震災からの復興状況を確認するため釜石地方森林組合を視察した安倍晋三首相。前列右端は久保知久組合長
安倍晋三首相は20日、東日本大震災からの復興状況を確認するため本県を訪れた。山田町、大槌町に足を運んだ後、釜石市片岸町の釜石地方森林組合を視察。鉄と木材を組み合わせたものづくりなどについて説明を受け、「地域のなりわいとなる林業の振興に力を入れたい。国として全面的に復興を支援する」と前向きな姿勢を示した。首相の被災地訪問は36回目で第4次政権発足後は初めて。本県を訪れたのは今年3月以来で、通算10度目。
同組合では久保知久組合長(70)や高橋幸男参事(53)らが安倍首相を出迎え、久保組合長は「震災ですべてを流されたが、国の支援でここまで復旧することができた」と感謝の意を伝えた。
高橋参事は、地元産木材と鉄を組み合わせてブランド化を目指す「mori―to―tetsu(森と鉄)」について説明。首相は、「暮らしのすぐそばで釜石というまちを感じてほしい」との願いが込められたテーブルに触れ、椅子に腰かけてみた。
鉄と木のコラボ製品について髙橋幸男参事(右)から説明を受ける安倍首相
釜石リージョナルコーディネーター(釜援隊)として同組合に派遣されている手塚さや香さんは「世界遺産にもなった鉄と木を活用した」と強調。林業後継者育成を目的に同組合が開講している林業スクールの受講者が、この3年間で50人になったことも報告した。
高橋参事は「組合が存続の危機に立たされた時も国の支援に報いるために林業の6次化を進め、鉄と木のコラボを考えた」と説明。森林所有者の高齢化や資金難で伐採後の再造林が進んでいない現状にも触れ、「地方自治体が導入を進めている森林環境税を再造林にも使えるようにしてほしい」と要望した。
安倍首相は「林業の再生は重要だ」とした上で、「地域の心の支えとなっている木や鉄を活用したものづくりに共感する。地域の外からやって来た人と知恵を出し合い、なりわいの芽が育っている。地域の意欲なくして復興はない。復興に向かって全力で前へ進もうとするみなさんを全面的に支援していきたい」と今後の展開に期待を示した。
(復興釜石新聞 2017年12月23日発行 第650号より)
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