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色とりどりの晴れ着やスーツ姿で式に臨み、大人としての意識を高める新成人

新市民ホールで「大人」の一歩、成人式269人出席〜東日本大震災から間もなく7年、復興への思い新たに

色とりどりの晴れ着やスーツ姿で式に臨み、大人としての意識を高める新成人

色とりどりの晴れ着やスーツ姿で式に臨み、大人としての意識を高める新成人

 

 8日の「成人の日」を前に、釜石市の新成人の門出を祝う成人のつどい(市、市教委主催)は7日、大町の市民ホール(TETTO)で開かれた。東日本大震災で市民文化会館が被災し、昨年まで釜石高体育館を借りて行ってきた同式典は、震災後7回目の今年、待望の新ホールでの開催が実現。新成人らは、復興の象徴でもある市の文化拠点で迎える人生の節目に喜びを感じながら、大人としての第一歩を踏み出した。

 

 今年の新成人は1997年4月2日から98年4月1日までに生まれた人たち。式典には同市出身者を中心に269(男130、女139)人が出席した。

 

新しい市民ホールでの成人式に笑顔を輝かせる新成人

新しい市民ホールでの成人式に笑顔を輝かせる新成人

 

 震災犠牲者に黙とうをささげて開式。野田武則市長は、震災の教訓と釜石の歴史を築いてきた先人たちの誇りを受け継ぐことを願い、「これからの復興は若い皆さんの肩にかかっている。公のために自分ができることは何か。“釜石のために”と思う人が1人でも多く育ってほしい」と新成人に期待した。

 

 中学1年の終わりに震災を経験し、幾多の困難を乗り越えながら、大人たちと釜石復興への歩みを進めてきた新成人。古里再生を目指す市民の底力を肌で感じ、まちの変化をつぶさに見つめてきた若人たちは今、未来を見据え、進学、就職先で各自の夢の実現にまい進する。

 

津田商店で働くベトナム人研修生は母国の民族衣装で出席

津田商店で働くベトナム人研修生は母国の民族衣装で出席

 

 東北大工学部の酒田一帆さん(20)=釜石中、釜石高出身=が代表して抱負を発表。「釜石発展に寄与し、震災の記憶を語り継がねばと強く思う。教養を身に付け、釜石を引っ張っていける人材になり、震災前よりも幸せなまちにしたい。われわれ新成人がこれからの釜石を背負って立つ」と力強く決意を示した。

 

 恒例となった新成人有志による虎舞が真新しい舞台で躍動し、会場の祝いムードを一層高めた。式典を締めくくる市民歌の斉唱は、釜石高音楽部出身の新成人がリードを担当。高らかな歌声で出席者を先導し、釜石人の心意気を表した。

 

新成人の有志は威勢のいい虎舞で式典を盛り上げた

新成人の有志は威勢のいい虎舞で式典を盛り上げた

 

 館内の各スペースでは、釜石市民吹奏楽団の演奏や釜石茶道協会の呈茶があり、出席者を楽しませた。式典の前後には、久しぶりに顔を合わせる友人と再会を喜び、写真撮影に興じる姿があちこちで見られ、華やいだ雰囲気に包まれた。

 

(復興釜石新聞 2018年1月10日発行 第654号より)

 

復興釜石新聞

復興釜石新聞(合同会社 釜石新聞社)

復興釜石新聞と連携し、各号紙面より数日の期間を設け記者のピックアップ記事を2〜3点掲載しています。

問い合わせ:0193-55-4713 〒026-0044 岩手県釜石市住吉町3-3

第5回 新春 韋駄天競走〜日蓮宗・仙寿院 芝崎惠應住職

《インタビュー》第5回 新春 韋駄天競走〜日蓮宗・仙寿院 芝崎惠應住職

第5回 新春 韋駄天競走〜日蓮宗・仙寿院 芝崎惠應住職

 

~東日本大震災と津波の記憶を千年先の未来に伝える~
今年もこのメッセージと共に、「新春韋駄天競走」が大只越町の日蓮宗・仙寿院にて行われる。開催を知らせるチラシには「津波発生時の速やかな避難行動を啓発する行事です」とも書かれている。

 

第5回 新春 韋駄天競走

 

2014年からスタートし今年で5回目。参加者が福を目指して駆け上がるゴールは、釜石市の中心市街地高台にあり、津波災害緊急避難場所に指定されている“仙寿院”。主催者として第1回目から開催を見守る、芝崎住職にお話しを伺って来ました。

 

どのような経緯で、仙寿院の節分追儺会の一部として開催される事になったのでしょうか?

 

日蓮宗・仙寿院 芝崎惠應住職

日蓮宗・仙寿院 芝崎惠應住職

 

芝崎住職「発案者である“釜石応援団ARAMAGI Heart”のメンバーが、相談に乗って欲しいと韋駄天競走の計画を持ってきた時、津波避難を啓発する非常に良い行事だと思いました。“逃げれば助かる”という素直でシンプルな内容で。

 

同時に、内容をよく読むと開催場所は“仙寿院しかないだろう”という感じでしたね。彼らにもそう言って開催を受け入れました。教訓を後世まで伝えていく為に、継続性という視点で考えると、この催し単独での開催では難しいという認識も同じでした。

 

ただ、日程は最初から2月に組まれていたわけではなかったです。“福男”“福女”を決める賑やかな内容でもありますから、それに合う行事として“節分”がいいでしょうとこちらから提案しました。

 

しかしながら、開催時の状況を鑑みると平日では難しい。それまでの110年間の間、毎年2月3日の開催と決まっていた仙寿院の節分追儺会を、2月の第1日曜日と言う形に変更するという非常に大きな決断の必要がありました。

 

ですが、彼らが掲げる「津波避難の啓発・継承」の必要性については、東日本大震災を体験した私も一番に感じていたことでしたので、日程を変更してでもこの行事を開催する意義を感じ決意しました。」

 

毎回、ゴール地点で参加者の皆さんを笑顔で迎えていらっしゃいますね。

 

ゴール地点で参加者の皆さんを迎える芝崎住職

ゴール地点で参加者の皆さんを迎える芝崎住職(写真提供:釜石応援団ARAMAGI Heart)

 

芝崎住職「観ていると、1回目から毎年参加している方もいますし、年代も80代から幼児まで様々です。津波避難の啓発行事ですが、楽しんで参加している様子も微笑ましいです。特に、市内の子供や親子での参加が多いのは嬉しいですね。

 

当たり前のことですが、津波を知らない世代が増えて行く中で、参加することで体が覚え、そして記憶に残って行くことが大切で、この行事の核の部分です。

 

また、回を重ねるたびに参加者からの要望も増え、それに応えて行くうちに、今年は全部で6部門になりました。新たに、団体戦はどうか?という意見も頂いています。

 

“高台に避難する”この部分からは外れないようにしながら、より多くの皆さんに楽しく参加して頂けるように考えている所です。」

 

申込受付は1月27日(土)まで。参加してみようかな?と考えている皆さんへ一言お願いします。

 

仙寿院がある高台からはスタート地点が見える

仙寿院がある高台からはスタート地点が見える(写真提供:釜石応援団ARAMAGI Heart)

 

コースは286m。長過ぎず短過ぎず、皆様に参加しやすくなっていると思います。高低差26m、急カーブなど面白味もあります。

 

そして何より、自分が参加(行動)することが周りの人へ“高台へ逃げる。避難場所まで行けば助かる。”という教訓を伝える事になります。言葉で伝えるのが難しくても、あなたが参加する姿それ自体に意義があります。

 
 

――――――――――――――――――

「津波の教訓を後世に伝えたい。次に津波が来た時には、少しでも多くの命が助かるように・・・」芝崎住職の強い願いを、韋駄天競走に参加することであなたも共有しませんか?

 

第5回 新春 韋駄天競走(仙寿院 節分追儺会内)

日時

2018年2月4日(日) 10:00集合/11:00開始

場所

日蓮宗 仙寿院(岩手県釜石市大只越町2-9-1)

参加資格

個人の部(男性29歳以下/男性30歳以上/女性/中高生/小学生)、親子の部 
計6部門 各20名程度

参加費

無料

参加申込受付

2018年1月6日(土)~1月27日(土)

集合場所

釜石市只越町 消防団第一分団 第3部屯所(只越集会所)前に当日10:00までに集合。
※緊急時の避難行動を啓発する行事ですので、雨や雪の際も原則として決行します。
※仙寿院の駐車場はご利用になれません。

お問い合わせ

仙寿院 Tel 0193-22-1166(なお、お電話でのお申込み受付はしておりません)

 

参加方法など詳しくは、こちらからどうぞ。
第5回 新春 韋駄天競走 チラシ表
第5回 新春 韋駄天競走 参加申込書

 

縁とらんす

かまいし情報ポータルサイト〜縁とらんす

縁とらんす編集部による記事です。

問い合わせ:0193-22-3607 〒026-0024 岩手県釜石市大町1-1-10 釜石情報交流センター内

イオン釜石“4年目の初売り”を彩った餅まき=元日

餅まき大盛り上がり、三が日に約4万6千人〜イオン釜石「最高」の正月に

イオン釜石“4年目の初売り”を彩った餅まき=元日

イオン釜石“4年目の初売り”を彩った餅まき=元日

 

 釜石市内の2018年の初売りは元日からスタート。大型商業施設「イオンタウン釜石」の初売りは午前8時に始まり、福袋販売や各種イベントなどで買い物客を迎えた。元日は、14年3月のグランドオープン期間の日曜日に次ぐ約1万7400人が来店。3日までに約4万6千人(前年比約1千人増)が訪れ、正月三が日の客数としては過去最多を記録した。

 

 専門店とスーパーセンター合わせて約5500個の福袋を用意。カバン店の1千円から宝飾店の54万円まで、各店が趣向を凝らした福袋を販売した。昨年12月26日から館内に福袋の紹介コーナーも設け、購買意欲を高めた。人気商品が初売りならではのお得価格で手に入るとあって、買い物客らは開店と同時にお目当ての売り場に急いだ。

 

 元日午前10時からは、イオン釜石の初売りでは初めてとなる餅まきを実施。1500個の紅白餅の袋には、8割に専門店の特典や粗品進呈の券が入れられ、“福餅”を求めて老若男女が盛んに手を伸ばした。

 

 中妻町の祖父母宅に帰省した盛岡市の小野寺義暁君(7)は家族と餅まきに参加し、「いっぱい取れた。お正月はいとこと遊ぶのが楽しみ」とにっこり。母瑞保さん(36)は「ここの初売りは3回目。いろいろ見て回って何か買いたい。釜石は来るたびにまちの様子が変わり、今回は新しい橋(千年橋)も。目に見えて復興している感じでうれしい」と声を弾ませた。

 

 イオン釜石では来店客が増える年末年始への対応として、従業員駐車場(約200台)を客用に臨時開放。昨年12月27日に開通した千年橋は、国道から同店へのアクセス向上にもつながり、正月中は遠野方面からの車両が駐車場まで連なった。三が日の混雑のピークは元日午後2時半ごろ。駐車場は2日まで、ほぼ満車状態が続いた。

 

 今年3月でオープン4周年を迎えるイオン釜石は、周辺に復興住宅や市民ホールが完成し、外部環境が大きく変わった。森信義モールマネジャーは「市民ホールにはイオンの情報コーナーも設けていただいた。新たな誘客の流れを生み出し、来店客増加につなげたい。イベントスペースの利用促進などで、集いの場としての機能充実も図れれば」と地域密着の施設展開に思いを新たにする。

 

(復興釜石新聞 2018年1月6日発行 第653号より)

 

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第4期釜石○○会議

【1月13日(土)】第4期釜石○○会議を開催します

第4期釜石○○会議

 

第4期釜石○○(まるまる)会議が開催です!
「年の初めに新しくやりたいことを探したい」「仲間を募ってこんなことを始めてみたい」「楽しそうな活動に自分も加わってみたい」など、ワクワクする何かを一緒に楽しく考えてみませんか?

 

釜石○○会議 チラシ

釜石○○会議 チラシ

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日程

・第1回 1月13日(土)12時45分~16時
・第2回 1月28日(日)12時45分~16時
・第3回 2月10日(土)12時45分~16時
受付は12時30分から

場所

チームスマイル・釜石PIT(釜石市大町1-1-10)

対象

どなたでも参加できます。
※託児サービスも利用できます。利用を希望される方は申込時にお伝えください。

参加費

無料

申し込み

次のいずれかの方法でお申込みください。
①以下申込サイトにアクセスし、必要事項記入の上送信ボタンを押してください。
【申込サイト】https://goo.gl/RaFZhF
②Facebookページ「釜石○○会議」の参加ボタンをクリックしてください。
【Facebookページ】https://www.facebook.com/marumarukaigi/
③釜石○○会議事務局まで電話(0193-27-8463)でお申込みください。
 
※当日参加大歓迎です!

釜石○○会議とは

「釜石をもっと楽しいまちにしよう」「やりたいことを形にしていく仲間を増やそう」をコンセプトに2015年3月よりスタートしています。
地域、立場、世代を超えて様々な人が集まり、ワイワイガヤガヤしながら「○○」の中身をみんなでつくっていく場です。
これまで延べ800人が参加し、会議の中から様々なチームが結成され、釜石をフィールドにした色々な活動や楽しいイベントが生まれています。

問い合せ・申し込み先

釜石○○会議事務局(釜石市オープンシティ推進室内)
TEL:0193-27-8463、0193-22-2111(内線193)

この記事に関するお問い合わせ
釜石市 総務企画部 オープンシティ推進室 戦略推進係
〒026-8686 岩手県釜石市只越町3丁目9番13号
電話:0193-27-8463 / 0193-22-2686 / メール
元記事:https://www.city.kamaishi.iwate.jp/shisei_joho/keikaku_torikumi/chihousousei/detail/1215097_3278.html
釜石市

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釜石市公式サイトと連携し、縁とらんすがピックアップした記事を掲載しています。記事の内容に関するお問い合わせは、各記事の担当窓口までお問い合わせください。
釜石市内各界の代表が集った新年交賀会。鏡開きし、まちづくりへの思いを確認し合った。

2018 新年交賀会、復興完遂 誓い合う〜ラグビーW杯へ準備本格化、震災教訓生かし市民憲章づくりも

 釜石市内各界の代表が集った新年交賀会。鏡開きし、まちづくりへの思いを確認し合った。

釜石市内各界の代表が集った新年交賀会。鏡開きし、まちづくりへの思いを確認し合った。

 

 2018年仕事始めの4日、釜石市の新年交賀会が大町のホテルサンルート釜石で開かれた。市、市議会、釜石商工会議所が主催する年頭の恒例行事には、市内各界の代表や市民ら約200人が出席。東日本大震災からの復興完遂と市勢発展を誓い合った。

 

 「君が代」を斉唱したあと野田武則市長が年頭のあいさつ。「昨年は林野火災、大雨洪水など災害が多かったが、被災した鵜住居、唐丹の学校が完成し子どもたちが元気に登校でき、魚市場、市民ホール、新しい橋も完成し市中心部の発展に期待が高まる年になった。復興の歩みを着実に感じられるところまで何とかたどり着いた」と振り返った上で、「復興住宅の建設、宅地造成をスケジュール通りに完成させ、今年こそ被災した方の住まいの再建、復興の完遂を目指すという固い決意を皆さんとともに確認し、全力を尽くしたい」と決意を述べた。

 

 市では今年、魚河岸地区のにぎわい施設整備、鵜住居駅周辺の追悼・伝承施設、体育館の建設などと合わせ、震災の教訓を生かし二度と悲劇を起こさないため市民憲章づくりも進める。同時に、来年に迫ったラグビーワールドカップ(W杯)開催に向けた準備も本格化させたい考え。

 

 野田市長は「復興の完遂を目指すことは同時にW杯の準備でもある。W杯は釜石の歴史の中でもこれまでにない大事業となり、成功に向け総力を挙げて取り組まなければならない。また、まちの発展につなげるような仕組みも作っていくという意味で今年は釜石の歴史にとって大事な一年になると改めて肝に銘じているところ。実現のためにはぜひとも市民の力が必要だ」と述べ、復興の完遂、W杯の成功に向けた取り組みへの支援と協力を願った。

 

 佐々木義昭・市議会議長、釜石商議所の山崎長也会頭のあいさつに続き、鈴木俊一五輪相の祝辞を秘書の鈴木俊太郎さんが代読。震災復興、水産業を中心とした基幹産業と市街地のにぎわい再生に向けた取り組みを滞りなく進めてほしいと期待を寄せた。

 

 沿岸広域振興局の小向正悟局長らが加わり、威勢よく鏡開き。小野共県議の音頭で乾杯し、新しい年を展望しながら懇談した。

 

(復興釜石新聞 2018年1月6日発行 第653号より)

 

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雪景色の中で技術を高める「炭焼き人」(左端・小澤さん、右端・山口さん)

地域資源掘り起こしの「のろし」に、炭焼きの光景復活〜来春には窯を囲んで交流イベントも、唐丹町山谷

雪景色の中で技術を高める「炭焼き人」(左端・小澤さん、右端・山口さん)

雪景色の中で技術を高める「炭焼き人」(左端・小澤さん、右端・山口さん)

 

 五葉山の麓、釜石市唐丹町の山谷地区で、炭焼き窯から煙がたなびく。山麓一帯の豊富な森林資源を活用した木炭生産が盛んだった地域に、数十年ぶりの光景が復活した。一筋の煙は木炭による住民の交流、歴史と知恵、資源の掘り起こしを目指す「のろし」でもある。

 

「ドラム缶式」で試験操業

 

 ドラム缶を加工した専用窯は農業小澤孝行さん(78)、ふみ代さん(78)夫妻が住む家の南向きの畑地にある。11月から試験操業を開始。27日には6回目の炭出しを迎え、程よい仕上がりの竹炭が取り出された。

 

 メンバーは小澤さんと唐丹地区生活応援センターの小山善司所長ら職員。“仕掛け人”の元釜援隊、山口政義さん(35)は市の任期付職員として同センターを中心に唐丹のまちづくりを担う。

 

 「古くから山谷、荒金地区は炭焼きが盛んで、山間地の貴重な現金収入だった。木炭は家庭の燃料、製鉄の材料になった。炭焼きは原料の木材資源をもとに、品質の良い炭を造る知識が必要だ。唐丹の自然や資源を掘り起こすには、炭焼きも一つの手段になる」と山口さん。インターネットで技術と用具を調べ、「ドラム缶式」を探り当てた。

 

 石積み、火口を耐火レンガで覆い、選ばれた粘土で包み込む。雨よけの屋根は、強風にも耐えるよう地元の建築大工が腕を振るった。工事は1カ月かかった。

 

「今回の出来は上々」と炭出しを楽しむ=27日

「今回の出来は上々」と炭出しを楽しむ=27日

 

 小澤さんは高齢の両親を介護するため30年ぶりに帰郷し、1998年に夫妻で転居した。自宅周辺に広がる約2ヘクタールの所有地は大半が山林だったが、南斜面を切り開き畑地に変えた。ラベンダーを植栽し、6種の約400株を育て、摘み取り時期には多くの来園者を迎えるまでになった。小規模ながらブルーベリー、イチジクなど果樹も増やしている。

 

 小澤さんは「小さいころ、父親ら家族も炭焼きをしていた。私は食糧や用品を背負って山の奥にある窯まで運んだ。炭焼きの生活は体験しているが、技術は知らない」という。山口さんは木炭製造の原理は理解するが、技術は暗中模索だった。

 

 山谷地区は11世帯が暮らす。80代の男性が炭焼きを経験しており、強力な「助っ人」になった。

 

 サクラなどの小枝、雑木、竹を原料にした5回の試作品は地元の集会行事でも披露された。「(竹炭は)荒れる竹林の整備にもなる」と町内の竹林所有者から譲り受けた。雑木の提供も打診している。竹炭は消臭、水の浄化などに関心を集め、木炭は冬の漁船漁業での暖房用にと要望があった。

 

 この事業は唐丹地域会議(川原清文議長)が進める。ドラム缶式炭焼きは約8時間で完了することから、イベントへの活用も容易。「唐丹の資源、魅力を子どもたちに伝えるとともに、炭焼きを知る年代にも喜ばれるだろう。炭焼きと、炭を使った体験、交流イベントもできる」と山口さん。炭を入れるワラの「炭すご」作りも準備が進んでいる。

 

 炭焼き窯の披露とイベントは、雪解け後の来春を見込む。

 

(復興釜石新聞 2017年12月30日発行 第652号より)

 

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中心市街地のにぎわいや釜石港の物流機能強化につながると期待される千年橋を渡り初めする子どもたち

甲子川に「千年橋」開通、港の物流強化へ〜イオンタウン釜石と国道を直結、避難路の利用も想定

中心市街地のにぎわいや釜石港の物流機能強化につながると期待される千年橋を渡り初めする子どもたち

中心市街地のにぎわいや釜石港の物流機能強化につながると期待される千年橋を渡り初めする子どもたち

 

 釜石市の市道港町2号線の道路整備事業が完了し、27日に開通した。甲子川に橋を新設し、港町2丁目(通称・中番庫地区)と国道283号を結ぶ道路。橋の名称は600通を超える応募の中から「千年橋」に決まった。震災後、釜石港ではコンテナ取扱量が増大。復興への取り組みが続く中、資材などを運ぶ大型車両の通行量もいまだに多く、同港へのアクセス道路としての活用や渋滞緩和が期待される。大型商業施設と公共施設を効果的に配置した市中心街の利便性を高めるとともに、中番庫地区からの避難経路の一つとしての利用も想定。同日には開通式が現地で開かれ、野田武則市長ら関係者、地域住民ら約200人が新橋の誕生を祝った。

 

 同事業は港町2丁目から鈴子町地内が施工範囲。長さ91メートル、幅15メートルの橋を新設し、橋に接続する市道220メートルを改良。国道側は交差点を設置するため、丁字路の両側340メートルを改良した。公益財団法人県土木技術振興協会が設計、小澤組が施工し、2013年度に着工。整備に当たり甲子川の洪水時の水位、橋の上を通過する三陸鉄道の高架橋との距離、国道との接道などで厳しい施工条件があり、クリアするため橋げたをできるだけ薄くする「パネルブリッジ」という工法を採用した。サケの遡上(そじょう)などにも配慮しながら工事を進め、4年がかりで完成。不発弾探査などを含め、事業費約24億円をかけて整備した。

 

 橋の名称は8月に市内小・中学校の児童・生徒を対象に公募し、617件の応募があった。選考の結果、大瀧結菜さん(甲子中2年)が寄せた「千年橋」が最優秀賞に選ばれ、名称として採用。「震災で被災した町が復興し、明るい未来に向かって千年先もにぎわい、住民が安全安心に暮らせるように」との願いを込めた。このほか、優秀賞には13件、42人が選ばれた。

 

 揮ごうした橋名板を持つ命名者の大瀧結菜さん(左)、野田武則市長

揮ごうした橋名板を持つ命名者の大瀧結菜さん(左)、野田武則市長

 

 開通式で、野田市長は「東部地区の拠点性が発揮される場所で、効率的な交流が図られると期待。いい名称も付けてもらった。大切に、親しみを持って利用してほしい。込められた思いを実現させ、市の発展につなげたい」とあいさつ。公募した名称の優秀作品者に表彰状を贈った。

 

 関係者らがテープカットした後、全員で渡り初め。かまいしこども園の園児は虎舞を披露し、開通に花を添えた。

 

開通を祝って関係者がテープカット

開通を祝って関係者がテープカット

 

 橋名板を揮ごうし、最後の取り付け作業も行った大瀧さんは「選ばれてびっくり。考えたものが残ると思うとうれしい。安全で使いやすい橋になればいいな」とはにかんだ。

 

名称公募の優秀賞は次の通り。
▽復興大橋・復興橋・復幸橋=政木心南、阿部帆歌、佐々木美結、佐藤陽菜、髙木柊、福舘早紀(甲子中)佐々木杏津(小佐野小)鹿本勁雅(大平中)久保翔太(唐丹小)
▽旭橋・朝日橋=井上右望(鵜住居小)福士花凛(甲子中)
▽にぎわい中番庫橋=川崎茜羽(甲子小)
▽昇鮭橋=千葉太陽(甲子小)
▽中番庫橋=栗澤真登、川崎逞斗(栗林小)
▽望海橋・希見橋・のぞみ橋・のぞみばし=工藤麻純(釜石小)藤本恵梨子(小佐野小)久保杏奈(双葉小)佐々木大地(白山小)
▽絆橋・きずな橋・キズナ橋=玉木那奈(釜石小)前川咲希(釜石中)米澤心優、山口葉月、小久江七音、池端穂花、山口夢夏、高橋こと、池端愛音(甲子小)母良田花、藤井俊介(甲子中)植田杏奈(小佐野小)山﨑遥香(双葉小)佐々木愛佳(釜石東中)
▽かがやきばし=菊池眞暖(双葉小)
▽みなとばし=工藤純之助(釜石小)
▽かもめ橋・かもめばし=菊池一朗(甲子小)工藤叶羽(小佐野小)
▽うみがきらきらばし=小岩南月(甲子小)
▽幸運橋・興運橋=中村俊翔、藤井暖(甲子小)
▽鮭見橋・鮭観橋=佐々木里夏(鵜住居小)藤原和海(釜石小)

 

(復興釜石新聞 2017年12月30日発行 第652号より)

 

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神社への最初の入り口となる1番鳥居

鵜住神社 鳥居再建、落成祝う〜境内で餅まき、復興への思い一層強く

神社への最初の入り口となる1番鳥居

神社への最初の入り口となる1番鳥居

 

 釜石市鵜住居町の鵜住神社(花輪宗嗣宮司)は、東日本大震災の津波で流失した参道の鳥居3基を再建し、24日、地域住民と落成を祝った。震災から6年9カ月―。地域のよりどころとなる神社が本来の姿を取り戻したことで、住民らはまち全体の復興への思いを一層強くした。

 

 市の復興事業で盛り土整備された新たな参道(市道)約130メートルの区間に、クリ木で造った鳥居3基を設置。国道側の最も大きな1番鳥居は、高さ約5メートルの柱に銅板加工を施した笠(かさ)木を渡し、神社の場所を際立たせる存在感が目を引く。続く2、3番は震災後に再建された後、道路工事のため、いったん撤去されていたものを再配置した。木材を確保するための山林所有者との交渉、伐採、搬出などは全て氏子総代会が行い、地元の花孝建設(花輪孝吉社長)が腕を振るった。

 

 1番鳥居の前で総代ら関係者が神事に臨み、鵜住居青年会による祝いの虎舞が奉納された。境内で行われた餅まきには老若男女約150人が集まり、祝賀ムード一色に包まれた。

 

鳥居の完成を盛大に祝った餅まき=鵜住神社境内

鳥居の完成を盛大に祝った餅まき=鵜住神社境内

 

 同町新川原地区に暮らす古川マサさん(77)、百済照子さん(78)は「こんな立派な鳥居ができるとは。すごいね」と新しい鳥居を見上げ、「参道も良くなったし、多くの人が訪れて心豊かになれば。鳥居をくぐっての初詣も楽しみ」と声を弾ませた。

 

 同神社は津波で鳥居(石製1、木製2)のほか、みこし3基が保管庫ごと流された。総代らは復興へのシンボルとなる鳥居1基を半年後に復元したのを皮切りに、翌2012年に、もう1基を再建。みこしの復活も模索し、多くの支援者の協力を得て14年にみこし蔵兼こもり場、15年にみこしの完成にこぎつけた。16年に境内へ上がる石階段の拡幅(岩崎石材店施工)も完了。最後の参道整備と鳥居設置を待つばかりとなっていた。

 

 神社の完全復興に二本松富太郎総代長は、地域内外の多くの支援者に深く感謝。「これを機に住民の自宅再建が一層進んでいくことを願う。今後も祭りでにぎわいを作りだしたい」と古里再興に思いをつなぐ。花輪宮司も「これで終わりではない。まちの復興はまだまだ続く。皆さんの力で鵜住居を盛り上げていければ」と住民力に期待した。

 

(復興釜石新聞 2017年12月27日発行 第651号より)

 

復興釜石新聞

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釜石市が「シェアリングシティ」に認定されました

シェアリングシティ認定授与式にて

シェアリングシティ認定授与式にて

 

平成29年11月8日に釜石市を含む15自治体が「シェアリングシティ」として、一般社団法人シェアリングエコノミー協会より認定を受けました。

 

■一般社団法人シェアリングエコノミー協会ホームページ
https://sharing-economy.jp/ja/

 

シェアリングシティとは

 

シェアリングシティ

 

「シェアリングシティ」とは、空き家や交通渋滞、働き方や労働力不足、子育て環境の不足といった地域が 抱える問題を、シェアリングエコノミーの活用によって解決しようと取り組む自治体を表します。

 

日本では、一般社団法人シェアリングエコノミー協会が認定するシェアリングエコノミーサービスを2つ以上導入していることがシェアリングシティの認定要件となります。

 

海外では積極的にシェアリングエコノミーを促進し、地域課題の緩和・解決に向けて取組む先進的なシェアリングシティが存在します。その先進的なシェアリングシティとして、韓国・ソウルやオランダ・アムステルダム等があげられます。

 

■海外事例(韓国・ソウル、オランダ・アムステルダム )
https://sharing-economy.jp/ja/city/

 

シェアリングエコノミーとは

シェアリングエコノミーとは、個人などが所有する有形無形の遊休資産(モノ、スペース、スキル等)の遊休資産を、インターネットを介してシェアする(=共有・交換する)サービスによって生まれる経済活動のことです。シェアリングエコノミーは、インターネットやスマートフォン等のIoT技術の普及によって誕生し、今後その市場規模は拡大し、日本全体が取組む地方創生をはじめとした地域課題の解決に貢献するとされています。

 

シェアリングエコノミー

上図は「内閣官房シェアリングエコノミー促進室ホームページ」より引用

 

具体例をあげると、当市と提携を結んでいるAirbnb(エアビーアンドビー)があります。空き家や空き部屋といった遊休資産と、その土地ならではの家に泊まりたいという旅人をつなぐサービスです。これは「空間のシェア」分野にあたり、Airbnbはシェアリングエコノミー市場におけるホームシェアリング分野(民泊)で海外最大手といえます。また、昨今話題のフリマアプリ「メルカリ」もシェアリングエコノミーのサービスのひとつです。「メルカリ」は、まだ使えるけど使わなくなった服やインテリア雑貨を売りたい人と、購入したい人を、インターネットを介して結びつけるサービスであり、これは「モノのシェア」分野にあたります。

 

シェアリングエコノミーは大きく5つの分野に分類されています。「空間のシェア」「モノのシェア」「スキルのシェア」「移動のシェア」「お金のシェア」です。それぞれの分野で様々なサービスが展開されています。

 

シェアリングエコノミーの分類

上図はシェアリングエコノミー協会ホームページより引用

 

当市が連携しているシェアリングエコノミーサービス

Airbnb(エアビーアンドビー)
ホームシェアリングのマッチングサービスを提供する世界最大手の「Airbnb」と連携し、2019年のラグビーワールドカップを見据えた、国内外からの訪問客の促進による民泊事業の推進を図るため、観光促進に関する覚書を平成28年10月20日に締結。
https://www.airbnb.jp/

 

TABICA(タビカ)
地域ならではの観光体験を掲載・予約できるマーケットプレイス「TABICA」と連携し、平成29年3月の「Meetup Kamaishi 2017」開催事にTABICAのサイトに当市の体験プログラムを掲載した特集ページを組むなど、全国的なプロモーションを実施。
https://tabica.jp/

 

COGICOGI(コギコギ)
市内の2次交通の利便性向上に向けて、IoT活用おもてなし実証事業「三陸おもてなしステーション」の実証実験として、コギコギ株式会社とが、三陸鉄道釜石駅にシェアサイクルポートを導入し、街中の移動手段を提供。
https://cogicogi.jp/

 

シェアのり
株式会社シェアのりが、個人所有の車をシェアし、来訪者等への移動手段として提供。
https://sharenori.com/

この記事に関するお問い合わせ
釜石市 総務企画部 オープンシティ推進室 戦略推進係
〒026-8686 岩手県釜石市只越町3丁目9番13号
電話:0193-27-8463 / Fax 0193-22-2686 / メール
元記事:https://www.city.kamaishi.iwate.jp/shisei_joho/keikaku_torikumi/chihousousei/detail/1215342_3278.html
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市長から感謝状を受けた瀧澤社長(中央左)

大石地域センター ホール増築、完成祝う〜住民交流、避難の拠点に

 拡充され集会機能が向上したホール(右半分)

拡充され集会機能が向上したホール(右半分)

 

 釜石市唐丹町の大石地域交流センターの集会室が増築を終え、18日に現地で完成式が行われた。同センターは、東日本大震災で住民の避難所となったが手狭だった。今回の増築工事では、多目的ホールをほぼ2倍の広さに拡充。住民が十分に避難できるスペースを確保した。

 

 大石地区には現在34世帯が住む。高台にある大石小は2001年3月に閉校、唐丹小と統合された。2年後、市は跡地に同センターを建設。幅広く活用する社会教育施設に位置づけた。

 

 木造平屋建ての同センターは延べ床面積122平方メートル。トイレ、シャワー室、更衣室、調理室があり、増築工事では多目的ホール(約40平方メートル)を拡充。車いすでホールに入る外付けのコンクリートスロープも新設した。事業費1千万円は、健康食品通販業「毎日元気」(本社東京都、瀧澤潤賜=じゅんよう=社長)が寄付した。

 

 完成式には瀧澤社長(43)、野田武則市長、大石町内会の畠山一信会長らが出席。神事で施設と住民の安全を祈願し、完成を祝った。野田市長が瀧澤社長に感謝状を贈った。

 

市長から感謝状を受けた瀧澤社長(中央左)

市長から感謝状を受けた瀧澤社長(中央左)

 

 2007年に設立した毎日元気は、サケの白子(精巣)や脳下垂体から抽出した物質をベースとする健康食品の生産、販売を主力に事業展開。現在は釜石市を中心に大船渡市、大槌町、宮古市から原料を調達する。

 

 東日本大震災では釜石市の保冷倉庫に保管した原料、製造委託工場を失ったが、三陸沿岸の漁業関係者の協力で原料を確保、事業を復旧、継続した。瀧澤社長は11年以降、釜石市など関係自治体に多額の支援金を贈り続けている。

 

 震災で大石に犠牲者はなかったが、集会施設となっていた林業センターが津波で流失。交流センター、地区コミュニティ消防センターが避難所となったが、いずれも狭かった。

 

 畠山会長(69)は「十分な暖房もなく、車中泊するお年寄りもいて、大半は津波を免れて残った自宅に戻った」と振り返った。

 

 完成式で野田武則市長のあいさつを受け、瀧澤社長は「数年前から、原料は唐丹町漁協をメーンに提供を受けている。大石にも来ている。12年間、事業を続けることができたのもみなさんのおかげ。ささやかな恩返しのつもりだ。地域のために役立ち、楽しいことに使ってほしい」と期待した。

 

 大石小の跡地には戸建ての復興住宅3棟もある。畠山会長は「避難所ばかりでなく、集会や郷土芸能の練習もできる。夏の海浜学校で来る子どもたちにも喜ばれるだろう」と思いを膨らませた。

 

(復興釜石新聞 2017年12月23日発行 第650号より)

 

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ホールA(音楽ホール仕様)の舞台に上がり、全体を見渡す参加者ら

釜石市民ホール初の一般公開、芸術・文化活動の新拠点アピール〜にぎわい創出にも期待

 ホールA(音楽ホール仕様)の舞台に上がり、全体を見渡す参加者ら

ホールA(音楽ホール仕様)の舞台に上がり、全体を見渡す参加者ら

 

 8日に開館した釜石市大町の釜石市民ホール(愛称TETTO)で17日、一般向けの施設見学会が開かれた。この後、24日、来年1月14日にも行われる予定で、芸術・文化活動の新たな拠点を多くの人たちに広くアピールする。

 

 見学会は午前10時から午後4時までの時間帯で実施。30分ごとに訪れた人たちを施設スタッフらが案内し、1、2階の各スペースの特徴などを説明した。この日は市内外から約300人が見学に訪れた。

 

 同施設は鉄筋コンクリート造り、地上4階、地下1階建て。メーンのホールAは838席(1階可動席480、2階固定席358)を備え、音楽ホール(音響反射板仕様)、劇場(袖幕仕様)の2形式で利用できる。平土間式のホールB(1階)は、約200席の設置が可能で、講演会やパーティーを含む多目的な利用を想定する。

 

 最大の特徴はホールA、共通ロビー、ホールBを一つのフロアにでき、ホールBを開ければ、屋外の北側広場(屋根有り)までつなげた形で利用可能なこと。ホールAの1階席を収納すると、舞台奥からホールBまで長さ約80㍍にわたる平土間空間が出現。プロレスや大相撲などのスポーツイベントから結婚式まで多彩な行事に対応できる。

 

 この他、1階にはギャラリー(可動間仕切り設置可能)、スタジオ(3室)、控室(7室)、ピアノ練習室、2階には和室(2室)、会議室、テラス(4カ所)がある。

 

 3回の見学会では、ホールAの仕様を変えて公開。今回は音楽ホール形式、24日は劇場形式、1月14日はホールAからBを一体型にしたオールフラット形式で見てもらう。

 

 甲子歌う会の会長を務める坂本慶子さん(71)は、来年7月に同ホールで行う予定の歌の集い(県内15団体参加)の下見を兼ねて見学。「最新式の造りで、外が見える開放的な雰囲気が今までにない感じ。震災で支援を受けたお礼と新ホールのお披露目を合わせ、ここから明るい話題を発信したい」と意気込んだ。

 

 夫婦で見学に訪れた野田町の男性(54)は「立派な建物で素敵な空間。音楽が好きなのでホールの座席で鑑賞してみたい」と期待を膨らませ、「まちの中心に市民が集まれる場所ができたのはうれしいこと。駐車場やバス停も近いので、利便性も上がるだろう」と話した。

 

 市民ホールの玉ノ井衛館長は「多くの可能性を秘めた施設。名称の通り市民が主役となり、どんどん活用していただければ。広報活動にも力を入れ、認知度を高めていきたい」としている。

 

 同館の一般利用は、ホールA、B、ギャラリーを除き、来年1月5日から可能になる。グランドオープンする4月1日からはホールなども利用できるようになる。申し込みや問い合わせは市民ホール(電話0193・22・2266)へ。年末年始の休館は12月29日から1月3日まで。

 

(復興釜石新聞 2017年12月20日発行 第649号より)

 

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「みのすけ沼」の豊かな自然環境を紹介する写真展

懐かしの「みのすけ沼」を写真で 野鳥、昆虫、水生生物など60点〜自然の宝庫復活願い、21日まで鵜住居で

「みのすけ沼」の豊かな自然環境を紹介する写真展

「みのすけ沼」の豊かな自然環境を紹介する写真展

 

 東日本大震災で失われた釜石市片岸町の「みのすけ沼」周辺の自然や生き物を紹介するミニ写真展が、鵜住居町の鵜住居公民館で開かれている。ふるさとの自然を愛する仲間でつくる市内の任意団体「グリーンリンケージ」(加藤直子代表)が企画。沼周辺の観察を通して撮りためた野鳥や昆虫、水生生物などの写真約60点を展示している。21日まで(土、日曜は休館)。

 

 みのすけ沼は大槌湾に注ぐ鵜住居川の河口の開けた場所にあり、面積は約1万平方メートル。地元では、もともと沼としてあったという説もあれば、かつては川の一部で堤防が建築されたため蛇行する川の流れが途切れて沼になったという人も。「みの助さん」という人が釣りをしていたのでそう呼ばれるようになったという話もあるとか…。

 

 沼の周辺には畑や田んぼが広がり、環境省のレッドデータブック準絶滅危惧種に指定されているミズアオイが自生するほか、野鳥が年間200種、トンボは30種が確認されるなど優れた自然環境を有していた。

 

 震災では沼周辺も壊滅的な被害を受けた。同団体の臼澤良一さん(69)=大槌町=は「(みのすけ沼は)県内有数の野鳥観察のスポット。巨大な生態系を釜石に残し、多くの人に自然を見てもらうため活動してきた」と振り返り、そうした気持ちは今も変わらないと強調。自然の多様な生き物たちが片岸町に戻ってくることを願い、写真展を企画した。

 

 展示されているのは被災前の沼周辺の風景、自然観察や調査時の様子を紹介する写真。国の天然記念物のオジロワシ、“パンダガモ”とも呼ばれるミコアイサなどの野鳥、ギンヤンマやマダラヤンマといった多種のトンボ、ナマズ、ウシガエル、スジエビなど水生生物を写したものも並ぶ。

 

 写真の多くは甲子町出身の菊地利明さん(52)=気仙沼市=が撮影。「みのすけ沼の自然環境を象徴する生き物たちを選んだ。市内の自然観察の憩いの場で、その周辺でしか見えないものもあった」と作品を見つめる。

 

 加藤代表(71)=甲子町=らが再生に取り組むミズアオイを紹介する写真もある。震災で沼の周辺では全ての生き物が消えたと思われたが、2012年、かつてミズアオイが自生していたと思われる片岸町内の土砂を採取し、場所を移して発芽実験を実施。開花に成功させると、その年以降にはトンボやカエルなど生き物の姿も見えるようになっているという。

 

 ミズアオイの花言葉は「前途洋々」。加藤代表は「懐かしいと思いながら見てほしい。皆さんの思い出と重なり、心を温めてもらえたら、うれしい」と願う。

 

(復興釜石新聞 2017年12月16日発行 第648号より)

 

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復興釜石新聞と連携し、各号紙面より数日の期間を設け記者のピックアップ記事を2〜3点掲載しています。

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