三陸沿岸つなぐブラスの響き 27年で一区切り 釜石で締めくくる「ルート45港町コンサート」


2024/04/30
釜石新聞NewS #文化・教育

第22回ルート45港町コンサート~音楽と心でつなぐ三陸道~

第22回ルート45港町コンサート~音楽と心でつなぐ三陸道~

 
 岩手、宮城両県の三陸沿岸5市で活動する市民吹奏楽団が続けてきた「ルート45港町コンサート」が4月21日、釜石市民ホールTETTOで最後の演奏会を迎えた。仙台-八戸間の高速道路早期完成を願い、1997年から各地持ち回りで開催されてきたが、2021年12月の「三陸沿岸道路」全線開通を受け、「一区切りに」と幕を下ろすことになった。最終公演は演奏会がスタートした釜石市が会場となり、約600人の聴衆が有終の美を飾る大演奏に感動と感謝の拍手を送った。
 
 新型コロナウイルス感染症の影響で20年から休止を余儀なくされたため、本公演は5年ぶり。東日本大震災による2年間の休止もあり、通算22回目の開催となった。1部はアンサンブルステージで幕開け。トランペット、フルート、クラリネット、サクソフォンの4楽器を担当するメンバーが、それぞれ10~16人編成で1曲ずつ演奏。各楽器の特色が感じられる演奏に聴衆が聞き入った。
 
トランペット(上)、フルート(下)のアンサンブルステージ

トランペット(上)、フルート(下)のアンサンブルステージ

 
クラリネット(上)、サクソフォン(下)のアンサンブルステージ

クラリネット(上)、サクソフォン(下)のアンサンブルステージ

 
 続いては初の試み、参加5団体を南北のチームに分けて送る合同ステージ。北は宮古と釜石のメンバーで「ハリウッド万歳」、「魔女の宅急便」Highlights(ハイライツ)を、南は大船渡、陸前高田、気仙沼のメンバーで「すずめの戸締まり」コレクション、「ルパン三世メドレー」を演奏。話題となった映画や幅広い世代に愛されるアニメの曲で楽しませた。
 
北チーム(宮古吹奏楽団、釜石市民吹奏楽団)のステージ

北チーム(宮古吹奏楽団、釜石市民吹奏楽団)のステージ

 
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南チーム(ぷなと音楽団、陸前高田市民吹奏楽団、気仙沼市民吹奏楽団)のステージ

南チーム(ぷなと音楽団、陸前高田市民吹奏楽団、気仙沼市民吹奏楽団)のステージ

 
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 休憩をはさんだ2部は5団体の合同ステージ。総勢約120人で「ジュビリー序曲」、「風紋」、バレエ音楽「火の鳥」と、吹奏楽演奏の醍醐味(だいごみ)を存分に感じられる大曲で聴衆を魅了した。27年の歴史を重ねてきた“三陸ブラス魂”のこもった演奏に惜しみない拍手が送られ、鳴りやまない拍手にさらに2曲で応えた。
 
5団体合同のステージは圧巻の迫力!聴衆は素晴らしい演奏に聞きほれた

5団体合同のステージは圧巻の迫力!聴衆は素晴らしい演奏に聞きほれた

 
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アンコールは団員らの心の歌「港町ブルース」と、「オーメンズ・オブ・ラブ」を演奏

アンコールは団員らの心の歌「港町ブルース」と、「オーメンズ・オブ・ラブ」を演奏

 
 陸前高田市の臺和敬さん、美穂さん(ともに38)夫妻は高校2年の娘が出演する同演奏会に初めて足を運んだ。「最後と聞いて寂しい思い。沿岸の吹奏楽がこんなに盛んだったとは。子どもたちのためにも何らかの形で復活してくれるといい」と期待。自身も市民吹奏楽団で活動するという花巻市の女性2人(30、40代)は「内陸でもあれだけの規模(120人)の演奏はなかなか聞けない。2回の全体練習で仕上げたとは驚き。勢いも感じたし、何より皆さんが楽しそうに演奏していて、終わってしまうのはもったいない」と惜しんだ。紫波町の村上正勝さん(65)は親戚の釜石団員の応援も兼ねて鑑賞。「大震災もあったが、沿岸の団員の方々が心を一つに頑張ってきたからこそ、あのような素晴らしい演奏ができたのだと思う。皆さんの強い思いも伝わってきた。感動の一言です」と演奏の余韻に浸った。
 
スタート時を知る団員がコンサートの経緯を話す場面も

スタート時を知る団員がコンサートの経緯を話す場面も

 
 同演奏会は1997年、釜石市民吹奏楽団(市吹)、気仙沼市吹、宮古吹奏楽団の3団体でスタート。森進一の名曲「港町ブルース」や沿線の国道45号にちなんだ名称を掲げ、持ち回り開催してきた。2008年には大船渡市のぷなと音楽団が仲間入り。11年の震災津波で団員や演奏会場としてきた2市のホールが被災し存続が危ぶまれたが、13年から再び回を重ね、19年には陸前高田市吹の加入で5団体にまで輪が広がった。その後、前例のない世界的な感染症の流行で、吹奏楽活動そのものが難しい事態に。地域をまたいでの活動もしばらく控えざるを得ない状況が続いた。
 
 「道路と共に音楽で三陸沿岸をつなげよう―」。開始当初からの思いはおおむね達成されたと、一区切りを決めた演奏会。1回目から参加してきた気仙沼市吹の畠山広成団長(52)は「この演奏会の歴史とともに自分自身も育ててもらった。最初はライバル心もあったが、互いの団を行き来し気心が知れてくると調和が生まれ、演奏も回を重ねるごとにいいものになってきた。信頼関係を築けたことが一番の財産」と振り返る。
 
5団体を代表し、釜石市吹の山内真紀人団長(中央)があいさつ。支えてくれた人たちへ感謝の気持ちを伝えた

5団体を代表し、釜石市吹の山内真紀人団長(中央)があいさつ。支えてくれた人たちへ感謝の気持ちを伝えた

 
 釜石市吹の山内真紀人団長(50)は「この取り組みを機に団同士の交流が深まり、互いの演奏会に賛助出演し合う関係ができたことも大きい。他の団体と一緒にやることで成長につながった若手も」と成果を実感。「これで終わりではない。つながった縁を糧に、各団体がさらに地元に寄り添いながら地域を盛り上げる活動を続けていく。いつかまた、みんなで集まって演奏会ができるように…」と、団員らの思いを代弁した。
 
「27年間ありがとう!」万感の思いで最後のステージを締めくくる団員ら。客席からも感謝とねぎらいの拍手が続いた

「27年間ありがとう!」万感の思いで最後のステージを締めくくる団員ら。客席からも感謝とねぎらいの拍手が続いた

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