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打って、泳いで、走って栄誉つかむ スポーツで活躍!釜石市民 努力、健闘たたえる

釜石市民体育賞の受賞者、市体育協会関係者ら

釜石市民体育賞の受賞者、市体育協会関係者ら

 
 スポーツ界で活躍した人をたたえる釜石市体育協会(小泉嘉明会長)の2023年度市民体育賞表彰状授与式は23日、大町のホテルクラウンヒルズ釜石で開かれた。岩手県や東北大会の優勝者ら17人、3団体に「奨励賞」を贈呈。長年にわたり競技の普及、発展に貢献してきた2人には「功労賞」が贈られた。そして、釜石高ボクシング部で3年間部活動に励んだ3年生部員に贈られる「小泉賞」。市ボクシング協会(小泉会長)主催の贈呈式が26日に中妻町の昭和園クラブハウスであり、選手7人、マネジャー1人の計8人が努力の証しとなるトロフィーを手にした。
 

若手もベテランも輝く 市民体育賞

 
 今年度の体育賞受賞者は小学1年生~75歳までと幅広い顔ぶれ。あいさつに立った小泉会長は「小さい頃から本気になり、互いに鍛え合いながら目標に進む人たちのいい顔を見られてうれしい。元気に頑張れば、次の扉が開くはず。スポーツで前向きなまち釜石をつくっていこう」と期待した。
 
市民体育賞の表彰式。受賞者はさらなる飛躍を誓う

市民体育賞の表彰式。受賞者はさらなる飛躍を誓う

 
 奨励賞は空手道の活躍が目立つ。個人では藤原凪さん(鵜住居小3年)、川崎煌聖君(同5年)、木村元軌君(平田小1年)、照井陽己君(同)、三浦陽翔君(同)、阿部琉芯君(白山小4年)、佐野葵泰君(釜石中2年)、佐野泰盛君(甲子中3年)、小川結暖さん(同)、坂本嘉之さん(釜石高3年)。団体で釜石高の男子空手道部(松田郷佑主将)、女子空手道部(佐々木來愛主将)が受賞していて、層の厚さを感じさせた。
 
 水泳からは白岩優一朗君(甲子中3年)、ボクシングでは佐々木夏さんと菊池麗さん(いずれも釜石高3年)、陸上競技は小澤詩乃さん(釜石中2年)、未瑚さん(同1年)姉妹がそれぞれ選ばれた。若手が健闘を見せる中、ベテランで実力を発揮したのはバウンドテニスの田村彬紘さん(38)と阿部なみ子さん(75)。小泉会長は受賞者一人一人に声をかけながら賞状とトロフィーなどを贈った。
 
受賞者を代表して謝辞を述べる藤井豊さん

受賞者を代表して謝辞を述べる藤井豊さん

 
 陸上競技協会役員、駅伝部で選手兼監督として20年以上競技に打ち込む藤井豊さん(75)は功労賞を受賞。代表して謝辞に立ち、「自らの競技力の向上、選手の育成など仲間と取り組んできたことが評価された。今後も健康で丈夫な体と精神を鍛え、スポーツに親しみたい」と情熱は衰えない。同じく表彰された澤修一さん(66)は水泳協会理事として各種大会運営、若手育成などに40年近く携わり、競技の普及に尽力する。
 
 注目は、奨励賞を受けた釜石中特設ラグビーフットボール部。普段、別々のスポーツに取り組んでいる生徒有志23人が集まり、約4カ月という短期集中で練習に励み、県中総体で優勝した。主将の八幡玲翔君(3年)は陸上部で短距離を頑張ってきたが、実は地元ラグビーチーム日本製鉄釜石シーウェイブス(SW)が小中学生を育成するアカデミーにも所属。団体競技の楽しさ、仲間を信じる大切さを教えてくれるラグビーに魅力を感じ、仙台市の高校へ進学後も続ける。夢は「SWで活躍すること」。スポーツで地域に恩返しする気持ちを強めていた。
 
奨励賞を受けた釜石中特設ラグビーフットボール部

奨励賞を受けた釜石中特設ラグビーフットボール部

 
 5年間、指導にあたった同校の梅津孝昭教諭は初優勝に感慨深げ。自身も高校、大学とラグビーに親しんだが、SWや地域の人の支えがあって成し遂げられたと感謝も忘れない。体協関係者も「ラグビーのまち釜石から素晴らしい成績が出た」と沸いた。
 
 今年度は各競技団体や学校から推薦された26件を審査。理事会の承認を得て受賞者を決定した。全国レベルの大会で優勝(または優勝に準ずる成績)した個人、団体に贈られる「栄光賞」は該当がなかった。式では、県体育協会功労賞を受けた市剣道協会の細川親雄会長に表彰の伝達もあった。
 

勉強も部活もやり切った高校生へ 小泉賞

 
 今年度、小泉賞を受けたのは8人。選手として活躍した平野優羽さん、今野拓翔さん、茂木大希さん、立花素生さん、東舘耀大さん、市民体育賞も受けた佐々木さん、菊池さんの7人と、マネジャーの藤井まどかさん。近年では仲間が多い学年で、「釜石に大きな波を起こそう」と鍛錬し合った。結果はそれぞれだったが楽しみながら、そして真剣に向き合って「悔いはない」と、多くの生徒が晴れやかな表情を見せた。
 
3年間努力し続けた釜石高ボクシング部の3年生、小泉会長(前列中)

3年間努力し続けた釜石高ボクシング部の3年生、小泉会長(前列中)

 
 県内外への進学が決まっている生徒たちに、小泉会長は「コロナというハードパンチをよけながら3年間頑張った。競技を通じて学んだことを思い出し、価値を高めながら生き、社会に出て活躍してほしい」とエールを送った。
 
学校生活の振り返りと進学先での抱負を伝える佐々木夏さん

学校生活の振り返りと進学先での抱負を伝える佐々木夏さん

 
 県、東北、全国大会で健闘した佐々木さんは、父でコーチの彰さん(50)と同じ専修大に進み、ボクシングを続ける。「学生日本一になる」。同様の目標を掲げる菊池さんは日本体育大に進学。彰さんとともにコーチを務めていた亡父・拓さん(享年49)が成し遂げられなかった夢をつかむために。父と同じ高校生チャンピオンになるという目標は達成できなかったが、「もっと強くなり、(父を)超えたい」と高みを目指す。
 
菊池麗さん(中列右から2人目)は仲間や後輩と記念にパチリ

菊池麗さん(中列右から2人目)は仲間や後輩と記念にパチリ

 
すがすがしい笑顔を見せる高校生、ボクシング協会関係者

すがすがしい笑顔を見せる高校生、ボクシング協会関係者

 
 同校ボクシング部は3年生が卒業した今春、部員9人(選手6、マネジャー3)でスタート。部員獲得に力を入れつつ、「先輩たちのかっこいい姿を追いかける」「練習につき合ってくれた成果を高総体で発揮したい」と伝統を受け継ぐ構えだ。

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震災、コロナ乗り越え13回目「全国虎舞フェスティバル」 後継者育成へ初の体験会も

来場者の虎舞体験(写真右側)もあった第13回全国虎舞フェスティバル

来場者の虎舞体験(写真右側)もあった第13回全国虎舞フェスティバル

 
 第13回全国虎舞フェスティバル(釜石観光物産協会、釜石市主催)は25日、同市大町の市民ホールTETTOで開かれた。市内外の11団体が出演。伝統の演舞で観客を楽しませた。2020年以降、新型コロナウイルス感染症の影響で中止や延期、無観客での映像配信と足踏み状態が続いたが、今年ようやく通常開催に戻った。少子高齢化が進み、各団体の後継者不足が顕著になってくる中、担い手育成への第一歩にと初めて虎舞体験会も開かれた。
 
 同フェスは1992年の「三陸・海の博覧会」釜石会場(平田埋立地)で初開催後、2010年から年次事業として定着。東日本大震災があった11年も開催し、復興の歩みとともに回を重ねてきた。今回は市内の9団体のほか、大槌町、宮城県気仙沼市から各1団体が出演。地域で受け継がれる伝統の舞を一堂に披露し、楽しみに足を運んだ約1100人の観客を魅了した。
 
 釜石市内には沿岸、内陸部合わせ14の虎舞伝承団体があり、5団体(片岸、両石、錦町、尾崎町、鵜住居)が市の無形民俗文化財に指定されている。幼児施設や小学校、高校の活動にも虎舞が取り入れられていて市民に身近な芸能。今回のステージには幼児から高齢者まで幅広い年代のメンバーが集った。
 
釜石市の無形民俗文化財に指定されている「尾崎町虎舞」(尾崎青友会)

釜石市の無形民俗文化財に指定されている「尾崎町虎舞」(尾崎青友会)

 
釜石市内で唯一、白虎を使っている「只越虎舞」

釜石市内で唯一、白虎を使っている「只越虎舞」

 
 箱崎町白浜地区の「白浜虎舞」は総勢約20人で参加した。兄弟演舞を見せたのは阿部結耀君(9)と榮耀君(7)。2人とも物心つく前から虎舞に親しむ。虎頭を振った榮耀君は「ちょっとだけ立ちっぱなしになったところがあるので50点ぐらいかな」と自己評価。お囃子の太鼓もこなす結耀君は「これからもっと練習し、かっこ良く踊れるようになりたい」と意気込んだ。
 
 兄弟の父阿部駿さん(30)は昨年、白浜虎舞好友会の会長に就任。「地元の祭り以外に踊りを披露できる場があるのはありがたい。“全国”の冠がつくと発信力も高まる」と同フェス開催を歓迎する。継承の課題は他団体と同様、担い手不足。今は地元出身でも他地区に暮らすメンバーが多い。「人数はいても踊れる人が少ないのが現状。伝統を引き継いでいくには子どもたちの参加が欠かせない。小さいころから経験を積ませ、将来につなげていきたい」と望む。
 
白浜虎舞は1980年ごろ、鵜住居虎舞の指導を受けて発足。踊りでは子どもたちも躍動(右下)

白浜虎舞は1980年ごろ、鵜住居虎舞の指導を受けて発足。踊りでは子どもたちも躍動(右下)

 
 気仙沼市から参加した平磯芸能保存会(熊谷茂会長)は打囃と虎舞を伝承し、地域の祭りやイベント、商店の開店祝いなどで踊りを披露している。釜石の同フェス出演は震災後の2016年(会場:シープラザ遊)以来。今回は幼児から60代の30人が来釜した。大人数のお囃子は子どもたちが担当。虎は客席も回り、観客を喜ばせた。
 
 同会の芳賀孝司さん(54)は「虎舞の本場・釜石で一緒に出演できることをみんな楽しみにしてきた。子どもたちもいい刺激を受けている」と感謝。コロナ禍のここ数年は他地域に出向いての演舞の機会も減っていただけに貴重な機会を喜ぶ。過去に岩手方面から踊りを習い覚えた経緯もあり、「これからも虎舞を通じたつながりを大事にしていきたい」と交流の継続を願った。
 
宮城県気仙沼市から招かれた「平磯虎舞」(平磯芸能保存会)。2016年以来の釜石での演舞

宮城県気仙沼市から招かれた「平磯虎舞」(平磯芸能保存会)。2016年以来の釜石での演舞

 
太鼓のお囃子は子どもたちが中心。元気な掛け声とともに…

太鼓のお囃子は子どもたちが中心。元気な掛け声とともに…

 
観客は各団体の素晴らしい演舞に惜しみない拍手を送った

観客は各団体の素晴らしい演舞に惜しみない拍手を送った

 
 この日は終演後、初めての試みとなる虎舞体験会も開かれた。人口減や少子化で、伝承団体の地域内だけでは担い手確保が難しくなってきている現状を踏まえ、広く体験してもらうことで興味、関心喚起につながればと企画。釜石虎舞保存連合会(岩間久一会長)のメンバーらが希望者に虎頭や幕の操り方、太鼓のたたき方などを教えた。
 
釜石虎舞保存連合会の岩間久一会長が踊り方などを教えた

釜石虎舞保存連合会の岩間久一会長が踊り方などを教えた

 
 同市の鈴木仁丸君(5)は「踊るの、楽しかった。虎舞大好き。もっとやりたい」と目を輝かせた。母紗都子さん(45)によると、昨年の釜石まつりで初めて虎舞を見て大はまり。ユーチューブ動画で繰り返し見るほどお気に入りだという。同フェスにも初めて足を運んだ。複数の団体の競演に「それぞれにお囃子や踊り方が違うのを初めて知った。お囃子を聞くと心が躍る。すごくすてき」と紗都子さん。仁丸君が喜ぶ姿に笑顔を広げ、「本人が望んだら、ぜひやらせてあげたい」と親心をのぞかせた。
 
メンバーの手ほどきを受け太鼓をたたいてみる子ども

メンバーの手ほどきを受け太鼓をたたいてみる子ども

 
伝承団体の子どもメンバーも体験会をお手伝い。仲間が増えることを願って…

伝承団体の子どもメンバーも体験会をお手伝い。仲間が増えることを願って…

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漢字のでき方に「へぇ~、ほぉ~」 釜石初「漢字成り立ち講座」鵜住居公民館で開催

鵜住居公民館で開かれた「漢字成り立ち講座」。講師は漢字教育士の川﨑悠嗣さん(右)

鵜住居公民館で開かれた「漢字成り立ち講座」。講師は漢字教育士の川﨑悠嗣さん(右)

 
 釜石市の鵜住居公民館(松下隆一館長)で22日、漢字の成り立ちを学ぶ講座が開かれた。同館のコミュニティー支援事業・ひまわり会(月2回実施)が、市の生涯学習まちづくり出前講座の新メニューを活用して初開催。参加者は漢字の基となった象形文字などについて学び、造字の面白さを味わった。問題にも答え、脳を活性化させながら楽しい学びの時間を過ごした。
 
 地域住民ら13人が参加した。講師を務めたのは市職員で、漢字教育士(立命館大白川静記念東洋文字文化研究所認定)、漢字教育サポーター(公益財団法人日本漢字能力検定協会)の資格を持つ川﨑悠嗣さん(37)。本年度、同出前講座に登録されてから、自身にとっても初めての講座となった。
 
 川﨑さんは、漢字の起源が約3300年前の中国・殷王朝後期(紀元前1300~同1000年ごろ)の遺跡から出土した甲骨文字(亀甲や獣骨に刻まれた文字)であることを紹介。最古の本格的漢字字典は西暦100年(後漢)に作られた「説文解字」で、字の成り立ちや意味が解説されているという。日本では江戸時代に出土した「漢委奴国王」と刻まれた金印が最古の漢字資料。後に日本語を漢字で表したとみられるものも見つかり、5世紀ごろには漢字で日本語を書き表す習慣ができていたと考えられているという。
 
市の出前講座としても初開催。参加者は熱心に話を聞いた

市の出前講座としても初開催。参加者は熱心に話を聞いた

 
 川﨑さんは漢字の造られ方として、象形文字(物の形をかたどって造られた文字)、形声文字(形=意味や領域、声=発音を表す要素を組み合わせた文字)、仮借(かしゃ=ある物事を表す適当な漢字がない場合、関係のない同音の他字を借りてあてたもの)など6つの方法を説明。金文や篆書(てんしょ)、隷書(れいしょ)など書体の変化についても触れた。
 
 講座では事前に申し込んだ参加者の名前の漢字について、古代の文字と由来を記した資料で解説した。例えば「石」という字は、厂(山の崖の形)と口(神への祈りの文書を入れる箱=サイの形)を組み合わせたもの。大きな石は神が宿るとされ、サイを供えて祈りをささげるという意味があり、会意文字(2つ以上の漢字を組み合わせ、意味を複合して別の意味、発音を持たせた文字)にあたる。口(サイ)は他の漢字でも同様の意味で使われ、「吉」の字は士(神聖なまさかりの刃を下に向けた形)をサイの上に置くことで祈りの効果を守ることを示しているという。
 
象形文字などについて解説。漢字の成り立ちに参加者も興味津々

象形文字などについて解説。漢字の成り立ちに参加者も興味津々 

 
 「母」の象形文字は、ひざをついて座っている女性の姿を表していて、2つの「丶(点)」を取ると「女」という字になる。点は乳房を表すという。「二」「三」は数を数える時に使う算木を2本、3本と重ねた形。「四」も元々は「亖(し)」だったが、仮借(かしゃ)で今の「四」になった。
 
 参加者は、象形文字が表す漢字を選ぶ問題や9つの漢字から三字熟語を作る問題にも挑戦。楽しみながら漢字にまつわる知識を得た。柏崎美佐子さん(85)は「はんこに使われている篆刻(てんこく)や書道の隷書などを見ていて、興味があって参加した。自分の名前の漢字の成り立ちも分かり、ありがたい。面白いので講座をシリーズ化してほしい」と期待した。
 
象形文字が表す漢字を選ぶ問題に挑戦。じっくりと見比べて… 

象形文字が表す漢字を選ぶ問題に挑戦。じっくりと見比べて…

 
「あめかんむり」の漢字を書いてみよう!

「あめかんむり」の漢字を書いてみよう!

 
 講師の川﨑さんは鵜住居町出身。東日本大震災で被災し、移住した遠野市で図書館に通っていた時、たまたま手にとったのが漢字の本。興味をそそられて勉強を始め、検定にも挑戦した。今は準1級の腕前で、最高位の1級取得を目指して奮闘中。初の出前講座に「緊張したが、喜んでもらえたようでうれしかった」と一安心。講座で使ったイラストなどの教材は自身の手作りで、「もっと分かりやすく教えられるように内容を考えたい」と次の機会を見据える。「漢字は奥深い。成り立ちが分かると覚えやすかったり、楽しく学べる。子どもたち向けに学校での出前講座もできれば」と望んだ。
 
手製のイラスト教材で漢字の成り立ちを説明する川﨑さん

手製のイラスト教材で漢字の成り立ちを説明する川﨑さん

 
鵜住居公民館の「ひまわり会」では座学や健康づくりなど多彩な活動で住民交流、孤立防止などに努める

鵜住居公民館の「ひまわり会」では座学や健康づくりなど多彩な活動で住民交流、孤立防止などに努める

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「楽しく防災、未来につなぐ震災」で顕彰 釜石高・夢団 喜び力に、うのスタで語り部へトライ

「活動が評価されました」とうれしそうに受賞を報告

「活動が評価されました」とうれしそうに受賞を報告

 
 東日本大震災の伝承や防災活動に取り組む釜石高(釜石市甲子町)の生徒有志グループ「夢団~未来へつなげるONE TEAM~」はこのほど、復興庁主催の「『新しい東北』復興・創生の星顕彰」に選ばれた。若い世代による地域に根差した活動は未来につながるものであり、他地域のモデルになると評価。メンバーらは喜びを力に、「楽しく学ぶ防災」を発信し続ける。3月にはそんな思いを具現化する語り部活動を釜石鵜住居復興スタジアム(うのスタ、鵜住居町)で予定。地元のラグビーチーム日本製鉄釜石シーウェイブス(SW)のホーム戦に合わせ観客らに伝えるべく、学びを深めている。
 

「新しい東北」復興・創生の星 受賞を報告

 
 夢団は2019年のラグビーワールドカップ開催を機に結成。現在は1~3年生約60人が所属する。被災体験の語り部、防災食の研究、防災ゲームの開発、動画による発信などの活動を展開。県内外のイベントに参加し、同世代との交流も広げる。
 
 同顕彰は、震災被災地で進む魅力あふれる「新しい東北」の創造に向けた取り組みを発信するのが目的。今年度は全国から123件の応募があり、夢団など10団体が選ばれた。県内では、ウニの再生養殖事業などを展開する洋野町の会社も受賞。顕彰式は2月11日に仙台市で行われた。
  
青木校長(右)に喜びを伝えた夢団メンバーら

青木校長(右)に喜びを伝えた夢団メンバーら

  
 同校の青木裕信校長への報告は15日。夢団代表の佐々有寿(ありす)さん(2年)は喜びをにじませつつ、「活動を世界に広げることを期待されていると感じた」と背筋を伸ばした。双子の妹で副代表の安寿(あんじゅ)さん(同)は「高校生が活動することで地域が元気になる」「ゲームが面白くて勉強になる」といった声が励みだと紹介。同じく副代表の赤石澤一会(いちえ)さん(同)は「若い世代にとって、防災はどうしても重いというイメージがある。だからこそ、楽しく伝えるという視点で活動してハードルを下げられたらいい」とうなずいた。
 
 夢団の取り組みを支える「さんつな」代表の伊藤聡さんも同席。青木校長は「学校内外でワクワクするいい経験をし、成長しているのがうれしい。釜高生としてプライドを持って行動してほしい」と期待した。
 

「体験者の思い、どう伝える」伝承研修で考える

 
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語り部活動につなげようと研修に臨む釜高生

 
 うのスタでの語り部に向け、震災経験者から話を聞く研修や伝えたい内容をまとめた台本作りを進める。17日は鵜の郷交流館(鵜住居町)で、生徒6人が活動。震災の津波で妻を失った栗林町の木村正明さん(68)の思いに耳を傾けた。
 
 鵜住居小事務職員だった妻タカ子さん(当時53)は一人、校舎に残って津波に襲われ行方不明になったとみられる。「なぜ、一人だけ残ったのか」。木村さんは真相を知るため、震災後4年間、学校や市、教育関係者らと話し合いを重ねた。そこから得た教訓が学校の地震・津波防災マニュアルに盛り込まれ、▽避難時には児童生徒、そして全職員が命を守る行動をとる▽訓練も全職員が臨む―などの対策につながったことを紹介。そうしたやりとりで見えた事実、真実を語る本も自費出版した。
 
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震災の体験や伝承の取り組みを伝える木村正明さん

 
 さらに鎮魂と教訓を伝えるため、地域の人たちと協力し、うのスタに祈念碑を建立した。刻む言葉は「あなたも逃げて」。木村さんは「自然にはかなわない。万一の時は考えるより、まず逃げて。安全なところにまで逃げてから、次のことを考えればいい」と考えを示した。さらに、「あなたの命は、あなただけのものではありません」と強調。「忘れないで。あなたが逃げたことで誰か助かる人がいることを」と切望した。
 
 この碑の前で生徒たちは思いを発信する。その活動に対して思うことはと質問された木村さんは「若い人たちがどんどん交代して伝えていかないと教訓というのはつながらないから、頼もしい」と頬を緩めた。
 
生徒たちは真剣なまなざしで木村さんの語りに聞き入った

生徒たちは真剣なまなざしで木村さんの語りに聞き入った

 
 語り部デビューを目指す森美惠さん(1年)は、看護師の母親から聞いた医療現場の様子や驚いた自身の気持ちも織り交ぜて伝えるつもりだ。政屋璃緒さん(同)は居住する宮古市田老地区の被害や人々の思いも踏まえた台本を作成中。「震災では失ったものも多いが、学んだこともあって、次に起こる災害に備えることはできる。準備しておこうと、前向きな気持ちになってもらえたらいい」と思いを巡らせる。
 
伝えたいことを整理しようとメモを取る生徒ら

伝えたいことを整理しようとメモを取る生徒ら

 
どんな思いを、どう伝えるか。言葉をノートにつづる

どんな思いを、どう伝えるか。言葉をノートにつづる

 
 夢団は22日にも市外の若手語り部3人の活動に触れる研修を実施。伝承活動の本番となるSWホーム戦は3月3日と10日に予定される。

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劇団もしょこむ 2年ぶり釜石公演 橋野高炉跡を舞台に妖怪が!? 親子など約200人が楽しむ

劇団もしょこむ第7弾公演「橋野高炉跡あやかし野営場」=11日、TETTO

劇団もしょこむ第7弾公演「橋野高炉跡あやかし野営場」=11日、TETTO

 
 釜石市の劇団もしょこむ(小笠原景子代表、10人)は11、12の両日、大町の市民ホールTETTOで7作目の公演を行った。タイトルは「橋野高炉跡あやかし野営場」。世界遺産にもなった市民に身近な山あいの地を舞台に繰り広げられる妖怪たちの物語。釜石在住の高校生や社会人が演じる笑いあり、涙ありの劇を約200人(3公演計)が楽しみ、演者と観客が一体となる芝居空間にたくさんの笑顔を広げた。
 
 「もしょこむ」は東日本大震災後の2015年に旗上げ。被災地でも「やりたいことを形に」と地元在住の若者らが演劇活動を始め、今に至る。市内外で公演し、今回の釜石公演は約2年ぶり。旗揚げ公演で震災被災者の心情を描いた作品が注目を集めた劇作家のこむろこうじさん(葛巻町)が、9年ぶりに脚本を手掛けた。
 
演者が役名などを紹介したオープニング。上段左は脚本を手掛けたこむろこうじさん

演者が役名などを紹介したオープニング。上段左は脚本を手掛けたこむろこうじさん

 
 物語の舞台は橋野高炉跡。翌日に遠野で開催される「妖怪・おばけサミット」の参加者が隣町の同高炉跡野営場に宿泊中、訳ありの女子高生・妖子が訪ねてくる。身の上話を聞いた妖怪たちは「ここで働かせてほしい」と願う妖子を受け入れる。深夜、酒盛りを楽しむ妖怪たちのもとに駆け込んできたのは、遠野から命からがら逃げてきたというカッパ。サミット会場に鬼が現われ、集まっていた妖怪やおばけが全滅したと告げる。次第に「鬼がこの中にいる?」と疑心暗鬼になる妖怪たち。実は鬼の正体は…。
 
橋野高炉の石組みや宿泊用のカラフルなテントが配された舞台(上段)。野営場に現れた女子高生と妖怪たちが繰り広げる物語に観客も引き込まれる

橋野高炉の石組みや宿泊用のカラフルなテントが配された舞台(上段)。野営場に現れた女子高生と妖怪たちが繰り広げる物語に観客も引き込まれる

 
登場したのは(左から)天狗、枕返し、妖子、琵琶法師、トゥブアン(パプアニューギニアの部族に伝わる精霊)。他に河童(カッパ)、ダイダラボッチ(声の出演)も

登場したのは(左から)天狗、枕返し、妖子、琵琶法師、トゥブアン(パプアニューギニアの部族に伝わる精霊)。他に河童(カッパ)、ダイダラボッチ(声の出演)も

 
妖怪を取り込み鬼になった妖子(左)。出生の秘密、母の思いを知り、天に旅立つ

妖怪を取り込み鬼になった妖子(左)。出生の秘密、母の思いを知り、天に旅立つ

 
 出演者は10~50代の6人。昨年11月から稽古を重ね、本番を迎えた。それぞれの個性が光る役柄、演技で観客を楽しませ、地元ならではの会話、小道具の演出などで客席からは子どもたちを中心に笑い声も。ホールBを芝居小屋風に仕立てた会場は同団恒例のスタイルで、今回も観客との距離が近い臨場感あふれる空間を生み出した。
 
 同市の40代男性は「内容もよく考えて練られていて、面白く見させてもらった。団員の一生懸命な姿が印象的。市民に楽しみを提供してくれてありがたい」と満喫した様子。「学校の先生が出演している」と話す同市の皆川尚士君(10)は「先生、一番かっこいい。いつもと違った一面が見られて面白かった。またやってほしい」と願い、自身も演劇に興味を持ったよう。母智美さん(46)は「息子が来たいと言って初めて足を運んだが、とても魅力的。地元を題材に地元の人たちが演じているのがすてき」と親子で有意義な時間を過ごした。
 
初日の公演を終え、観客の拍手に応える団員ら(上)。夜の公演を約80人が楽しんだ

初日の公演を終え、観客の拍手に応える団員ら(上)。夜の公演を約80人が楽しんだ

 
 同団には、転勤や復興支援で移住した人たちも多く在籍してきた。今回、初出演となった三科宏輔さん(28)は神奈川県出身で、同市の地域おこし協力隊員として2022年に移住。「いろいろな方とつながり、初めてのことにも挑戦したい」という思いから、本作出演の誘いにも応じた。演劇自体も初挑戦だったが、「みんなで話し合いながら舞台を創り上げていく過程がすごく楽しくて。本番は緊張したが、お客さんの反応を見ながら演技する面白さも味わえた」と充実の表情。自身が暮らす橋野町が舞台ということもあり、「地域の方も出演を喜んでくれた。感想を聞くのが楽しみ」と声を弾ませた。
 
「天狗」役を演じた三科宏輔さん(左)。演劇初挑戦ながら堂々の演技で存在感を発揮 

「天狗」役を演じた三科宏輔さん(左)。演劇初挑戦ながら堂々の演技で存在感を発揮

 
 脚本を手がけたこむろさんは「メンバーがやりたいということをかなえた作品。今、この釜石で、このメンバーでやる意味、要素を入れ込んだ。コロナ禍も明け、生で見る良さも感じてもらえたかな」と手応えを実感。過去に釜石市民劇場でも3作を手掛け、釜石との縁が深い。同団の活動もずっと見守ってきたこむろさんは「人材育成や地域のネットワークづくりも念頭に、いい舞台を続けてくれている」と喜ぶ。
 
 小笠原代表(39)は久しぶりの“こむろ作品”に「自分たちで考える余地を残してくれて、私たちの声を柔軟に取り入れてくれた。メンバーの個性を生かした作品は演者の成功体験につながり、次回への向上心をかき立てる」と絶大な信頼を寄せる。今回は2日間で3公演を行った。地元での演劇の需要をあらためて実感し、「親子で見てくれた人たちが多くうれしい。演劇をやりたいと思ったら、すぐ手が届くようなまちが私たちの理想。将来、自分たちの劇団を作りたいという若い世代が出てくることを期待したい」と思いを述べた。
 
公演後、出口で観客に感謝の気持ちを伝える出演者ら。子どもたちはハイタッチでお別れ

公演後、出口で観客に感謝の気持ちを伝える出演者ら。子どもたちはハイタッチでお別れ

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釜石市の新庁舎建設 3月、いよいよ着工へ 住民説明会「積極的に…けど心配」

着工間近となった釜石市役所新庁舎建設の住民説明会

着工間近となった釜石市役所新庁舎建設の住民説明会

 
 巨大地震による津波想定(国・県公表)を受けた計画の見直し、建築工事落札事業者の辞退による再入札などで着工が遅れていた釜石市新庁舎の建設が3月、いよいよ本格化する。新たな工事業者が決定し、着工間近となった2月17日、市は大町の市民ホールTETTOで住民説明会を開催。建設予定地の天神町やその周辺地区の住民を中心にした市民約30人に庁舎建設の概要、スケジュール、工事の安全対策などを伝えた。
 
 小野共市長が新庁舎建設の検討経過などを紹介した後、市新庁舎建設推進室の洞博室長が建設計画の概要を説明。新庁舎は鉄骨鉄筋コンクリート造り4階建てで、車庫棟なども含めた延べ床面積は計約8800平方メートル。敷地を1~2メートル程度かさ上げするが、県の想定では浸水域とされ、ピロティ方式を採用し、1階フロアには機材や書類などの配置を最小限する。一時避難場所として活用を想定し非常用発電設備、受水槽などの防災機能も備える。
 
新庁舎の建物外観イメージ図。市は26年春の開庁を目指す

新庁舎の建物外観イメージ図。市は26年春の開庁を目指す

 
 現庁舎からの移転費用などを含む総事業費は約82億円。うち、建設費は7億5500万円増え、76億6300万円になる見通しだ。財源は庁舎建設基金、市債発行など。防災・減災事業を対象とする国庫補助の活用も見込む。
 
 施工者の戸田・山﨑特定建設工事共同企業体(JV)の現場代理人堀川俊永さんが工事に伴う交通規制、騒音や振動など安全対策について話した。工期は3月1日から25年12月下旬までの約24カ月間。周辺にこども園や復興住宅などがあることから、昼休憩の時間をずらしたり、高性能防音壁などを設置し、「安全確保を最優先する。周辺への影響の少ない方策を講じる」と強調した。
 
新しい釜石市役所の建設予定地

新しい釜石市役所の建設予定地

 
 参加者から、「積極的に進めてほしい」との声があったほか、「かさ上げした土地が災害時に沈下することはないのか」「建物が高くなることで日当たりが悪くなるのでは」といった不安をのぞかせる人もいた。防災機能についての質問も上がった。質疑の後も、生活環境の変化を心配する声は残り、市関係者は「長く使ってもらえるような庁舎をつくるため、引き続き意見を寄せてほしい」と求めた。
 
説明会後、個別により詳しい解説を聞く住民もいた

説明会後、個別により詳しい解説を聞く住民もいた

 
老朽化が進む釜石市役所の現庁舎(築70年)

老朽化が進む釜石市役所の現庁舎(築70年)

 
 只越町にある現庁舎は老朽化が著しく、行政機能が分散していることや耐震性の問題もあって、1986年に新庁舎建設の検討がスタート。2011年の東日本大震災を受け、復興まちづくり基本計画のフロントプロジェクト2に位置づけ、都市機能の融合や拠点性の向上などを視点に議論を深めてきた。19年に新市庁舎の建設基本計画の策定や基本設計業務が完了。津波新想定の公表によって計画の見直しなどの対応が幾たびか必要となった。見直しを重ね、いざ発注手続の段階になると、社会情勢の変化に伴う資材の高騰の影響もあって予定より時間を要する結果に。再入札の結果、昨年12月に請負業者を決定し、やっと本格的な着工にたどり着いた。

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温かさ上乗せ!釜石の思い、能登へ 1杯のコーヒーに添えるメッセージ キッチンカーでお届け

能登を応援するメッセージを書く客を見守る岩鼻伸介さん

能登を応援するメッセージを書く客を見守る岩鼻伸介さん

 
 あの日のお礼です―。釜石市を中心にキッチンカーで営業するコミュニティーカフェ「HAPPIECE COFFEE(ハピスコーヒー)」店主の岩鼻伸介さん(46)は、能登半島地震の被災地へ温かい飲み物を届けている。東日本大震災で大きな被害を受けた釜石・鵜住居町出身で、支援の恩返しのため。そして、懸命に前を向こうとしている人たちに“ホッと”ひと息つける時間をつくってほしいからだ。同じように思いを寄せる市民は多く、その気持ちも届けようと「寄せ書き」集めを開始。託された応援メッセージをコーヒーに添えて能登の人たちに手渡す。
 
1月に訪れた石川県七尾市の避難所での様子(岩鼻さん提供)

1月に訪れた石川県七尾市の避難所での様子(岩鼻さん提供)

 
 「コーヒーを無料で提供中。岩手県釜石市より、あの日のお礼です。2011.3.11→2024.1.1」。1月中旬に約1週間かけて石川県七尾市の避難所3カ所を回り、延べ約900人に無料で振る舞った。「ひと息つけるタイミングなかったね、そういえば…」「こんなおいしいコーヒー、初めて飲んだ」。手渡された一杯のあたたかさに緊張がほぐれたのか、涙する人もいた。「あの時の自分たちにコーヒーを入れている感じだった」と岩鼻さん。
 
 あの日の僕たちがいた―。震災当時、東京でIT関係の経営コンサルタントとして働いていた岩鼻さん。発災から1週間後に釜石入りすると、実家は全壊していた。片付けのため週末に地元に戻る生活をしながら、古里に恩返しできることを思案。もともとコーヒーを介したボランティア活動に取り組んでいて、2011年秋から移動図書館を運営する団体に同行する形で沿岸の仮設住宅などを回ってコーヒーを提供した。キッチンカーでの活動は12年春から。その時に受けた言葉や人々の姿が、能登の今に重なった。
 
キッチンカーの窓越しに撮影した被災地(岩鼻さん提供)

キッチンカーの窓越しに撮影した被災地(岩鼻さん提供)

 
 震災の時は意識していなかったけど、被災して、人や応援のありがたみが分かった―。七尾市での活動時に多かった言葉。喜んでもらっていると感じた岩鼻さんは、活動の継続を決めた。何度も来てくれる支援者の存在に「忘れられていない」と実感できた自身の経験もあるから。交流サイト(SNS)で活動の様子や思いを発信すると、市民や客から「現地に行けないけど、何か協力したい」と声が寄せられた。
 
店先でメッセージを書く人も。岩鼻さんの活動を後押しする

店先でメッセージを書く人も。岩鼻さんの活動を後押しする

 
 「いわて・釜石から想っています」「あせらず一歩」。大町のTETTO周辺で営業する水曜日、店先で客が思いをつづる。1杯に相当する1口500円のカンパを募り、協力した客が紙製カバー「スリーブ」にメッセージを書き込むという支援の仕組みを用意した。寄せ書きには「頑張れ」と書かないのがルール。「頑張れって言うけど、今もすごい頑張っている。これ以上どう頑張れば…」。被災地のつぶやきは「分かりすぎるくらい分かる」からだ。
 
 無理しないで―。大町で石材店を営む清水麻美絵さん(47)は、13年前の津波で被災しつらかった時期に言われてうれしかった言葉を記した。それと、大量の菓子も差し入れ。「コーヒーと甘いもので一服してもらえたら」と願う。
 
釜石高生の協力に笑顔を見せる岩鼻さん(左から2人目)

釜石高生の協力に笑顔を見せる岩鼻さん(左から2人目)

 
 「ちょっとあったまるべ」「コーヒー飲んでひと休み」。釜石高校では寄せ書き会(2月15日)があり、生徒たちはカラフルなペンでメッセージやイラストを書き込んだ。板谷美空(みく)さん(2年)は「苦しさやつらさに寄り添えられたら。少しでもほっと心が楽になるといいな」と思いやる。
 
色とりどりのペンでメッセージを書き込む生徒

色とりどりのペンでメッセージを書き込む生徒

 
被災地を思い釜石市民や客が寄せ書きしたスリーブ

被災地を思い釜石市民や客が寄せ書きしたスリーブ

 
 一瞬でも安らぐ時間を届けたい―。岩鼻さんは寄せ書きを能登半島へ持ち込み、2度目の活動中。今回も、被災者支援団体のメンバーとして七尾市を中心に回っている。思いが詰まったスリーブをカップに巻いて「はい、どうぞ」。人とのつながりが見えた時、より気持ちが伝わると感じていて、「優しい心が伝播(でんぱ)していくといい」と笑顔を添える。
 
こだわりのコーヒーを提供する岩鼻さん

こだわりのコーヒーを提供する岩鼻さん

 
おいしさアップ!会話を楽しむことが隠し味

おいしさアップ!会話を楽しむことが隠し味

 
 幸せのひとかけらを―。「Happy」と「Piece」を組み合わせた造語を店名にし、岩鼻さんはコーヒーという「人に安らぎを与えるもの」を届け続ける。カップからあふれるのは深い香りと味わい。豆は公正な取引を通じ原産国の生産者を支援するフェアトレードで仕入れ、自家焙煎(ばいせん)する。お湯を注いで丁寧に抽出する間が、客との触れ合いタイム。気さくな岩鼻さんの人柄に引かれ、会話目当ての人も多い。コーヒーを通じて人が集える場は釜石から能登へ。カンパ、寄せ書きへの協力を募って活動を継続する考えだ。

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今年2人目 仙人の里で100歳 橋野町出身の打川キクヱさん 小野共市長がお祝い訪問

満100歳を迎えた打川キクヱさん(中)を小野共市長(左)らがお祝い

満100歳を迎えた打川キクヱさん(中)を小野共市長(左)らがお祝い

 
 釜石市甲子町の特別養護老人ホーム仙人の里(千葉敬施設長/長期利用66人、短期同14人)で暮らす打川キクヱさんが13日、満100歳を迎えた。小野共市長が施設を訪れ、市からの祝い品を贈呈。家族らと誕生日を祝った。同施設の100歳以上の方は打川さんを含め4人(最高齢103歳)となった。
 
 小野市長は市からの特別敬老祝い金5万円と自ら筆を執った「寿」の額入り祝い状、記念品の羽毛肌掛け布団を贈呈。ベッド生活中の打川さんに代わり、長男幸吉さん(70)が受け取った。施設を運営する社会福祉法人陽風会の清野信雄理事長は花を贈り、幸吉さんは「いっぱいお祝いをいただいたよ」と母に声をかけた。
 
小野市長(写真上段左)と清野理事長(同右)が記念品を贈呈した

小野市長(写真上段左)と清野理事長(同右)が記念品を贈呈した

 
 打川さんは1924(大正13)年2月13日、同市橋野町和山で生まれた。3姉妹の2番目。20代で当時、同地に山仕事に来ていた秋田県大曲出身の男性と結婚。2男を授かった。農林業で生計を立てた後、野田町に転居。会社勤めを始めた夫を支えながら子育てに奔走した。親族が経営する石材店も長く手伝い、働き者だったという。夫は三味線が得意な人で、打川さんも習い親しんだ。
 
 長男幸吉さん、おいの田中忠肝さん(85)によると、「性格は明るく、おしゃべり好き。友達も多かった」という。田中さんの母(打川さんの姉)は病弱で、叔母(打川さん)と祖母が母親代わり。「叔母はとてもやさしく、自分を気遣ってくれた。育ててもらい感謝している」と田中さん。長年、石材業に携わってきたこともあり、長寿社会の伸展には驚きを隠せない様子で、「30~40年前だったら100歳まで生きられる人はまれだった。時代は変わった。自分の血縁にそういう人が出たのは感慨深い」と実感を込める。
 
打川さん100歳のお祝いに駆け付けた長男幸吉さん(左)、おいの田中忠肝さん(右)/写真提供:仙人の里

打川さん100歳のお祝いに駆け付けた長男幸吉さん(左)、おいの田中忠肝さん(右)/写真提供:仙人の里

 
小野市長は「おめでとうございます。元気でいてください」と声をかけた

小野市長は「おめでとうございます。元気でいてください」と声をかけた

 
 打川さんは2019年に同施設に入った。ベッド生活が長く、今は会話が難しくなったが、食事は口から取ることができている。コロナ禍による面会制限もなくなったことで、幸吉さんらは次に会える時を楽しみに施設を後にした。
 
 同市によると、市内の100歳以上の方は打川さんを含め26人(男1、女25)。最高齢は104歳の女性(市外施設に入所中)。

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小中学校規模、配置の適正化へ 釜石市教委 基本方針策定に向けた地域説明会開始 22日まで

小中学校の規模、配置の適正化基本方針へ住民の意見を聞いた地域説明会=中妻地区生活応援センター、15日

小中学校の規模、配置の適正化基本方針へ住民の意見を聞いた地域説明会=中妻地区生活応援センター、15日

 
 少子化の進行や人口減で、今後さらに児童生徒数の減少が見込まれる釜石市。市教育委員会(髙橋勝教育長)は子どもたちにとって望ましい教育環境を整備するため、小中学校の規模、配置の適正化を図る基本方針案をまとめた。15日から5中学校区の生活応援センターで、同案に対する住民の意見を聞く地域説明会が開かれている。市教委はパブリックコメントや保護者アンケートを含めた意見を参考に、本年度内の基本方針策定を目指す。
 
 市教委は児童生徒数の減少で学校の小規模校化が進む状況を踏まえ、2021年3月、釜石市学校規模適正化検討委員会(14人)を設置。学校、保護者、民間団体などから委嘱された委員が小中学生の教育環境をどう整えるべきか議論を重ね、22年11月、市教委に提言。これを受け、市立小・中の学校規模適正化、適正配置に向けた基本方針(案)が作成された。
 
 同市には9小学校、5中学校があるが、いずれも児童生徒数は年々減少。本年度、小学校全学年でクラス替えが可能なのは2校(小佐野、甲子)だけ。複式学級となっているのは3校(白山、栗林、唐丹)。出生数、居住区を基にした今後の推計で22年度と29年度の児童数を比較すると、釜石、双葉でほぼ半減、小佐野で約100人減が見込まれ、釜石、双葉では複式学級の必要性が出てくる。中学校では今後、双葉、釜石両小の児童数減に伴って釜石中の生徒数が大幅に減少する見込みで、34年度には現在の半数以下になることが予測される。釜石以外の4中学校は同年度には全学年1学級となる見込みで、小規模校化が顕著になっていく。
 
 小規模校化に伴う課題としては、小学校では▽同学年で切磋琢磨する環境を作りにくい▽音楽や体育での学習活動の制限▽複式学級担当教員の負担増、中学校では▽専門教科の免許を有する教員が配置されない▽部活動の選択肢が限られる-などが挙げられる。このため市教委は、子どもたちの望ましい教育環境の実現には「学校規模の適正化、適正配置が必要」とし、「全市的な観点からの学校統合」と「小中一貫教育導入の可能性」について検討したい考え。
 
児童生徒数の減少、学校規模確保への方策などが示された基本方針案について説明

児童生徒数の減少、学校規模確保への方策などが示された基本方針案について説明

 
 検討にあたり、学校は地域コミュニティーの中核的な役割も担っていることから、「当面は現在の5中学校区から学校がなくならないよう配慮し、各区内で1小学校は存続させることを基本」とする。いずれの場合も既存校舎を活用する予定。複式学級の措置は可能な限り行わず、小学校の規模は6学級以上(各学年1学級以上)を基準とする。中学校は9学級以上(各学年3学級以上)が望ましいが、学区が広範囲になるなどの課題があることから8学級以下もやむを得ないものとし、小中一貫教育の導入についても検討する。1学級は15~35人とする。配置は通学条件を考慮。通学時間は小学校45分以内、中学校1時間以内を目安とし、通学距離が小学校でおおむね2.6キロ、中学校で同4キロ以上の場合はスクールバスの運行など通学手段の確保に努める。小規模校を存続させる場合の教育の充実、保護者、地域、市民の理解を得ることも方針に盛り込む。
 
釜石中学校区の子どもを持つ親など地域住民(写真下)が市教委(同上)の説明に耳を傾けた

釜石中学校区の子どもを持つ親など地域住民(写真下)が市教委(同上)の説明に耳を傾けた

 
 基本方針案について意見を聞く地域説明会は15日の中妻地区生活応援センター(釜石中学区)を皮切りに始まった。市教委から髙橋教育長、藤井充彦教育部長(兼学校規模適正化推進室長)ら9人が出席。保護者を含む地域住民約20人が参加した。藤井教育部長が方針の概要を説明後、質疑応答が行われた。参加者からは今後のスケジュールの見通し、スクールバスの稼働状況などについて質問が出されたほか、魅力ある学校、育成の仕方、地域説明会の学校開催などに関し意見が出た。
 
 髙橋教育長は「教委としては、当面は複式学級の解消に力点を置きながら進めていきたい。小規模校も大規模校もそれぞれに良さがある。釜石の現状を踏まえ、子どもたちにとって何を大事にすべきか、皆さんと一緒に考えたい」と話した。
 
参加者からはさまざまな質問、意見が出された

参加者からはさまざまな質問、意見が出された

 
 市教委は策定した基本方針を具現化するため、24年度は推進計画の策定に取り組む。推進計画策定委を設け検討してもらうほか、保護者、地域住民との懇談を行いながら計画案を取りまとめていく予定。
 
 基本方針案の地域説明会は19日(月)に松倉地区コミュニティ消防センター、20日(火)に唐丹地区生活応援センター、22日(木)に平田地区生活応援センターで開催する。時間はいずれも午後6時30分から。事前申し込みは不要。

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追悼、防災の祈り込める竹灯籠 釜石・根浜の津波避難階段で点灯開始 「1.1」被災の能登半島にも心寄せ

竹灯籠が設置された津波避難階段を上ってみる点灯式参加者=11日

竹灯籠が設置された津波避難階段を上ってみる点灯式参加者=11日

 
 東日本大震災命日の「3.11」まで1カ月となった11日、釜石市鵜住居町根浜地区の津波避難階段に竹灯籠が設置された。13年前の同震災で全域が津波にのまれ、甚大な被害を受けた同地区。竹灯籠の明かりで震災犠牲者を追悼し、防災意識を高める取り組みは今年で3年目となる。3月31日まで土日祝日の午後5時から同7時まで点灯。今年は1月1日に発生した能登半島地震の犠牲者を弔い、現地の早期復興を願う気持ちも込める。
 
 11日午後5時から行われた点灯式には、灯籠製作に協力した市民や階段近くのキャンプ場の滞在客など約50人が集まった。取り組みを行う根浜海岸観光施設「根浜シーサイド」の佐藤奏子さん(かまいしDMC地域創生事業部根浜・箱白地域マネジャー)が趣旨を説明。地元町内会「根浜親交会」の佐々木三男会長(62)が発電機の点灯スイッチを入れると、灯籠に照らされた階段が浮かび上がった。点灯を見守った人たちはさっそく階段を上り下り。美しい光景を目に焼き付けるとともに、津波災害時、いち早く高台に逃れられる階段と周辺の様子を脳裏に刻んだ。
 
竹灯籠は111段の階段の手すり沿いに設置。温かな明かりが「命を守る道」を照らす

竹灯籠は111段の階段の手すり沿いに設置。温かな明かりが「命を守る道」を照らす

 
階段頂上部には4本まとめた灯籠も。美しい模様が目を引く

階段頂上部には4本まとめた灯籠も。美しい模様が目を引く

 
キャンプ場利用者も迅速避難が可能な階段。この日も冬キャンプを楽しむ人たちが多く訪れていた(写真左上がオートサイト)

キャンプ場利用者も迅速避難が可能な階段。この日も冬キャンプを楽しむ人たちが多く訪れていた(写真左上がオートサイト)

 
 この階段は、キャンプ場から高台の市道箱崎半島線(海抜20メートル)に最短で駆け上がれるルートで、2021年春に完成。施設ではキャンプ場利用客には必ず周知しているほか、避難訓練などで災害時のシミュレーションなどを行っている。竹灯籠の点灯は階段の場所を知ってもらい、いざという時の避難行動のあり方を考えてもらうことも狙いの一つ。
 
 家族4人で灯籠製作にも参加した同市の櫻井真衣さん(12)は「自分で作ったものが飾られてうれしい。(明かりがつくと)とてもきれい」と感激。生まれる7カ月前に起こった大震災。学校の授業で当時のことを学び、根浜地区の人からも話を聞いた。能登半島地震の被災状況もテレビなどで目にし、「東日本大震災と似ていると思った」という。地震や津波の怖さを知り、「(もし遭遇したら)冷静に判断して、高台や避難場所にしっかりと逃げたい。この階段を使うことで多くの人の命が救われれば」と願う。
 
自分たちで作った竹灯籠を眺める親子

自分たちで作った竹灯籠を眺める親子

 
チョウやトンボのデザインも(写真左側)。大小の穴からもれる光で辺りは幻想的な空間に…

チョウやトンボのデザインも(写真左側)。大小の穴からもれる光で辺りは幻想的な空間に…

 
 灯籠は地元の山林から切り出した間伐竹を利用。1月に製作体験会を2日間開き、市内の親子らの協力で53本を完成させた。竹の中のLED電球をともす電力は、地域から出る廃食油を精製したバイオディーゼル燃料で発電。地域資源を活用し、環境にも配慮した活動で、持続可能な地域づくりへの一助とする。
 
 同所から近い市指定の緊急津波避難場所は、震災後に盛り土整備された復興団地の山側にある「東の沢奥根浜墓地」。同団地は2017年に完成。同階段を上った先の市道を箱崎方面に少し進んだ所にある。
 
 「のと」の文字を刻んだ灯籠も(中央)。能登半島地震被災地への祈りも込め、3月まで土日祝日の午後5~7時点灯

「のと」の文字を刻んだ灯籠も(中央)。能登半島地震被災地への祈りも込め、3月まで土日祝日の午後5~7時点灯

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広報かまいし2024年2月15日号(No.1826)

広報かまいし2024年2月15日号(No.1826)
 

広報かまいし2024年2月15日号(No.1826)

広報かまいし2024年2月15日号(No.1826)

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【P1】
表紙

【P2-3】
20th Anniversary はたち to わたし

【P4-5】
ーラグビーのまちの伝統を未来へー

【P6-7】
シーウェイブス試合情報、キャプテン&ヘッドコーチインタビュー

【P8-9】
デジタル相談会、エール券追加販売 他

【P10-11】
東日本大震災犠牲者追悼式 他

【P12-13】
まちの話題、すこやかアイドル

【P14】
まなびぃ釜石

【P15-17】
まちのお知らせ

【P18-19】
保健案内板・保健だより

【P20】
市民百景Vol.1佐々凱音さん

この記事に関するお問い合わせ
釜石市 総務企画部 広聴広報課 広聴広報係
〒026-8686 岩手県釜石市只越町3丁目9番13号
電話:0193-27-8419 / Fax 0193-22-2686 / メール
元記事:https://www.city.kamaishi.iwate.jp/docs/2024020700038/
釜石市

釜石市

釜石市公式サイトと連携し、縁とらんすがピックアップした記事を掲載しています。記事の内容に関するお問い合わせは、各記事の担当窓口までお問い合わせください。
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助け合いの心のせ 釜石野球団、募金活動 能登半島地震の被災地へ「生きる力に」

募金活動を行う釜石野球団のメンバーら

募金活動を行う釜石野球団のメンバーら

 
 釜石市の社会人野球チーム「釜石野球団」(佐藤貴之監督、約30人)とその弟分・小学生を中心とした少年野球チーム「釜石野球団Jr.(ジュニア)」(大瀬優輝監督、23人)は10日、能登半島地震の被災地を支援しようと、大町の商業施設イオンタウン釜石で募金活動を行った。ジュニアメンバーは東日本大震災後に生まれたが、家族ら身近な人の話や学校生活の中で学び、記憶をつなぐ世代。「助けてもらったから、今度は…」。能登の状況を古里の記録に重ね、買い物客に元気いっぱい協力を呼びかけた。
 
 募金は、いち早く応援の取り組みをスタートさせた釜石市赤十字奉仕団(中川カヨ子団長、15人)の主催。野球団は大人、ジュニア合わせて約30人が集まり、奉仕団メンバーら約10人とともに活動した。呼びかけには市社会福祉協議会も協力した。
 
能登半島地震の被災地を思って寄付を呼びかけ

能登半島地震の被災地を思って寄付を呼びかけ

 
「協力を」。奉仕団とともに活動する野球少年ら

「協力を」。奉仕団とともに活動する野球少年ら

 
 参加者は施設入り口3カ所に並び、買い物客に「能登応援の活動をしています」「よろしくお願いします」などと約2時間アピール。ジュニアチーム主将の小林大空(かなた)君(11)は「震災の時は生まれていなかったけど、たくさん助けてもらった(と聞く)。この募金が被災した人たちの生きる力になればうれしい」と思いを寄せた。
 
子どもらの呼びかけに応え、買い物客らが善意を寄せた

子どもらの呼びかけに応え、買い物客らが善意を寄せた

 
 ジュニアは2022年春に発足し、保育園年長から小学生までの男女が野球などの運動に親しむ。能登地震を受け、子どもたちから「何かやらないの?」と声が上がり、応援活動を思案。野球道具の支援や子どもの遊び場確保に役立つことを―とも考えたが、大人たちの経験から「生活再建が最優先」と義援金を送る取り組みに決めた。チーム立ち上げ時に地元企業から運営費の協賛が寄せられたこともあり、地域貢献として施設周辺の美化活動も展開。ごみ袋を手に菓子の空き袋やたばこの吸い殻などを拾い集めた。
 
ごみ拾いで地域の美化活動に協力する子どもたち

ごみ拾いで地域の美化活動に協力する子どもたち

 
 佐藤監督(54)は「震災で助けられた経験を伝え聞いている子どもたちは『今度は自分たちが』という意識がある」と見守る。「やるか!」と実行した今回の活動で、「震災の記憶をつなぎ、助け合いの心を養ってもらえたら」と望むのは大瀬監督(34)。野球は助け合いのスポーツでもあり、「プレーに生きてくる」と信じる。
 
 この日、奉仕団は5時間にわたって呼びかけを展開した。託された義援金は28万9353円。他の活動で集まった思いと合わせて日本赤十字社に送り、被災地の人たちの生活支援に役立ててもらう。中川団長(76)は「息の長い活動になる」と、これからも「恩返し」の支援を続ける構えだ。