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流通経済大 アート、ラグビー、トークなどで釜石市民と交流 若いエネルギーを被災地に出前

流通経済大が7月2日まで釜石市で開く「であうアート展」=TETTO

流通経済大が7月2日まで釜石市で開く「であうアート展」=TETTO

 
 流通経済大(本部・茨城県龍ケ崎市)の「であうアート展」が、7月2日まで釜石市大町の市民ホールTETTOで開かれている。24、25の両日開かれた開催記念イベントでは学生が市民と交流。トークセッションにはニュースキャスターの膳場貴子さん(同大客員教授)も出演し、震災復興の力となったラグビーワールドカップ(W杯)、同市が発信する防災教育などについて市民と意見を交わした。
 
 であうアート展は「つながる地域、学生、障がい者」をコンセプトに、同大が新松戸(千葉県)、龍ケ崎の両キャンパスで2021年から開催。千葉県成田市のNPO法人グループ彩「生活工房」所属のアーティストらの作品を展示し、さまざまな出会い、つながりを生み出している。22年からはキャンパス外にも広げ、釜石は4カ所目の開催地となった。
 
 今回は東北障がい者芸術支援機構などの協力で岩手、宮城のアーティストの作品を加え、約50点を展示。絵画や造形、ニードルワークなど独創性豊かな作品が並ぶ。本県花巻市のるんびにい美術館所属、釜石市出身の小林覚さんの絵画3点も公開されている。TETTOギャラリーで、午前10時から午後6時まで鑑賞できる。
 
上段:生活工房(千葉県成田市)のアーティストの作品、下段:宮城、岩手のアーティストの作品

上段:生活工房(千葉県成田市)のアーティストの作品、下段:宮城、岩手のアーティストの作品

 
釜石市出身・小林覚さん(花巻市・るんびにい美術館所属)の作品

釜石市出身・小林覚さん(花巻市・るんびにい美術館所属)の作品

 
 約2週間の開催期間中日のスペシャルイベントには学生と教職員約100人が来釜。24日は釜石鵜住居復興スタジアムで、同大男女ラグビー部と市民がタッチラグビーの試合で交流。25日はTETTOで、チアリーディング、ダンス、吹奏楽の各部がステージパフォーマンスを繰り広げた。
 
 トークセッションには地元釜石から、釜石ラグビー応援団副団長の浜登寿雄さん、震災伝承施設「いのちをつなぐ未来館」スタッフの川崎杏樹さんが出演。大学側からは客員教授の膳場さん、副学長の龍崎孝さんが参加した。会場の様子は学園祭が行われている新松戸キャンパスにも配信され、相互交流も行われた。
 
25日に行われた、流通経済大×釜石市民トークセッション

25日に行われた、流通経済大×釜石市民トークセッション

 
 話題の一つは、釜石復興の推進力となった2019年のラグビーW杯日本大会。浜登さんは“ラグビーのまち釜石”が大会招致に手をあげた理由を説明し、「あの空間が作られ時間を共有できたことは、まちと子どもたちの未来への財産になった」と振り返った。当時、試合に招待された小中学生にその後行ったアンケートの結果も紹介。世界の同世代とのつながりを求める声や、地域に貢献するボランティア活動への意欲が見られたという。
 
釜石から出演した川崎杏樹さんと浜登寿雄さん

釜石から出演した川崎杏樹さんと浜登寿雄さん

 
 川崎さんは、スタジアム建設地に震災前あった釜石東中の出身(震災当時2年生)。「W杯で国内外から訪れた大勢の人たちが、ラグビーを入り口に震災や防災に目を向けてくれた。その光景にこの場所に建てられた意味の大きさを実感した」と話した。同所では釜石高生が震災の語り部や防災普及活動を続けており、次世代への活動継承にも期待。自身は釜石の経験を海外に伝える活動にも携わり、防災による世界とのつながりも見据える。
 
 膳場さんは浜登さん、川崎さんがまちの魅力の一つとして示す「地域コミュニティーの強さ」に共感。震災直後に取材した水産加工会社が宮城の被災同業者に工場の一部を貸し出し、事業を助けたことを印象深く語り、「自社も被災し大変な状況なのに困っている仲間を助ける精神。これはまさに釜石に共有されているものではないか」と話した。
 
 高校、大学でラグビーをした経験を持つ龍崎副学長も、ラグビー精神「One for all、All for one(一人はみんなのために、みんなは一つの目的のために)」が釜石の復興、共生社会の実現につながっていると実感。その地域性や市民性を称賛した。
 
流通経済大の龍崎孝副学長と膳場貴子客員教授。釜石とのつながり継続を願った

流通経済大の龍崎孝副学長と膳場貴子客員教授。釜石とのつながり継続を願った

 
トークセッションに集まった市民らはまちの未来に期待を高めた

トークセッションに集まった市民らはまちの未来に期待を高めた

 
 アート展の釜石開催は、同大スポーツ健康科学部の教員が震災後、釜石の子どもたちをサマーキャンプに招き、タグラグビー交流などを行っていた縁で実現。学生らは震災被災地の訪問を通して「命を守る」ことへの学びを深め、人と人とのつながりの大切さを感じた。
 
釜石に元気と活力を届けた流通経済大の学生ら

釜石に元気と活力を届けた流通経済大の学生ら

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久しぶりの“声援”を力に8競技で熱戦 釜石大槌地区中総体 コロナ制限なく開催

コロナ制限がない通常開催は4年ぶり。釜石大槌地区中総体=17日

コロナ制限がない通常開催は4年ぶり。釜石大槌地区中総体=17日

 
 2023年度釜石大槌地区中学校総合体育大会(中総体)は17、18の両日、釜石、大槌、遠野3市町の公共体育施設や学校体育館で行われた。新型コロナウイルスの感染症法上の分類が5類に移行後、初の大会。基本的に観戦者の制限は行わず、各会場の感染拡大予防策に準じる形をとった。声出し応援も解禁となり、選手たちは家族や仲間の声援を受けながら、これまでの練習の成果を思う存分発揮した。
 
 本来は9種目の大会だが、サッカーは参加1校のため今回も試合ができず、8種目での開催。ソフトテニスは地区内での会場確保が難しく、遠野運動公園テニスコートを借用して行われた。
 
 卓球は大槌町の城山公園体育館が会場。団体戦男子は4校によるトーナメント戦、女子は2校での決戦となり、シングルス4、ダブルス1で県大会出場の1枠をかけて戦った。個人戦(シングルス)には男女ともに6校から参加があり、トーナメント戦で優勝を競った。2階観客席の座席数の関係で、保護者観戦は選手1人につき2人までとなったが、選手たちは応援に力をもらい全力プレーを見せた。
 
卓球女子団体戦は甲子と大槌の対戦。チームの総力で挑む

卓球女子団体戦は甲子と大槌の対戦。チームの総力で挑む

 
 卓球男子団体戦で準優勝となった甲子中の白岩優一朗キャプテン(3年)は「点を取った時とかに拍手をもらうと、やる気がみなぎる。中学最後の大会なので家族も楽しみにしていたと思う」と、過去2年は味わえなかった会場の雰囲気を満喫。「来年は今の2年生に優勝を成し遂げてほしい」と望みを託した。自身は水泳個人(自由形50M、100M)で県大会出場が決まっていて、記録更新へさらなる努力の日々が続く。
 
 バスケットボールは大槌学園体育館で行われた。男子4校はトーナメント戦、女子3校は総当たりのリーグ戦。一昨年の新人戦で県大会初優勝を果たした男子の釜石は選手層が厚く、今大会でも大量得点を重ねて優勝。女子は一昨年の新人戦から連覇を続ける大平が今大会も他校を制し、県大会出場を決めた。
 
バスケットボール男子1回戦・釜石-大槌。釜石の強さは今年も顕在

バスケットボール男子1回戦・釜石-大槌。釜石の強さは今年も顕在

 
 大平中女子バスケ部の阿部愛華キャプテン(3年)は「チームは勢いがあり雰囲気もいい。コロナ禍の2年は道具や椅子の消毒に手間を取られるなどプレー以外の負担も大きかった。今年は多くの応援もあって頑張れる」と笑顔。「全員がシュートを入れ、自分たちのプレーをして勝ちたい」と挑んだ結果、望み通り、県大会への切符を手にした。昨年の新人戦県大会はベスト8。「今年はそれ以上を」と意気込んだ。
 
 大会前日の雨の影響で平田公園野球場のグラウンドコンディションが整わず、18日に順延となった軟式野球。少子化による生徒数の減少などで野球は年々、1校単位でチーム編成するのが難しくなっており、2校、3校で合同チームを結成し大会に出場するケースが増えている。今大会は3校ずつ2チームを結成しての対戦(大槌・釜石東・釜石―大平・唐丹・甲子)となった。
 
 試合は3回まで両チーム無得点。4回裏、走者を3塁に進めた「大槌・釜石東・釜石」は先制点のチャンス。「(大会)最後の3年生を絶対にかえす」と、釜石中2年川崎頼仁選手が放った打球はレフト前へ。待望の1点は決勝点となり、最終回で粘りを見せた「大平・唐丹・甲子」を抑え、1-0で県大会出場を決めた。重要な場面でのヒットに川崎選手は「レフト方向は得意なほう。今日はバッチリはまった」と喜びを表した。
 
4回裏、大槌・釜石東・釜石合同チームは釜石中2年の川崎頼仁選手(右下写真)のヒットで先制

4回裏、大槌・釜石東・釜石合同チームは釜石中2年の川崎頼仁選手(右下写真)のヒットで先制

 
優勝を喜ぶ3校の選手(上段)と保護者(下段)

優勝を喜ぶ3校の選手(上段)と保護者(下段)

 
 3校25人をキャプテンとして率いた釜石東中3年の小笠原颯真選手は「3校合同って本当に難しいと思うが、練習を重ねるうちにみんな仲良くなってチームとしてまとまることができた」。緊張もあったが、「チャンスでしっかり点を取れた。みんな最後まで諦めず、声を出し合い、メンバー全員で勝ち取った勝利」と胸を張った。チームの県大会目標はベスト8。これまで培ったチームワークでさらなる高みを目指す。
 
県大会出場を決めた大槌・釜石東・釜石の選手ら

県大会出場を決めた大槌・釜石東・釜石の選手ら

 
いつもの野球応援の風景が戻ったスタンド。3校の保護者も力を結集

いつもの野球応援の風景が戻ったスタンド。3校の保護者も力を結集

 
 チームを応援する家族も団結した。1塁側スタンドで太鼓を鳴らしながら熱い声援を送ったのは釜石中など3校の保護者。声を出して応援できる喜びを感じながら、選手たちを精いっぱい鼓舞した。釜石中野球部に兄弟で所属する栗澤琉彗(3年)、虹空(1年)両選手の母美香さん(45)は「どんな形であれ、野球をできることが子どもたちにとっては一番。支えてくれる人たちに感謝して頑張ってほしい」。選手たちの労をねぎらい、県大会での活躍にも期待を寄せた。
 
バレーボール女子・釜石東-大平。釜石東は攻守で力を見せつけた

バレーボール女子・釜石東-大平。釜石東は攻守で力を見せつけた

 
 各競技の地区代表が出場する県中総体は7月15~17日に県内各会場で開催される。
 
2023年度釜石大槌地区中学校総合体育大会成績一覧表

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6月3日は橋野高炉跡の国史跡指定日 市民ら環境美化活動と記念講演で郷土の宝に理解

「みんなの橋野鉄鉱山」環境美化活動=3日

「みんなの橋野鉄鉱山」環境美化活動=3日

 
 釜石市橋野町の世界遺産「橋野鉄鉱山」で3日、高炉跡周辺の環境美化活動が行われた。市民らに史跡への関心、保護意識を高めてもらおうと市が主催する7年目の活動。市内外から25人が参加し、草刈りや落ち葉、枯れ枝の回収などを行った。講演会も開かれ、郷土の先人についても理解を深めた。
 
 「みんなの橋野鉄鉱山」と題した同行事は、世界遺産内の高炉場跡(橋野高炉跡)が国史跡に指定された1957(昭和32)年6月3日にちなんで、指定60周年となった2017年から行われている。
 
 今年は一番高炉と二番高炉周辺で活動。重点的に行われたのは高炉脇を流れていた水路の清掃。石垣の間や底部の草を刈ったほか、落ち葉などを回収した。高さのある石垣の上部の足場に土を入れ、踏み固める作業も行われた。同所では3基の高炉が稼働し、それぞれに風を送る装置「フイゴ」が併設されていた。フイゴは水車の力で動かすため、近くの二又沢川から水を引いた水路が南北に約400メートルにわたって延びていた。
 
水路跡の石垣の除草作業にあたる参加者

水路跡の石垣の除草作業にあたる参加者

 
高炉跡の周りも雑草を取り除いてきれいにした

高炉跡の周りも雑草を取り除いてきれいにした

 
 清掃後、同鉄鉱山インフォメーションセンターで記念講演会が開かれた。講師は市世界遺産課課長補佐の森一欽さん。釜石で洋式高炉による連続出銑に成功した盛岡藩士・大島高任(1826-1901)と、国内最大級とされる三閉伊一揆で農漁民を率いた釜石・栗林村出身の三浦命助(1820-64)にスポットを当て、2人の生涯の分岐点となった1853(嘉永6)年6月3日をキーワードに講演した。
 
 大島高任は釜石での高炉建設の前年1856(安政3)年に、水戸藩那珂湊で反射炉による大砲の鋳造に成功しているが、そのきっかけとなったのが53年6月3日のペリーの浦賀来航。一方、三浦命助は53年5月に勃発した2度目の三閉伊一揆で、南下してきた先発隊に6月3日、大槌で合流したとされている。
 
 同時代を生き、地元民とともに大きな困難に立ち向かった両者だが、森さんは「2人は敵対する関係だったと思う。実際に本人同士が会ったということもあり得ないのではないか」と自身の推論を述べた。
 
三浦命助、大島高任にスポットを当てた記念講演

三浦命助、大島高任にスポットを当てた記念講演

 
郷土に功績を残した先人2人の話に聞き入った

郷土に功績を残した先人2人の話に聞き入った

 
 住田町の小学校教諭㓛刀稔也(くぬぎとしや)さん(26)は、5年生が取り組む郷土学習で地元の「栗木鉄山」をテーマにした学習を進行中。製鉄について自身も学びを深めたいと、今回の橋野鉄鉱山行事に参加した。「大島高任や初めて知った三浦命助のことなど大変勉強になった。子どもたちの学習に役立てたい」。環境美化活動にも精力的に取り組み、「地域の人たちが力を合わせ、世界遺産を守っていこうと主体的に活動する姿勢が素晴らしい」と感銘を受けていた。

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届け!伝統の魅力 釜石・小佐野小児童 勇壮に舞う「小川しし踊り」 楽しさ継承

「伝統を継ぐ」と思いを込め、しし踊りを披露する小佐野小児童

「伝統を継ぐ」と思いを込め、しし踊りを披露する小佐野小児童

  
 釜石市小川地区に伝わる郷土芸能「小川しし踊り」が、小佐野小(千田有美校長、児童285人)の運動会で披露された。廃校になった地域の小学校から受け継ぎ演舞するのは5、6年生107人。鹿頭(ししがしら)をかぶった児童が笛や太鼓の音に合わせ大地を跳ねたり踏みしめながら勇壮に、色鮮やかな衣装に身を包んだ子どもたちはりりしく舞った。「もっといい踊りを」と後輩につなぐ高学年の勇姿がキラリ。小佐野町の同校校庭に詰めかけた保護者らから拍手が沸き起こった。
  
鮮やかな衣装を身に着けた踊り手たちは凛とした姿が印象的

鮮やかな衣装を身に着けた踊り手たちは凛とした姿が印象的

  
 同校は2005年に旧小川小と統合。小川小伝統のしし踊りを引き継ぐため伝承活動委員会や特設クラブを設け、学習発表会や地域の交流イベントで演舞を披露してきた。統合から13年目の17年、新たな伝統の一歩にしようと運動会での公開を開始。委員会などはなくなったが、授業に取り入れ高学年が継承し、運動会のプログラムとして定着している。
  
 5月の大型連休後から小川しし踊り保存会(佐々木義一会長)の指導(3回)を受けながら、授業と授業の間の休み時間(中休み)や昼休みも利用したりと毎日練習を重ねてきた5、6年生。「腰をしっかり落としてから跳びはねるとかっこいい」「指先に目線を合わせながら動くと踊りがきれいに見える」といった助言をかみしめつつ、力強く舞った。
  
鹿頭をかぶった児童は幕をはためかせながら、格好いい舞いを披露

鹿頭をかぶった児童は幕をはためかせながら、格好いい舞いを披露

  
半被姿の手踊りグループも元気いっぱい跳びはねて躍動した

半被姿の手踊りグループも元気いっぱい跳びはねて躍動した

  
踊りを盛り上げる笛や太鼓のおはやしグループ。軽快な音を響かせた

踊りを盛り上げる笛や太鼓のおはやしグループ。軽快な音を響かせた

  
 頭のリーダー、櫻庭蒼天(そうま)さん(6年)は最後尾で踊る「しんがり」役もこなし、「楽しい。最高」と心地よい汗を流した。手踊りのリーダー、照井美莉愛(みりあ)さん(同)も高学年としての自覚を持って、心を一つに踊り切ったとすがすがしい表情。「伝統を受け継ぐことができ、いい思い出になった。(後輩たちには)もっといい踊りをしてほしい」と期待した。
  
 「子どもたちは、地域の伝統を受け継ぎたいと頑張ってきた。元気な踊りを見てもらうことで地域に恩返ししたいという気持ちもある」と千田校長。そんな思いを全身で表現する児童を優しく見守り、「小佐野小にいた証し。学校を離れても思い出が体に染みて、誇りに思ってもらえたら」と願った。
  
コロナの5類移行を受け、久々ににぎやかな風景が戻った小佐野小の運動会

コロナの5類移行を受け、久々ににぎやかな風景が戻った小佐野小の運動会

  
 新型コロナウイルス感染症が「5類」に移行してから初めての運動会。声出しの応援復活や家族の参観に制限を設けず、マスク着用も個人の判断など久々に平時に近い形で行われた。プログラムは午前のみで、従来あった昼食時間は設けず実施。保護者への意向調査を踏まえた形だという。
  
 プログラムは全16種目。赤、白に分かれた児童は応援合戦、「天下分け目の小佐小合戦」と題した団体種目で力を合わせて競技を繰り広げた。ラストラン間近のJR釜石線を走るSL銀河をモチーフに趣向を凝らした種目も。リレーや徒競走では元気よく校庭を走った。
   
運動会スローガン「正々堂々」にちなんだ旗で応援合戦

運動会スローガン「正々堂々」にちなんだ旗で応援合戦

  
仲間と力を合わせて競技を楽しむ子どもたち

仲間と力を合わせて競技を楽しむ子どもたち

  
力いっぱい競技する児童を家族らが笑顔で見守った

力いっぱい競技する児童を家族らが笑顔で見守った

  
 「運動会ができることに感謝を」と、どの種目にも本気で挑んだ子どもたち。カメラなどを向けた家族らから、たくさんの声援が送られた。

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見て感じた「いいな」の声 創作の力に 釜石の絵画グループ・彩美会 36回展

個性あふれる作品が並んだ第36回彩美会展

個性あふれる作品が並んだ第36回彩美会展

  
 釜石市の絵画グループ「彩美会」(小原孝夫会長、会員14人)は19日から21日まで、大町の市民ホールTETTOで36回目の作品展示会を開いた。全会員が1~11点の作品を出展し、講師の佐々木實さん(二科会会友)の5点を加えた72点を展示。思いを込めた作品を見てもらう喜びに“のせられた”会員らは次なる作品に取りかかる意欲を高めた。
   
 彩美会は具象画を中心に取り組み、モチーフは市内外の四季折々の自然風景、動植物、人物、地域文化・芸能、静物などさまざま。油彩や水彩、パステル、クレヨン、色鉛筆など多様な技法を用いた力作が並んだ。
  
多様な技法で描かれた作品を興味深げに鑑賞する来場者

多様な技法で描かれた作品を興味深げに鑑賞する来場者

  
流木を使ったオブジェも来場者の目を楽しませた

流木を使ったオブジェも来場者の目を楽しませた

  
 隣町の大槌町から参加する上野宏明さん(72)は、1年かけて仕上げた油彩画「秀麗早池峰山」など7点を出品した。誘いを受け加入して7年目。もともとの趣味だった写真とは違った視点、構図を求められる絵の奥深さに「はまった」という。撮影したものをキャンバスに残そうと「必死にもがきながら描き、指導を受けて雰囲気が出できた感じ」と控えめながら成長の手応えもある。これからは好きな山登りや散歩の途中で心揺さぶられる風景をその場でスケッチするのが目標。「スケッチブックが相棒になったら最高。絵に込めた思いを自由に感じ、いいなと思ってもらえたらうれしい」と目を細めた。
  
心を動かされた雪景色を表現した「秀麗早池峰山」を見つめる上野宏明さん

心を動かされた雪景色を表現した「秀麗早池峰山」を見つめる上野宏明さん

  
 40代から90代までの会員らは個々に創作に励んでいるほか、月2回、定内町3丁目のひまわり集会所で勉強会を開いている。高齢の会員が多いが、小原会長の口癖「歳は奪い取るもの!」のもと、会員らは明るく元気に活動。和気あいあいと笑い声の絶えないグループの特徴は「互いの良いところを見つけて褒め合う関係性」と声をそろえる。「のせられているという感じもあるけど…。また描こうという気持ちになるよね」と笑顔も重ねる。
  
仲間と共に創作活動を楽しむ彩美会の会員ら

仲間と共に創作活動を楽しむ彩美会の会員ら

  
 事務局の千葉幸子さん(71)は「佐々木先生は形を押し付けず、個性に合わせて指導してくれるので、絵を描いている時間が楽しい。展示された作品には、その人ならではのワールドがあるでしょう」と、うれしそうに会場を見回した。集まりへの参加は都合のいい時だけ―。「ある時は真剣に絵を描き、ある時間はおしゃべりを楽しむ会」に興味を持ち、仲間が増えることを期待していた。
 
 

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将棋の世代間交流大会 釜石で4年ぶり開催 プロ棋士・小山怜央四段誕生で地元愛好熱高まる

2019年以来の開催となった「釜石市長杯争奪世代間交流将棋大会」

2019年以来の開催となった「釜石市長杯争奪世代間交流将棋大会」

 
 日本将棋連盟釜石支部(土橋吉孝支部長)主催の釜石市長杯争奪世代間交流将棋大会は4月30日、上中島町の中妻公民館で開かれた。新型コロナウイルス禍による休止を経て4年ぶり5回目の開催。同市は、この4月に本県初のプロ棋士となった小山怜央四段(29)の出身地。朗報で地元が盛り上がる中、再開された大会に県内外から約40人の愛好者が集い、団体戦で市長杯の栄冠を目指した。
 
 大会は3人1チームの団体戦。スイス式トーナメント戦4局を行い、勝ち点などで順位を競った。対局では段や級の棋力差に応じて駒落ちハンディ(最高6枚落ち)を採用。下手(棋力が下の者)の希望により平手(ハンディ無し)も可とした。対局時計を使用し、各20分の持ち時間で行われた。
 
 今大会には県内の支部や愛好会、学校の同級生などで組んだ12チームが参加。小学4年生から85歳まで、棋力もさまざまな愛好者が真剣勝負を繰り広げた。勝負が決まると互いの健闘をたたえ合い、他メンバーの対局の行方を見守った。対局の合間には地域や年代を超えて言葉を交わし、親睦も深めた。
 
県内各地から12チームが参加。次の手を考え、頭をフル回転

県内各地から12チームが参加。次の手を考え、頭をフル回転

 
小学生も参戦。見事な集中力で大人たちとの対局に挑む

小学生も参戦。見事な集中力で大人たちとの対局に挑む

 
 市内小川町の佐々木満さん(74)は小学5年の孫とチームを組み初参加。第1局では特別参加の野田武則市長との対局も楽しんだ。3年ほど前に佐々木さんが将棋を教え、教室にも通うようになったという孫。「どんどん腕を上げ、今では私が負けるほど。かなりのめり込んでいる」とその成長ぶりに驚く。「将棋はものの考え方の勉強になる。1つだけでなく複数の方法を考えられる力がつくと、挫折しても他の道を考えながら前に進んでいけるようになる」と、柔軟な思考への効果も期待する。
 
 釜石中の3年生は同じクラスの将棋仲間でチームを結成。大会初参加の大下桜雅さんは「いろいろな年代、レベルの人との対戦は普段無いのでいい経験。駒が少ない状態でどう戦えばいいのかも相手から学べた。また出てみたい」と次回大会へ意欲。小学生以来3回目の参加となった野嶋晏慈さんは「駒落ちの対策とかを考えてその成果を出せた。狙った作戦が決まるとうれしい」。午前の2局はいずれも勝利し「全勝したい」と意気込みを語っていたが、その言葉通り4戦全勝し、個人の全勝賞を獲得した。
 
釜石中チームは同級生3人で参加。真剣な表情で盤上を見つめる

釜石中チームは同級生3人で参加。真剣な表情で盤上を見つめる

 
「次はどう出る?」仲間の勝敗の行方にも目が釘づけに…

「次はどう出る?」仲間の勝敗の行方にも目が釘づけに…

 
 2016年に始まった同大会は駒落ちハンディを取り入れた団体戦という独自スタイルで、幅広い愛好者が勝負の面白さを感じ、多くの人と交流できるようにしている。第1回大会には、今春からプロの道を歩み始めた小山四段が弟真央さん、母聖子さんとチームを組み参加している。全日本アマチュア名人戦全国大会で県勢初の優勝を果たした後で、プロ棋士への夢も語っていた。
 
 土橋支部長は大会復活に、「4年ぶりに会う人たちの元気な顔が見られてほっとした。小山新四段をきっかけに、またみんなで将棋を楽しんでいこうという雰囲気が感じられてうれしい。釜石の将棋文化をさらに盛り上げたい」と話す。野田市長も参加者の熱心な姿を肌で感じ、「子どもたちも頑張っていた。みんな目標を持って取り組んでいる。小山怜央さんのこともあり、将棋への興味、関心が高まっていると思うので今後が楽しみ」と期待した。
 
市長杯のトロフィーはどのチームに? 静かなる熱戦が続く会場

市長杯のトロフィーはどのチームに? 静かなる熱戦が続く会場

 
【団体戦結果】
1位/遠野支部(新沼光幸、中村道典、萩野良三) 2位/山田将棋愛好会(黒澤由次、山内秀一、白土輝男) 3位/久慈支部(笹原賢二、星川勝久、中川原達哉) 
 
【個人全勝賞】
野嶋晏慈(釜石中学校)、川畑裕也(朋哉とその仲間たち)、相澤誠(チーム稜平)、坂下晴規(チームうみねこ)、中村道典(遠野支部)

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デザインに魅せられ 貫く“イズム” 小田島凌一展 83歳、現役看板職人【釜石】

釜石市民ホールで作品展を開く小田島凌一さん=只越町のアトリエで

釜石市民ホールで作品展を開く小田島凌一さん=只越町のアトリエで

  
 あくまで手描き、手作業で―。デザイン一本で美術活動を貫き通す釜石市のグラフィックデザイナー小田島凌一さん(83)の個展が、大町の市民ホールTETTOギャラリーで開かれている。ポスターデザインに魅せられて60年余り、今なお看板業を営む現役職人。東日本大震災での被災、健康面で不安を抱える出来事があっても生み出し続けた、「小田島イズム」がにじむ作品約40点を展示する。同ホール自主事業「アートアットテット」の一環。7日まで。
  
 ソンタクロース、福紙…言葉遊びを楽しむタイトルがついた作品、地球温暖化や海洋汚染などをテーマに問題提起するデザイン画が並ぶ。米露中、北朝鮮の緊張を表現した「取扱注意」、パネル全体を真っ黒に塗りつぶし、その中に壊れゆく子どもの顔を描き「戦争やめろ!」と訴える意欲作も。「ポスターで、すぐには平和の糸口は見いだせないかもしれない。しかし、戦争を終結させる手段の一つではないか」。そんな言葉が添えられている。小田島イズム、その1。「余計なものは入れない。説明しない。パッと見て分かるよう、視覚的に追及する。ポスターデザインのワザ」
  
TETTOで開催中の小田島凌一展。40点ほどが並ぶ 

TETTOで開催中の小田島凌一展。40点ほどが並ぶ

  
地球温暖化対策の必要性や反戦…簡潔なイラストと文言で訴える

地球温暖化対策の必要性や反戦…簡潔なイラストと文言で訴える

  
「上品ではない。泥くさい作品だから」と小田島さん。社会的な話題を取り上げ問題提起する

「上品ではない。泥くさい作品だから」と小田島さん。社会的な話題を取り上げ問題提起する

   
 びっしりと蛍光色のシールが貼られた「丸・三角・四角」と題した作品。タイトル通り、3つの形を重ね合わせ、ひたすら貼りまくった。使ったシールは約3200枚。デジタル時代の今、パソコン上でデザイン、画像処理してプリントすれば数分で仕上がるが、小田島さんは手作業にこだわる。「創作には面白い仕掛けがなきゃ。デジタルにはユーモアがないし、創造ができないでしょ」。いたずらっぽく笑いながら、小田島イズムをポロリ。楽しむ視点は他にもあり、展示品はほぼ全てが手描きで仕上げられ、「色むらがあったり、筆の毛が混じっていたり。そんなところを見るのが面白い」
   
3000枚超のシールを貼って作り上げた「丸・三角・四角」=只越町のアトリエで

3000枚超のシールを貼って作り上げた「丸・三角・四角」=只越町のアトリエで

   
 ゴーイング・マイウエー。自分なりの道を突き進んできた小田島さんは幼いころから絵を描くことが好きだった。通信教育で挿絵やレタリングデザインを学び、22歳になると、浜町にあった看板店で修業を開始。同じ頃、独自のスタイルで創作活動をしていた4人で美術集団サムディ45も立ち上げた。33歳で独立、只越町に「日美画房」の看板を掲げた。仕事の傍ら、創作活動にも励み、グループ展や美術展に出品し、入選・入賞経験も多数。そして2011年、東日本大震災の津波で店と近くにあった自宅が全壊、40数点の作品も失った。5カ月にわたる避難所生活で再建の道を探っていると、ぼちぼち仕事が入るように。「負けられん」
   
津波の難を逃れたデザイン画「泰然自若」。右上写真のように爪痕は残したまま

津波の難を逃れたデザイン画「泰然自若」。右上写真のように爪痕は残したまま

  
「泰然自若」をモチーフにした作品の一つ。こちらは、がれきの写真をコラージュ

「泰然自若」をモチーフにした作品の一つ。こちらは、がれきの写真をコラージュ

   
 この個展では、流失を免れ手元に戻った、たった1枚のデザイン画「泰然自若」も紹介する。20年ほど前の二科展入選作。これをもとに考えた新しい作品数点も掲示し、「震災は必ずくる」「明日かも!あなたは『地震』に『自信』が持てますか」と問いかける。目の当たりにした巨大津波への恐怖と復興を願う熱い思いを看板形式で表現した「海は黒かった。」もインパクト大。第35回東北6県公共キャンペーン作品展(12年)で最高位の国土交通大臣賞に輝いた作品だ。がれきを処理する重機の爪を復興の象徴としてシンプルにデザイン。「爪が挟んだ赤丸がポイント」と教えてくれた小田島さんは願う。「復興の魂を込めた。感じてもらえたら、いいなぁ」
  
重機の爪をデザインした、シンプルながら迫力ある看板「海は黒かった。」

重機の爪をデザインした、シンプルながら迫力ある看板「海は黒かった。」

  
 「ロールモデル(お手本になる人物)だ」。展示を見た同年代の人、創作活動をしている若年者らがつぶやいている。「只越から離れたくない」とその地で看板業を再開し、近くにある災害公営住宅に家族と暮らす小田島さん。数年前から体調を崩したり思い通りにいかないことも多くなったが、創作意欲は衰えていない。自身初となる個展は「周囲の協力のおかげ」と感謝する。そして、「あと何年描けるか分からないが、シンプル イズ ビューティフルライフ(単純は美しい)をモットーに作品創りをしていきたい」とも。小田島イズム、健在(けんざい)。
  
「日美画房」の看板を掲げるアトリエへの通勤は自転車で

「日美画房」の看板を掲げるアトリエへの通勤は自転車で

  
被災の痕を残すアトリエも小田島イズムそのもの

被災の痕を残すアトリエも小田島イズムそのもの

  
◇記者のちょい足しキーワード◇
段落の先頭文字をつなげてみて。続けて段落の最後の文字も結んでみると「小田島イズム」が見えてくる⁈

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笑顔と刻む 新たな歴史 釜石・小佐野保育園 ピカピカ園舎に子どもらの歌声響く

真新しい園舎に大喜びの小佐野保育園の園児ら。元気な歓声が響いた

真新しい園舎に大喜びの小佐野保育園の園児ら。元気な歓声が響いた

  
 釜石市小佐野町の小佐野保育園(小笠原真理子園長、園児60人)が新築され、22日に落成式が行われた。園児や保護者、地域住民、園関係者ら約100人が参加。ピカピカの学び舎(や)に完成を喜ぶ子どもたちの元気な歌声が響いた。1967年に建てられて以来、大規模な建て替えは56年ぶり。今年2月上旬に建築工事は完了しており、同月中旬から既に新園舎で保育を始めている。
 
 同園の歴史は戦前までさかのぼる。1938年に私設の保育所として開設された後、移転や保育園への移行、運営主体の変更などを繰り返した。45年、米英軍による艦砲射撃の影響で事業を一時中止したことも。66年に私立から社会福祉法人運営の小佐野保育園となった。67年に現在の場所に園舎を整備。81年設立の社会福祉法人釜石愛育会が運営を引き継ぎ、増改築を重ねてきた。
  
 旧施設は老朽化が進行。加えて、2011年の東日本大震災の地震は乗り切ったが、今後の災害に耐え得るか不安もあったことから、建て替えを決めた。昨年7月下旬から新園舎の建築工事に着手。今年2月10日にしゅん工、引き渡しを受けた。工期中は野田町の野田集会所を仮園舎として利用した。
  
完成した小佐野保育園の新園舎

完成した小佐野保育園の新園舎

  
 新園舎は木造一部2階建てで、延べ床面積648平方メートル。1階には保育室(6室)やホール、事務室、医務室、調理室などを設け、2階には会議・応接室を配置した。園児の安心安全への配慮、職員の快適な執務環境の構築を目指して設計され、自然採光を取り入れられるよう保育室などの配置を工夫。季節の移ろいを体感してもらおうと、ひさしを設けた半屋内の活動空間をつくり、園庭の遊具なども再整備した。
  
 式で、釜石愛育会の小野寺哲理事長は「多くの力添えで、待望の施設が完成した」とあいさつ。建設業者ら協力者6人に感謝状を贈った。同会の山﨑ミキヨ理事も「どこからも光が入り、明るい色調が子どもたちを温かく優しく包み込み、ぬくもりある、ほっと安心できる施設に生まれ変わった。子どもたちは元気に伸び伸びと遊び、楽しいそうな声が園内に響き渡っている」と謝辞を述べた。
 
喜びを込めて元気いっぱいに歌う子どもたち

喜びを込めて元気いっぱいに歌う子どもたち

 
園児らを優しく見守る小野寺理事長(前列左)や保護者ら

園児らを優しく見守る小野寺理事長(前列左)や保護者ら

 
 年中・年長児と今春の卒園児ら約30人は手話を交えながら「にじ」を元気いっぱいに歌って、園生活の楽しさを表現。保護者が参加する縁で尾崎青友会が駆け付けて虎舞を披露し、お祝いムードに花を添えた。
 
 出番を終えて満足げな佐野史佳ちゃん(5)に新しい園舎の印象を聞くと、「きれい。うれしい」と答えが返ってきた。普段は友達とままごとを楽しんでいて、これからやってみたいことは「なわとび」とのこと。帰りがけには園庭にある遊具に駆け出し、友達と遊びながら歓声を響かせた。
 
木のぬくもりを感じる明るい保育室

木のぬくもりを感じる明るい保育室

 
園庭に整備された遊具は子どもたちのお気に入り

園庭に整備された遊具は子どもたちのお気に入り

 
 園児の頑張りに目を潤ませた小笠原園長。新園舎で始まる歴史を、子どもたちの笑い声とともに刻んでいくことを思い描く。小野寺理事長も「園児ファースト。愛の精神を大切にした保育で、子どもたちの感性や自由性を育んでいく」と力を込めた。
 

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思い思いの釜石風景 市民絵画教室、42回目の作品展 刺激し合う関係 継続の力に

釜石市内の風景などが並んだ市民絵画教室の作品展

釜石市内の風景などが並んだ市民絵画教室の作品展

  
 釜石市民絵画教室(小野寺豊喜会長、会員11人)の作品展は7~9日まで大町の市民ホールTETTOで開かれた。会員と講師の菊池政時さん(87)が、この1年間に制作した作品など96点を展示。作品を見てもらう喜びを分かち合いつつ、互いの創作活動に刺激を受け、継続への意欲を高めた。
   
 同教室は1978年度、市の社会教育講座としてスタート。その後自主活動グループに移行し学習、作品発表を続ける。教室は毎月2回、隔週水曜日に青葉ビルで開催。合評会、スケッチ旅行(新型コロナウイルスの影響でここ数年は実施を見送る)を経て、絵画展で1年間の成果を示す。
   
1年間の成果を発表した市民絵画教室の会員ら

1年間の成果を発表した市民絵画教室の会員ら

   
 「私たちの絵画展」と銘打つ作品展は、今年で42回目となった。同教室で取り上げた花や魚の静物、市内の海景や街並み、庭先を彩る植物、自画像などテーマはさまざま。画材も油彩、水彩、アクリル、パステル、色鉛筆と多様だ。
  
作品に込めた思いを伝えたり、会話を楽しみながら絵画鑑賞する人も 

作品に込めた思いを伝えたり、会話を楽しみながら絵画鑑賞する人も

  
「釜石港」と題した松崎さんの作品。これからも描き続けたいテーマだという

「釜石港」と題した松崎さんの作品。これからも描き続けたいテーマだという

   
 「釜石に住んでいるなら、やっぱり海」と話したのは松崎洋さん(90)。釜石港や造船所、廃船など海にちなんだ作品を多く並べた。東日本大震災前は両石町で暮らしたが、被災し大渡町で生活を再建。拠点は変わっても海は身近にあり、描き続けたいテーマに変わりはない。今も自営業者として働いていて、「仕事が終わってボヤっとするよりは何か趣味があった方がいい」と、絵を描くことが元気のバロメーターになっている様子。教室にはできるだけ参加し、仲間と腕を磨き合う時間も楽しみで、「いい絵を描いているのを見ると、『負けないぞ』という気持ちになる」と意欲満々だった。
   
にこやかな笑顔で来場者を出迎えた女性会員ら

にこやかな笑顔で来場者を出迎えた女性会員ら

   
 小野寺会長(74)は「にぎやかな展示。描きたいものを自分なりに表現したり、大きいサイズの作品に挑戦したり、いい傾向」と、うれしそうに会場を見回した。創立45年となり、思い出すのは32回目の作品展のこと。その初日に起こった震災で、展示中の作品が津波にのみ込まれた。泥の中から回収・修復した作品を加えた絵画展を翌年に再開。その後のコロナ禍で2年開催を見送ったが、昨年から再始動し、「創作を楽しめる、いつもの日常が戻ってきた」と感じている。
  
 そして、続けることの大切さをあらためて思う展示にもなった。小野寺会長は「工夫したり勉強してきたものを発表できることは創作の力になる。自分にないものを、仲間を通して見いだすことができる。それを自分のものにするため研さんを積み、刺激し合っていきたい」と前を向いた。
 
 

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期待膨らむ!新学校生活スタート 釜石市内の小・中学校で入学式 桜も祝福

「はい!」。新入生が元気な声を響かせた双葉小の入学式=7日

「はい!」。新入生が元気な声を響かせた双葉小の入学式=7日

  
 釜石市内の小中学校は10日までに新年度の入学式が行われた。小学校は9校に190人、中学校は5校に172人が進んだ。桜が咲く中で迎えた「ハレ」の日。各校の新入生らは期待に胸を躍らせながら学校生活をスタートさせた。
   
 新町の双葉小(及川美香子校長、児童130人)には19人が仲間入りした。入学式は7日にあり、緑やピンク、水色といったカラフルなランドセルを背負った新1年生が保護者と登校。通学路や学校敷地内では桜が咲き誇り、その祝福に顔をほころばせた。
   
新入生を歓迎するかのように咲き誇る双葉小敷地内の桜=7日

新入生を歓迎するかのように咲き誇る双葉小敷地内の桜=7日

  
保護者と手をつないで初めて双葉小に登校する新1年生=7日

保護者と手をつないで初めて双葉小に登校する新1年生=7日

   
 体育館での式で新1年生は、教員や保護者、6年生(29人)が見守る中、入場。少し緊張気味だったが、名前を呼ばれると「はい」と元気よく返事し一礼した。
  
 及川校長は「早く学校に慣れて好きになってください。優しく、お友達が嫌がることをしないで正しいことをしっかりできる1年生になってほしい。あいさつもしっかりできるといいですね。心の中に双葉が育ち、大きな花を咲かせることができます」と呼びかけた。
  
心の双葉を育てるための取り組みを分かりやすく伝える及川美香子校長=7日

心の双葉を育てるための取り組みを分かりやすく伝える及川美香子校長=7日

  
校長先生の話や教職員の紹介に耳を傾ける双葉小の新入生=7日

校長先生の話や教職員の紹介に耳を傾ける双葉小の新入生=7日

  
 来賓の高橋勝教育長が告辞。「いろいろ、たくさん遊んで勉強し、周りの人たちのために頑張れる小学生になって」と期待を込めた。6年生は「おはようございます」「さようなら」と元気なあいさつの手本を見せ、新たな仲間を歓迎した。
  
 新入生の三浦伊織さんは「勉強を頑張りたい。一輪車に乗れるようになりたい。友達をつくるのも楽しみ」と期待を膨らませた。母の文子さん(40)は「元気いっぱい、いろんなことを経験してほしい」と優しいまなざしを向けた。
  
保護者や6年生らが見守る中、入学式を終えて退場する新1年生=7日

保護者や6年生らが見守る中、入学式を終えて退場する新1年生=7日

  
 新型コロナウイルス対策のマスク着用について、文部科学省は学校向けに緩和する通知を示しており、同校の入学式では新入生については着用を求めなかった。今月から学校の児童生徒や教職員は基本的に不要と通知されているが、出席者のほとんどはマスク姿で、そうした状況はまだ続くとみられる。

 

野田市長(左から2人目)らと記念撮影する小山さん(中央)=釜石市役所

将棋・小山怜央さん 古里釜石に帰省 プロ合格を報告、活躍誓う「応援力に」

釜石市に帰省して地元の子どもたちと指導対局する小山怜央さん(左)=小佐野コミュニティ会館

釜石市に帰省して地元の子どもたちと指導対局する小山怜央さん(左)=小佐野コミュニティ会館

 

 今年2月に将棋の棋士編入試験に合格した釜石市鵜住居町出身の小山怜央さん(29)=横浜市。4月1日付で岩手県初のプロ棋士としてデビューする。新たな舞台への一歩を踏み出す前に、古里に帰省。3月28日は子どもや将棋愛好家らへの指導対局、市長への表敬訪問などで大忙しだった。「おめでとう」「白星重ねて」「もっと強くなりたい」。行く先々で喜びや応援、希望を見いだす声を聞いた小山さんは「困難な時があっても地元の応援を力にし、今後も良いニュースを届けたい」と飛躍を誓う。

 

 小学2年生の頃に将棋を始めた小山さん。中学3年で棋士養成機関「奨励会」を受験するも不合格に終わった。高校2年時の東日本大震災で自宅を失い、避難所や仮設住宅での生活を余儀なくされたが、棋力は磨き続けた。岩手県立大進学後、数々のアマチュアタイトルを獲得。16年には奨励会の「三段リーグ」編入試験に挑戦したが、不合格となった。ただ、社会人になってもプロ棋士という夢を諦めず、アマとして臨んだプロの棋戦で好成績をあげ、編入試験の受験資格を獲得。22年11月から若手プロ棋士相手の五番勝負に挑み、3勝1敗と勝ち越して合格した。

 

将棋教室で特別指導

 

憧れの小山さんと(前列右から3人目)と交流し笑顔の子どもたち=小佐野コミュニティ会館

憧れの小山さんと(前列右から3人目)と交流し笑顔の子どもたち=小佐野コミュニティ会館

 

 合格後の初帰省。28日午前、小山さんは小佐野町の小佐野コミュニティ会館を訪れ、子ども将棋教室に特別参加した。将棋愛好家らでつくる「正棋会」が小佐野公民館と連携して企画する教室には小学生9人を含め20人ほどが集まっていて、「おめでとう」と拍手を添えて出迎えた。そして、時間を惜しむかのように、子ども3人が「六枚落ち」のハンデをもらって対局に挑んだ。

 

 対局後には「感想戦」も。勝負を振り返り敗因となった手などを語り合って、最善手を検討する時間だ。小山さんが「負けました」と発した一局。「完敗だった。金をとられたのが痛かった。いい手をとったね」と声をかけられた中澤朋哉君(釜石小4年)は照れ笑いした。棋士を目指す中澤君にとって、小山さんは夢を実現させた憧れの存在。ハンデありの勝ちは「うれしいけど、ちょっと悔しい。途中、勝ち!と思っていたら、怪しい技を繰り出してきて、ただじゃすまなかった。やっぱり、すごい。もっと強くならなきゃ」と刺激を受けた。

 

将棋愛好家や子どもらを相手に臨む「8面指し」=中妻地区生活応援センター

将棋愛好家や子どもらを相手に臨む「8面指し」=中妻地区生活応援センター

 

子どもも大人も小山さんとの勝負に熱中=中妻地区生活応援センター

子どもも大人も小山さんとの勝負に熱中=中妻地区生活応援センター

 

 午後は上中島町の中妻地区生活応援センターで指導対局。子どもや高齢の愛好家らを相手に真剣な表情で多面指しに臨んだ。小山さんに会うために山田町から駆け付けた斎藤稜平君(豊間根小3年)は「緊張してすごく疲れた。とても強かった。感想戦で攻めのことを教えてもらったから強化したい」と貴重な時間を楽しんだ様子。対局の喜びをかみしめるのは大人たちも同じで、「最高だ」と顔をほころばせていた。

 

市長を表敬訪問

 

野田市長(左から2人目)らと記念撮影する小山さん(中央)=釜石市役所

野田市長(左から2人目)らと記念撮影する小山さん(中央)=釜石市役所

 

 2つの指導対局の合間に、市役所の野田武則市長を訪ねて報告。4月から四段としてフリークラスに参戦する小山さんは「こんなに釜石の方が喜んだり応援してくださっていると改めて感じ、とてもうれしく思います。たくさんの声かけを力に勝利を重ねて少しでも早く突破できるよう頑張りたい」と力を込めた。

 

 同行した小山さんの父敏昭さん(60)、母聖子さん(60)は「諦めず夢をかなえた。試練はあると思うが応援してほしい」と望み、野田市長は「大きな偉業を成し遂げていただいた。勝利した瞬間から釜石の空気が明るい雰囲気に変わった。活躍が市民に元気と勇気を与える。厳しいことは多々あると思うが、市民が応援しているので頑張ってほしい」とエールを送った。

 

土橋さんらから贈られたネクタイを着用。同郷のアーティスト小林覚さんの作品「数字」がデザイン。「白星、数字を重ねて」との願いが込められている

応援への感謝と意気込みを伝える小山さん=釜石市役所

 

 幼少期の小山さんに将棋を教えた土橋吉孝さん(67)=日本将棋連盟釜石支部長=は「成長し、たくましくなった。余力があり、まだ伸びる。白星を稼いで上を目指してほしい。怜央はみんなの目標であり、将棋文化普及の力になる」と期待する。実際、小山さんの活躍により、子どもらの熱の高まりを感じていて、同支部では将棋教室の回数を増やす考え。コロナ禍で開催できずにいた市長杯も4月に予定する。

 

 自身も通った教室に今なお多くの人が集う様子をうれしそうに見つめる小山さん。「こんな、にぎやかな感じが続いていってほしい。子どもたちには、いろんな大会に出て経験を積んで頑張ってほしい。自分も勝負師なので、負けるのは悔しい。またチャレンジさせてください」。控えめながら、将棋にひたむきに向き合う姿勢が印象的だった。

 

応援への感謝と意気込みを伝える小山さん=釜石市役所

土橋さんらから贈られたネクタイを着用。同郷のアーティスト小林覚さんの作品「数字」がデザイン。「白星、数字を重ねて」との願いが込められている

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やりたいこと、実現!「かまっこまつり」準備中 釜石の子どもたち「来てー!」

手製のチラシを手に「かまっこまつり」をPRする子どもたち

手製のチラシを手に「かまっこまつり」をPRする子どもたち

 
 釜石市の子どもたちが中心となって企画する「かまっこまつり」が25日、大町の釜石PITで開かれる。自らアイデアを出し合い、準備から運営まで行う祭りは9回目。手作り雑貨や遊びの出店、ステージ発表などで市民をもてなす。今回は6歳~高校生約30人がスタッフに応募。昨年11月下旬から作戦会議、準備を重ねている。本番を1週間後に控えた18日に大町の青葉ビルで進められた作業をのぞいてみた。
 
 商品の袋詰めや店の看板づくり…。この日は、小中学生と保護者、大人スタッフら15人ほどが集まった。手製のスノードームなどを売り出す「なんか屋」チームの櫻井真衣さん(双葉小5年)は「ものづくりが好きだから楽しい」と手際よく作業。同級生の大井虹色(なな)さんは「春休みは暇だから。いつもと違ったことができるのかなと楽しみ。とにかく、買ってもらえたらよし!」と、せっせと手を動かしていた。
 
スノードームを作ったチーム。販売に向け袋詰めや飾り付けを進める

スノードームを作ったチーム。販売に向け袋詰めや飾り付けを進める

 
看板に描くイラストを考えたり、ダンスの振り付けを確かめたり…大忙し

看板に描くイラストを考えたり、ダンスの振り付けを確かめたり…大忙し

 
 他にもスライムづくりや宝探しゲーム、運動遊びコーナーなどが並ぶ予定。子どもたちは「ルールを考えるのが楽しい」「作り方を知りたいからやってみた」と生き生きした表情でもてなしの準備を進めている。チラシをつくって青葉ビル周辺の住民に配布。宣伝にも力を発揮する。
 
祭り限定の仮想通貨「かまっコイン」。みんなで丁寧に切り取り中

祭り限定の仮想通貨「かまっコイン」。みんなで丁寧に切り取り中

 
 そして祭りの特徴の一つが、限定の仮想通貨。今回の「かまっコイン」は、釜石の海と夕日がデザインされている。考えたのは松田桃さん(鵜住居小2年)。「きれいだと思ったから描いた。優しい気持ちで使ってほしい」とはにかんだ。来場者は受付で仮想通貨をもらって買い物や遊びを満喫。通貨を使い切ったら、各ブースで運営を手伝う“アルバイト”をして報酬の通貨を得る仕組みも楽しみどころだ。
  
「25日にやります。来てください」。チラシを配って呼びかけも

25日にやります。来てください」。チラシを配って呼びかけも

  
 釜石まちづくり株式会社が主催。祭りは東日本大震災後の子どもの居場所づくりを目的に「放課後子ども教室」を運営する市民団体が2013年に始めた。子どもたちのやりたいことを実現させ、地域の人たちとの出会いを促すのを目指し、本年度から同教室の運営を担う同社が取り組みを引き継いだ。
  
 これまで会場にしてきた鵜住居地区を飛び出し、市中心部に乗り込んで初開催。隣接する市民ホールTETTO前広場では、何でも100円で買えるフリーマーケット「かまいし百円市」(同社主催)も予定され、楽しさ倍増で街中ににぎわいを生み出す。同教室事業に長年携わる同社の岩城一哉さん(36)は「子どもたちが時間をかけて作り上げる成果を見てほしい。そして交流することで、互いに声がかけやすい関係づくり、発見や学び合うきっかけになれば」と来場を呼びかける。
 
 かまっこまつりは正午~午後3時まで。同時開催の百円市は同14時半まで楽しめる。