釜石東中・鵜住居小、待望の新校舎公開〜高台から一望、復興のシンボルに
待ちに待った校舎の見学に訪れた大勢の地域住民。明るく広々とした教室に新生活への期待を膨らませた
生徒・児童 仮設で6年 やっと本設へ
東日本大震災で大きな被害を受けた釜石市の釜石東中と鵜住居小の新校舎、鵜住居幼稚園の新園舎が鵜住居町の高台にほぼ完成。4月からの授業開始を前に18日、地域住民に公開された。震災後、市内の小・中学校の間借り、仮設校舎での授業を続けて6年、やっと本設の校舎へ移る。高台から鵜住居の町並みを一望する校舎は、災害時の避難場所としての機能も併せ持ち、地域に開かれた復興のシンボルになるものと期待も大きい。引っ越し作業は23、24日に行われた。
子どもたちが登下校する姿を見てもらおうと作られた大階段
旧鵜住居駅近くにある山を切り崩し、海抜15~26メートルの位置に造成した約7万7千平方メートルの敷地に、鉄骨4階建て校舎や体育館、プール棟、木造平屋の園舎などを整備。緊急時の避難所になることから、炊き出しができるよう体育館のそばに調理室を配置したほか、食糧や毛布を収納する防災備蓄庫も設置。敷地のり面には8カ所の避難階段も設けた。造成工事を含めた事業費は約90億円。外構工事が残っているが、4月までに完成する予定だ。
新校舎の公開には地域住民ら約350人が訪れ、木のぬくもりや開放感のある校舎を「きれい」「すごい」と喜びの声を上げながら見て回った。「自分の教室に行きたい」と駆け出す子どもたちは、大きな窓の明るい教室やカラフルなテーブルといすが置かれた広い廊下などに、にこにこ顔。「迷路だ。広すぎて迷う」と戸惑いも見えた大人たちだったが、校舎に響く子どもたちの声に「いいね」と笑顔が広がった。
白を基調とした空間にたくさんの本棚、カラフルないすが並んだ図書室
小笠原羽美佳さん(釜石東中1年)は「鉄骨がむき出しのままなのが面白い。広いし、海も見えてきれい」と喜んだ。町内の仮設住宅からスクールバスで仮設校舎に通っていたが、4月からは徒歩に。この日も歩いてきて疲れたというが、新しい生活が楽しみなようで「ま、いいか」と笑った。
前川亜希さん(鵜住居小5年)は「たくさん勉強する」と待ち遠しそう。祖父母の公二さん(67)、みえ子さん(64)は「これまで狭い所で生活してきたので楽しんでほしい。広い校庭や体育館で運動不足の解消にもなる」と見守った。
新校舎の外観。左側に入る中学校と右側の小学校を中央の階段棟がつなぐ
仮設校舎での卒業式を終えたばかりの櫻井ことみさん(釜石東中3年)、洞口留伊さん(同)は「仮設校舎には愛着があるが壊されてしまうので、やっぱり残る方で生活したかったとも思う。(後輩たちには)大切に使ってほしい」と願った。
栗林町の仮設住宅で暮らす館鼻春雄さん(64)は仕事帰り、学校建設工事の明かりに安心感をもらってきたという。「立派過ぎなくらい。津波も大丈夫でしょうね。完成は、まちの活気にもなる」と話す一方、自宅の再建は土地の引き渡しが延びるなど、いまだめどが立たない状況。「早く戻りたい」との気持ちが強く、復興住宅の入居申し込みをすればよかったかと頭をよぎることもあると話した。
目の前にある復興住宅に入居する釜石フクさん(82)、駒林トシ子さん(73)は「学校に行く子どもの元気な姿が楽しみだね」と顔を見合わせて笑った。
(復興釜石新聞 2017年3月25日発行 第574号より)
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