世界遺産「橋野鉄鉱山」高炉場跡内に自生する“石割桜”=27日午前撮影
釜石市の北西部、山あいの橋野町青ノ木地区は今がまさに桜の季節。世界遺産「橋野鉄鉱山」の高炉場跡にひっそりとたたずむ“石割桜”は今年も枝いっぱいに花を咲かせ、圧巻の光景を広げる。遺跡に向かう道路沿いや周辺の山々に点在する桜も満開を迎え、山里ならではの絶景を生み出している。
三番高炉の東側、山神社の拝殿跡付近に自生する石割桜は、長さ約5・5メートル、高さ約1・5メートルの三角状の花崗(かこう)岩に根を張る3本のヤマザクラ。樹高は約15メートル、樹齢約90年と推定される。開花時期は例年5月初旬だが、昨年に続き今年も開花が早まり、24日ごろから咲き始めた。20度前後の高めの気温が続いたことも影響してか一気に満開となった。
青空に映える石割桜=三浦勉さん25日午後撮影
岩の間から生えた明らかな理由は分かっていないが、地元出身の釜石観光ガイド会員、三浦勉さん(70)は「高炉の石組みに使おうと割った岩の割れ目に種が入り込み、成長したのではないか」と推測。近くでは、ノミを入れた跡が残る花崗岩も見つかっている。
花崗岩の間を伸びる根。近くで見ると根元部分の大きさを実感
ボリューム満点のピンク色の花が美しい枝上部
根元部分のコケの上には風で散った花も。花弁の形状がよく分かる
桜の根は岩を抱え込むように伸び、生命力の強さを感じさせる。岩の表面は厚めのコケが覆う。「コケが水や養分を蓄え、根に供給しているのではないか。山の自然環境が桜にいい影響を及ぼし、ここまで大きく育ってきたのだろう」と三浦さん。橋野の石割桜は市民でも知らない人が多く、「ぜひ見てほしい」と話す。
周辺のヤマザクラも満開。写真左の八重桜並木はつぼみ状態=27日
石割桜とともに目を引くのが、周辺のヤマザクラ。遺跡までの道路沿い、芽吹きが進む山の緑に彩りを添え、美しい景観をつくる。同所ではこの後、5月中旬にかけて八重桜が開花する。橋野町振興協議会などが毎年開催してきた「八重桜まつり」は、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、例年規模のイベントは行わないが、14、15の両日、出前産直の出店を予定する。