電動自転車で巡る栗橋ツーリズム構築へ 7月の本開催に向け試走会


2021/06/05
釜石新聞NewS #観光

電動自転車で橋野町古里地区を走行する試走会参加者

電動自転車で橋野町古里地区を走行する試走会参加者

 

 豊かな自然や歴史的価値の高い遺産が数多く点在する釜石市栗橋地区(栗林町、橋野町)の新たな観光スタイル構築へ、移動手段に電動自転車を用いるサイクルツーリズムの可能性を探る取り組みが始まった。5月26日、事業化を目指す団体、みちのくソレイユ(福田学代表)と釜石観光物産協会(澤田政男会長)がモニターによる試走会を実施。7月の本格開催に向け、課題を探った。

 

 この取り組みは、世界遺産「橋野鉄鉱山」に至るルート周辺の魅力的なスポットに目を向け、同地区の観光振興につなげようと発案。二次交通が少なく、大型バスの停車も厳しいアクセスの弱点を補うべく、小回りが利き、坂道走行の負担が少ない電動自転車に着目した。

 

 試走会には観光分野を担当する県や市の職員など9人が参加。4台の自転車で鵜住居駅を出発し、栗橋地区の名所8カ所を巡る約5時間半のコースを体験した。自転車に乗る人は最大4人まで双方向通話が可能な無線機能付きヘルメットを着用。三陸ジオパーク認定ガイドの資格を持つ福田代表が先頭を走り、走行中のガイドを務めた。今回は試験的に、釜石観光ガイド会事務局長で、栗林が地元の藤原信孝さんによる各スポットでの説明も行われた。

 

三浦命助没後100年にあたる1963年に栗林町民によって建立された石碑。裏山に命助の墓もある

三浦命助没後100年にあたる1963年に栗林町民によって建立された石碑。裏山に命助の墓もある

 

釜石観光ガイド会の藤原信孝さん(左)から石碑の説明を受ける参加者

釜石観光ガイド会の藤原信孝さん(左)から石碑の説明を受ける参加者

 

 試走会で立ち寄ったのは、市指定文化財の3巨木・明神かつら(栗林)、上栗林のサクラ、古里の御神楽スギ(橋野)、江戸時代に過酷な取り立てに苦しむ村民救済に奔走した古里嘉惣治・小屋野十三郎(橋野)、幕末最大の三閉伊一揆を率いた三浦命助(栗林)の両顕彰碑、交通の難所「つるぎ」の道路開削に尽力した牧庵鞭牛和尚の功績を示す石碑群、同文化財で岩手の景観賞を受賞している「瀧澤神社奥の院と沢桧川」。いずれもパンフレットで紹介されているものの、実際に足を運ぶ人が少ない場所だ。

 

栗林町に自生する釜石市指定文化財(1973年指定)の巨木「明神かつら」

栗林町に自生する釜石市指定文化財(1973年指定)の巨木「明神かつら」

 

1995年に岩手の景観賞を受賞した「瀧澤神社奥の院と沢桧川」。2007年には市の文化財に指定されている

1995年に岩手の景観賞を受賞した「瀧澤神社奥の院と沢桧川」。2007年には市の文化財に指定されている

 

 試走後の意見交換会では、風を切って進む自転車ならではの爽快感、景観の素晴らしさなど80%以上の満足度が示された一方、ツアー商品化する際の検討課題として料金設定、雨天時の代替メニュー、未舗装路の安全対策、ガイドの仕方などに意見が出された。

 

 ガイド会の藤原事務局長(72)は、豊富な地域資源を効果的に生かす方策として「鉄の道、遠野物語の民話の舞台、郷土の偉人、山里の自然―など客の希望に合わせたコースメニューが必要では」とアドバイス。市商工観光課の二本松史敏主幹(52)は「地元にあるものを再発見できる楽しみがある。まずは市民に利用してもらい、発信力を高めては」と話し、民間主導の取り組みに期待を寄せた。

 

新たな観光コンテンツとして期待が高まるサイクルツーリズム。電動自転車は坂道も楽に上がることができる

新たな観光コンテンツとして期待が高まるサイクルツーリズム。電動自転車は坂道も楽に上がることができる

 

 これまで箱崎半島などの自転車ツアーを企画してきた福田代表(44)は、栗橋コースの優位性について「地域住民が大事にしている場所が多い。参加者と地元の人をつなぐ方法も考えていければ。関係団体と連携しながら、持続可能な仕組みを作りたい」と話した。

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