釜石のドンコ、最高~! 平田小5年生 さばいて食べて知る地魚の魅力 魚食推進&水産資源理解へ
児童たちがさばくのは「ドンコ」。口から飛び出た胃袋にもびっくり!左下黄丸は下あごに生える“ひげ”
釜石市の平田小(佐守直人校長、児童142人)で5月30日、魚さばきを体験する教室が開かれた。同市地域おこし協力隊で魚食普及コーディネーターとして活動する清原拓磨さん(27)が講師を務める特別授業。5年生23人が三陸を代表する魚「ドンコ」(正式名称:チゴダラ)を自分たちでさばき、ドンコ汁(みそ汁)に調理して味わった。同校での同教室は昨年に続き2回目。
家庭科の授業の一環として実施。この日は釜石沖で、かご漁で漁獲されたドンコ12本が用意された。講師の清原さんは最初にドンコの生態や体の特徴などを解説。児童らが興味を示す口から飛び出た袋について、「深い海から水揚げされることで(急激な水圧低下が起こり)体内の浮き袋が膨らみ、その影響で胃袋が出たもの」と説明した。あごの下に1本だけある“ひげ”は味やにおいを感じる触覚で、光がほとんど届かない深海で餌を探すのに役立っていることも教えた。
調理は6班に分かれて実施。具材のネギ、ダイコン、豆腐を切って下準備した後、清原さんの指導を受けながらドンコをさばいた。包丁の背や専用器具でうろこをきれいに取り、腹を切り開いて内臓を取り出した。ドンコ汁の味の要、肝(きも=肝臓)は取り分け、緑の苦玉(胆のう)をつぶさないように取り除いた。きもと腹の中は水できれいに洗った。
腹を切り開いて内臓を取る。肝は取り分けてドンコ汁に使う
尾から頭に向かって包丁を入れる。エラとあごの付け根ははさみで切る(写真左)。肝も刻んで準備万端(同右)
内臓を取ったら腹の中を流水できれいに洗う
ドンコは頭と尾を落とし、身は人数分に切り分けた。頭はだしを取るのに使い、煮ている間はアク取りも。みそ、昆布だしで味を調えた後、ネギや豆腐、身などを投入。中火で軽く沸騰させながら煮た。「ドンコは身がやわらかいので、崩れないよう、沸騰させすぎずにやさしく煮るのがコツ」と清原さん。
頭と尾を切り落とし、身を人数分に切り分ける
ダイコンとドンコの頭、酒を入れて煮る。身は崩れやすいので最後に入れる
「魚をさばくのは初めて」という菊池陽葵(ひなた)さんは「お腹を切るところが難しかった。釜石の海にこういう魚がいるのはびっくり」と姿形にも興味津々。「魚は好きでよく食べるけど、ドンコ汁は初めてなのでどんな味か楽しみ」と試食を心待ちにした。父が漁師という佐々木藍里さんは「家でもやったことがある」と言うだけあって、「内臓を取ったりするのは結構できた」とにっこり。地元漁師らが取ってくれる魚を口にできるのは「うれしい」と話し、「いっぱい魚が取れるといい。お父さんといろいろな魚料理を作ってみたい」と目を輝かせた。
学校ボランティアの女性にサポートしてもらいながら味付け
児童らの様子を見守った担任の佐々木祐子教諭は「普段の家庭科の授業ではできない貴重な経験。魚が苦手な子も自分で作ったものはおいしく感じられたのではないか。こういう体験を通して、命を大事にいただく心が育まれ、好き嫌いもなくなれば」と期待した。
講師の清原さんは「釜石の魚のおいしさを子どもたちに伝えたい」と、昨年度から市内小中学校で同様の教室を開催。昨年は2小学校、4中学校で開き、数種の魚のさばき方から調理までを教えてきた。「釜石に住んでいても地魚のおいしさを知らない子は多い。新鮮な魚で調理体験ができるのは釜石ならでは。少しでも思い出として刻まれれば」と清原さん。目下の夢は「全校制覇!」。今後の取り組みについても構想中で、「座学を含め、地元の魚、水産業にもっと目を向けてもらえるような仕掛けを考えたい」と意気込む。
みんなで協力して作った「ドンコ汁」完成! 最後まで頑張りました
大満足の味に笑顔満開! 「家でも作ってみたい」と話す児童も
この日教材となった「ドンコ」は東北の太平洋側、主に三陸地方で食べられる。清原さんによると、水揚げ量に大きな変化はないが、特異な見た目や鮮度落ちの速さから一般消費者には敬遠されがちだという。「新鮮なドンコはにおいもない。ちゃんと調理することでおいしく食べられる」と“推し”の魚をアピールする。

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