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つなぐ記憶と教訓 発信に一役!?「大震災かまいしの伝承者」に挑戦 記者体験レポート

「大震災かまいしの伝承者」の基礎研修会

「大震災かまいしの伝承者」の基礎研修会

 
 東日本大震災の体験や教訓を後世に語り継ぐ「大震災かまいしの伝承者」。身近な人や市外から訪れる人たちに事実を伝えて記憶の風化を防ぎ、防災意識の向上につなげようと釜石市が養成する。震災から間もなく13年。経験をしていない世代が増える中、記憶を伝え続ける重みは増す。「どう受け継ぎ、残すか」。伝承者の基礎研修会に記者が参加してみた。
 
 この制度は2019年にスタート。地震のメカニズムと津波被害の特質、市が震災後に定めた防災市民憲章などに理解を深める基礎研修を終えると伝承者に認定される。第3期まで実施していて、累計で98人が修了。認定期間はおおむね2年間で、現在は59人が認定されている。伝承手法などを学べるステップアップ研修(任意)もある。
 
 今回、記者が臨んだのは4期目となる基礎研修会。1月28日に鵜住居町の鵜住居公民館で行われ、中学生から50歳代までの12人が参加した。これまで座学とグループワークを組み合わせ“一日がかり”だったが、今期はグループ活動を行わず、半日で終える内容に変更。代わりに、「釜石の震災」に重点を置く形にし、市の伝承施設「いのちをつなぐ未来館」の見学を組み込んだ。
 
基礎研修で配付されたテキスト

基礎研修で配付されたテキスト

 
メモを取りながら熱心に耳を傾ける参加者

メモを取りながら熱心に耳を傾ける参加者

 
 座学の講師は、岩手大学地域防災研究センターの山本英和准教授(地域防災工学)、小笠原敏記教授(海岸工学)、福留邦洋教授(都市防災・都市計画・復興まちづくり)の3人。合わせると90分ほどの講義は駆け足で進んだ印象。振り返りが必要だ。
 
講師を務めた岩手大学地域防災研究センターの教授ら

講師を務めた岩手大学地域防災研究センターの教授ら

 
 講師陣に共通する指摘は「災害は繰り返し発生し、どこにいても災禍に見舞われる可能性があること」。近年はさまざまな自然災害が各地で多発。講義で示された防災科学技術研究所「地震ハザードステーション」によると、今後30年間に岩手県沿岸地域が大きな揺れに見舞われる確率は約3%だという。が、空き巣や火災、ひったくり被害に遭うのと同程度の確率と聞けば、「低くない。あるかも」と感じた。
 
 「いつかはくる」と予想できても、「予知はできない」と講師ら。だからこそ、「備えを」と繰り返した。過去の災害の経験を後世に伝え、次の災害に備えることは大切である―。記憶の橋渡し、伝承者に期待される役割だと背筋が伸びる気がした。
 
いのちをつなぐ未来館を見学する参加者

いのちをつなぐ未来館を見学する参加者

 
語り部の川崎杏樹さん。経験を織り交ぜ教訓を伝える

語り部の川崎杏樹さん。経験を織り交ぜ教訓を伝える

 
 未来館を案内したのは、施設職員で語り部の川崎杏樹(あき)さん(27)。当時の小中学生が命を守り抜くことができた背景にある実践的な防災教育を紹介し、「この教訓を私たちと同じように発信してほしい」と望んだ。
 
 一方、避難した大勢が亡くなった鵜住居地区防災センターの事実を伝えるコーナーで強調したのは「避難場所」(災害から身を守るため一時的に逃げ込む先)と「避難所」(避難者が一定期間滞在し生活環境を確保できる場所)の違い。「2つの言葉の違いを覚えておく。こういう最低限の知識を身に付けていればいいと思う。小さい防災力が集まれば、大きな防災力になる」と訴えた。
 
研修を終えた参加者に伝承者証が手渡された

研修を終えた参加者に伝承者証が手渡された

 
 こうして研修は無事終了。12人に伝承者証と名札が交付された。これで認定者は71人に。震災の津波で祖父母を亡くした菊池音乃(のんの)さん(釜石高2年)は「当時は何もできなかったけど、これからは語り継ぐことで、災害で悲しむ人を少しでも減らしたい」と意欲を見せた。一緒に伝承者となった妹の音羽さん(甲子中1年)は地域を知る大切さを感じた様子だった。
 
伝承者証を手にする菊池音乃さん(左)と音羽さん姉妹

伝承者証を手にする菊池音乃さん(左)と音羽さん姉妹

 
 国土交通省東北地方整備局職員の沼﨑健(たける)さん(27)は、当時釜石東中2年生。独自に語り部として活動していたが、「独りよがりにならないよう共通認識を」と、古里が勤務地になったのを機に研修を受けた。高校入学時に地域を離れたこともあり、「その間の動きに触れることができ、有意義だった」と感想。同級生の川崎さんが熱心に伝える姿に刺激を受け、そして仲間も得て「語り続ける」気持ちを強めた。
 
 市震災検証室の正木浩二室長は「震災の体験、聞いたこと、学んだこと、防災市民憲章の理念を身近なところで、大切な人に、機会があるごとに語り継いでほしい」と求める。震災から時がたつこともあってか、研修への参加希望者は減少。それでも「未来の命を守るためにも伝え続けなければいけない」と、研修の内容など模索を続ける。
 
伝承者に仲間入りした12人と講師陣

伝承者に仲間入りした12人と講師陣

 
 「覚えてほしい」。講師や語り部たちが時折こぼした言葉。それを誰かに話す―それも伝承になるのではないか。体験者ではなくても、教訓を受け継ぎ、伝えることはできる。その行動が災害に備え、防災意識を高めることにつながるはず。あの日、津波にのまれるまちを「何だろう」とただ眺めていた…気がする。記者となったのは震災後。「自分の記憶も振り返ってみよう」。研修を終え、そんな気持ちになった。その気づきを生かし、まちの動き、市民の思いを伝え続けられるように。

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広報かまいし2024年2月1日号(No.1825)

広報かまいし2024年2月1日号(No.1825)
 

広報かまいし2024年2月1日号(No.1825)

広報かまいし2024年2月1日号(No.1825)

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【P1】
第13回全国虎舞フェスティバル

【P2-3】
令和6年能登半島地震への支援
釜石市地震・津波避難訓練 他

【P4-5】
物価高騰対策給付金
灯油等購入費の一部を助成します 他

【P6-7】
まちのお知らせ

【P8】
イベント案内 他

この記事に関するお問い合わせ
釜石市 総務企画部 広聴広報課 広聴広報係
〒026-8686 岩手県釜石市只越町3丁目9番13号
電話:0193-27-8419 / Fax 0193-22-2686 / メール
元記事:https://www.city.kamaishi.iwate.jp/docs/2024020100012/
釜石市

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釜石市公式サイトと連携し、縁とらんすがピックアップした記事を掲載しています。記事の内容に関するお問い合わせは、各記事の担当窓口までお問い合わせください。
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歌に踊りに、餅つき!釜石平田地区・つながるカフェ 高齢者と中学生 心通わす

つながるカフェでは高齢者も中学生もみんな笑顔

つながるカフェでは高齢者も中学生もみんな笑顔

 
 釜石市平田地区の住民は22日、大平町の大平中(髙橋信昌校長)の1年生(19人)と交流し、餅つきや合唱などを楽しみながら心を通わせた。
 
 市(平田地区生活応援センター)と、地区内の特別養護老人ホームあいぜんの里を運営する社会福祉法人清風会が主催する「つながるカフェ」の一環。心身の健康維持や孤立予防などにつなげるのを狙いに継続し、17回目。
 
 上平田ニュータウン集会所に高齢者ら約30人が集まり、きねと臼を使った餅つきに挑戦。住民と生徒が2人一組になってきねを持ち、調子を合わせて振り上げた。周囲で見守る人たちは「よいしょー、よいしょー」と掛け声を上げて応援。つき上げた餅は小さく切り分け、お汁粉に入れて味わった。
 
餅つきで交流する大平中生と平田地区の住民ら

餅つきで交流する大平中生と平田地区の住民ら

 
「よいしょ」の掛け声と手拍子で餅つきを応援

「よいしょ」の掛け声と手拍子で餅つきを応援

 
 住民を楽しませようと、生徒たちは合唱を披露。「地域の支えで学校生活を送ることができる」と感謝を込めて選曲した「ふるさと」では住民も歌声を重ねた。“腹ごなし”に住民らが取り組む100歳体操を体験したり、「釜石小唄」に合わせて踊ったり。みんな笑顔で、気持ちを一つにして触れ合いを楽しんだ。
 
歌声を重ねる曲は「ふるさと」で決まり

歌声を重ねる曲は「ふるさと」で決まり

 
「釜石小唄」では自然に踊りの輪が広がった

「釜石小唄」では自然に踊りの輪が広がった

 
 孫世代との交流を喜ぶ佐藤清さん(80)は「若いパワーをもらって、より元気になった。孫たちは遠方にいて、子どもと交わる機会は少ないから、こういう場を設けてもらってありがたい。こうした時間を共有することで、地域に愛着を持ってもらえたら」と目を細めた。
 
みんなで元気に100歳体操も楽しむ

みんなで元気に100歳体操も楽しむ

 
 同校では総合的な学習の時間を活用し、3年間、福祉について学ぶ。同法人の支援を受け、介護の現場見学や技術体験、認知症サポーター養成講座などに取り組む。6年目の今年度、1年生はコミュニケーションについての座学で高齢者との関わり方などを学習。同ホームでの実践を予定していたが、感染症の影響で見送っていた。
 
準備や運営も住民と中学生が力を合わせる

準備や運営も住民と中学生が力を合わせる

 
つながるカフェで触れ合いを楽しんだ参加者

つながるカフェで触れ合いを楽しんだ参加者

 
 中島優南さんは、隣り合わせた高齢者に自分から声を掛けた。心がけたのは「ゆっくり、大きな声で話すこと」。家族以外の高齢者と触れ合う機会は少ないが、座学で福祉の大切さを実感。今回の実践は地域の人を知る場になり、「見かけたら、あいさつしたい」と笑顔を見せた。見守る教諭は「つながるカフェは実践の場。子どもたちが主体となって企画、運営できるようになれば」と先を見据えた。

「冬の星空観察会」を開催します

「冬の星空観察会」を開催します

h「冬の星空観察会」を開催します

日時

令和6年2月9日(金)18:30~20:00
予備日:令和6年2月16日(金)18:30~20:00
当日延期または中止の場合は、申込時の連絡先へ電話連絡します。

場所

集合場所:根浜シーサイド≪レストハウス≫(現地集合・現地解散)
駐車場:根浜シーサイド駐車場
観察場所:根浜シーサイドキャンプ場

募集定員

30名(先着順)
申込期限:令和6年2月7日(水)まで
※参加費は無料です。
※小学生のお子様は必ず保護者同伴でお願いします。

申込方法

電話(0193-27-8453)またはFAX(0193-22-2199)でお申し込みください。
FAXの場合、添付の申込用紙をご使用ください。
冬の星空観察会チラシおよび申込用紙[PDF:802KB]
※電話でのお問合せ・お申し込みは平日8:30~17:17のみ

持ち物

筆記用具、懐中電灯、防寒具
※双眼鏡は貸し出せますが数に限りがあります。

この記事に関するお問い合わせ
釜石市 市民生活部 生活環境課 環境保全係
〒026-8686 岩手県釜石市只越町3丁目9番13号
電話:0193-27-8453 / Fax 0193-22-2199 / メール
元記事:https://www.city.kamaishi.iwate.jp/docs/2022111400010/
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夢詰まった贈り物“大谷グローブ”釜石にも届く 栗林小児童、やる気スイッチ刺激される

大谷翔平選手から贈られたグローブを喜ぶ栗林小児童

大谷翔平選手から贈られたグローブを喜ぶ栗林小児童

 
 「野球しようぜ!」。話題のグローブが釜石市内にも届いた。同じ岩手県出身、投打「二刀流」で活躍する憧れのメジャーリーガー、大谷翔平選手(奥州市出身)からの“すてきでかっこいい贈り物”に子どもたちは、にこにこ顔。栗林町の栗林小(八木澤江利子校長、児童32人)では23日に贈呈式を行い、キャッチボールで使い始めをした。
 
 大谷選手は2023年、子どもたちに野球に興味を持ってもらおうと、全国の小学校約2万校に計約6万個のジュニア用グローブを贈ることを発表。釜石では同年12月25日に市教育委員会に届けられた。すぐに全9小学校に引き渡したが、冬休み期間中だったため、3学期の始業式に合わせ各校で披露された。
 
大谷選手が小学校に贈ったグローブやメッセージ

大谷選手が小学校に贈ったグローブやメッセージ

 
 栗林小でも始業式(1月17日)で紹介した。大谷選手のメッセージを伝え、職員室前の廊下にグローブを展示すると、児童は「わー」と駆け寄って触ったり、はめてみたりと大喜び。「話題の青だね」とドジャースへの移籍を意識した言葉もあったという。
 
 贈呈式で、「大谷選手はなぜ、このグローブを贈ったか」と児童に問いかけた八木澤校長。添えられたメッセージを引用し、「野球を楽しんでほしいという願いはもちろん、これからを生きる皆さんに夢を与え、勇気づけるためのシンボルになることを望んでいるから。そして、野球こそが大谷さんに充実した人生を送る機会を与えてくれたものだから」と伝えた。グローブを手にするたびに夢について考えたり、何かを頑張ろうという思いを持つことを期待している、と贈り主の気持ちを推察。「すてきでかっこいいグローブを大事に、みんなで楽しみながら使っていきましょう」と呼びかけた。
 
八木澤江利子校長(左上の写真)が児童会長にグローブを手渡した

八木澤江利子校長(左上の写真)が児童会長にグローブを手渡した

 
 「やるぞー!」。5年の藤原大叶(ひろと)君と小林彩恋(あこ)さんが“始球式”ならぬ“使い始めキャッチボール”を行い、ほかの児童は「おぉ~」と歓声を上げながら見つめた。小林さんは「なんか軽い。使いやすかった」と感想。児童会長の小笠原実紅(みく)さんは、贈ってくれた大谷選手への感謝を口にした。
 
使い始めのキャッチボールを見守る栗林小の児童

使い始めのキャッチボールを見守る栗林小の児童

 
憧れの人からの贈り物に笑顔を見せる野球少年

憧れの人からの贈り物に笑顔を見せる野球少年

 
 贈られた“大谷グローブ”は、それぞれ大きさの違う右利き用2個と左利き用1個の計3個。いずれも小指の内側の部分に大谷選手のサインが刻まれている。野球に打ち込む藤原君は、憧れの人からの贈り物に感激。「大谷翔平さんみたいに夢をどんどんかなえていきたい」と“やる気スイッチ”を入れた。
 
大谷選手が送るメッセージ「野球しようぜ!」

大谷選手が送るメッセージ「野球しようぜ!」

 
 同校ではグローブに触れたことがない児童もいて、体育の授業で活用して慣れてもらうことからスタート。ボールを真っすぐに投げたり、キャッチできるようになったら、学年ごとに使う順番を決めて、休み時間などでも楽しむことにしている。

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探す、見つける、知る喜び「今年は何種類?」野鳥の宝庫・釜石で水辺の観察会 自然散策のススメ

釜石・片岸公園に飛来しているオオハクチョウ=13日、水辺の鳥観察会

釜石・片岸公園に飛来しているオオハクチョウ=13日、水辺の鳥観察会

 
 県沿岸有数の野鳥生息地、釜石市片岸町の鵜住居川河口周辺で13日、恒例の水辺の鳥観察会(市主催)が開かれた。東日本大震災の津波で大きな被害を受けた同所。2021年に減災機能を兼ね備えた水辺環境として整備された片岸公園には、今年もオオハクチョウが多数飛来。参加者の目を楽しませた。河口周辺では他にも、大小さまざまな色とりどりの野鳥を確認。フィールドスコープや双眼鏡で見ると、各個体の特徴がよく分かり、参加者は野鳥観察の面白さを体感した。
 
 子どもから大人まで32人が参加。釜石野鳥の会(臼澤良一会長、7人)の5人が講師を務めた。始めに片岸公園駐車場で、同会会員が周辺で見られる野鳥を写真で見せながら紹介。体色や鳴き声など判別のポイントを教えた後、片岸公園から釜石鵜住居復興スタジアム前の鎧坂橋付近までを歩きながら野鳥を探した。
 
釜石野鳥の会の会員が周辺で見られる鳥を紹介

釜石野鳥の会の会員が周辺で見られる鳥を紹介

 
沼地に憩う野鳥の姿を探す参加者(上段)。双眼鏡やフィールドスコープで確認(下段)

沼地に憩う野鳥の姿を探す参加者(上段)。双眼鏡やフィールドスコープで確認(下段)

 
 駐車場から沼地に向かうと、聞こえてきたのは「オオハクチョウ」の鳴き声。羽が灰色の幼鳥を含む群れが見られた。同会の菊地利明事務局長は「ハクチョウは天敵に襲われないよう水面に浮いたまま寝る。朝早く飛び立ち、田んぼにこぼれた米を食べたり、岸辺に生える草の根を食べる。日本で見られる鳥の中では体重が重いほう」と説明。観察時の注意点として、距離を保つことや餌を与えないことを挙げた。周辺を定期的に散歩している方によると、これまでに最大で42羽が確認されたという。沼地ではこの他、頬が白い「ホオジロガモ」や頭が茶色い「ホシハジロ」なども見られた。
 
さまざまな種類の野鳥が集まる片岸公園の沼地

さまざまな種類の野鳥が集まる片岸公園の沼地

 
公園を散歩する人たちの目を楽しませているオオハクチョウの群れ

公園を散歩する人たちの目を楽しませているオオハクチョウの群れ

 
 鵜住居川の中州では「アオサギ」や「クロガモ」、「イカルチドリ」などを確認。鵜片橋上流に目をやると石の上で憩う「マガモ」の雄(頭が緑)、橋の下に広がるヨシ原では「ホオジロ」も見られた。参加者が楽しみにしていたのは“飛ぶ宝石”と称される「カワセミ」。ここ数年、鎧坂橋付近で確認されており、この日は一瞬だが、飛ぶ姿が見られた。特徴である頭から背中にかけての青色が見え、参加者を喜ばせた。
 
鵜住居川水門の近くで見られたアオサギ。体色のコントラストが美しい。下段奥の右側はマガモの雄(緑色の頭が特徴)

鵜住居川水門の近くで見られたアオサギ。体色のコントラストが美しい。下段奥の右側はマガモの雄(緑色の頭が特徴)

 
左上:ダイサギ。右上:イカルチドリ。下段:ヒドリガモ。公園内の草地で餌をついばむ

左上:ダイサギ。右上:イカルチドリ。下段:ヒドリガモ。公園内の草地で餌をついばむ

 
 約1時間の観察後、駐車場に戻ると…。道路沿いに並ぶ電柱の上に鎮座していたのは、タカの仲間「ノスリ」。トビよりも一回り小さく、短めの尾は開くと先が丸みを帯びているのが特徴。獲物を見つけると急降下し、野を擦るように飛んで捕まえることから、この名がついたといわれる。
 
 最後は見た鳥を確認する「鳥合わせ」。見られたのは29種類で、昨年並みだった。鵜住居町の町田音和ちゃん(5)は鳥と恐竜が大好き。保育園の帰りにほぼ毎日、ハクチョウを見に来るほどで、「鳥見るの楽しい。びっくりしたのはカワセミ。パパが買ってくれた図鑑に載っている鳥をもっと見てみたい」と興味津々。母理美さん(41)は「名前を知らなかった鳥も見られた。釜石は自然が豊か。娘にはここでしか見られないものをいっぱい見せてあげたい」。「また来ようよ」と話す音和ちゃんを温かく見守った。
 
 今回の観察会では子どもの参加も増えた。菊地事務局長は「興味を持ってくれて感激。生で見られる場所があるのが釜石の良さ。本物を見ることは子どもたちにとってもいい経験になる」と観察会の継続を願う。
 
子どもから大人まで楽しめる野鳥観察。名前が分かるとさらに面白い!

子どもから大人まで楽しめる野鳥観察。名前が分かるとさらに面白い!

 
夢中でカメラをのぞき込む子に笑顔を見せる臼澤会長(左)。右上:電柱に止まるノスリ。右下:街中でもあまり見られなくなったスズメの群れ

夢中でカメラをのぞき込む子に笑顔を見せる臼澤会長(左)。右上:電柱に止まるノスリ。右下:街中でもあまり見られなくなったスズメの群れ

 
 同観察会は市生活環境課が1977年から継続。悪天候や震災の影響で中止された年もあるが、蓄積されたデータは同所の自然環境の推移を知る一助にもなっている。鵜住居川河口周辺は震災前、野鳥が営巣できる樹木も多く、観察会では50種前後が確認できた。津波で河口の位置が変わり、堤防内外の自然環境も大きく変化したことで、被災後数年間は、見られる野鳥の種類、数ともに激減したが、観察会が再開された直近の過去3年間は30種ほどで推移している。
 
 「さらに草木が増えてくれば、野鳥の生息、飛来数も増える可能性はある。最も重要なのは鳥が餌を食べられる環境。食物連鎖がうまくいくことで、より多くの鳥が生息できるようになる」と野鳥の会の臼澤会長。近年はサケの遡上が減ったことで、産卵後のサケなどを餌とするワシの姿が見られなくなっているという。
 
鵜住居川周辺は絶好の野鳥観察スポット。皆さんもぜひ楽しんでみては?

鵜住居川周辺は絶好の野鳥観察スポット。皆さんもぜひ楽しんでみては?

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ガザへ届け!平和の願い 釜石の子どもら、たこに託す つながる空見上げ「そばにいるよ」

ガザの平和を願い、たこ揚げをする釜石の子どもたち

ガザの平和を願い、たこ揚げをする釜石の子どもたち

 
 「共に」「平和とふっこうを」―。そんな願い、メッセージがつづられた手作りのたこが8日、釜石の大空を舞った。東日本大震災以降、日本の被災地に向けて応援のたこ揚げを続けるパレスチナ自治区ガザの子どもたちと互いを励ます交流をつないできた釜石市民有志らが企画した催し。「空を見上げて明るい顔に」。イスラエル軍とイスラム主義組織ハマスの戦闘が激しさを増し、過酷な生活を強いられる現地に「思い、届け」と切に願う。
 
 震災復興を願ってガザ地区の子どもたちがたこを飛ばすのは2012年が始まり。国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の主催で毎年続けられている。これに応える形で、15年に釜石でガザに向けたたこ揚げが行われ、感謝と平和のメッセージを発信。UNRWAとNPO法人日本リザルツが連携して交流活動を続け、ガザの子どもたちが釜石を訪れて一緒にたこ揚げを楽しむ機会もあった。戦闘と津波。つらい経験をした子どもたちの互いを思いやる気持ちをつないできた。
 
 この交流の形は釜石市内外の有志でつくる「ガザ・ジャパン希望の凧(たこ)揚げ交流会実行委員会」が継ぎ、18~20年にイベントを実施。新型コロナウイルス禍を経て、昨年10月には唐丹中の生徒らの希望を受け、たこ揚げに協力した。
 
たこ揚げ会場は鵜住居。たこ作りから開始

たこ揚げ会場は鵜住居。たこ作りから開始

 
思い思いのイラストやメッセージを書き込む

思い思いのイラストやメッセージを書き込む

 
 今回の会場は、鵜住居町の「うのすまい・トモス」。小中学生を中心に約30人が参加した。思い思いの絵や文字を書き込んだたこを手づくりし、込めた思いや願いを伝える動画を撮影。「幸せ」とつづった小川原瑛大君(鵜住居小3年)は「平和を考える機会になった。日本から応援しているよ」とメッセージを送った。
 
 「戦争が一刻も早く終わってほしい。安心安全に生きてほしい」と願う子が選んだ文字は「望」。「平和(PEACE)」という言葉とそれを象徴するハトを描いた親子は「希望を捨てないで。生きてください」と思いを寄せた。能登半島地震を意識した様子の児童は「じしんくるな」と書いたり、桜の花びらをイメージした折り紙を貼ったものもあった。
 
さまざまな思いが込もった、たこが完成

さまざまな思いが込もった、たこが完成

 
ガザにつながる釜石の空にたこが舞った

ガザにつながる釜石の空にたこが舞った

 
 青空の下、子どもたちが元気に走り回って、たこ揚げ。時折強い風が吹くと、色とりどりのたこが空高く舞い上がった。「国は離れているけど、そばにいると思ってもらえたら」。上野聖奈さんと香川真紀さん(ともに唐丹中2年)は、パレスチナと日本の旗をモチーフにした、たこにそんな思いを託した。
 
元気にたこ揚げを楽しむ子どもたち

元気にたこ揚げを楽しむ子どもたち

 
オンライン交流の時間も。直接気持ちを伝えた

オンライン交流の時間も。直接気持ちを伝えた

 
 「たこ揚げは空を見上げることで顔が明るくなる。そして、言葉で伝えられないメッセージも届くと思う」。同実行委メンバーの一人、岩手大教育学部4年の野呂文香さん(22)=甲子町出身=はそう話し、穏やかに笑った。この活動に高校生の頃から関わってきて、深刻なガザの情勢を憂慮。「震災からの復興を願い続けてくれるガザへの恩返しになれば。上を向ける平和が広がるように」と祈った。
 
 同じように高校時代から交流する静岡大地域創造学環4年の高橋奈那さん(22)=小川町出身=は「同世代の子が紛争に巻き込まれていることは大きな衝撃だった」と思い起こす。自然災害で傷ついた震災の被災地と重ね、「平和、安心安全な暮らしを願うのは共通のこと」ときっぱり。たこ揚げという楽しい思い出を通じて、多くの人に「背景にあるものが伝わったらいい」と期待した。
 
企画した野呂文香さん(左)と高橋奈那さん

企画した野呂文香さん(左)と高橋奈那さん

 
 たこ揚げの様子は、近隣地域に身を寄せるガザの子どもらにもオンラインで届けられた。復興支援で釜石に暮らした経験がある実行委の佐藤直美さん(50)=仙台市=は「たくさんの人がメッセージを寄せてくれた。『一緒に頑張ろう』『一人じゃないよ』とか、自分事として捉えているのが印象的だった。これからも続けていきたい」と目を細めた。
 
希望を託し、たこを揚げた参加者

希望を託し、たこを揚げた参加者

 
 「会いたい」。釜石の子どもたち、実行委メンバーは一緒にたこ揚げできる日を待っている。

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能登地震支援 物資持ち寄り、搬送準備 釜石ライオンズクラブ「震災の恩返し」

支援物資を整理する釜石ライオンズクラブの会員

支援物資を整理する釜石ライオンズクラブの会員

 
 釜石ライオンズクラブ(LC、大和田助康会長、会員48人)は、能登半島地震の被災地支援として石川県に物資を送ることを決め、14日に釜石市只越町の事務所で仕分けや箱詰め作業を行った。東日本大震災の支援への恩返しを込めた取り組み。道路事情などで現地に入るのは難しいことから、同じような支援に乗り出している近隣県の拠点に若手会員らが直接運び込む考えだ。
 
 元日のニュースを見て、会員たちはそれぞれ震災当時のことを思い出した。「とにかく動こう」。中でも、若手会員ら6人でつくる釜石はまゆりクラブ支部(大和田崇士会長)の思いは強く、ベテラン会員に働きかけた。7日にLCの役員会で支援を決めると、翌日から会員らから次々と物資が持ち込まれた。
 
会員たちが寄せた思いも箱に詰め込む

会員たちが寄せた思いも箱に詰め込む

 
 集まったのはミネラルウォーター(2リットル、6本入り)18箱、米10キロ、子ども・大人用のおむつ、カイロ、タオル類、缶詰、カップ麺など。箱詰め作業は6人で行い、品目ごとに段ボール箱にまとめ入れた。
 
 LCの大和田会長は「震災の時は全国から物資だけでなく、応援という気持ちでも支えをいただいた。組織の力、つながり、善意のありがたさを実感した」と振り返り、「その恩返しに」と力を込める。
 
「震災の恩返しをする時」とLCの大和田会長(右から2人目)

「震災の恩返しをする時」とLCの大和田会長(右から2人目)

 
 今回、若手が積極的に行動する。同支部メンバーは釜石商工会議所青年部としても活動していて、そのつながりを生かして現地のニーズを把握。中継基地となる長野県の商議所に物資を運ぶ考えだ。搬送に名乗りを上げた同支部の宍戸文彦さん(48)が15日に受け取り。「微力だが、気持ちで動きたい。3・11でもらったように。今は下を向いているだろうが、外の人が出向くことでプラスの気の流れを届けたい」と気持ちがはやる。
 
30を超える段ボール箱を車に詰め込む

30を超える段ボール箱を車に詰め込む

 
「足を運ばなければ見えないこともある。心に寄り添っていきたい」と現地を思う宍戸さん

「足を運ばなければ見えないこともある。心に寄り添っていきたい」と現地を思う宍戸さん

 
 LCの大和田会長はそんな若手に頼もしさを感じつつ、「もう少し様子を見てから」と気持ちを抑える大切さを伝えた。震災復興と重ね合わせ、「復興にはかなり時間がかかるだろう。いち早く行方不明者の捜索が進み、小規模な避難所や自宅避難者に物資が届いてほしい。一日も早く安心して暮らせるよう願う。みんなで助け合って早く笑顔が見たい」と心を寄せる。今後も「できる範囲、無理をしない形で善意を集めた活動」を続けることにしている。

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地域守る!気合込め、まとい振り 釜石市消防出初式 3年ぶりの分列行進 頼もしく

まとい振りは防災の願いを込め高々と

まとい振りは防災の願いを込め高々と

 
 釜石市消防出初め式は14日に行われた。大町の市民ホールTETTOの式典に続き、市中心部の目抜き通りをパレード。市消防団(坂本晃団長、団員532人)の団員、釜石消防署や市の関係者ら約450人が市民生活を守るべく士気を高め、その心意気を大勢の市民が見守った。
 
釜石市民ホールで行われた式典

釜石市民ホールで行われた式典

 
 式典で、統監の小野共市長が式辞。激甚化、複雑化、そして多発する自然災害への備え、防災意識の高揚、防災知識の育成などの重要性を強調し、「消防団を中核とした防災力強化に努める。地域の安全、安心を守る任務に尽力を」と求めた。
 
 長年の消防防災に対する功績、職務精励などで団員69人を表彰。無火災814日(2021年9月7日~23年11月30日)となる市中心市街地を管轄する第1分団に「無火災竿頭綬」(県消防協会遠野釜石地区支部表彰)が授与された。
 
消防、防災活動へ士気を高める団員ら

消防、防災活動へ士気を高める団員ら

 
パレードでは力強いまとい振りを披露

パレードでは力強いまとい振りを披露

 
 街頭パレードは感染症の影響もあり、3年ぶりに行われた。統監台が置かれた青葉通りの交差点で、「纏(まとい)隊」が気合を込めた纏振りを披露。ラッパ隊の演奏に合わせ団本部、1~8分団がきびきびと行進し、消防ポンプ自動車などの車両38台が続いた。
 
 沿道に集まった市民は頼もしそうに見つめた。甲子町の20代女性は、消防車両が大好きな長男(2歳)らを連れて初めて観賞。「すごかった。かっこよかったね。火事のない一年に。安全なまちになるよう守ってもらえたら」と期待した。
 
きびきびと分列行進する団員たち

きびきびと分列行進する団員たち

 
堂々とした行進をラッパ隊が後押し

堂々とした行進をラッパ隊が後押し

 
頼もしい姿を沿道から見守る市民

頼もしい姿を沿道から見守る市民

 
「期待に応える」。思いを共有する分列行進

「期待に応える」。思いを共有する分列行進

 
 市内で昨年発生した火災は10件。ここ数年は1桁台が続いていたことから、団員や消防関係者は気を引き締める。一方で団員の確保など課題もあるが、地域の安全を担う活動を積極的に行えるよう、分団配備車両の更新や屯所の整備などを計画的に進めていく。

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広報かまいし2024年1月15日号(No.1824)

広報かまいし2024年1月15日号(No.1824)
 

広報かまいし2024年1月1日号(No.1823)

広報かまいし2024年1月15日号(No.1824)

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【P1】
表紙

【P2-5】
特集 よろこびのうた ― 第44 回 かまいしの第九 ―

【P6-7】
イベント案内 他

【P8-9】
税の申告

【P10】
まちの話題

【P11-13】
まちのお知らせ

【P14-15】
保健案内板・保健だより

【P16】
かまいし起業人

この記事に関するお問い合わせ
釜石市 総務企画部 広聴広報課 広聴広報係
〒026-8686 岩手県釜石市只越町3丁目9番13号
電話:0193-27-8419 / Fax 0193-22-2686 / メール
元記事:https://www.city.kamaishi.iwate.jp/docs/2024011500029/
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2年目「釜石市はたちのつどい」244人出席 成人の誓い新たに未来へ希望の船出

 「はたちのつどい」に名称変更され2年目となる釜石市の成人の日の記念式典=7日

「はたちのつどい」に名称変更され2年目となる釜石市の成人の日の記念式典=7日

 
 8日の「成人の日」を記念し、釜石市は7日、本年度20歳を迎える人たちの門出を祝う「はたちのつどい」を大町の市民ホールTETTOで開いた。成人年齢が18歳に引き下げられ、式典名称が変更されて2回目の開催。対象者274人のうち244人が出席した。新型コロナ感染症の5類移行に伴いマスク着用は任意となり、晴れ着姿の若者の笑顔が一層はじけた。
 
 同式典の対象者は2003年4月2日から04年4月1日までに生まれた人。主催者を代表し小野共市長は「自らの可能性を信じ、道を切り開き、夢や希望に挑戦してください。あきらめなかった人間だけが夢をかなえる。自分を大切にして人生を歩んでほしい」と切望。東日本大震災からの復興を遂げた同市は新たな時代を迎えるとし、「まちの未来を自分事として受け止め、釜石発展のためにご助力を」と願った。
 
 抱負を発表したのは、鵜住居町出身で東北大に通う川﨑瞭さん(19)。小学1年生で経験した東日本大震災を振り返り、過酷な状況下で育ててくれた両親に感謝するとともに、「エンジニアとして宇宙開発に携わる」という自身の夢を語った。厳しい世界情勢の中、歩む今後の人生―。「釜石の復興を導いてくれた偉大な大人たちに『釜石、日本の未来は任せてくれ』と胸を張って言えるような大人になりたい。まだまだ道半ばだが、気概と覚悟を持って生きていく」と誓いを立てた。
 
出席者を代表し抱負を発表した川﨑瞭さん(左)

出席者を代表し抱負を発表した川﨑瞭さん(左)

 
釜石の同式典恒例となった郷土芸能・虎舞の披露

釜石の同式典恒例となった郷土芸能・虎舞の披露

 
 ステージでは有志が郷土芸能「虎舞」を披露。実行委員が作成したビデオメッセージの上映、市民憲章・防災市民憲章の唱和、市民歌斉唱も行われた。式典の前後には記念撮影や釜石茶道協会が設置した茶席などを楽しみながら、友人らとの再会を喜び合った。
 
 野田町在住、日本製鉄社員の及川勝陽さん(20)は今春から社会人3年目に入る。「日々、成長あるのみ。一層気を引き締めて頑張りたい」とさらなる精進を誓う。釜石シーウェイブスジュニアで4歳からラグビーを始め、高校は盛岡市の強豪校に進んだ。「自分はラグビーに育ててもらった。後輩たちにもラグビーの楽しさを伝えたい」と、現在は同ジュニアの指導にもあたる。「釜石ラグビーの強さをもう一度、世界に発信できれば」と夢を描き、子どもたちの育成に意欲を見せた。
 
再会した同級生らと記念撮影。笑顔がはじける

再会した同級生らと記念撮影。笑顔がはじける

 
 唐丹町出身の姫田幸実さん(20)は「震災やコロナもあり、成長への関門が多かったというのが正直な印象。支えてくれた両親には本当に感謝している」と話し、晴れ着姿を見せられたことを喜ぶ。専門学校で身に付けたスキルを生かし、春からは仙台市で事務系の仕事に就く予定。20歳を機に挑戦したいのは一人旅。「旅行が好き。将来は世界を旅したい」と希望を膨らませた。
 
 箱崎町出身の戸張闘志郎さん(19)は「20歳は人生の大きな節目。これからつきまとう責任も大きくなってくると思う。一層、大人としての自覚を持ちたい」と気を引き締める。高校卒業後、航空自衛隊に入隊し、青森県三沢基地で勤務中。自衛官を志したのは13年前の震災で助けてもらったことが大きい。「大変なことも多いが、やりがいのある仕事。自衛隊は国防の象徴。国民の皆さまの心に寄り添い、安心感を与えられるような自衛官になりたい」と目標を掲げる。
 
バルーンアートで装飾されたフォトスポットで記念の一枚

バルーンアートで装飾されたフォトスポットで記念の一枚

 
高校時代の写真を見て当時を懐かしむ釜石商工高の同級生グループ

高校時代の写真を見て当時を懐かしむ釜石商工高の同級生グループ

 
 同市の成人の日の式典では2011年の東日本大震災以降、開式前の黙とうを欠かさない。今年は1日に発生した能登半島地震の犠牲者への哀悼の気持ちも込めて祈りをささげた。鵜住居町出身の佐々木遥花さん(20)は同地震発生の緊急地震速報に13年前の恐怖がよみがえった。釜石高在学時は、震災伝承や防災啓発活動を行うグループ「夢団~未来へつなげるONE TEAM~」の2代目代表として活躍。短大進学後も関連活動に携わってきた。今回の発災で防災研究への思いをさらに強くし、未来の命を守るため「自分の経験やこれまでの活動で得たものを少しでも多くの人に伝えられたら」と決意を示した。
 
開式前、全員で東日本大震災と能登半島地震の犠牲者に黙とうをささげた

開式前、全員で東日本大震災と能登半島地震の犠牲者に黙とうをささげた

 
 同市では2022年から同式典の内容を当事者から公募した実行委員の協議によって決定。当日の進行も実行委員が担う。今年は7人の委員が力を合わせた。
 
はたちのつどい実行委メンバー(上段)。ビデオメッセージの制作や市民憲章の唱和などを担当

はたちのつどい実行委メンバー(上段)。ビデオメッセージの制作や市民憲章の唱和などを担当

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幸福な一年に 釜石・大渡どんと祭 炎高く 手を合わせ切に願う「普通の暮らしを」

地域住民が平穏を祈った「大渡どんと祭」

地域住民が平穏を祈った「大渡どんと祭」

 
 釜石市の中心部を流れる甲子川の河川敷で7日、正月飾りなどをたき上げる恒例の「大渡どんと祭」があった。大渡町内会(菅原章会長、約250世帯)の祭典委員会が主催し、今回で50回目。集まった住民らは、高く上がった炎に平穏、多幸、無病息災を祈った。
 
 朝から住民が正月の松飾りや古いお札などを持ち寄り、河川敷に組まれた八角形のやぐらに次々と投げ入れた。駒木町の不動寺内にある弘法寺の森脇妙紀住職が家内安全、開運招福、世界平和などを祈願。代表者が拝礼した後、手製のたいまつで火を付けると炎が高く燃え上がり、見守った人たちは静かに手を合わせていた。
 
丸太を組み上げたやぐらに積み上げられた正月飾り

丸太を組み上げたやぐらに積み上げられた正月飾り

 
神事で代表者が拝礼し、やぐらに点火した

神事で代表者が拝礼し、やぐらに点火した

 
 初めて参加した鈴木さほさん(双葉小4年)、仁丸君(5)姉弟は「炎が大きくてびっくり。家族やペットが元気に過ごせたらいいな」と願いを込めた。どんと祭に毎年足を運んでいた祖父が昨年亡くなったといい、「ありがとう」の気持ちを込めて正月の風習を継承。母親の紗都子さん(45)は「健康で充実した生活が送れるよう、家族みんなで力を合わせていきたい」と目を細めた。
多くの市民の願いを集め、焚き上げの炎がたなびく

多くの市民の願いを集め、焚き上げの炎がたなびく

 
炎をじっと見つめたり、手を合わせ願う参加者

炎をじっと見つめたり、手を合わせ願う参加者

 
 「一年が幸福であるように」。菅原会長(68)は、50回目の行事に願いを込めた。加えて、能登半島地震の被災地に向け、「一日も早い復興を遂げることを願う」と思いを寄せた。
 
地域の安寧を祈り手を合わせる菅原会長

地域の安寧を祈り手を合わせる菅原会長

 
 東日本大震災の津波で自宅や会社・店舗などが被災し、13年かけて「やっと日常を取り戻しつつある」と感じていた菅原会長。そんな時に飛び込んだ能登の地震被害。「絶望の淵にあった日々、生活再建の大変さが分かりすぎる…」と言葉を詰まらせる。「安寧、平和、一番欲しいのは普通の暮らし」とポツリ。炎の先にある空を見上げ、「子どもたちの未来が明るくなるように。厳しい世の中を生き残れるよう力を付ける手伝いをしたい」と望んだ。