指輪の完成を報告したポール・コステロさん(右から3人目)ら
今年は、日本とアイルランドの外交関係樹立60周年。これを記念し、アイルランドのイマジネーションと岩手の技術力が融合した指輪が生み出された。「クラダリング」という名称で世界中に親しまれているアイルランドの伝統的デザインをモチーフに、釜石市平田で金属製造を手掛けるエイワ(佐々木政治社長)が提供するコバルト合金「コバリオン」を素材に使用。指輪を監修したアイルランド人デザイナー、ポール・コステロさん(71)、佐々木社長(74)らが20日、野田武則市長を訪ね、完成した指輪を贈った。
この指輪は、「ハート」を「両手」でつかみ、「王冠」を配したデザインが基本になっており、それぞれ「愛」「友情」「忠誠」を表す。コステロさんは独自の発想で指輪に波模様を施し、東日本大震災の被災地域が「津波を乗り越えて再生してほしい。東北とアイルランドを愛と友情で結ぼう」とのメッセージを込めた。
素材として使われたコバリオンは次世代の新金属として注目されているもので、岩手県、釜石市が大学と連携し技術を開発、同社が国内唯一の生産・供給企業として事業化を進めている。当初、生体材料の医療用金属として開発されたが、▽固く傷が付きにくい▽温泉での着用でも変色しにくい▽ニッケルが原因となる金属アレルギーを起こしにくい▽磨くとプラチナと同等の輝きを放つ―などの特性から、宝飾用素材としての応用が期待されている。
故ダイアナ妃の専属デザイナーを16年間務めたことでも知られるコステロさんに、同社がこの新素材を売り込んだことで指輪の制作が実現。大学、企業などでつくる「岩手とアイルランドを結ぶ指輪プロジェクト」を立ち上げ、専用サイト(https://www.costelloecobarion.com/)で販売を始める。女性用6万8千円(税込み)、男性用が8万6千円(同)で、木製ケース付き。
市役所を訪れたコステロさんは「アイルランドの古いデザインに東北という新しい要素を加えたのがこの指輪。込められた意味を感じながら着けてほしい」と願った。野田市長は新素材開発の苦労などを話し、「世界に発信してもらいたい」と期待した。
佐々木社長は「一人では力がないが、皆さんの後押しで進んでいける。報いるためにも、震災後の釜石の発展につながるよう精いっぱい頑張っていきたい」と話した。
指輪に関する問い合わせはエイワ(電話0193・26・6880)へ。
(復興釜石新聞 2017年3月25日発行 第574号より)
Paul Costelloe
The Cobarion Claddagh designed by Paul Costelloe(コバリオン製クラダリング)
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