先輩社会人から生き方や仕事に対する思いを聞いて職業観を広げた釜石商工生
釜石商工高(菊池勝彦校長、生徒234人)で5月27日、社会人との対話交流を通じて将来・進路について考えるキャリア教育授業「Kamaishiコンパス」が行われた。3年生94人が働くイメージや仕事に求める価値観などについて自己理解を深め、高校卒業後の進路を自分の意思で前向きに選択する機会にした。
同授業は釜石市と、市内の高校や民間団体で構成する実行委員会が連携して取り組む高校生のキャリア構築支援事業の一環。生き方やキャリアの多様性を知り、視野を広げてもらおうと、県内外のさまざまな業種の人を講師に招いて毎年実施している。
新型コロナウイルス感染症の影響が続く中、今回は市外にいる講師とオンラインでつなぐ試みを導入。消防士、銀行員、市職員ら釜石市内の社会人11人による対面型講座のほか、盛岡市にいる建設業者など3人が講師となるオンライン講座が設けられた。
オンライン講座を取り入れて行われた釜石コンパス
生徒は関心のある講座を1つ選んで、講師を囲んだり、パソコンやスクリーンの画面越しに意見交換。進路や将来を決めた転機、現在の仕事のやりがいなど質問をぶつけた。
同校では3年生の約7割が就職を希望。ただ、「どんな仕事に就くか」「地元に残るか、外に出るか」など、進む道に迷いを持つ生徒も少なくないという。進路を選ぶ時の考え方について生徒が質問すると、釜石地方森林組合の小林怜央(れお)さん(21)は自己理解の大切さを指摘しつつ、「客観的、周りの人の意見も必要。職場見学に参加すると、知らなかった感動に出合ったり、視野が広がる」と実体験を伝えた。
地元就職を考えているが、職種については決めかねている電気電子科の小山内礼君は「知らない分野の仕事を知る機会になった。就職に有利になるよう、取得できる資格があれば挑戦したい」と刺激を受けた。
今回の授業では、講師と1対1で向き合う時間も設けられた。自分の考えを年上の人に伝える経験をしてもらうのが狙い。機械科の近藤秀哉君は県外就職を心に秘めていたというが、講師の「後悔するよりチャレンジした方がいい」との言葉に背中を押された様子で、「親に思いを打ち明けてみる」と行動に移す勇気を得た。
社会人との個別対面に臨んだ生徒。年上の人に考えを伝える力を磨いた