世界遺産の森を守ろう、「橋野鉄鉱山」周辺で育樹〜高炉に木炭供給の時代に思いはせ、一般市民も作業に汗流す

復興釜石新聞2020/11/09

広葉樹の森復活へ作業に尽力した参加者

広葉樹の森復活へ作業に尽力した参加者

 

 釜石市の世界遺産「橋野鉄鉱山」周辺の国有林を高炉稼働時代の広葉樹の森に再生させる取り組みとして、24日、スギの人工林の枝打ちが行われた。市と林野庁東北森林管理局三陸中部森林管理署(大船渡市)が共催。関係機関・団体のほか一般市民が協力し、総勢65人で作業。世界遺産登録から5年―。参加者は高炉への木炭供給を支えた森林の価値を再認識しながら、作業に精を出した。

 

 「橋野鉄鉱山稼働時代の森づくり育樹祭」と題した同事業は、2017年にスタート。4年目の今年は一番高炉の南側の山林、約2ヘクタールで作業した。植樹から15年前後経過したスギが枝打ちの対象。幹から伸びる余分な枝をのこぎりやなたで切り落とした。人の背丈よりも上の部分は高枝のこぎりを使用。初心者向けの体験も行われた。

 

 上中島町の柏﨑恵美さん(38)、寧音さん(双葉小5年)親子は、寧音さんの同級生黒澤菜々子さんを誘って参加。寧音さんは「最初はのこぎりがうまく使えなかったけど、慣れてくると楽しくて夢中になって作業した。昔の人は便利な道具とかもないから大変だっただろうな」。母恵美さんは「枝打ちしていくと、どんどん日差しが入ってくる感じで気持ち良かった。子どもたちが自然と触れ合える機会にもなった。高炉跡も後でじっくり見てみたい」と声を弾ませた。

 

 市と管理局は世界遺産登録前の2012年に、周辺の国有林を適正に管理するため、「橋野鉄鉱山郷土の森保護協定」を締結。後に制度変更による再締結を経て、資産範囲と緩衝地帯約500ヘクタールを保護対象とした。

 

 一帯は戦後の高度経済成長に伴う木材需要に対応するため、スギやマツの人工造林が進められてきた。世界遺産登録を機に、元の林相に戻す取り組みが本格化。針葉樹は間伐を繰り返しながら伐採時期まで育て、資源を有効活用。間伐で空いた場所に広葉樹の侵入を促すことで、鉄鉱山稼働時代の森に近付けていくことにしている。当時の植生を取り戻すには100年単位の時間を要すると見られる。

 

 同管理署の菊地孝和署長は「継続した取り組みが大事。一般市民にも作業に加わってもらい、鉄鉱山や周辺の山林に思いを寄せながら、保護意識を次代につないでいってほしい」と願った。

 

 同鉄鉱山の繁栄要因の一つが、高炉の燃料となる木炭供給源であったナラやブナなどの豊かな広葉樹林の存在。世界遺産の範囲(高炉場、運搬路、採掘場跡)40ヘクタールのほとんどは森林で、育樹祭は、その意義を知ってもらう狙いもある。

 

 市は11月7日には、高炉場跡で行ってきた発掘調査の現地説明会を開催(午前10時と午後2時から各1時間程度)。これに先立ち、3日から橋野鉄鉱山インフォメーションセンターで発掘調査速報展も始まる。問い合わせは市世界遺産課(電話0193・22・8846)へ。

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