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釜石初のファッションショー、市民モデル 美を競演〜「コバリオン」指輪で発信、コステロさんW杯での再訪に意欲

釜石初のファッションショー、市民モデル 美を競演〜「コバリオン」指輪で発信、コステロさんW杯での再訪に意欲

コステロさんの華やかな新作衣装を着て舞台に立った高校生ら市民モデル

コステロさんの華やかな新作衣装を着て舞台に立った高校生ら市民モデル

 

 釜石市と県が共同開発し実用化された高付加価値コバルト合金「コバリオン」を用いて指輪を製作したアイルランドの世界的デザイナー、ポール・コステロさん(72)のファッションショーが26日、釜石市民ホールTETTOで開かれた。高校生ら市民7人を含む11人のモデルが華やかな衣装に身を包み、ランウエーを歩いた。市民ら約420人が客席を埋め、釜石ではこれまで味わうことができなかった「異次元の美しさ」に酔った。

 

 市内の企業や団体で組織する釜石プライド実行委員会(佐々木雄大委員長)が、コバリオンを広く発信しようと釜石初のファッションショーを企画。故ダイアナ元英国皇太子妃のデザイナーを務めたコステロさんの2019春夏新作など約30着が披露された。

 

 タレントのハリー杉山さんが司会を担当。ステージから客席に突き出た形のランウエーをモデルたちが進み、客席まで降りて新作コレクションを間近で見せた。

 

 市民モデルとして169㌢の長身に華やかな衣装をまとって歩を進めた遠藤櫻さん(釜石高1年)は「緊張しましたが、本番は自信を持ってできました。客席のみなさんの顔もしっかりと見え、気持ちよかった」と、さわやかな笑顔で話した。

 

 市民ホールの近くで美容院を営む片桐浩一さん(48)は、この日は早く店を閉め、2人の従業員と共にショーに足を運んだ。「女性のシルエットをきれいに見せるデザイナーさんだと感じた。いい刺激になった」と収穫を喜んだ。

 

 市内で指輪の製作を手掛ける山﨑弾さん(39)は「コバリオンは釜石の新しい宝物になる。銀の3分の1ぐらいの値段で、加工もしやすい。ぜひ使ってみたい」と興味を示した。

 

 客席の好反応にコステロさんも上機嫌。「とても温かな空気で迎えてもらった。秋冬のコレクションもやりたい。来年のラグビーワールドカップ(W杯)にも訪れたい」と釜石に寄せる思いを語った。

 

「来年のW杯でまた釜石に来たい」とコステロさん

「来年のW杯でまた釜石に来たい」とコステロさん

 

 コバリオン製の指輪は金属アレルギーを起こしにくく、さびないなどの利点がある。今回発表された新作は女性用指輪2万2千円、ペンダント2万4200円、ピアス1万3200円(いずれも税込み)の3点。来年1月から京セラジュエリー通販ショップで販売する。

 

(復興釜石新聞 2018年10月31日発行 第736号より)

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新たな特産品「桑茶」に期待し笑顔で葉の集荷

「桑の葉茶」を目玉商品に〜橋野どんどり広場直売所、11月にも店頭で販売開始

新たな特産品「桑茶」に期待し笑顔で葉の集荷

新たな特産品「桑茶」に期待し笑顔で葉の集荷

 

 釜石市橋野町、橋野地区直売組合(藤原英彦組合長、89会員)が運営する「どんぐり広場直売所」は、桑の葉を原料とする茶を新たな目玉商品にしようと動き始めた。11日には4人が農地にある桑の木から枝を切り取り、どんぐり広場で葉を選別し、合わせて50・7キロを出荷した。早ければ11月にも「橋野産桑の葉ブレンド茶」の店頭販売を開始する。

 

 きっかけは、県内産の桑の葉で茶を製造する一関市大東町、いわいの里、いわて大東屋を経営する佐藤公一さん(63)、職場の同期だった釜石市定内町のマルベリーリング釜石代表工藤和子さん(63)と藤原組合長が昨年8月に直売所で偶然出会ったことだった。

 

 佐藤さんは50歳で銀行を退職。課題の多い農業を応援しようと、村おこし、農家の生きがいにつながる事業を考えた。桑茶は、先進地の福島県から学んだ。養蚕業が盛んな地域では、古くから飲料にもされた。最近はカフェインを含まない成分などが健康志向ブームに乗り、一般にも拡大する。

 

 事業化して順調に実績を伸ばしたが、東日本大震災による福島原発事故で放射性物質の汚染懸念と風評被害の影響が続いた。それもここ数年で盛り返し、さらに原料の供給地や事業を共にする仲間を探していた。

 

 昨年6月、42年ぶりに故郷釜石に帰った工藤さんは家族ぐるみで長年交流がある佐藤さんの考えに賛同し、コンビニ経営の経験を生かして桑茶の販売を引き受けた。事業所名のマルベリーは英語で「桑」、リングは「人をつなぐ」を意味する。

 

 工藤さんは釜石地域の養蚕の歴史を徹底的に調べた。釜石地域では戦後、化学繊維が爆発的に普及するまで、山間地で盛んに養蚕が行われていた。その歴史をたどると、桑の木が残り、原料の供給地になりうる。

 

 家族が収穫した葉の選別にいそしむ橋野町太田林の組合員和田ハマ子さん(85)は「(町内の)横内から嫁いできた。当時、カイコを飼っていて、桑の葉は年に3回ほど刈り取った。桑の葉が茶になるとは知らなかった。喜んでもらえればいい」と期待する。

 

 天然の桑から葉を収穫した藤原組合長(65)は「桑茶は自分も飲んでいたから、佐藤さんの話はよく理解できた。どんぐり広場は今年23年目。世界遺産、来年のラグビーワールドカップ(W杯)も控え、新しい特産品になるといい。事業が順調に進めば何より農家の生きがいになる」と意気込む。

 

(復興釜石新聞 2018年9月15日発行 第723号より)

 

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サンマの初水揚げに沸く釜石魚市場=1日午前5時20分

待望のサンマ初水揚げ、秋の「主力」港に活気〜釜石魚市場、昨年の倍以上

サンマの初水揚げに沸く釜石魚市場=1日午前5時20分

サンマの初水揚げに沸く釜石魚市場=1日午前5時20分

 

 釜石市の新浜町魚市場に1日朝、今季初のサンマが水揚げされた。昨季初船の2倍以上に当たる80トンを水揚げ。昨年の初水揚げと比べ魚体も大きく、秋の訪れを告げる「主力」の到来に魚市場は活気づいた。

 

 水揚げしたのは、富山県の大型サンマ船第8珠の浦丸(199トン)。北海道の東方沖で操業し、2昼夜をかけて釜石まで運んできた。

 

 140グラム以上の大型が3割を占め、中型は約4割。入札の結果、昨年よりやや安値の1キロ当たり335円で取引され、ほぼ全量を地元の水産加工会社が買い取った。

 

 待ちに待ったサンマの初水揚げに野田武則市長も駆けつけ、飲み物などを差し入れて船を歓迎。「今後も釜石にサンマを水揚げしてほしい」と期待した。

 

 同船は昨季も釜石にサンマを初水揚げしている。猟田雄輔船長兼漁労長(63)は「昨季と比べ型もサイズも良く、脂も乗っていておいしい。釜石魚市場には高値でサンマを買い取ってもらっており、今年も水揚げすることにした。今後も水揚げしたい」と話した。

 

 水産庁の予報では9月中旬まで漁獲は低調だが、その後は上向き、魚体も大ぶりなものが増える見通し。

 

 釜石魚市場のサンマの水揚げ量は、東日本大震災のあった2011年は2171トン(2億4710万円)、12年は2436トン(1億3735万円)、13年は1053トン(1億4093万円)と低迷。14年は5260トン(5億199万円)と大きく回復したものの、15年2224トン(3億8879万円)、16年1841トン(4億84万円)、昨年は1474トン(3億6636万円)と下降線をたどっている。

 

(復興釜石新聞 2018年9月5日発行 第720号より)

 

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釜石地方森林組合で販売する「一本歯半分下駄」

林野火災で焼けたスギ材活用〜「一本歯半分下駄」販売開始、釜石地方森林組合

釜石地方森林組合で販売する「一本歯半分下駄」

釜石地方森林組合で販売する「一本歯半分下駄」

 

 釜石地方森林組合(久保知久代表理事組合長)は、昨年5月に発生した釜石市平田尾崎半島の林野火災で焼けたスギの木を使った「一本歯半分下駄(げた)」を考案し、販売を始めた。山林再生、山林所有者の支援と、来年のラグビーワールドカップ(W杯)釜石開催に向けた地場産材を活用した製品づくりを結び付けた企画。同組合では「緑の再生につながる循環づくりと被災した山林所有者への応援、スポーツのまち釜石を発信するものになれば」と期待を込める。

 

 げたをプロデュースしたのは、雫石町在住の漫画家そのだつくしさん。元々、半分げたを愛用していて、創作活動の傍ら山歩きを楽しみながら一本歯のげたでトレーニングをしていたという。趣味が高じて、履き心地や鼻緒の長さなどにこだわった「県産材でトレーニング用のげたを作りたい」と思案。知人を介し、木材加工を営む遠野市の「ノッチアート遠野」に製作を相談していた。

 

 一方、同組合では2016年頃からW杯に向け、地域産材を使った日本の伝統文化であるげた作りを計画。同じ木材加工業者に試作品作りを依頼していた。

 

 2つの動きを結び付けたのが林野火災という出来事。被害の大きさが伝わると、全国から「焼けた森林の復旧に使ってほしい」と支援の寄付が相次いだ。その一人がそのださん。同組合に寄付金を届けたことで、下駄プロジェクトが生まれた。

 

 げたのサイズは縦、横12・5センチ、厚さ2・5センチで、歯(地面に当たる出っ張り)の高さは約4センチ。通常のげたは材質が丈夫なキリで作られるが、今回は柔らかいスギを利用しており、本体と歯の接合部が壊れにくいよう工夫した。足を乗せる部分に入れた掘り込みが歩きやすさのポイントで、げたの上で足が滑らず安定。歯には厚めのゴムを貼りつけて滑りにくくした。

 

 同組合によると、半分げたは古くは修験者が山を歩くときなどに使われていた。バランスがとりにくい分、筋力が必要になる。不安定なげたを履いたまま屈伸したり歩いたりすることで、体幹トレーニングや姿勢の矯正に効果があるとされ、現在ではスポーツ業界やアスリートが注目しているとの話もあるという。

 

 そのださんも「W杯が開催されるスポーツのまち釜石発のアスリートのトレーニンググッズになれば」と期待。半分げたでトレーニングする人が増えるようにと願いを込め、「岩手下駄部」とのロゴをデザインし、げたに焼き印を入れた。スポーツをしない人の利用も呼び掛けていて、「歩きにくかったら、好きな人の手をにぎりながら」とメッセージを寄せている。

 

 げたの売り上げの一部は、被害木を伐採した後の植樹のための苗木購入などに役立てる。木材が売れることが被災した山林所有者の応援にもなる。同組合の手塚さや香さん(39)は「焼けた木も素材として使えることを知ってほしい。げたが山林の復旧に貢献し、スポーツのまち釜石ならではのトレーニング方法として広まったら」と願う。

 

 価格は、同組合のホームページから注文する場合1足8715円(税込み)、同組合事務所での購入で箱が不要な場合は8532円(同)。今秋からは市内の道の駅などで販売を始める予定にしている。
 問い合わせは同事務所(電話0193・28・4244)へ。

 

(復興釜石新聞 2018年8月29日発行 第718号より)

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釜石市と朝日町のものづくりが合体したピンバッジ

富山県朝日町のヒスイ×釜石のコバルト合金、友好をだ円のホールの形に〜特産使いピンバッジ製作、ラグビーW杯開催記念 9月から販売開始

釜石市と朝日町のものづくりが合体したピンバッジ

釜石市と朝日町のものづくりが合体したピンバッジ

 

 ラグビーワールドカップ(W杯)開催を記念し、釜石市と友好都市の富山県朝日町が連携して製作した、ラグビーボールの形をしたピンバッジ「FRIENDSHIP(フレンドシップ)」の発表記者会見が18日、釜石市役所で行われた。野田武則市長と笹原靖直町長が製品の魅力をアピール。特産品と、ものづくり技術のコラボレーションに期待を高めた。

 

 だ円形のピンバッジは幅28ミリ、縦14・5ミリ。表面に釜石市のエイワ(佐々木政治社長)が製造、加工、販売するコバルト合金「コバリオン」、背面にはステンレスを使い、朝日町の海岸で産出されるヒスイを板状(厚さ2・6ミリ)に研磨、勾玉(まがたま)に模して挟んだ。

 

 端を仮締め(かじめ)した勾玉を回転させ、飛び出すデザイン。さびず、硬く、色あせないコバリオンの光沢と、古代から東アジアや日本で権力者に霊力を持つとして珍重されたヒスイの組み合わせは、美しさと遊び心にあふれる。

 

 明治から昭和にかけて漁業などで朝日町から釜石市へ人的交流が深まり、1984年には友好都市を締結。中学生の派遣、ビーチボールなどで交流を重ねる。野田市長は「互いのものづくりが融合し、ラグビースタジアムの完成に合わせて記念品ができた」と喜ぶ。

 

新たな創造の連携を申し合わせた両市町の関係者

新たな創造の連携を申し合わせた両市町の関係者

 

 笹原町長は「ヒスイは2年前、日本の石(5種の)1位に選定された。釜石市の復興、互いの地場産業の活性化にもつながる。(コバリオンとの組み合わせで)ネックレスの企画も検討している」と期待する。

 

 ピンバッジは文字が「FRIENDSHIP」と「KAMAISHI★ASAHI」の2タイプがあり、各タイプ100個を9月25日から限定販売。20日から予約を受け付けている。価格はいずれも1万5千円(消費税込み)。益金の一部は釜石市ラグビーこども未来基金に寄付される。

 

 購入の問い合わせはエイワ(電話0193・26・6880)、朝日町・あさひふるさと創造社(電話0765・83・3700)へ。

 

(復興釜石新聞 2018年8月25日発行 第717号より)

 

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イオンタウン釜石に隣接してオープンしたサンデー釜石港町店

イオンタウン釜石に隣接の相乗効果、沿岸広域から集客狙う〜サンデー釜石港町店オープン、サービス充実 利便性アップ

イオンタウン釜石に隣接してオープンしたサンデー釜石港町店

イオンタウン釜石に隣接してオープンしたサンデー釜石港町店

 

 東北地方でホームセンターを展開するサンデー(本社・青森県八戸市、川村暢朗社長)は26日、釜石市港町のイオンタウン釜石の専門店の一つとして隣接地に「サンデー釜石港町店」をオープンした。震災後の2014年に出店し業績も順調に推移するイオン釜石との相乗効果で、市内だけではなく沿岸広域からの集客を促すのが狙い。市内には上中島町にサンデー釜石店もあるが、品ぞろえやサービス提供でそれぞれ特色を出し合い、両立を図る。

 

 同社は今年4月、釜石市と災害時における支援協力協定を締結しており、市と連携し、地域インフラの役割を担う体制を整える。釜石港町店は同社の103店目で、県内26店目、本県沿岸部では6店目。売り場面積は5万6065平方メートルで、県内では盛岡市の前潟、本宮店に次いで3番目に大きな店舗となる。

 

記念のテープカットをするサンデーの川村社長(右)ら関係者

記念のテープカットをするサンデーの川村社長(右)ら関係者

 

 地域の要望を受け、犬や猫、熱帯魚などを扱うペットショップやカー用品専門店のほか、サイクル(自転車)や住宅のリフォームなども導入。本格的なフラワーショップや休憩コーナーも。商品の配達や取り付けは資格を持つ従業員が「SUN急(サンキュー)便」で対応する。営業時間は午前7時から午後9時まで。

 

 26日のオープン記念イベントでは、川村社長や野田武則市長らがテープカット。川村社長は「要望に応え、ペットショップにはシャワールームやホテルも用意した。住まいのリフォームやカー用品のコーナーではプロの従業員が対応する」などと同店のセールスポイントをアピールした上で、「節約で暮らしを豊かに。地域密着の店づくりを目指す」と宣言。

 

 野田市長は「イオンタウンを釜石に誘致する際、最初に相談に乗ってくれたのが川村社長だった」と裏話を紹介した上で、「サンデーの新たな出店で市民の買い物利便はさらに向上する」と期待を述べた。

 

お目当ての特売品を早速手にした買い物客ら

お目当ての特売品を早速手にした買い物客ら

 

 開店時間前には100人ほどの列ができた。1時間も前から一番乗りで並んだ平田(佐須)の漁業、前川原繁さん(74)は特売品の扇風機を手に「これまでは上中島町の店まで行っていた。佐須からはかなり近くなる」と大喜び。ペットショップを熱心にのぞく小川町の山崎政男さん(83)、久仁子さん(76)は「15年ほど飼い続けた犬が亡くなり、今は知人からプードルを借りている。こうしたペットショップは本当に便利」と歓迎した。

 

(復興釜石新聞 2018年7月28日発行 第710号より)

 

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浜幸水産の新造マグロ船。市民らに見送られ、大西洋に向け出港した

新造マグロ船出漁、「浜幸水産」10年ぶり〜豊漁祈り北大西洋へ、「浜を元気に」と船出

浜幸水産の新造マグロ船。市民らに見送られ、大西洋に向け出港した

浜幸水産の新造マグロ船。市民らに見送られ、大西洋に向け出港した

 

 遠洋マグロ漁を主力とする釜石市の漁業会社、浜幸水産(浜川幸雄社長)が遠洋マグロはえ縄漁船「第151欣栄丸」(幸栄漁業所属、486トン)を新たに建造し、2日、お披露目と出発式が釜石港で行われた。同社がマグロ漁船を新造するのは10年ぶり。新浜町の魚市場には市民や漁業関係者ら約150人が駆け付け、新しい船の航行と操業の安全、豊漁を祈った。

 

 同社は遠洋マグロ船10隻のほか、近海でタラ漁などを行うトロール船、サンマ船の計16隻を所有。マグロ船は老朽化のほか、資源管理などのため厳しさを増すマグロ漁の今後を見据え、収益基盤の強化や漁獲量の高付加価値化につなげようと新造することにした。

 

 新造船は1日に釜石港に入り、新浜町魚市場に着岸した。同社が所有する漁船の中で最大規模。約9億円をかけて静岡県で建造した。捕獲したマグロを電動で引き上げることができるリフターや冷凍室など最新の設備を備える。

 

 2日は神事を行った後、餅まきをして船出を景気づけた。晴れ渡る空に大漁旗がはためく威勢のいい姿に、集まった人らは「元気もらう」と感激。浜川社長(73)は総力を結集させた船の完成、たくさんの笑顔が広がる浜の様子に喜びをかみしめつつ、「漁業を取り巻く環境はますます厳しくなるが、子々孫々まで漁業中心に操業していく。大漁旗をなびかせ笑顔で帰ってきてほしい」と願った。

 

船出を景気づける餅まきに歓声を上げる市民ら

船出を景気づける餅まきに歓声を上げる市民ら

 

 新造船には24人が乗り込み、北大西洋の漁場に向けて出漁。8月上旬から1年間の操業を予定し、年間水揚げ高は5億円を見込む。上平清一漁労長(67)は「今日はいい日。皆さんのおかげでにぎやかに出航できる。いい船だから水揚げもついてくる。笑顔で会いましょう」と、見送りに集まった人たちに呼び掛けた。

 

(復興釜石新聞 2018年7月7日発行 第704号より)

 

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「魚のまち」釜石を発信〜魚河岸にぎわい施設着工、レストラン、広場を整備

「魚のまち」釜石を発信〜魚河岸にぎわい施設着工、レストラン、広場を整備

魚河岸にぎわい創出施設の完成イメージ図

魚河岸にぎわい創出施設の完成イメージ図

 

 釜石市が進める魚河岸にぎわい創出施設建設工事の地鎮祭が6月29日、釜石港に面する魚河岸地区の現地で行われた。海に関する展示スペースやレストラン、広場などを整備し、来年2月末の完成、4月の本格オープンを予定。昨年5月に復旧した新魚市場と隣接しており、連動して「魚のまち釜石」を発信する拠点としての活用が期待され、関係者は工事の安全と地域のさらなる発展を祈った。

 

 敷地面積3432平方メートルの市有地に鉄骨造り2階建て、延べ床面積1273平方メートルの施設を建てる。地元の海産物などを使った飲食店(4店舗)、銀行(1店舗)が入居し、海に関する展示スペースを設ける予定。花火や曳(ひ)き船まつりを観覧できる展望デッキ、朝市や季節の味覚まつりなどで活用を見込む広場も整備する。

 

施設の建設予定地

施設の建設予定地

 

 建設費は約5億円で、復興交付金や過疎債を活用する。

 

 地鎮祭は設計・施工者の日鉄住金テックスエンジ・山下設計企業連合が主催し、関係者約40人が出席した。くわ入れなどの神事を行った後、発注者の野田武則市長が「にぎわいの拠点として活用できれば、まちは大きく発展する。釜石の海のすばらしさを発信していきたい」とあいさつ。復活に向けて協議が進められている観光船の発着所をつくりたいとの考えも示した。

 

くわ入れする野田市長

くわ入れする野田市長

 

(復興釜石新聞 2018年7月4日発行 第703号より)

 

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釜石山火事復旧植樹活動~みんなで尾崎半島の緑を再生しよう!

【インタビュー】釜石山火事復旧植樹活動~みんなで尾崎半島の緑を再生しよう!

釜石山火事復旧植樹活動~みんなで尾崎半島の緑を再生しよう!

 

昨年の5月8日に発災した釜石市尾崎半島の林野火災は、当時の天候や消火活動が難航する環境なども関係し、被害面積413haと言う全国的に見ても大規模な火災となり、被害総額は7億4千万円にも及びました。

 

1年が経過し現場では復旧作業が進められていますが、現状について気になっている方も多いのはないでしょうか?

 

そんな想いに応えてくれる「釜石山火事復旧植樹活動~みんなで尾崎半島の緑を再生しよう!」が、6月17日(日)に開催されます。主催の釜石地方森林組合・高橋幸男 参事に、山林再生の取り組みについて伺って来ました。

 

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長年掛けて育てた木が被害に遭った山主さん達の想いとたくさんの支援

 

釜石地方森林組合・高橋幸男 参事

 

ーーまずは、これまでの取り組みについて教えて下さい。

 

高橋さん:

5月15日に鎮圧の発表を受け直後から関係各所と共に現地調査を開始し、6月初旬に岩手県、釜石市と「釜石市尾崎白浜・佐須地区林地再生対策協議会」をつくり、6月下旬には山林を所有する方々への説明会を行いました。

 

当初は復旧出来るかどうかについては大きな不安を感じていました。というのも、被害に遭った山林は組合員である山主さんが個人所有されており、復旧に取り組むには山主さんの意向や同意を頂く事が第一で、私たちだけでは動けないというのが実情でした。

 

ーー山主さんの気持ちを思うと、失意は如何ばかりか・・・と報道を見て心を痛めていた方も多かったですね。

 

高橋さん:

そうですね、ここまで60年程の時間を掛けて、今まさに販売できるという所まで育て上げた木がことごとく被害に遭い、その想いをぶつける相手もいないという現状で、山主さんの気持ちは汲んでも汲みきれない程でした。

 

でも、そんな中いち早く地元有志の皆さんが募金活動を行って下さり、その後も市内、県外のたくさんの個人、団体の皆さんから多くの支援を頂きました。そうした方々の存在や想いが、山主さん達の「よし!またやろう!」という気持ちに繋がったと言える程、その力は大きかったと思います。

 

風評被害~被害木の活用~

 

被害木伐採の様子

被害木伐採の様子(画像提供:釜石地方森林組合)

 

ーー被害に遭った木の取り扱いについてはどうだったのでしょうか?

 

高橋さん:

はい、その部分も山主さん達が復旧しようと決断する為には重要な点でした。
これまでの経験で、火災に遭った木でも樹皮をむけば使えることは分かっていましたが、それでもやはり被害木を販売する事は難しいかもしれないと危惧していました。

 

というのも、火災後の風評被害と言いますか、「被害に遭った木は通常の材木より安くなりますか?」というような内容の問い合わせが多くあったのです。ですから復旧に向かうためには、まず材木として使用できるかどうかを確認することが先決でした。

 

そこで、地元の製材所にご協力頂きサンプルとして製材した所、通常と遜色なく利用可能な事が確認出来ました。その結果を受け、8月中旬には所有者の方の一部自己負担により、先行して伐採が行われました。

 

その後、各種補助金などを利用して、平成32年度までは所有者の負担なしで再生に向けた復旧作業が行えることが決まり、それを受けて山主の皆さんの同意を頂き、本格的に動き出す事が出来ました。

 

被害木伐採の様子

被害木伐採の様子(画像提供:釜石地方森林組合)

 

ーー実際にどのように利用されているのでしょうか?

 

高橋さん:

初めに地元の製材所に製材を引き受けて頂き、個人の方が積極的に建築資材として使用して下さった事が、「被災木も通常の木材と変わらずに使えます」という事を広めて頂くモデルケースになったと思います。その後、大量の木を扱える集成材工場が東北地方に見つかり、さらなる利用促進につながりました。

 

釜石市に現在建設中の『鵜住居復興スタジアム』の一部分にもこの被害木が利用されていて、この夏の完成が待ち遠しい所です。また、催事の記念品などにもご利用頂き、予想を超えるご購入を頂いています。

 

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釜石鵜住居復興スタジアム – 釜石ラグビー
 

山林再生までの道のり~被害の大きさを思い知らされる日々~

 

釜石地方森林組合・高橋幸男 参事

 

ーー被害木の活用も広がり、復旧作業にも力が入る所だと思いますが、復旧の進捗具合についてはいかがでしょうか?

 

高橋さん:

被害面積のうち、植樹する総面積は260haで、これを3年で行う計画です。平成29年度中に植樹前の下準備が済んだ面積は40ha、実際に植樹が完了したのは14~15haとなっています。

 

何しろ現場は急傾斜地が多く、作業は困難を極めています。職員は毎日懸命に現場で作業をやってくれていていますが、数字だけ見るとまだまだで、私も改めて被害の大きさを思い知らされています。

 

でも、これまで植樹活動やボランティアで参加した方々から、「毎日こんな大変な場所で作業されているのですね!」と苦労を垣間見て声を掛けて頂ける事が、現場で作業するメンバーの励みや力になっています。そういう点でも一般参加型の植樹活動を行う意味は大きいと思っています。

 

山についての正しい知識を伝えたい~参加型の植樹活動~

 

ーー実際に現地に行くことで初めて分かる、知る事がある。そして、何より自分が参加出来る事が嬉しいと感じる方も多いのではないでしょうか?

 

高橋さん:

そうですね。「山林復旧の為に使って下さい」「ぜひ苗木の購入費に充てて下さい」というお声と共に、これまでたくさんの寄付金を頂いています。
“寄付金をどう活用するか”という話し合いで、やはり頂いた言葉や想いを大切にしたいという気持ちがありました。そこで、一緒に山を再生するために植樹に参加して頂く形も良いのではないかとの意見があり、企画に至りました。

 

ーー一般の方と一緒に植樹活動をされる時、どんな事を大事にされていらっしゃいますか?

 

高橋さん:

まずは参加する皆さんの“安全を確保する”こと、これが第一ですので、その部分に細心の注意を払っています。それから、“山について知ってもらう”この点も大切にしています。これは今回だけに限らず、当組合の事業など外部の方にお話しする機会にも同じように考えてお伝えしています。

 

ーーその場所の“ストーリー”を知る事は、その場所に愛着を持つ、大切にするという想いにも繋がりますね。

 

高橋さん:

植えた苗木にはご自分の名前が入ったマーカーを取り付けるのですが、このマーカーは記念品ともなっていて、一部分をお持ち帰り頂けます。帰った後も、ぜひ山との繋がりを感じて頂きたいと思っています。

 

植樹活動

一般参加による植樹活動の様子、右下:植樹活動参加記念品 マーカーとコースター(画像提供:釜石地方森林組合)

 

釜石山火事復旧植樹活動~みんなで尾崎半島の緑を再生しよう!

 
釜石市の8割を占める森林について知る事は、きっと故郷に誇りを持つことにつながるのではないかと思います。今回のインタビューではお届けしきれませんでしたが、山を適切に管理保全することが、災害に備える事になるなど、私たちの生活環境を守る事に繋がるという興味深いお話も教えて頂きました。

 

あなたも植樹会に参加して高橋さんのお話しを聞きながら、故郷の山について考えてみませんか?

 

6月17日に開催される「釜石山火事復旧植樹活動~みんなで尾崎半島の緑を再生しよう!」開催内容の詳細は以下のサイトなどからご覧ください。

 

6.17「釜石山火事復旧植樹活動~みんなで尾崎半島の緑を再生しよう!」参加者募集! – 釜石地方森林組合公式サイト
http://blog.kamamorikumi.jp/?eid=220

釜石地方森林組合Facebook
https://www.facebook.com/kamamorikumi/

 

縁とらんす

かまいし情報ポータルサイト〜縁とらんす

縁とらんす編集部による記事です。

問い合わせ:0193-22-3607 〒026-0024 岩手県釜石市大町1-1-10 釜石情報交流センター内

座談会では花巻や気仙沼の施設について会場から質問も

釜石大観音仲見世通りの空き店舗を改修、新事業展開を期待〜シェアオフィス オープン祝う、利用者の交流促す

木のぬくもりが感じられるシェアオフィス。コミュニティーの場にも

木のぬくもりが感じられるシェアオフィス。コミュニティーの場にも

 

 釜石市大平町の釜石大観音仲見世通りの空き店舗1軒が、昨年6月からの改修工事を経て、シェアオフィス「co|ba kamaishi marudai(コーバ・釜石・マルダイ)」に生まれ変わった。19日、施設のお披露目を兼ねたオープニングイベントが行われ、約30人がリノベーションやシェアオフィスの先進事例に理解を深めた。

 

 改修されたのは、大観音落慶(1970年)により整備された商店街で土産物店として営業後、17年間空き家となっていた築約40年の木造2階建て物件。2012年に震災復興で三重県から来釜した一級建築士の宮崎達也さん(46)=宮崎建築事務所代表取締役=が、この物件を購入。15年に仲間と立ち上げた市民団体「釜石大観音仲見世リノベーションプロジェクト」が母体となり、改修工事が進められてきた。

 

 1階の半分と2階の約80平方メートルのスペースを、個人事業主などが複数入居できるシェアオフィスに改修。2階の床板には昨年5月の尾崎半島山林火災で被災したスギ材を有効活用した。作業には同プロジェクトメンバーのほか、入居する市の起業型地域おこし協力隊(釜石ローカルベンチャーコミュニティ)やボランティア有志が協力した。

 

 同施設は東京都の企業「ツクルバ」が運営するシェアオフィス、コワーキングスペースのネットワークに加盟。「co|ba(コーバ)」の名称で全国に展開される拠点は、釜石が20カ所目で、本県では花巻、一関に次いで3拠点目となる。釜石の施設名の“マルダイ”は、土産物店の屋号を引き継いだ。

 

 イベントでは、コーバ運営の先輩となる花巻市の小友康広さん(35)、宮城県気仙沼市の杉浦恵一さん(32)を招き、講演や座談会、情報交換などが行われた。

 

座談会では花巻や気仙沼の施設について会場から質問も

座談会では花巻や気仙沼の施設について会場から質問も

 

 15年に「花巻家守舎」を設立、代表取締役を務める小友さんは、実家の老朽化した自社ビルを改修し、コーバ花巻を開設。16年には「上町家守舎」を立ち上げ、同市の商業施設「マルカンビル」の閉鎖危機を救った。小友さんは、エリア価値を高めるリノベーションまちづくりについて講演。座談会では2人から、それぞれのコーバのコンセプトや利用状況が紹介された。

 

 シェアオフィスは複数の利用者が同じスペースを共有することで賃借料負担の大幅削減につながり、利用者同士の交流で新たな事業展開も期待される。釜石の施設は2階をテーブル席のワークスペースとし、プリンター、wifi、キッチンなどを装備。1階はカウンター、ソファ席を配置し、多様な働き方に対応する。2階はイベント会場としての貸し出しも行う。

 

 オーナーの宮崎さんによると、同協力隊員以外に、webデザイン業者などから利用に関する問い合わせが数件入っているという。「新しいものを作り出したいという志を持つ人たちが集まり、実際に新しい働き方、商品、ビジネスなどが生まれる場になれば」と宮崎さん。

 

 通りに面した1階の残り半分のスペースは店舗用に貸し出したい考えで、テナントを募集中。同施設の情報は、webサイトで見ることができる。

 

(復興釜石新聞 2018年5月23日発行 第691号より)

復興釜石新聞

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観光振興に向け意欲を高める「かまいしDMC」のメンバー(写真説明)

交流人口拡大へ、かまいしDMC設立〜観光地域づくりを推進、体験ツアー企画 イベント誘致

観光振興に向け意欲を高める「かまいしDMC」のメンバー(写真説明)

観光振興に向け意欲を高める「かまいしDMC」のメンバー(写真説明)

 

 観光を通じた震災復興を目指す釜石市は、観光地域づくりを推進する新会社「かまいしDMC」(社長・野田武則市長)を設立した。市が新たな観光振興ビジョンとして掲げる「釜石オープンフィールドミュージアム構想」の実現に向け、復興過程にある行政や企業の取り組みから学ぶ機会の提供や釜石の魅力を伝える体験プログラムの企画などに取り組む。7日には新会社の設立記念パーティーが大町の釜石ベイシティホテルで開かれ、関係者ら約70人が出席。釜石観光の振興を担う経営体の誕生に期待を寄せた。

 

 観光庁は地元に精通し、地域と協力して観光資源づくりを担う法人組織「観光地域づくり組織(DMO)」の普及を推進している。かまいしDMCは、この一環。総合的な観光事業を官民一体で進めるため、宿泊や飲食といった市内全域の観光関連業者の調整役を担う。

 

 同構想では市内全域を博物館とみなし、戦災や津波を乗り越えてきた歴史、浜と里山の生活が同居する文化・風土、多様な景観などを資源とする。かまいしDMCは、そうした資源を利用した体験ツアーの企画、釜石へのイベント誘致などに取り組み、市外からの交流人口の増加を図る。

 

 地域商社として特産品の開発、販路開拓といった事業も展開。観光、物産関連のデータ収集・分析、国内外に向けた観光誘致、マーケティング戦略の策定も行う。

 

 来年のラグビーワールドカップ(W杯)開催の好機を生かし、観光受け入れ態勢の整備などを側面からサポート。W杯後の観光産業の振興にもつなげていく。

 

 総合旅行業務取扱管理者の河東英宜(ひでたか)さん(50)が取締役事業部長に就任。若林正義さん(43)、久保竜太さん(34)、藤田沙彩さん(26)の4人体制で業務に当たる。

 

 設立記念パーティーで野田市長は「震災から7年。復興の形が見えてきた。その中で構築した地域資源を活用し、釜石を全国、世界に発信したい」とあいさつ。市議会、県関係者らが祝辞を述べ、地方創生につながる取り組みの推進に期待を寄せた。

 

 河東さんは「人口減少が進む中、観光を通じて交流人口を増やし、地域活性化につながる事業を展開したい」と意気込みを話した。

 

(復興釜石新聞 2018年5月12日発行 第687号より)

 

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さまざまな思いを胸に最後ののれんを掲げる菊池悠子さん

60年の歴史に幕、呑ん兵衛横丁「泣きたくなるよね」〜仮設店舗 はまゆり飲食店街、退去期限迎えるも移転先見つからず

さまざまな思いを胸に最後ののれんを掲げる菊池悠子さん

さまざまな思いを胸に最後ののれんを掲げる菊池悠子さん

 

 東日本大震災の被災飲食店が入居した釜石市鈴子町の仮設店舗「釜石はまゆり飲食店街」(18店)は、年度末の退去期限を迎え、3月31日で営業を終了した。同所で再起をかけ、本設営業に望みをつないできた「呑ん兵衛横丁」(6店)は移転先を見い出せず、看板を下ろすことに…。釜石製鉄所全盛時代に飲食業発展の礎を築き、60年の歴史を紡いできた名物横丁の閉店に、客からは「寂しい」「何とか続けられないものか」と惜しむ声が上がった。

 

 同横丁で55年にわたり居酒屋「お恵」を営んできた菊池悠子さん(79)。最後の営業を前に、長年支えてくれた客や震災後、多くの支援を寄せてくれた全国の人たちに「とにかく感謝、感謝だよね」と言い尽くせぬ思いを吐露。「メソメソしててもだめ。いつもの自分でいないと」と奮い立った。

 

 横丁の店主らは「本設移転するならみんな一緒に」と願い、同飲食店街の他店主らと集団再建の道を模索。昨年7月には市に対し、駅前商業ビル建設構想を提案し市有地の提供を要望したがかなわず、仮設営業の期限延長も認められなかった。

 

 “釜石の顔”と言われた横丁を閉じることに、「泣きたくなるよね」と菊池さん。やりきれない思いをにじませながら「やめるんじゃなく、休むことにする。多分、みんな気持ちは同じだろうから」と前を向いた。

 

 1957年ごろ、路地で営業していた店が集まり、大町の長屋に軒を連ねた同横丁。最大で36店が営業し、製鉄業で活気づくまちに憩いの場を提供してきた。2011年の震災時には26店が営業していたが、津波で建物は全壊。同年12月、鈴子町に整備された仮設店舗で15店が営業を再開した。市が大町に整備した本設の飲食店街への移転(3店)、自立再建、店主の死去などで最後に残ったのは6店。5店は本設再建へ意欲はあるものの、期限までに道筋をつけることができなかった。

 

 同飲食店街(48区画)にはオープン時、44店が入居。安くておいしい多様な店が集まり、市民だけでなく市外からの復興支援者、観光客にも人気だった。転勤で釜石を離れる常連客(39)は「いちげんさんでも温かく迎えてくれる。さまざまな人たちと交流でき、貴重な情報交換の場でもあった。また来たいと思っていたのに」と残念そう。

 

 店主らでつくる「釜石はまゆり飲食店会」(山崎健会長)は、14年ごろから本設再建に向けた調査を開始。復興住宅の配置や自宅再建の動向、津波や大雨による浸水状況などを踏まえ、鈴子町が適地として挙がった。釜石駅前のホテル建設計画、ラグビーワールドカップ釜石誘致、橋野鉄鉱山の世界遺産登録の動きも集客要素として期待された。

 

バーを営み、仮設飲食店街のまとめ役として尽力した山崎会長

バーを営み、仮設飲食店街のまとめ役として尽力した山崎会長

 

 「いろいろ考えると鈴子町が最適だったが、(構想が)実現できず非常に残念」と山崎会長(49)。釜石の飲食文化を発信してきた“呑ん兵衛横丁”を「やっぱり残したかった。横丁抜きにして釜石の飲食店再興は厳しいと思う。60年の老舗看板は何ものにも代えがたい」と今後を憂えた。

 

 山崎会長によると、18店のうち本設営業のめどが立っているのは3月30日現在、4店だけだという。

 

(復興釜石新聞 2018年4月4日発行 第678号より)

 

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