坂下 功正 総監督プロフィール
1959.03.06生(61歳)/165cm/69kg/岩手県宮古市出身/宮古工業卒
釜石シーウェイブスRFC公式サイトプロフィールページ
インタビュー日:2020年10月19日
企画・編集:釜石まちづくり株式会社
取材・文:市川 香織(釜石まちづくり株式会社)
写真:西条 佳泰(株式会社Grafica)
まさに“現場復帰”です
ーーまずは、今シーズン総監督に就任した経緯について教えてください。
坂下総監督:
これまで、桜庭GMが色々な方面を一人でやり繰りしていた所があったんですが、組織として、現場と事務局の分担をしっかりと分けて行くべきだよね、という話からスタートしたんですね。
今までチームを見てきて、現場と事務局が一緒になってしまうと、“なぁなぁ”になっていってしまうというほどの事ではないにしても、現場サイドとしては「それは出来ません」という事があっても、「出来ない」と言えないというのもあった。しっかりとしたコミュニケーションが取れないというかね。何から何まで、現場にかかる負担が大きくて大変だった。
限られたマンパワーの中で、「じゃぁどうして行けばいいのか?」という事を話し合った時に、まずはしっかりとした組織づくりが一番大事だと。そういう話し合いの中から、総監督をやって欲しいという話になったわけです。
ーー現役引退後、これまでは、どのようにチームに関わっていらっしゃったのでしょうか?
坂下総監督:
新日鐵ラグビー部時代にはコーチ等をしましたけど、SWになってからは『アドバイザー』でした。
まぁ、アドバイザーだからってほとんど大したアドバイスもしていなかったので、今回はまさに“現場復帰”という形ですね。毎日グラウンドにも行ってるし、チームを立て直さなきゃならないな・・・という。まぁ、簡単ではないかもしれないけれども。
何でしょうね、今までもチームに携わってはいたけど、外から見てきたという事もあるし、そういった所から上手くサポートして行ければなという事がありますね。
ーー先ほど、練習日にはグランドに行っていらっしゃるという事でしたが、具体的に総監督の役割と言うと?
坂下総監督:
もうね、無い(笑)。グラウンドでは、ただ見てるだけ。マネジメントっていうか「こうやった方がいいんじゃないのか」という事についてはヘッドコーチ(HC)、コーチ(C)陣と色々と話はしてますけど。
まぁ、グラウンドで選手に声を掛けるというのもゼロではないけどね。そこで何か言うにしても、HC、Cが考えているラグビーとイコールじゃないと悪いから、そこはあまり余計な事は言わずに。
ただ、チームとしてこういう方針で行こうという事については全員に説明したし、目標も伝えてそこに向かってこういう練習をして行こうよという話はして、そういう現場のマネジメントが役割なのかもしれないね。一言で説明するとするならね。
でも、マネジメントっていう言葉は好きじゃないな。ただ、ラグビーが大好きで、チームに強くなってもらいたい。
みんな、弱いSWなんて飽きたでしょ?(笑)。俺なんかずっと見ているからだけど、「何で強くならないの?」って。
そういった所が自分の頭の中に色々とあるから考えている事を出していって、『マネジメントをやってます』っていうそれだけじゃなくって、ラグビーの事もね「こうやった方がいいんじゃないか」という話も出来ると良いなと思いますね。
ーー今シーズン、今まで経験した事のない“コロナ禍”の中でスタート。どんな日々だったでしょう?
坂下総監督:
大変でしたね。というのも、チームに対しての色々な噂や憶測があったりしましたし。そういった状況下での対策ですよね。チームとしてガイドラインを作って。練習前の検温とか、検温しない選手は練習に出るな!と言って練習に出さなかったし。それは今もですね。
ただ、それだけ注目されているチームなので、選手は本当に気を付けていますよ。もう、ほんとにうるさいくらいに。
それからスケジュールもね、上手く進めていけませんでしたからね。予定していた試合も軒並みキャンセルになって。試合をしたのは、9月5日の鵜住居復興スタジアムでのヤマハ戦が最初ですから。
本当は、もっと試合をしながらチーム力を高めて行こうと色々と考えていたんですけどね。
チームを強くする。それが俺の仕事ですね
ーーシーズンINまでおよそ3か月です。(取材日:10月19日)
坂下総監督:
あっという間ですよ。今までのシーズンからしたら考えられない。
ようやく今季新加入の外国人選手がチームに合流します。本来なら3月~4月に合流の予定でしたが、だいぶロスがあってここまで延びて。
我々がやろうとしているラグビーに上手くフィットしてもらうように、きちんとコミュニケーションを取りながら説明しながら…ですからね。これからが本当にチームとしてのスタートというか、ここからが大変かもしれないですね。
でも、間違いなくレベルアップすると思いますよ(外国人加入で)。同時にポジション争いが過酷になっていきますが、そこの中で勝ち上がって行かなきゃならない。その上でチームも勝っていくというのは難しい事だけど、そこに向かって努力してチームが一つになるという事が大事かもしれないね。
ただ、これからの時期なので、寒さ対策で練習時間についてとか、色々と選手の雇用先の皆さんにご説明してお願いしていくことになりますね。練習環境を整えるのも、全ては目標に向かってチームを強くする為にという事ですね。強くなれば、選手をチームに出して良かったなって言ってもらえると思うので。
だからここが一番大事で、“絶対強くする”っていうのがありますね。それが、俺の仕事ですね。
ーー釜石市内でも、SWを応援したいという企業が増えて来ているのでは?
坂下総監督:
実感としてありますね。「今年のチームはどうですか?期待しています!」と声を掛けて頂いたり、新しくチームを応援する事になりましたという企業さん、それから選手と会食の場を設けて応援したいなど、色々な形でサポートしたいという声を頂いていますね。
ただ、会食だけがね。普段ならどんどんお願いします!っていう感じなんですけど、このコロナ禍で「今はちょっと」とお断りさせていただいて。そういうサポートして頂いている皆さんとの交流が出来ない、お返し出来ないというのが今のジレンマとしてありますね。
ですから、今はとにかく淡々とチームを強くして、試合に勝つというのが一番良いのかなと思っています。
ーー今シーズンは特にそういう姿を見せて行くというか、想いを届けて行くということでしょうか。
坂下総監督:
そうですね。その為のしっかりとした目標があって、それを選手には伝えていますからね。
ーー選手には、どのように伝えたんですか?
坂下総監督:
どうしようかな…言おうかな・・・。
ーーあ、オフレコですか?
坂下総監督:
う~ん、まぁそうだね、オフレコ…そんな事も無いんだけどね…、ま、いいか(笑)。
とにかく、トップチャレンジリーグを2位以上で行こうと。1位じゃなくて2位以上というのがミソだけども。
とにかく、上位になってセカンドステージに進んで、TLチームと試合をして1試合でも勝つという目標を立てました。
セカンドステージに進めば、来年の4月いっぱいまで試合が組まれる予定です。そこでTLの強いチームと試合をすることによって、さっきも言ったように、試合が選手を育てて行くというか、チームを育てて行く。チームのレベルも上がって行くと思うから、まずその為にもそのステージまで行こうよと、選手には伝えました。
SWのジャージに誇りを持って欲しい
ーー坂下総監督の中にある、理想のチームは?
坂下総監督:
SWが強いチームになれば、もっと釜石に来てくれる人も増えると思うんだよね。我々の時代も新日鐵ラグビー部を観に、全国からたくさんの方々が来てくれていたように。そういうチームにしたいですね。
まぁ、すでにそういう感覚、匂いを持っているチームだから、支えてくれる企業や全国にサポーターやファンの皆さんがいて、鵜住居復興スタジアムで試合があれば全国から観戦に来てくださっていると思うんです。そういう想いを大事にして、チームは戦って行かなくちゃならないと思っています。
選手はそういう皆さんがいてラグビーが出来ているという事に感謝しながら、練習からしっかり取り組んで、何かを考える時にはラグビーが出来る喜びを忘れないで欲しいし、SWのジャージに袖を通すという事に誇りを持って欲しい。それが18歳の選手でも代表クラスの選手でも、ジャージに袖を通したら、その人は誰が見ても“釜石SW”の選手なんだからね。
そして、とにかく結果を出したいですね。その為に絶対強くする!そういう責任があると思ってます。
ーー坂下さんのお話を聞いて、ワクワクしてきました!
坂下総監督:
俺もワクワクしてるからね。“チームを強くしたい”っていう想いがすごくあって。
じゃあ、強くする為に15人すごい選手を連れてくればいいか?・・・というとそうではなくて、釜石を頼って来た選手とか釜石で頑張ろうという選手がたくさんいる中で、そういう選手達を強くしたい、そういう選手たちでチームを強くしていきたい。それが出来れば、ファンももっと増えるはずだし。そう考えると楽しみですね。
ーーSWは色々な意味で“多様性”があるチームなので、今の時代に合うというか、そういうチームが強くなっていったら本当に面白いと思います。
坂下総監督:
そうですね。今は高卒で入って来た選手がそのチームで育って行くかと言ったら、なかなか育てるのは難しいですからね。他のチームだとね。大卒が多いし、プロ契約の選手もどんどん入ってくるから。
そういう多様性は、釜石SWだけが持っているような感じがしますね。他のチームは単一企業が持つチームで、ほとんどがプロ契約ですからね。そういうチームじゃないですからね、うちのチームは。
釜石全体の企業さんが応援して下さっているし、サポーターにも金銭的にも応援して頂いているし。
そう考えると、不思議なチームっていうか。そうした育成面も楽しみに感じてもらえるチームなのかもしれないですね。育って行く選手を見守って応援して行くという部分でね。
ーーお聞きしていると、総監督の役割は幅広いですね。
坂下総監督:
俺もこれが俺の仕事なのかどうかよく分からないよ(笑)。何しろ初めてのケースだし、何をやったら良いのかな?というのは。
ただ、最初に言ったように、まずはチームの組織をしっかりした方が良いという事がスタートにあって、その為にというか、チームを強くする為にはどうしたら良いのか?という事を色々考えた所からのスタートと言った方がいいかな。
だから、組織づくりとか練習環境とか、選手やコーチ陣がやりたいと言った事を、とにかく積極的にやれる範囲ではあるけどやって行こうと。それを一番に今までやってきたけどね。これからもそこは変わらないで、ブレずにやっていくつもりだしね。
ーー総監督としての日々を、楽しんでいらっしゃるようにお見受けします。
坂下総監督:
そうだね。嫌だったらグラウンドに行けないよ、会社帰りにね(笑)。
だから、楽しんでるか?って言ったら、楽しんでるのかもしれない。グラウンドに行ってラグビー観てるのが。
あとはこれが結果に繋がればね、もっともっと楽しくなってくるかもしれないね。
チーム活動情報、リーグ戦日程等の最新情報は、先日リニューアルされた釜石SW公式サイトをご覧ください。
https://www.kamaishi-seawaves.com/