の確保を目指し、2014年に設立。昨年は大粒のウメ品種の新植による遊休農地の有効活用を図ったほか、県内の先進地視察研修を行い、効率的な収穫方法、生産・加工技術を学んだ。

 

 集荷会の前には総会が開かれた。県沿岸広域振興局が進めている三陸農産物のブランド化の取り組みで、ウメも対象品目の一つになっている。市などが今年5月に開催した、地元の海と山の食材を使った料理を紹介する試食会でウメを使った料理が高い評価を得、メニューを考案した首都圏で活躍する料理研究家も食材としての活用、加工品の開発など積極的な取り組みを提案していたことなどが報告された。

 

 前川会長は「今まで食べきれない分は捨てていたもの。商品化し、販売量の増加など結果が伴えば、地域ももっと盛り上がる。グリーンツーリズムなどとも合わせて認知度を高める取り組みも進めていければ」と意欲を見せた。

 

 昨年収穫したウメを使った梅酒は4日から販売されている。

 

(復興釜石新聞 2017年7月5日発行 第602号より)

 

復興釜石新聞

復興釜石新聞(合同会社 釜石新聞社)

復興釜石新聞と連携し、各号紙面より数日の期間を設け記者のピックアップ記事を2〜3点掲載しています。

問い合わせ:0193-55-4713 〒026-0044 岩手県釜石市住吉町3-3

式典には漁師らも祝いの大漁旗を掲げて新しい魚市場に駆け付けた

「魚のまち」再興へ〜釜石魚市場 新施設完成、新浜町と2場体制で

供用が始まった釜石魚市場

供用が始まった釜石魚市場

 

 東日本大震災の津波で被災し、釜石市が新築復旧を進めてきた釜石魚市場の魚河岸地区荷さばき施設が完成し、16日、現地で供用開始式典が行われた。鳥獣の侵入を防ぎ、殺菌冷海水や排ガスの出ない運搬車を導入するなど衛生管理機能を高めた新市場の稼働により、魚市場機能が本格的に回復し、産地魚市場としての機能も強化。2013年4月に再開した新浜町地区の施設と併せて「魚のまち釜石」の復興加速に期待がかかる。

 

 魚河岸地区の施設は鉄骨造り2階建て、延べ床面積約6500平方メートル。建物幅約165メートル、奥行き約35メートルと旧市場と同規模で整備。鳥獣などが入らないようシャッターで囲われた閉鎖型の構造を採用した。排ガスが出ないバッテリー式フォークリフトや殺菌冷海水の供給設備を導入し、衛生管理を徹底。陸揚げから選別・計量、陳列・販売(入札)、出荷に至る区画を直線的に配して作業を効率化し、魚介類の鮮度を保つよう工夫した。

 

 整備事業費は約36億7500万円。水産庁の水産基盤整備事業費、復興特別交付税を活用し、市の負担は約5千万円。管理運営は釜石市漁業協同組合連合会が担う。

 

 釜石魚市場の年間水揚げ額は、最盛期の1980年代に100億円を超えていたが年々減少。魚のまちを復活させるため魚河岸地区と2場体制にしようと、震災前から新浜町地区に大型漁船の水揚げ拠点として荷さばき施設の整備を進めていた。完成間近だったが、震災の津波で両施設とも被災。比較的被害が少なかった市漁連が運営する第2魚市場を11年8月に再開、代替えとして活用しながら、新浜町地区の魚市場も再開させた。

 

式典には漁師らも祝いの大漁旗を掲げて新しい魚市場に駆け付けた

式典には漁師らも祝いの大漁旗を掲げて新しい魚市場に駆け付けた

 

 魚河岸魚市場は2015年2月に着工し、今年3月に完成した。これにより2場体制が復活。魚河岸地区は定置網を中心とした地元漁船、水深の深い新浜町地区ではサンマ船など大型船の水揚げに対応し、機能を分担する。

 

 震災前の旧市場の水揚げは30億円程度で推移していたが、震災のあった11年には14億円台まで落ち込んだ。その後も低調に推移し、昨年は約17億円と伸び悩んでいる。市は市場周辺に水産加工など4事業者を誘致し、水産業の復興を推進。海産物を食べたり買ったりできる、にぎわい創出施設の整備計画もあり、当面の目標は「年間水揚げ量2万トン、水揚げ額36億円」としている。

 

関係者がテープカットで祝う

関係者がテープカットで祝う

 

 式典には関係者ら約100人が出席し、テープカットして完成を祝った。野田武則市長が「2場体制で水産業の本格復興を図りたい」とあいさつ。市漁連の小川原泉会長は「震災から6年が経過する中、この日を迎えることができ、喜びに堪えない。生産者、連合会一丸となって水揚げ増加に取り組み、新鮮で安心安全な魚介類を消費者に届けていきたい」と力を込めた。

 

(復興釜石新聞 2017年5月20日発行 第589号より)

 

復興釜石新聞

復興釜石新聞(合同会社 釜石新聞社)

復興釜石新聞と連携し、各号紙面より数日の期間を設け記者のピックアップ記事を2〜3点掲載しています。

問い合わせ:0193-55-4713 〒026-0044 岩手県釜石市住吉町3-3