いのちをつなぐ未来館を見学する平田いきいきサークルの会員。川崎さん(左)の説明に耳を傾けた
県境をまたぐ移動自粛が19日に全面解除され、新型コロナウイルスの影響で臨時休館や時短営業を行ってきた釜石市内の観光施設に人出が戻ってきた。外出自粛で休止状態が続いた市民グループの活動も徐々に再開。平田地区で100歳体操に取り組む「平田いきいきサークル」(藤澤静子代表、会員約30人)は23日、三陸鉄道を利用した「プチ旅行・お楽しみ会」を企画し、鵜住居町のいのちをつなぐ未来館などを見学した。
同サークルでは週1回の体操、月1回のサロン(食事会)活動を楽しんできたが、感染症の影響で4月中旬に活動を休止。体操は5月中旬に再開したが、サロン活動はまだ控えている。
今回、感染症関連の特別定額給付金を受け、「地域にお金を落とそう」とお楽しみ会を計画。平田駅から三鉄に乗って鵜住居駅に降り立った20人は釜石祈りのパークで犠牲者に手を合わせた後、未来館を見て回った。
未来館スタッフの川崎杏樹(あき)さん(24)が展示内容を説明。会員らは、東日本大震災当時、釜石東中2年生だった川崎さんが交える実体験に真剣な表情で聴き入った。
鵜の郷交流館で昼食。生ウニ丼、海鮮丼など地元産海産物を味わいながら仲間との会話を楽しんだ。
どの施設も初めて訪れた久保京子さん(84)は「逃げる。心に留めておかないといけない」と再認識した。尾崎白浜地区で被災し、4年前に上平田ニュータウンに転居。「知らない人ばかりだったが、サークルのおかげでなじみ、元気でいられる」と活動再開を喜んだ。
藤澤代表(78)は「20分くらい列車に揺られて旅行気分。外の空気やおいしいものに触れてリフレッシュ。喜んでもらえたよう」と目を細める。地域を知る機会にもなると実感。ウオーキングと食を組み合わせたプチ旅第2弾の実行に思いを巡らせた。
未来館は感染拡大を受け、4月下旬から臨時休館(約3週間)、時短運営(約2週間)を経て、6月からマスク着用や手の消毒など感染対策を継続した上で、通常の運営に戻している。まだ人影はまばらだが、県をまたぐ移動が全面解禁された週末は30~50人ほどが来館。今年3月以降、団体の研修などを中心にキャンセルが相次いでいたが、秋に修学旅行を計画する県内の小学校などから見学の予約や問い合わせも寄せられるようになった。
ゆっくりともどり始めた人の流れを感じる一方、自粛傾向が緩和されても県外からの訪問は見込めない状況が続く。休館期間中にオンラインによる展示物の紹介ガイド(無料)、津波体験談を伝える語り部(有料)の受け付けを開始。コロナ禍、被災地への来訪者減少などで発信機会が限られる中、新たな伝承の形として継続していく。
川崎さんは「自粛傾向が残る今、市内の人に足を運んでもらいたい。震災を振り返る意味で、じっくりと見ることができる。三鉄に乗り、おいしいものを楽しみつつ、遊びに立ち寄ってほしい」と呼び掛ける。
オンラインガイドなどの詳細は未来館ホームページ(https://www.unosumai-tomosu.jp/miraikan.html)または電話(0193・27・5666)へ。
(復興釜石新聞 2020年6月27日発行 第892号より)
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