写真で「癒やし」のひとときを― 釜石・芳賀憲一さん 震災機に継続の展示会3年ぶりに


2024/05/22
釜石新聞NewS #文化・教育

 「癒やし」をテーマに開かれた芳賀憲一さんの写真展=18日

「癒やし」をテーマに開かれた芳賀憲一さんの写真展=18日

 
 釜石市のアマチュア写真家、芳賀憲一さん(77)が17日から3日間、同市大町の市民ホールTETTOで写真展を開いた。東日本大震災後、撮りためた作品を「皆さんの癒やしになれば」と公開し続ける芳賀さん。今回は2021年3月以来の展示会で、自身の“喜寿”記念も兼ねて開催。この3年で撮影した市内外の風景や動植物などを主に70点を展示した。
 
 サクラ、ヒマワリなど季節の花々、昨年運行を終了したSL銀河、釜石まつりの呼び物「曳き船」、市街地で憩うシカ…。芳賀さんが独自の視点で捉えた一枚一枚が来場者の目をくぎ付けにした。色彩の美しさ、構図のうまさ、貴重な一瞬を逃さない技術力の高さに加え、しゃれっ気たっぷりの作品タイトルなど、見る人を魅了する要素が満載の展示会となった。
 
TETTOでの開催は2019年、21年に続き3回目

TETTOでの開催は2019年、21年に続き3回目

 
写真左:魚眼レンズで撮影したヒマワリ畑と紅葉。同右上:ハスの花びらが水滴に乗った作品のタイトルは「花筏(いかだ)」。同右下:リニューアル前の大只越公園。イチョウの落ち葉の上にできた2本の木の影で「道しるべ」

写真左:魚眼レンズで撮影したヒマワリ畑と紅葉。同右上:ハスの花びらが水滴に乗った作品のタイトルは「花筏(いかだ)」。同右下:リニューアル前の大只越公園。イチョウの落ち葉の上にできた2本の木の影で「道しるべ」

 
作品名「柿をとる」。左は(スマホカメラで)撮る、右は(手をのばして)もぎ採る

作品名「柿をとる」。左は(スマホカメラで)撮る、右は(手をのばして)もぎ採る

 
 今回、初めて取り入れたのは写真に書を施した作品コーナー。釜石応援ふるさと大使を務める仙台市在住の書家支部蘭蹊さん(73)が、芳賀さんの写真にさまざまな言葉を添えた作品で、2つの芸術の融合が新たな世界観を生み出している。「いつか、支部さんと二人展もできれば」と芳賀さん。
 
芳賀さんの写真に支部さんが言葉をしたためたコラボ作品。右下は芳賀さんの写真展への思いを書いてもらった作品

芳賀さんの写真に支部さんが言葉をしたためたコラボ作品。右下は芳賀さんの写真展への思いを書いてもらった作品

 
 会場には市内外から多くの人たちが足を運んだ。「ここはどこ?」「どこから撮ったの?」と質問する来場者。釜石大観音など見慣れたモチーフも撮る場所や時間帯、気象条件によって違った表情を見せており、興味をそそられながら見入る人の姿も。
 
季節や撮影場所によってさまざまな景観を生み出す釜石大観音

季節や撮影場所によってさまざまな景観を生み出す釜石大観音

 
写真展を開いた芳賀憲一さん(中央)。来場者との会話も楽しみの一つ

写真展を開いた芳賀憲一さん(中央)。来場者との会話も楽しみの一つ

 
 芳賀さんは同市大只越町出身・在住。2004年に発生した新潟県中越地震の復興事業に土木技術者として2年間派遣された際、休日を利用して、釜石にはない風景を撮影したのが写真を始めるきっかけとなった。帰釜後、「古里にもまだ見ぬ景色がある」と日常的にカメラを手にするように。市内外に出向いて撮影を楽しんだ。
 
 63歳で退職した直後の2011年3月、東日本大震災が発生。被災者の力になりたいと、仮設住宅を担当する市の臨時職員(中妻地区生活応援センター配属)として働き始めた。仮設入居者の生活が落ち着き、各種支援も減ってきたころ、引きこもりの増加が問題に。「外に出るきっかけになれば」と思いついたのが、殺風景だった仮設の談話室に自身が撮りためていた写真を飾ることだった。「ぜひ見に来て」と積極的に声掛けをしたところ、自室にこもりがちだった人たちも足を運び、「癒やされた」と安らぎの表情を浮かべたという。
 
 市内に復興住宅が建設され、仮設からの移住が進んだ2017年、上中島復興住宅に併設整備された同センター(中妻公民館)で再び写真展を開催した。市の臨時職員の仕事は7年間続けた。この間、地元の写真愛好家グループ「釜石写遊会」にも所属。先輩会員から技術を学び、会の展示会でも作品を発表してきた。同会解散後は、個展が唯一の発表の場となり、TETTOでの開催は本展で3回目を迎えた。
 
写真左:写真愛好家をはじめ多くのファンに愛されたSL銀河。同右:2羽のハクチョウの首がハート形を作り出したユニークな一枚

写真左:写真愛好家をはじめ多くのファンに愛されたSL銀河。同右:2羽のハクチョウの首がハート形を作り出したユニークな一枚

 
芳賀さんの専属モデルは2人の孫娘。姉妹愛あふれる作品

芳賀さんの専属モデルは2人の孫娘。姉妹愛あふれる作品

 
 「常にカメラを持ち歩き、撮りたいものがあればすぐに…」と芳賀さん。意図して撮りに行く以外にも、心引かれる被写体との偶然の出会いで思わずシャッターを切ることも。撮影の原動力は「見た人が喜んでくれること」だといい、「自分がその写真の中にいる感覚を味わってほしい。実際に現地で見ているかのように」と思いを込める。
 
 会場では「きれいだね」「いいねぇー」「楽しませてもらった」など、感激の声が聞かれた。「ありがたい。やったかいがある」とうれしさをにじませる芳賀さん。今後、撮ってみたい題材を尋ねると、「お年寄りの穏やかな部分。日なたぼっこをしている姿とか、和めるものを撮りたい」。人物撮影では「背中から撮らせてもらうほうが好き。『何を話しているのかな』とか想像が膨らむ」とベストショットを狙う。
 
 今回、会場の一角には能登半島地震の被災者支援のための募金箱も設置され、協力者には芳賀さん撮影の写真がプレゼントされた。
 
能登半島地震被災者支援の募金も呼び掛け。プレゼント用の写真はどれも素敵で迷っちゃいます!

能登半島地震被災者支援の募金も呼び掛け。プレゼント用の写真はどれも素敵で迷っちゃいます!

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