初開催の「きっとてっと」で買い物を楽しむ来場者
釜石市大町の市民ホールTETTO(谷澤栄一館長)で23日、オープンフェスタ「きっとてっと」が初開催された。地域内のすてきな人、店、もの、体験などに「であう」「つながる」きっかけにしてもらおうと企画。音楽、食、ものづくり、ショッピング…多様な楽しみを味わえる催しが用意され、大人も子どもも幅広い年代が地域の魅力を再発見した。
ロビーやギャラリー、屋根のある広場などホール1階を一体的に使用して開放。釜石市や大槌町を拠点に活動するアーティストと触れ合いながら芸術に親しむワークショップ、衣料品や日用品などを安価で販売するフリーマーケット、大ホールでのカラオケ体験、ベリーダンサーによる公演、ストリートピアノ演奏会といった多彩な催しが繰り広げられた。衣料・雑貨を取り扱う市内事業者、黒豚を使ったギョーザなど飲食のキッチンカーも出店。地元の駄菓子屋と谷澤館長がコラボした縁日は子どもたちに人気だった。
掘り出し物探しを楽しむフリーマーケット
縁日遊びのコーナーは子どもたちに大人気
特設ステージではベリーダンスなどが披露された
大槌町の佐々木やよえさん(69)と千葉左登子さん(68)は以前から興味があった鹿皮のキーホルダー作りに挑戦。三つ編みの形が少しゆがんで手作り感たっぷりの出来栄えだったが、「夢中になった。機会があったら、またやりたい」と喜んだ。もう一つ楽しんだのが、フリーマーケットでのモノとの「出合い」。手作りアクセサリーやブランド品の服などに目を留め、「キラキラしたものが大好き。女の子だから」と笑顔を重ねた。
鹿皮で作ったキーホルダーの出来栄えに満足げな参加者
人との「出会い」を楽しんだのは、フリマでハンドメイド作品を並べた鵜住居町の小林翔子さん(35)。対面販売は客の声を聞いたり、表情を見ることができ、作品作りのヒントになるという。釜石で実施されるイベントへの参加は今回が初めて。「『初めまして』の人が多く、作品を紹介する機会、情報交換の場になった」と手応えを得た。
イラストレーター西川真央さん(26)=活動名・mao=はポストカードや粘土細工などを販売したほか、似顔絵を通じた交流を提供した。京都出身で、1年前に釜石に移住。観光地域づくり会社で働く傍ら、制作活動に取り組む。対面で似顔絵を描きながら会話を楽しみ、「ものづくりが人とのつながりを生み出す」と実感。同じ会場では日本独自の紡績技術「ガラ紡」で紡いだ糸を使った小物作り、ひも状にした粘土を積み重ねる土器作りも行われていて、親子で参加する姿に「クリエイティブなことに挑戦できて、いい街だな~」と目を細めた。
モデルと会話を弾ませながら似顔絵を描くmaoさん
同イベントには、同ホールの阿部美香子さん(43)の実体験が反映された。東日本大震災後にUターンした際、地域になじもうと参加したフリマでの出会いが今も続いていて、「そんな出会いを体験してほしい」と企画。「新しい店は気になるが入りづらい」との声を聞き、「店の人とのつながれば、店舗を訪れるきっかけになる」と催しに盛り込んだ。子育て世代へのリサーチも行い、「いろんな形の出合い」をひとまとめにして開催。多様な人が入り混じる様子を見つめ、「人と直接話しながら、目的外のものに出合う機会になったら、うれしい」と思いを明かした。