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炎に願う平穏、感染収束 釜石・大渡町で伝統行事「どんと祭」 3年ぶり開催

「平穏な一年に」と願いを込め、正月飾りを燃やした「大渡どんと祭」

「平穏な一年に」と願いを込め、正月飾りを燃やした「大渡どんと祭」

 
 正月飾りを焚(た)き上げる伝統行事「大渡どんと祭」が7日、釜石市大渡町の大渡橋そばの甲子川河川敷で行われた。新しい年の多幸や平穏、新型コロナウイルスの収束-。集まった住民らは思い思いに願いを込めながら、立ち上がる炎を見つめた。
 
 大渡町内会(菅原章会長、約350世帯)の祭典委員会が主催。コロナ禍で一昨年、昨年と中止が続いたため、3年ぶりとなった。今年で49回目。感染状況を踏まえて式典やお振舞いは控えた。
 
八角形に組み上げられたやぐらの前で代表者が拝礼した

八角形に組み上げられたやぐらの前で代表者が拝礼した

 
市民が持ち込んだ正月飾りなどで山積みになったやぐらに点火

市民が持ち込んだ正月飾りなどで山積みになったやぐらに点火

 
 河川敷には丸太を組み上げた大きな八角形のやぐらが設けられた。朝早くから多くの住民が松飾りなどを持ち寄り、同町内会の役員らが受け取ってやぐら内に積み上げた。
 
 午後1時過ぎ、駒木町の不動寺内にある弘法寺の森脇妙紀住職が家内安全、開運招福、諸願成就、コロナ収束、平和などを祈願し、代表者が拝礼。手製のたいまつで点火し、勢いよく炎が上がると、参加した人たちは静かに手を合わせたりしていた。
  
3年ぶりに大渡地区で行われた「どんと祭」

3年ぶりに大渡地区で行われた「どんと祭」

 
市民らは燃え上がる炎に願いを託した

市民らは燃え上がる炎に願いを託した

 
 小佐野町の平泉栄子さん(62)は「どんと祭がないと、正月が明ける感じがしなかった。燃え上がる火は離れて見ていても、熱気がすごい。今年はいい年になりそう」と目を細めた。一緒に参加した孫の高橋葉月君(6)=北上市在住=は春から小学生になり、「勉強を頑張りたい」とはにかんだ。そんな孫の様子を柔らかな表情で見守る祖母は「無事に入学し、元気に育ってほしい」と願った。
  
 菅原会長(67)は「3年ぶりに開催できて、ほっとしている。商売繁盛、身体堅固など皆さんの願いがお焚き上げの炎で天まで届いてほしい。安心安全で住みやすい地域になるよう、大渡から盛り上げていきたい」と気持ちを新たにした。
 

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新型コロナと向き合い2023年がスタート 「健康で平穏な1年に」願い一層強く

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 新型コロナウイルス感染症の収束が見えぬまま迎えた2023年―。新規感染者数は依然高止まり傾向が続くものの、行動制限がない年末年始で人の動きは活発化。釜石市内の初詣スポット、初売りを行った商業施設の正月の人出は昨年より増加した。各所で帰省した若者グループや家族連れ、市外からの来訪者も多く見られ、本格的な“withコロナ”時代の到来を感じさせる新年のスタートとなった。
 

厳寒緩む年越し 尾崎神社に地元住民ら初詣 神楽、虎舞4団体が初舞奉納

 
年越しの時間帯に参拝する初詣客=尾崎神社

年越しの時間帯に参拝する初詣客=尾崎神社

 
 厳しい冷え込みもなく、穏やかな年越しとなった釜石市内。浜町の尾崎神社(佐々木裕基宮司)には、元日午前0時を前に初詣客が続々と集まった。新年を迎えたことを告げる本殿の太鼓が打ち鳴らされると、訪れた家族連れや友人グループがさい銭を投げ入れ、鈴を鳴らしてかしわ手を打った。佐々木宮司は新年初祈祷を行った。
 
 浜町の佐々木ヨシ子さん(81)は息子家族らと連れ立って親子3世代で参拝。一番乗りで神前に手を合わせ、家族の健康を祈った。東日本大震災の津波で同町の店舗兼自宅を失い、土地のかさ上げを待って2020年に再建。やっと暮らしが落ち着きつつある今、願うのは「コロナの収束、津波がこないこと、老いないこと」。生かされた命に感謝し、「体を弱らせずに今の状態を保つことが一番の願い。津波がきてもすぐに逃げられるよう準備もしている。子どもたちのためにも元気でいないと」と健康長寿を誓った。
 
 神社には地元の郷土芸能、神楽と虎舞の4団体が初舞の奉納に訪れた。各団体の代表が神前に玉串をささげ、昨年の加護に感謝。メンバー全員で参詣し、順に舞を披露した。新年の幕開けにふさわしい威勢のいい掛け声と勇壮な舞を初詣客らが見守った。
 
初舞の奉納に訪れた郷土芸能団体のメンバーら

初舞の奉納に訪れた郷土芸能団体のメンバーら

 
神社本殿で伝統の舞を披露する「東前太神楽」

神社本殿で伝統の舞を披露する「東前太神楽」

 
新年に期待を込め、威勢よく踊る「錦町虎舞」

新年に期待を込め、威勢よく踊る「錦町虎舞」

 
 昨年は、コロナ禍で中止が続いていた同神社と日本製鉄釜石山神社の合同祭「釜石まつり」が3年ぶりに復活。郷土芸能団体も久しぶりの舞の披露で躍動した。錦町虎舞の熊谷勇哉会長(32)は「祭りができたことは大きな喜び。みんな気合いが入り、気持ち的にも盛り上がった」と回顧。祭りやイベントの中止は次世代への芸能伝承活動にも影響を及ぼす。「子どもたちが踊りを目にする機会は絶対必要。祭りなどで興味を持ち、『やってみたい』と入ってきてくれる子が増えれば、踊りの継承にもつながっていく」と熊谷会長。今年も無事に祭りができるよう願った。
 

神々しい陽光に感動! 「初日の出」目当てに釜石の海岸部に見物客集まる

 
両石漁港から望む2023年の初日の出。神々しい光が海面を照らす

両石漁港から望む2023年の初日の出。神々しい光が海面を照らす

 
 元日朝のお楽しみといえば「初日の出」。釜石市内の海岸部には、2023年最初の朝日を拝もうと市内外から見物客が集まった。同市の日の出時刻は午前6時52分ごろ。水平線上を覆う雲に赤みが広がると、見物客は今か今かと太陽が顔を出すのを待ちわびた。雲の上部や半島部の稜線から光が差し込み始めると手を合わせ、スマートフォンのカメラなどを向けて美しい光景を写真や動画に収めた。
 
奥州市から訪れた女性3人はまばゆい朝日に感動

奥州市から訪れた女性3人はまばゆい朝日に感動

 
 県内外の進学先から帰省した奥州市の小野寺夏来さん(20)、阿部仁美さん(19)、菊池恵梨夏さん(20)は高校時代の同級生。年越しの時間帯に地元の神社を参拝後、海で日の出を見たいと沿岸部に車を走らせ、釜石にたどり着いた。地元旅館スタッフの好意で両石漁港に案内してもらい、無事、初日の出を見ることができた。「海から上がる朝日はめっちゃきれい。日光で海面が輝くのは初めて見る光景」と大感激。入学以来、コロナの影響を受けながらの学生生活が続くが、「今年こそ旅行に出かけられたらいいな。関東、関西方面に行ってみたい」と夢を描いた。
 

市内最大の初詣スポット「釜石大観音」 正月3が日のにぎわい回復傾向に

 
釜石大観音を訪れた初詣客。「新年のスタートに願うことは?」

釜石大観音を訪れた初詣客。「新年のスタートに願うことは?」

 
 大平町の釜石大観音は大みそか午後10時に開館。例年多くの初詣客でにぎわう元日、日の出の時間帯(午前7時前後)の人出は昨年より約300~400人増加。昨年までは県外からの帰省は自粛ムードで、小家族での参拝が多かったが、今年は若者グループの姿が目に見えて増えたという。人の流れは日中も途切れることなく続いた。正月3が日の人出は約8千人(昨年比約1500人増)。
 
 同所の初詣のピークは元日午前10時~午後2時ごろ。訪れた人たちはそれぞれの願いを胸に観音様に手を合わせ、参拝を終えると、お守りやお札を買い求めたりおみくじを引いたりしながら、新年への期待を高めた。観音像胎内の七福神巡りをしながら展望台に上がり、眼下に広がる釜石湾の雄大な景色を堪能する人たちも。各所で記念撮影を楽しむ姿も見られた。
 
引いたおみくじを笑顔で見つめる家族連れ

引いたおみくじを笑顔で見つめる家族連れ

 
 遠野市の佐々木達也さん(38)は、家族と県内外から帰省中の親族計12人で訪れた。同所への初詣は毎年恒例。昨年は「大きな病気もなく平穏だった」と感謝し、「今年も家族みんな無事に過ごせますように」と祈った。長女優希さん(9)は小学校入学と同時にコロナ禍に。この3年、各種制限の中で学校生活を送ってきた。母智美さん(38)は「学校行事が減ってしまい残念だが、少しずつ家族が見に行ける人数も増えたりしている」と変化を歓迎。長男陽麻君(6)、次男健麻君(2)と3人の子どもの健やかな成長を願い、「子どもたちが元気でいることが一番」と目を細めた。
 
青空に映える白亜の観音像。同市を代表する観光スポット

青空に映える白亜の観音像。同市を代表する観光スポット

 
 釜石大観音はコロナ禍への対応策として、週末3日間のみの営業を続けてきたが、昨年3月から通常営業を再開。国や県の旅行割引などもあり、団体ツアー客の来訪も少しずつ戻ってきている。小野寺俊雄係長は「関東方面からの来訪はまだ少ないが、東北エリア内ではだいぶ動きが出てきている。感染対策の関係で小規模ツアーが主流だが、今年こそ収束の方向に向かい、客足回復につながっていくことを願う」と話した。
 

初売りの人出も回復基調に イオンタウン釜石 正月3が日に約3万5千人が来店

 
福袋販売などが好調だったイオンタウン釜石の初売り=元日

福袋販売などが好調だったイオンタウン釜石の初売り=元日

 
 釜石市内の初売りは元日スタート。港町の大型商業施設「イオンタウン釜石」は通常より1時間早い午前8時に開店し、買い物客を迎えた。開店前には約350人が行列。開店と同時にお目当ての売り場に急ぎ、福袋など正月ならではのお得な商品を買い求めた。3が日の来店者は約3万5千人(昨年比約5千人増)。コロナ禍前には及ばないものの、着実な回復基調は新たな年への明るい材料となった。
 
 2014年3月にオープンしたイオン釜石の初売りは今年で9年目。元日初売りは地元民や近隣市町民らにもすっかり定着した。初売りのお楽しみ「福袋」は、今年もコロナ感染拡大防止策の一環で年末から販売開始。分散来店で客の密集を避けられるよう配慮した。約20の専門店が合わせて約1800個の福袋を用意。各店とも金額以上の商品を詰め、お得感を打ち出した。売れ行きも好調で3日までにほぼ完売した。
 
 元日はイオンタウンアプリの新規登録やクーポン提示で菓子の福袋がもらえる初めての企画(先着60人)も。2日は新春イベントとして唐丹町の桜舞太鼓が迫力の演奏を披露し、初売りを盛り上げた。元日の来店のピークは昼から午後4時ごろにかけて。駐車場は一時、満車状態となった。
 
イオンタウンアプリを活用した菓子の福袋プレゼントには長蛇の列ができた

イオンタウンアプリを活用した菓子の福袋プレゼントには長蛇の列ができた

 
買い物客でにぎわう店内=元日昼ごろ

買い物客でにぎわう店内=元日昼ごろ

 
 新型コロナの影響で大きな打撃を受けてきた商業界。イオン釜石もオープン以来、右肩上がりだった来店客数、売り上げが一時、落ち込んだが、昨年から徐々に回復傾向にある。片岡克也モールマネジャーは「コロナ禍前の19年の水準まではまだ戻っていないが、イベントなども増やしながら集客力アップを図れれば。地域との連携、空所活用も模索し、お客様に足を運んでもらえる施設を目指したい」と新しい年への意気込みを示した。

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かまいし宿泊キャンペーン(第7弾)~新型コロナウイルス感染症対策かまいし宿泊エール割事業~を実施します

釜石市内の宿泊施設を利用した場合、宿泊料から1人2,000円を割引する「かまいし宿泊キャンペーン(第7弾)」を実施します!
詳しくは、かまいし宿泊キャンペーン ウェブページをご覧ください。
この機会にぜひ釜石においでください!

対象

市内宿泊施設を利用した宿泊者(釜石市外からの旅行者に限ります。)
※宿泊施設により対象となる地域が異なる場合があります。

実施期間

令和5年1月7日(土)~令和5年3月11日(土) 宿泊分まで
※定員に達し次第終了

お問い合わせ

かまいし宿泊キャンペーン事務局
株式会社かまいしDMC
釜石市魚河岸3-3
電話:0193-27-5260
平日:10:00~17:00(※月曜日定休)

この記事に関するお問い合わせ
産業振興部 商工観光課 観光物産係
〒026-8686 岩手県釜石市只越町3丁目9番13号
電話:0193-27-8421 / Fax 0193-22-2762 / メール
元記事:https://www.city.kamaishi.iwate.jp/docs/2022122800038/
釜石市

釜石市

釜石市公式サイトと連携し、縁とらんすがピックアップした記事を掲載しています。記事の内容に関するお問い合わせは、各記事の担当窓口までお問い合わせください。
広報かまいし2023年1月1日号(No.1799)

広報かまいし2023年1月1日号(No.1799)

広報かまいし2023年1月1日号(No.1799)

 

広報かまいし2022年12月15日号(No.1798)

広報かまいし2023年1月1日号(No.1798)

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【P1】
表紙

【P2-3】
市長年頭あいさつ
新春特別講演会 他

【P4-5】
商工事業者向け補助金
イベント案内 他

【P6-7】
まちのお知らせ

【P8】
釜宴会キャンペーン
移住案内

この記事に関するお問い合わせ
釜石市 総務企画部 広聴広報課 広聴広報係
〒026-8686 岩手県釜石市只越町3丁目9番13号
電話:0193-27-8419 / Fax 0193-22-2686 / メール
元記事:https://www.city.kamaishi.iwate.jp/docs/2022122700024/
釜石市

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保護猫飼い主探しで連携 釜石の保健所と動物愛護団体 譲渡会で適正飼育の啓発も

譲渡会で保護猫の様子を見つめる親子

譲渡会で保護猫の様子を見つめる親子

 
 釜石保健所で保護した猫たちの譲渡会が17日、釜石市大町の市民ホールTETTOで開かれた。生後3カ月の子猫から成猫まで12匹を集め、参加者が自由に見学。会場では譲渡前講習会も行われ、受講した1組が「試し飼い」を決めた。
 
 譲渡会は保護猫の譲渡促進、動物愛護思想や適切な飼育方法の普及啓発を図るのが狙い。県沿岸広域振興局保健福祉環境部が主催し、2022年度地域経営推進費を活用した「人と動物のふれあい活動事業」として実施。動物愛護団体「人と動物の絆momo太郎」が共催した。
 
保護猫と新たな飼い主の出会いの場となる譲渡会

保護猫と新たな飼い主の出会いの場となる譲渡会

 
 保健所管理の保護猫は約20匹。同団体が運営する譲渡型保護猫ハウス「保護猫アンドゥ」(大渡町)が一時預かりしている。譲渡会では人慣れはしているが、「ちょっぴり臆病」「よく食べ、よく寝る」「元気いっぱい」「怖がり屋さん」といった個性派ぞろいの猫たちを紹介。保護猫に興味がある人らが足を運び、猫の様子を見て回った。
 
 保護猫は病気の検査やワクチン接種、成猫は避妊・去勢手術を受けさせている。試し飼いも可能で、1週間ほど一緒に暮らし、問題がなければ正式に譲渡されるという。
 
ゲージの中でくつろぐ猫に触れ、様子を見る来場者

ゲージの中でくつろぐ猫に触れ、様子を見る来場者

 
 今回試し飼いをする人は、すでに猫を飼っていて「猫同士の相性を確認してから決める」という。甲子町の40代男性は「猫と暮らしたい」と一軒家に移ったばかり。初めて猫を飼うため講習を受けて適正な飼育に理解を深めた様子で、「家族と相談する。どの猫もかわいいから迷う。時期にこだわらず、相性、出会いを大事にしたい」と真剣な表情だった。
 
動物を飼う前の心構えや準備などを伝える講習

動物を飼う前の心構えや準備などを伝える講習

 
 同保健所上席獣医師の奥村亮子さんによると、民間団体との連携は「常に誰かいて世話をしてもらうことで猫の人慣れが進み、譲渡がスムーズになる」のに加え、飼育の仕方など助言を受けることができ、譲渡後の支援が可能にもなる。新型コロナウイルス禍で譲渡会の実施を見送る時期もあったが、動物との暮らしに関心のある人らがアンドゥを訪ねていて、譲渡の機会は減ってはいない。
 
ゲージに入り、引き取り手を待つ保護猫たち

ゲージに入り、引き取り手を待つ保護猫たち

 
 今年、市内で約50匹の猫の多頭飼育について情報提供があり、飼い主が高齢で健全に飼育することが難しいことから同保健所で子猫を保護。一時保護できる頭数には限界があり、ミニ譲渡会を開くなどの対応が必要となった。野良猫への餌やりといった苦情も寄せられており、奥村さんは「軽い気持ちで動物を飼い始めたり、餌をやったりする人もいて、身近に起こりうる」と指摘。県・沿岸振興局のホームページなどで普及啓発を行っているが、譲渡会は直接伝える機会になり、「飼い続けてもらうため、地道に種をまいておくことが大事。じかに見て触れ、試し飼いで性格を把握し、慎重に決めてほしい」と望む。

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日ごろの見守り「ありがとう!」 上中島こども園児 中妻応援センターで感謝のお遊戯披露

上中島こども園児が中妻地区生活応援センターでお遊戯を披露=19日

上中島こども園児が中妻地区生活応援センターでお遊戯を披露=19日

 
 釜石市の上中島こども園(楢山知美園長、園児60人)の年中園児12人は19日、園の近くの中妻地区生活応援センター(菊池拓朗所長)でお遊戯を披露した。日ごろ、園児らを見守ってくれている地域住民に感謝の気持ちを伝えようと訪問。同センターで活動する約20人を前に元気いっぱいの踊りを見せ、心温まるひとときをプレゼントした。21日には年少園児も訪れ、音楽劇を披露した。
 
 同園では10日に3~5歳児の生活発表会を園内で開催。お遊戯や音楽劇などを保護者らが観覧した。園児らの取り組みの成果を、いつもお世話になっている地域の人にも見てもらいたいと、今回の訪問を企画。19日は同センターで週2回、ラジオ体操を行っている高齢者などが集まった。
 
 年中園児は2グループに分かれ、「江戸火消しこ組出動」、「サチアレ」のダンスを披露。かわいらしい衣装に身を包み、いきいきと踊る姿に観客は目を細め、それぞれの発表が終わると盛んな拍手を送った。
 
鉢巻き、腹掛け姿でかっこよく踊った「江戸火消しこ組出動」

鉢巻き、腹掛け姿でかっこよく踊った「江戸火消しこ組出動」

 
キラキラのポンポンとチアの衣装で「サチアレ」を踊り、元気を届けた

キラキラのポンポンとチアの衣装で「サチアレ」を踊り、元気を届けた

 
子どもたちの頑張りに拍手を送る地域住民ら

子どもたちの頑張りに拍手を送る地域住民ら

 
 ポンポンを持って「サチアレ」を踊った菊池咲陽ちゃん(5)は「ちょっと恥ずかしかったけどうまく踊れた。おじいちゃん、おばあちゃんたちも喜んでくれた」と満足そう。同センターが入る上中島2期復興住宅に暮らす女性(71)は「素晴らしかった。やっぱり子どもはかわいいね。見ているだけで幸せな気持ちになる。孫とも離れて暮らしているので、こういう触れ合いの場はありがたい」と声を弾ませた。
 
 同センターの菊池所長は「復興住宅の住民は高齢者、独居の方も多いので、小さい子どもたちとの交流は心の癒やしになる。今日は皆さんのすごくいい笑顔が見られて、こちらもうれしくなった」と話した。
 
応援センターからはお礼にクリスマスプレゼントが贈られた

応援センターからはお礼にクリスマスプレゼントが贈られた

 
また会うことを願って、園児がお別れのあいさつ

また会うことを願って、園児がお別れのあいさつ

 
 同園と同復興住宅の敷地は市道をはさんで隣り合い、これまでも住民と園児がラジオ体操を一緒にやったり、互いの行事に参加し合うなど交流を続けてきたが、コロナ禍になってから、その機会も減ってしまった。楢山園長は「地域の人たちには園児の散歩の際に声をかけてもらったり、見守り活動にも協力していただいている。地域との関わりは子どもたちの成長にも大事な要素。今後もコロナと向き合いながら、できることを続けていきたい」と願う。

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世界遺産「明治日本の産業革命遺産」をより分かりやすく 釜石でガイドらが研修

世界遺産「明治日本の産業革命遺産」インタープリテーション釜石エリア研修会

世界遺産「明治日本の産業革命遺産」インタープリテーション釜石エリア研修会

 
 2015年7月にユネスコの世界文化遺産に登録された「明治日本の産業革命遺産」。8県11市23構成資産の1つである「橋野鉄鉱山」を有する釜石市で6日、同遺産の価値を分かりやすく伝えるための人材育成研修会が開かれた。一般財団法人産業遺産国民会議が主催。東京都新宿区、産業遺産情報センター長の加藤康子さん(同国民会議専務理事)らが講演した。
 
 釜石観光ガイド会員、橋野鉄鉱山インフォメーションセンタースタッフ、市関係職員ら約20人が参加。同遺産の保全、発信に関わる2人の専門家の講演、海外有識者のインタビュースピーチの上映などが行われた。
 
 講演した加藤さんは、同遺産が「製鉄・製鋼、造船、石炭産業」の3分野、時代的には19世紀半ば~20世紀初頭(江戸後期~明治後期)にわたることをあらためて説明。1つの世界遺産として示している価値について、「鎖国をしていた日本が開国し、わずか50年で工業立国の土台をつくった。急速な産業化の道程を表した遺産」とし、「橋野鉄鉱山を訪れる人たちに、その全体像の中での意義をしっかり伝えてほしい」と願った。
 
産業遺産情報センター長/産業遺産国民会議専務理事 加藤康子さん

産業遺産情報センター長/産業遺産国民会議専務理事 加藤康子さん

 
 同遺産を時系列でみると、次の3つの時代に分けられることも説明した。①試行錯誤の挑戦(1850~60年代)=鎖国をしていた日本が西洋の科学技術の情報が乏しい中で、蘭書を片手に鉄製大砲の鋳造に挑戦していた時代(釜石で洋式高炉による鉄の連続出銑に成功した大島高任らの活躍)。②西洋の科学技術の導入(1860~80年代)=開国により西洋の技術者が入国。日本からの留学も活発になり、ものづくりの人材が急速に成長していった時代。③産業基盤の確立(1890年代~1910年)=大量生産が可能になった時代。
 
講演に聞き入る釜石市の観光ガイド、橋野鉄鉱山インフォメーションセンタースタッフら

講演に聞き入る釜石市の観光ガイド、橋野鉄鉱山インフォメーションセンタースタッフら

 
 同センターで上映している「橋野鉄鉱山」と「官営八幡製鉄所」の紹介映像も見せ、釜石(同鉄鉱山)が世界遺産価値にどう貢献しているのかも示した。加藤さんは「当時、急速に産業国家の土台をつくることができたのは、基礎となる素材産業が国内で確立したから。釜石では木炭高炉法からコークス炉導入まで30年。西洋では3世紀もかかっている」と話した。
 
 釜石市民と鉄との関わりについても言及。特に子どもたちの教育プログラムを絶賛し、「愛情を持って鉄と触れ合い、学んでいる姿は全国オンリーワン。釜石の鉄のDNAは絶対に無くさないでほしい。挑戦をし続けた先人たちの魂が生きている。必ず日本の未来に大きな貢献ができるような人材が育つだろう」と期待した。
 
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 同遺産の世界遺産登録から7年―。加藤さんは、登録時の価値を損なわないようにするため各自治体、関係者間で情報共有する「遺産保全マニュアル」を本年度から2カ年で作成することも報告した。

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釜石の山に眠る「鉄」以外のお宝とは? 市立図書館で学ぶ市民教養講座

釜石市立図書館が開いた市民教養講座「釜石の金山・銅山について」

釜石市立図書館が開いた市民教養講座「釜石の金山・銅山について」

 
 「近代製鉄発祥の地」である釜石市は、洋式高炉による連続出銑の成功とともに、原料となる鉄鉱石の豊富な産出でも知られる。釜石一帯の山々では鉄のほかに金や銅の鉱脈もあり、実際に採掘が行われていた。その歴史を学ぶ講座が4日、釜石市小佐野町の市立図書館(川畑広恵館長)で開かれた。同館主催の市民教養講座の一環。市世界遺産課課長補佐の森一欽さんが講師を務め、16人が聴講した。
 
 同市に眠る鉱床は、約1億2千万年前(中生代白亜紀)の火山活動で生まれた。マグマの熱で石灰岩などが溶かされ変成。冷え固まる過程でさまざまな鉱物が生成された。変成岩の中でも柘榴(ざくろ)石の近くで鉄鉱石(磁鉄鉱)、灰鉄輝石の周りで銅鉱石(黄銅鉱)、石英脈が発達した場所では金鉱石が見つかっている。「理由は証明されていないが、昔の人は現場の勘で鉱脈を探していったと思われる」と森さん。釜石では特に鉄鉱石と銅鉱石が多く見られ、大規模な採掘につながった。
 
金鉱石や銅鉱石ができる過程についても説明した

金鉱石や銅鉱石ができる過程についても説明した

 
講師を務めた釜石市世界遺産課の森一欽課長補佐

講師を務めた釜石市世界遺産課の森一欽課長補佐

 
 県内では、日本最古の金が産出されている陸前高田市の「玉山金山」など気仙地方の金山が有名だが、釜石地方でも小規模ながら採掘が行われていた時代がある。文献などによると、釜石市内では16の金山が確認されており、各地に広く分布する。中でも多いのは橋野町。
 
 橋野鉄鉱山の東側にある「六黒見(むくろみ)金山」は、1807(文化4)年に発見された。地元住民や盛岡藩が採掘に乗り出すが、江戸期の経営はうまくいかなかった。明治期になると近代化が図られ、再興への道が開かれる。1935(昭和10)年、日本鉱業が金増産のため本格的採掘に着手したが、43(昭18)年の全国的な金山整理で閉山。戦後、一時稼働したが、55(昭30)年ごろまでには休山したとみられる。記録によると、35~43年までの鉱石採掘量は約8万5千トン。鉱石1トンから取れる金は約8グラム程度だった。
 
 森さんは六黒見金山に残る社宅、事務所、坑道跡などの写真を紹介。大きいもので横20メートル、縦16メートルの坑道入り口があることも示した。明治期の金山所有者の銘が刻まれた石碑もあったが、2016年の台風豪雨で流失し、行方不明だという。
 
六黒見金山に残る、採掘が行われていた痕跡を示す写真

六黒見金山に残る、採掘が行われていた痕跡を示す写真

 
釜石で行われた金、銅採掘について学ぶ参加者

釜石で行われた金、銅採掘について学ぶ参加者

 
 釜石市甲子町大橋の「釜石鉱山」一帯は日本最大の鉄鉱山であるとともに、国内有数の銅鉱山でもある。1907(明治40)年、大橋の新山から産出される銅鉱石の製錬を開始。有力な銅鉱床が発見されると、52(昭和27)年、銅鉱石の選鉱場を建設し、本格的な採掘を始めた。「釜石では粗い製錬はしたが、純度を高める作業はしなかったため、硫化物による大きな公害はなかった」と森さん。
 
 鉄鉱石は精鉱により50~60%が有用な鉄になるが、銅鉱石は12~20%程度と採算がなかなか合わない。釜石鉱山では1992(平成4)年に銅鉱石の採掘を休止。鉄鉱石は93(平5)年、石灰石は2000(平12)年に採掘を休止している。
 
釜石鉱山の銅鉱石の選鉱場は、今は建物の土台だけが残る

釜石鉱山の銅鉱石の選鉱場は、今は建物の土台だけが残る

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節電の冬…イルミネーションも 釜石市内、太陽光発電やLED採用「静かな癒やしを」

国立釜石病院では節電しながらも地域をライトアップする

国立釜石病院では節電しながらも地域をライトアップする

 
 冬の夜を彩るイルミネーションの点灯が釜石市内でも始まっている。ただ今年は、全国の家庭や企業を対象にした政府による節電要請を受け、電力事情に配慮した対応を取って実施。使用する発光ダイオード(LED)電球を増やしたり、太陽光発電を活用するなど、あの手この手で心をほっこりさせる風物詩を市民に届けている。
  
光で彩られた小佐野コミュニティ会館を背に「はい、ポーズ」

光で彩られた小佐野コミュニティ会館を背に「はい、ポーズ」

  
 小佐野町の小佐野コミュニティ会館では建物や通路の樹木が赤や青、黄色などカラフルに輝くイルミネーションで彩られている。近所の子どもたち、市内の家族連れらが足を運び、スマートホンや手持ちカメラで記念にパチリ。「すごくきれい」と笑顔を広げている。
 
「小佐野地域から元気を発信」と住民が力を合わせて続ける

「小佐野地域から元気を発信」と住民が力を合わせて続ける

 
 地域を元気にしようと地元町内会などが企画し、家庭で眠っている電飾を持ち寄って継続。ここ数年はLED電球に切り替えながら節電にも気を配ってきた。今年はさらに、地元事業所から贈られたソーラーパネルと蓄電池を使って昼間に充電した電力を一部に利用。来年1月14日までの日没から夜明けまで点灯する。
 
 小佐野地区生活応援センターの佐藤貴之所長は「施設を利用する子ども、高齢者だけでなく道行く人たちも、この明かりを会話のネタにして交流してもらえたら」と願う。
 
テーマパークのような国立釜石病院のイルミネーション

テーマパークのような国立釜石病院のイルミネーション

 
 定内町の国立病院機構釜石病院の「釜石ルミナリエ」は点灯する電球全てがLEDで、太陽光発電を活用して光をともす区画も設けた節電対応。一見、落ち着いた明るさながら、近づくと華やかさは健在で、例年通りテーマパークのような光景が広がっている。
 
電飾がきらびやかな「釜石ルミナリエ」の光のトンネル

電飾がきらびやかな「釜石ルミナリエ」の光のトンネル

 
 光のトンネルにはアニメやクリスマスにちなんだキャラクターを飾り付け、子どもたちに喜んでもらえるよう工夫。地元ラグビーチーム・釜石シーウェイブス(SW)の応援コーナーもあり、地域愛にあふれる。点灯は日没~午前2時ごろまで。来年1月いっぱい楽しめるが、釜石SWの活躍次第で終了時期が延びる可能性もあるという。
 
 土肥守院長は「コロナ禍で遠出を控える人はいまだ多く、近場で楽しんでもらえたら。大声を出さず、感染予防に気をつけながら静かに癒やされてほしい」と望む。
 
うのすまいトモスの一日限定イルミネーション

うのすまいトモスの一日限定イルミネーション

 
 鵜住居町のうのすまいトモスでは4日に一日限定で点灯。三陸鉄道の明かりと合わせ地域を照らした。
 
 節電の冬。寒さは厳しさを増すが、市内に散らばる輝きを見つめ、光に込められた気持ちを感じると心は温かい。
 

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広報かまいし2022年12月15日号(No.1798)

広報かまいし2022年12月1日号(No.1797)
 

広報かまいし2022年12月15日号(No.1798)

広報かまいし2022年12月15日号(No.1798)

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【P1】
表紙

【P2-7】
特集 釜石シーウェイブス シーズン開幕

【P8-9】
チームスマイル 感動をありがとう!

【P10-11】
マイナポイント第2弾・マイナンバーカード
新型コロナワクチン接種のお知らせ 他

【P12-13】
学校規模の適正化・適正配置に関する提言書
釜石大槌地区行政事務組合決算・岩手沿岸南部広域環境組合決算 他

【P14-15】
こどもはぐくみ通信
北海道・三陸沖後発地震注意情報の運用が始まります 他

【P16-17】
まちの話題

【P18-19】
イベント案内
かまいし起業人 

【P20-21】
まちのお知らせ

【P22-23】
保健案内板・保健だより

【P24】
いつまでも変わらぬ故郷への愛 ~造園技師 猪又康夫さん~ 他

この記事に関するお問い合わせ
釜石市 総務企画部 広聴広報課 広聴広報係
〒026-8686 岩手県釜石市只越町3丁目9番13号
電話:0193-27-8419 / Fax 0193-22-2686 / メール
元記事:https://www.city.kamaishi.iwate.jp/docs/2022121200013/
釜石市

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震災十三回忌前に 毛越寺(平泉)の僧侶ら 釜石・鵜住居観音堂で「復光」祈り法要

震災の犠牲者供養と被災地復興を願って手を合わせる人たち

震災の犠牲者供養と被災地復興を願って手を合わせる人たち

  
 東日本大震災から来年で十三回忌を迎えるのを前に、釜石市鵜住居町の「鵜住居観音堂」で11月30日、犠牲者供養と復興を祈る法要が営まれた。観音堂再建の歩みを知る平泉町・毛越寺の藤里明久貫主(72)が協力。「復興は進んでも心の中には震災の爪痕が残っていると思う。観音堂が気持ちの落ち着く場所になってほしい」と願いを込めた。
   
 同寺の従業員研修旅行の一環。震災後、毎年3月11日に平泉でも震災物故者の法要を行っており、被災地の現状に理解を深め、「忘れない」「伝える」との思いを共有して、その日を迎えようと、約20人が来釜した。
  
藤里貫主(手前)の話に耳を傾ける毛越寺の従業員ら

藤里貫主(手前)の話に耳を傾ける毛越寺の従業員ら

  
 観音堂は震災の津波で流失。本尊「十一面観音立像」(県指定文化財)は破損したものの流失を免れ、故大矢邦宣さん(震災当時、盛岡大教授)らが見つけて修復した。修復作業の間、本尊の代わりに地域を見守ってもらおうと模刻「身代わり観音像」も制作。本尊とともに今年3月に再建された観音堂に安置する。
   
 大矢さんの遺志を継ぎ、被災地に心を寄せてきた藤里貫主が、その歩みを従業員らに紹介。「光が差し込んで、心豊かに暮らせるよう『復光』を願う」と、身代わり観音像を前に般若心経を唱え、従業員らが手を合わせた。
  
震災十三回忌を前に鵜住居観音堂で営まれた法要

震災十三回忌を前に鵜住居観音堂で営まれた法要

  
 地域住民も足を運び、思いをはせる機会にした。齋藤清子さん(78)は「もうすぐ12年。あっという間、早いね。観音堂は気持ちのよりどころ。子どもたちの声が聞こえるまちになってほしい」と目を細めた。
  
 観音堂を管理する別当の小山士(つかさ)さん(79)は「毛越寺からは毎年のように法要に来ていただきありがたい。先祖代々、500年守ってきた観音様をしっかりお守りしていかなければ」と言葉をかみしめた。
  
研修旅行で来釜した毛越寺の従業員、出迎えた鵜住居町の住民

研修旅行で来釜した毛越寺の従業員、出迎えた鵜住居町の住民

  
 「3月11日に平泉を訪れる方々にも被災地を忘れず、思いを寄せてもらいたい。そのためにもわれわれが現状を知り、伝える役目を果たしたい」と藤里貫主。一行は、陸前高田市の高田松原津波復興記念公園や宮城県南三陸町なども訪ねた。

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縄文人の暮らしの痕跡多数確認 釜石・橋野「太田林遺跡」発掘現場を一般に公開

発掘調査が行われてきた「太田林遺跡」の現地公開=釜石市橋野町

発掘調査が行われてきた「太田林遺跡」の現地公開=釜石市橋野町

 
 6月から発掘調査が進められてきた釜石市橋野町の「太田林遺跡」の現場が11月23日、一般に公開された。調査を行う県文化振興事業団埋蔵文化財センターによると、同所では縄文時代の竪穴住居20棟以上が密集した状態で見つかり、当時の装飾品「玦(けつ)状耳飾り」が多数出土した。縄文人の暮らしの一端を垣間見ることができ、訪れた人たちは興味をそそられながら担当者の説明に聞き入った。調査は来年度まで続く。
 
 橋野地区の消防屯所建設に伴う記録保存のための調査。現場は産地直売所「橋野どんぐり広場」から笛吹峠方面へ約150メートルの県道沿い。本年度は1325平方メートルを対象とした。
 
 竪穴住居は縄文時代早期(約8000年前)から前期末(約5000年前)のものと推定され、溝の長さや柱穴の状態から大型住居の痕跡が見られる。複数の建物跡が重なりあっていて、同じ場所に何回も建て替えて住み続けていたことが分かる。調査を担当する同センター主任文化財専門員の八木勝枝さん(48)は「この場所は日当たりが良く、平地が広い。川も近い。集落を構えるのに最適な立地条件」と話す。
 
竪穴住居を区画する溝や柱穴が複数見られる現場

竪穴住居を区画する溝や柱穴が複数見られる現場

 
長期にわたり住み続けるのに最適な条件がそろっていたとみられる

長期にわたり住み続けるのに最適な条件がそろっていたとみられる

 
 食糧を保存するための「貯蔵穴」も見つかった。大きなものは深さ約1・7メートルで、底が広いフラスコ型。小型の穴からは炭化したクリが多数見つかった。皮がむかれた状態で発見されるのは珍しく、原形もとどめている。大型住居の中には炉の跡(焼土)が複数みられ、家族単位で炉を囲んでいたとも考えられるという。
 
深さ約1・7メートルのフラスコ型「貯蔵穴」

深さ約1・7メートルのフラスコ型「貯蔵穴」

 
底に炭化したクリが見つかった(赤丸部分)貯蔵穴。形がはっきり残る縄文時代のクリ(右下)

底に炭化したクリが見つかった(赤丸部分)貯蔵穴。形がはっきり残る縄文時代のクリ(右下)

 
 担当者が注目するのは建物跡から見つかった「玦状耳飾り」。耳たぶに開けた穴に装着して使うもので、完成品(24点)だけでなく、製作途中のものも見つかった。材料は滑石。これだけの数が同じ場所から見つかることはまれだという。他に土器、石器(矢じり、石斧、すり石など)が多数出土したほか、土偶の破片や動物とみられる焼けた骨も見つかった。
 
今回の調査区から出土した遺物。上段は玦状耳飾りの製作過程

今回の調査区から出土した遺物。上段は玦状耳飾りの製作過程

 
用途別に大小さまざまな形状に加工された石器類

用途別に大小さまざまな形状に加工された石器類

 
 発掘範囲の東側では墓とみられる穴が5基見つかった。人為的に埋め戻されたような土がたまっていて、加工途中の「石刀」状の石製品が出土している。墓は住居よりも新しい時期のものと推定される。
 
墓の跡とみられる穴が複数見つかった東側エリア

墓の跡とみられる穴が複数見つかった東側エリア

 
 見学した甲子町(中小川)の中川和雄さん(73)は「場所的に住みやすい地形ですもんね。当時の人もできるだけ考えていたのだろう。釜石の温暖な気候もあるのかも」と想像を巡らし、「亡妻は遺跡が大好きだった。帰ったら報告してあげたい」と語った。
 
 同センターの八木さんは「これほどの住居の密集は私も見たことがない。玦状耳飾りは割とまとまっていたので、その家がどういう役割だったかを考える材料にもなる。来年度の調査と合わせ、一帯の全体像を把握できれば」と話した。発掘調査の成果は最終的に1冊の調査報告書にまとめられ、一般の人も県内市町村図書館などで目にすることができる。
 
 太田林遺跡は今回の調査区の北側にも広がり、これまでの市による分布・試掘調査で縄文時代から弥生時代の遺構・遺物が発見されている。