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縄文時代から近代まで 釜石の復興発掘調査、遺跡・出土品紹介 国史跡「屋形遺跡」魚のまち脈々と

復興発掘調査で明らかになった釜石の歴史を紹介する展示

復興発掘調査で明らかになった釜石の歴史を紹介する展示

 
 釜石市が、東日本大震災の復興事業に伴って2012年度以降に実施した発掘調査は16遺跡、総面積は1万7616平方メートルに及ぶ。沿岸部の人々の営みに関する新たな知見が確認され、特に高い価値が認められた唐丹町大石の「屋形遺跡」は国史跡に指定された。こうした調査の成果を発信する展示や報告会があり、多くの市民らが参加。土器など生活道具のかけら、調査風景の資料写真などから地中に埋もれていた、まちの歴史に思いをはせた。
 
報告会では発掘した16遺跡の特徴を解説した

報告会では発掘した16遺跡の特徴を解説した

 
 報告会は5日に釜石PITで開催。市文化振興課の手塚新太課長補佐が発掘調査の概要や文化財の復旧について解説した。文化財保護法では、埋蔵文化財や遺跡が見つかった土地で工事を行うには教育委員会への届け出が求められ、工事で遺跡が失われる場合は発掘調査を行って記録を残す必要がある。「市内には320近い遺跡があり、毎年少しずつ増えている」とした上で、縄文時代早期の遺跡で市内で一番古い土器が出土した下ノ沢遺跡(平田町)、平安時代の貝塚や縄文時代の集落跡などが見つかった泉沢屋敷遺跡(鵜住居町)など16遺跡の特徴をスライドで紹介した。
 
参加者は古代からつながる歴史や文化に熱視線を送った

参加者は古代からつながる歴史や文化に熱視線を送った

 
 同課文化財係の加藤幹樹主任が提供した話題は、屋形遺跡から見る「さかなのまちの起源」。漁港からの避難路整備で12年と15年に調査を実施。縄文時代中期末から後期初頭(4000~3800年前)を主体とする竪穴住居や貯蔵蔵の遺構とともに、三陸沿岸のなりわいの実態を示す貝塚が発見され、市は避難経路の計画を変更し、遺跡の保存を決めた。現在の秋田や山形に住む人々との交流を示す製品が出土し、集落と貝塚が一体となった希少な遺跡だったことから21年に国史跡となった。
 
 貝塚からはシュウリ貝やマガキなどの二枚貝、ソイやアイナメなど魚類の骨のほか、釣り針やへらなどの骨角器などが見つかり、加藤さんは「釜石の名すらなかった頃から、魚のまちだったことを証明するもの。当時の自然環境やなりわいを知る非常に珍しい事例で、縄文から変わらない豊かな海と共存する生活が今なお続いている」と遺跡の価値を強調。体験学習や見学会など史跡の価値を知る学びの場として活用していく考えを示した。
 
屋形遺跡の貝塚の一部をはぎ取ったパネルも展示

屋形遺跡の貝塚の一部をはぎ取ったパネルも展示

 
 展示は4、5日に市民ホールTETTOであり、土器、石器類(石鏃・石斧・耳飾りなど)、土偶、骨角器といった生活道具など約670点がずらり。発掘作業の様子を紹介する写真パネルも並んだ。顔のようなものが施された「人面装飾付深鉢」(縄文時代前期)は、見る方向によって異なる表情や動きが感じ取れるユニークな出土品。首飾りなどの装飾品には三陸では採れなかった「イモガイ」が使われたものもあり、古くから他地域との交流があったことをうかがい知ることができる。
 
 平安時代の炭窯跡が見られる「横瀬遺跡」(箱崎町)、奥州藤原氏の影響を示す出土品で注目される「川原遺跡」(鵜住居町)、日本で3番目の鉄道跡として貴重な文化財「釜石鉱山鉄道一ノ橋橋台跡」など特徴的な資料に来場者は興味津々。平田の鈴木晴貴さん(釜石高2年)は母校の平田小裏手にある「平田遺跡」が気になった。「何気なく暮らしている地域に、昔の人の歴史が眠っていることを初めて知った。神秘的。ロマンがある」と熱心に見入っていた。
  
歴史キャラ登場か⁉顔のようなものが施された「人面装飾付深鉢」

歴史キャラ登場か⁉顔のようなものが施された「人面装飾付深鉢」

 
来場者はずらりと並んだ出土品をじっくりと見て回った

来場者はずらりと並んだ出土品をじっくりと見て回った

  
 報告会は約90人が聴講。大槌町の阿部智子さん(47)は三陸ジオパーク推進協議会で活動していて、「屋形遺跡がジオパークの見どころの一つになるのでは。地域の歴史や文化につながる大地の話として興味深い」と感じた。災害という負の部分もあるが、復興事業で各地の発掘調査が進んだのも事実で、「震災を伝えるのも三陸ジオパークの役割。地域の歴史を物語る貴重な場所が発見されたことをプラスに捉えて紹介してほしい」と期待した。
  
展示会場では発掘作業に携わった調査員らが出土品を手に解説した

展示会場では発掘作業に携わった調査員らが出土品を手に解説した

  
 今回、展示紹介されたのは、ほんの一部の出土品。手塚さんによると、「破片などを含めると10倍はある。見てもらいたいものはまだある」と熱く語る。今後は、理解や興味を深めてもらえるよう年代別に展示するなど工夫し、発信を続けていく考えだ。
 

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ハートのイルミネーション、街彩る バレンタインからホワイトデーまで 釜石・青葉通り

青葉通りにお目見えした大きなハートのイルミネーション

青葉通りにお目見えした大きなハートのイルミネーション

 
 釜石市大町の青葉通りで4日、バレンタインデーに合わせたイルミネーションが始まった。発光ダイオード(LED)で彩られたハート形のオブジェ(高さ約3メートル)などがお目見え。ピンクや白、青などに輝いてロマンチックな雰囲気を醸し出している。点灯は、ホワイトデーの3月14日までを予定する。
 
 大町商店街振興組合(新里耕司理事長)が企画。同通り緑地帯(ホテルサンルート釜石前)にハートのオブジェや、雪の結晶をかたどったイルミネーションで彩られた光のトンネルなどを設置した。「かわいい」「きれい」。家路を急ぐ人たちが足を止めて見入ったり、写真を撮ったりしていた。
 
鮮やかなイルミネーションで彩られた青葉通り

鮮やかなイルミネーションで彩られた青葉通り

 
 例年クリスマスシーズンに実施してきたが、一昨年は設置後に強風で一部の電球が壊れて数日で撤去、昨年は見送った。まちなかを活性化させようと、バレンタインシーズンの飾り付けを考えていたところ、イルミネーションで地域を楽しませている小川町の藤原豊さん(69)を紹介され、協力を要請した。
  
 「派手なのが好き」と藤原さん。20年ほど前からクリスマスの時期になると自宅にイルミネーションを飾り付け、住宅街を温かく照らしている。催しの会場を光の演出で盛り上げたりすることも。そして、今回のバレンタインイルミ。まだ完成形ではなく、時間を見て電球やオブジェを増やしていく考えだ。「少しずつ変化する輝きも楽しんでほしい」。寒い日は続くが、光の光景が道行く人たちへプレゼントになることを願っている。
 
まちなかを温かく照らすイルミネーション

まちなかを温かく照らすイルミネーション

 
 新里理事長(66)も「恋人たちの憩いの場に。2人のハートで寒さを乗り越えてもらえたら」と期待。新型コロナウイルス禍で人を呼び込む取り組みはいまだ難しさも残るが、「ウィズ・コロナを見据えてできることでにぎわいを創出、地域を盛り上げていきたい」と前を向いた。
 

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認知症になっても安心な暮らしを―釜石・小佐野地区、世代を超えた見守りチーム始動

認知症の人らをチームで支える取り組みが進む小佐野地区

認知症の人らをチームで支える取り組みが進む小佐野地区

 
 釜石市は、認知症の人やその家族を見守る「認知症サポーター」らをつなぐ「チームオレンジ」を市内全地区に組織しようと取り組んでいる。昨年12月、市内2例目となる「チームオレンジ・こさの」が発足。小佐野地区で子どもたちの見守りを行うメンバーらが高齢者にも目を配り、あいさつや声かけなど既存の取り組みを生かし活動している。そして今年2月には、小佐野小児童によるジュニアチームも誕生。世代を超えた「見守り合い」で、認知症になっても住み慣れた場所で安心して暮らせる地域づくりを目指す。
 
 チームオレンジは認知症支援のために国が進める施策で、2025年までに全市町村が取り組むことを目標にしている。主な活動は高齢者への声かけや見守りで、メンバーになるにはサポーター養成講座(90分)、ステップアップ講座の受講が必要。市内では鵜住居地区が先行し、昨年7月に始動。高齢者サロンなどの活動を展開している。
 
昨年12月の結成式に集った「チームオレンジ・こさの」のメンバー

昨年12月の結成式に集った「チームオレンジ・こさの」のメンバー

 
 約4割が高齢者という小佐野地区は、認知症支援への関心が高い。19年度に養成講座を開講。小佐野小のスクールガードらでつくる「スクラム小佐野見守り隊」のメンバー90人超が受講した。新型コロナウイルス禍で追加の研修が中断されていたが、チーム立ち上げの機運が高まり、研修を受けた40人で結成にこぎつけた。昨年12月22日の結成式で、認知症支援のシンボルカラーであるオレンジ色のリストバンドとバッジを手にしたメンバーがそれぞれ独自の活動を進めている。
 

ごみ出し支援で見守り継続 向定内町内会

 
依頼された一般ごみを回収する「向定内にこにこクラブ」のメンバー

依頼された一般ごみを回収する「向定内にこにこクラブ」のメンバー

 
 向定内町内会(三浦一志会長、約220世帯)では、ごみ出し支援などをしながら独り暮らしの高齢者らを見守る「向定内にこにこクラブ」(伊東恵子代表、5人)をチームオレンジの活動に生かす。
 
 「おはようございます。今日は袋一つでいいんだね」「元気?体調は」「変わったことはない?」――。
2月2日朝、5人のメンバーは2手に分かれて活動。伊東代表(73)らが訪ねた高齢の女性宅では玄関前に置かれた一般ごみの袋を回収し、100メートルほど離れた集積所まで運んだ。女性は「いつもありがとうね。ごみ出しを代わりにしてもらえるのは助かる。年寄りに優しい町内会だ」と感謝する。
 
回収したごみ袋を集積所に運ぶメンバーら

回収したごみ袋を集積所に運ぶメンバーら

 
 同クラブは2015年に結成。高齢者らの生活支援(有償)として、今は一般ごみが週1回、資源ごみは月1回活動していて、10世帯ほどが利用する。ほかにも、庭先の草取り、ガラス磨きや電気の交換など「お助け」のニーズを聞いて、できる範囲で日常生活を支えている。
 
 「町内を歩く中で、道行く人にあいさつしたりコミュニケーションをとることを大事にしている」と伊東代表。80歳を超えて活動するメンバーもいて高齢化が気になるが、利用者から届く感謝の言葉で続けられるという。「私たちは困りごとを手助けする何でも屋。できることで、おせっかいしている」と笑う。メンバーたちも「人のためもあるけど、自分のためにもなる。運動だから」と声を合わせた。
 
「無理せず、自然体な活動を」と話す伊東代表(前列中)、三浦会長(同左)ら

「無理せず、自然体な活動を」と話す伊東代表(前列中)、三浦会長(同左)ら

 
 同町内会は、もともと孤独死防止や災害時避難困難者支援を目的に見守り体制を構築しており、その取り組みを認知症にも役立てる。三浦会長(80)は「年々、高齢の独り暮らしが増えていると感じる。日常生活の中でさりげなく様子を見る、緩やかな見守りがポイントになる。気張らず、自然な形の取り組みにし、自分たちのコミュニティーを守っていきたい」と先を見据えた。
  

「困っていたら声をかけたい」 小佐野小5年生

 
認知症のお年寄りとの接し方を寸劇から学ぶ小佐野小5年生

認知症のお年寄りとの接し方を寸劇から学ぶ小佐野小5年生

 
 チームこさのの特徴的な取り組みが、ジュニア組織の立ち上げだ。小佐野小(千葉裕之校長、児童290人)の5年生41人が2段階の講座を終えてジュニアサポーターに認定され、2月7日に「チームオレンジ・こさの ジュニア」を結成した。岩手県内の小学校では初めてで、全国でも珍しいという。
 
 1月25日、追加研修のステップアップ講座が同校であり、寸劇などを通して患者への接し方などを学んだ。「悪い例」を見た後に、適切な対応を考えて発表。▽声をかける時は驚かさないよう優しい口調でゆっくり話す▽一人で対応するが難しい時は交番や先生、生活応援センターに連れていく―などの行動を共有した。
 
困っている人を見かけた時の対応について意見を出し合う児童

困っている人を見かけた時の対応について意見を出し合う児童

 
 同校では毎年4年生が近くにある福祉施設の協力で養成講座を受け、介護や認知症について学習している。「地域の人たちにいっぱい助けられてきた。自分たちができることで地域の役に立ちたい」と具体的な活動を思案。そんな時にチームこさのが立ち上がり、互いに見守り、支え合う地域づくりの一員になることを決めた。
  
 主な活動は、登下校時などに困っている人を見かけたら手助けすること。土手樹君は「買い物をした時に困っている人を見たことがあった。今度見かけたら目線を合わせて優しく声をかけたい」と決意した。
 
 チームこさの事務局を担う小佐野地区生活応援センターの佐藤貴之所長は「孫と一緒に参加したり、話をするきっかけになるような活動になれば。より多くの人に携わってもらい、住みやすい地域づくりにつなげたい」と意義を強調した。

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広報かまいし2023年2月1日号(No.1801)

広報かまいし2023年2月1日号(No.1801)

 

広報かまいし2023年2月1日号(No.1801)

広報かまいし2023年2月1日号(No.1801)

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【P1】
初心者向けスマホ体験会

【P2-3】
みんなのおしごとFes!! 2023
不要な体操着を引き取り・お譲りします 他

【P4-5】
釜石市地震・津波避難訓練
水産・海洋研究フォーラムin 釜石 他

【P6-7】
まちのお知らせ

【P8】
釜石市有形文化財公開事業
釜石市民劇場「 七十七年前の出来事」乙女たちの戦い 他

【津波災害ハザードマップ(折り込み)】

この記事に関するお問い合わせ
釜石市 総務企画部 広聴広報課 広聴広報係
〒026-8686 岩手県釜石市只越町3丁目9番13号
電話:0193-27-8419 / Fax 0193-22-2686 / メール
元記事:https://www.city.kamaishi.iwate.jp/docs/2023011800030/
釜石市

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小山怜央さん、合格は持ち越し 将棋・棋士編入試験第3局で黒星 地元釜石で家族ら応援「次こそ」

小山怜央さんの地元釜石・中妻地区生活応援センターで開かれた大盤解説会

小山怜央さんの地元釜石・中妻地区生活応援センターで開かれた大盤解説会

 
 釜石市出身で将棋のアマチュア強豪、小山怜央さん(29)=横浜市、将棋講師=は20日、大阪市の関西将棋会館でプロ棋士編入試験5番勝負の第3局に臨み、狩山幹生四段(21)に165手までで敗れ、対戦成績は2勝1敗となった。初戦から連勝し合格にあと1勝としていたが、岩手県初のプロ棋士誕生は次戦以降に持ち越しとなった。地元釜石では家族らが戦況を見守り、「次こそは」と期待を残した。
 
 午前10時、小山さんの後手で対局が始まった。戦型は「相雁木(あいがんぎ)」。序盤戦はじっくりとした戦局が続いた。中盤戦以降は狩山四段がリードを広げる展開に。小山さんは最終盤、思い切った勝負手を繰り出したが冷静に対応され、粘りも及ばず押し切られた。
 
プロ棋士編入試験5番勝負第3局で小山さんの戦いぶりを見守る釜石市民

プロ棋士編入試験5番勝負第3局で小山さんの戦いぶりを見守る釜石市民

 
 釜石市上中島町の中妻地区生活応援センターでは釜石将棋教室による大盤解説会があり、日本将棋連盟釜石支部長の土橋吉孝さん(67)が指し手の意味や狙いを説明。小山さんの父敏昭さん(60)、母聖子さん(60)、将棋愛好者ら約20人が盤上に再現される対局の行方を見守った。
 
 「攻め合いですね」「厳しいな」「(リードされても)離されずついていけば、まだ楽しみはある。怜央は終盤に強い」「最後のギリギリまで勝ち筋を探す。諦めず頑張るのが昔から彼の良いところ」。同支部が開く将棋教室で少年期の小山さんを指導した土橋さんならではの視点を入れた解説が続いた。参加者らを交え、次の一手を予想しながら見守っていたが、午後4時45分ごろ、小山さんが投了すると会場にため息が漏れた。
 
小山さんが小学生の頃に将棋教室で指導した土橋吉孝さんが解説

小山さんが小学生の頃に将棋教室で指導した土橋吉孝さんが解説

 
目の前に盤を置いて一手ごと再現しながら解説を聞く人も

目の前に盤を置いて一手ごと再現しながら解説を聞く人も

 
 土橋さんは「相手の得意の戦型に持ち込まれ、序盤に時間を使いすぎたのが敗因かな。相手が一枚上手。(小山さんは)駒がのびのび前に行けなかった。終盤に力を出せる場面がなく、不完全燃焼だったろう」と振り返った。会場入りした映像で襟のボタンが外れているように見えたと言い、「いつもと違って緊張していたね。プレッシャーもあったのだろう」と推測。一方、「3連勝で試験を通過した人はいない」と強調し、「もう1回、多めに打てると思えばいい」と前向きに捉える。次戦に向けては「相手の得意な戦型を勉強し準備する。相手の土俵で戦わず、自分の持ち味を出してほしい」とエールを送った。
 
小山さんの挑戦を見守る敏昭さん(手前)、聖子さん(左奥)

小山さんの挑戦を見守る敏昭さん(手前)、聖子さん(左奥)

 
 聖子さんも小山さんの緊張を感じ取った様子で、「少し心配しながら見ていた。次はプレッシャーを感じずに集中して頑張ってほしい」と願った。敏昭さんは「次がある。切り替えて取り組んでほしい」と背中を押す。
 
2016年の第1回釜石市長杯争奪世代間交流将棋大会にチーム「小山家」で参加した小山さん(左)=復興釜石新聞アーカイブ

2016年の第1回釜石市長杯争奪世代間交流将棋大会にチーム「小山家」で参加した小山さん(左)=復興釜石新聞アーカイブ

  
 小山さんは鵜住居町出身。岩手県立大在学中の2014年に学生名人に輝いた。15年アマ名人戦優勝、16年アマ王将位優勝など6大アマタイトルのうち5つで優勝経験がある。卒業後、強豪のリコー将棋部に在籍したことも。現在は横浜市で将棋講師を務める。昨年秋、出場が認められている公式戦でプロを相手に10勝以上かつ6割5分以上の勝率という条件を満たし棋士編入試験資格を獲得、受験を希望した。
  
 試験は新人棋士5人と対戦して3勝で合格。昨年11月の第1局で徳田拳士四段(25)、同12月の第2局で岡部怜央四段(23)に勝利。あと1勝で、プロ棋士養成機関「奨励会」の在籍経験がないアマが初めて合格する。また本県のプロ第1号となる。
  
 第4局は2月の予定で、横山友紀四段(22)と対戦する。
 
注目を集める小山さんの挑戦。次戦、夢をかなえる大一番に市民は熱視線を送る

注目を集める小山さんの挑戦。次戦、夢をかなえる大一番に市民は熱視線を送る

 

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魅力いっぱい!大迫の宝を釜石市民に紹介 大迫高生が大償神楽と大型紙芝居を熱演

釜石市の鵜住居公民館で「大償神楽」を披露する大迫高の生徒

釜石市の鵜住居公民館で「大償神楽」を披露する大迫高の生徒

 
 花巻市大迫町の大迫高(三田正巳校長、生徒53人)の生徒16人が17日、釜石市を訪れ、地域の伝統芸能「大償(おおつぐない)神楽」や民話を題材にした大型紙芝居を披露した。生徒らが学校で取り組む伝承活動を地元以外で披露するのは初めて。会場となった鵜住居町の鵜住居公民館(松下隆一館長)には地域住民ら約60人が集まり、高校生の熱演に盛んな拍手を送った。
 
 同校の学芸部神楽班と図書委員会で活動する1~3年生が来釜。図書委員らは地元に伝わる約50の民話の中から「とのさまとごちそう」「キツネの念仏」の2話を大型紙芝居で披露した。図書ボランティアとして活動する地域住民から指導を受けた方言で物語を展開。紙芝居の前後には昔ながらの拍子木を打ち鳴らす演出で楽しませた。
 
大迫に伝わる民話「キツネの念仏」の大型紙芝居

大迫に伝わる民話「キツネの念仏」の大型紙芝居

 
 早池峰神楽の一つ「大償神楽」の伝承に取り組む神楽班は、6つある式舞の3番目の舞曲「三番叟(さんばそう)」を披露した。同神楽は早池峰山信仰に由来するとされ、500年以上の歴史を誇る。早池峰神楽(大償、岳)は1976年、国の重要無形民俗文化財に指定され、2009年にはユネスコの無形文化遺産に登録された。大迫高の生徒は地元保存会の指導を受け、弟子神楽として2017年から活動する。
 
式舞「三番叟」を軽やかに舞う高橋悠斗班長

式舞「三番叟」を軽やかに舞う高橋悠斗班長

 
見せ場では観客から拍手が湧き起こった

見せ場では観客から拍手が湧き起こった

 
 修験山伏の祈祷の舞が根源とも言われる同神楽。釜石では生で見る機会はほとんどないだけに、観客は舞い手の動きに目がくぎ付けとなった。鵜住居町の植田敬子さん(82)は「自分の出身地の川井村にも神楽があるが、こちらはまた全然違う。高校生、すごいですね。見ているとうきうきして、一緒になって踊りたくなるよう。心の洗濯もした気分」と大感激だった。
 
 10分以上の演目を1人で踊り切った神楽班班長の高橋悠斗さん(2年)は「年明け最初で、体力に自信がない中での舞だったが、自分の力を全部出し切れた」と充実の表情。外の人たちに初めて見てもらう不安もあったが、「大きな拍手やお褒めの言葉をいただき、自分たちのモチベーションも上がった」と今後につながる収穫を得た様子。
 
 同校で神楽をやるため、留学制度を利用して入学した北上市出身の阿部浬歩さん(3年)は今回が最後の舞台。笛で後輩たちの演舞を支え、「(後輩の)成長した姿が見られて良かった」と笑顔を見せた。3年間の活動を振り返り、「舞の習得など練習は大変だったが、神楽を通してあきらめない心が身に付いた。今後の人生にもきっと生かせると思う」と貴重な経験を胸に刻んだ。
 
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 紙芝居と神楽の合間には、藤原愛(まな)生徒会長(2年)による大迫町の魅力発信コーナーも。まちの活性化策として、同校が地元のコミュニティー振興会と取り組んだベンチのリニューアルプロジェクトを紹介し、同町への来訪を呼び掛けた。
 
 同校では昨年度から釜石高の生徒による防災出前授業が行われていて、両校の相互交流が進む。大迫高生の釜石訪問は、新型コロナウイルス感染症の影響で昨年度はかなわず、今回が初。鵜住居公民館の後、釜石高に出向き、2年生の前で同様の披露を行った。両校の縁は2020年度に釜石高の副校長を務めた、大迫高の三田校長がつないだ。

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気軽に来て…地域のよりどころ「談話ルーム」 釜石・甲子公民館、毎月1回開設

「談話ルームかっし」を紹介する甲子公民館と市社協関係者

「談話ルームかっし」を紹介する甲子公民館と市社協関係者

 
 地域の人が気軽に話せる場をつくろうと、釜石市甲子町の甲子公民館(佐々木利光館長)は月に1回、「談話ルームかっし」を開設している。市社会福祉協議会と連携しており、個別対応も可能。支援が必要な場合は専門の機関・団体につないだり、各種サービスの情報を提供する。独り暮らしの高齢者や家に閉じこもりがちな人などの外出の機会につなげるのも狙い。孤立を防ぎ、不安や悩みを吐き出せる語り合いの場、新たな出会いの場を目指している。
 
 甲子町内には約6000人が暮らす。同館が地域課題について各町内会にアンケート調査を行ったところ、▽高齢者や独居世帯の増加▽高齢化による町内活動の担い手不足▽交通の不便-といった回答が多かった。特に高齢の独居者や家に閉じこもりがちな人らは外部とのつながりが薄くなり、「何か悩み事を抱えているかもしれないが、話を聞き取るのが難しい」など孤立の懸念を指摘する声もあった。
 
 こうした実態を踏まえた取り組みを地域内で検討し、「継続が大事になる。できることから始めよう」と共有。すでに行っている「普段からの緩やかな見守りと、さりげない声がけ」を維持しつつ、外に出るきっかけにしてもらえるよう「身近で気軽なおしゃべりの場」を設けることにした。
 
談話ルーム利用者(手前)の話に耳を傾ける甲子公民館職員ら

談話ルーム利用者(手前)の話に耳を傾ける甲子公民館職員ら

 
 談話ルームは毎月第2月曜日の午後1時半~4時半に開設。1階の図書室を利用する。同館や社協の職員らが来場者とおしゃべりを楽しんだり悩み事を聞いたりしながら、心身ともに健康な生活を送れるようサポートする。
 
 2回目となる1月は変則で、16日に開設。個別対応を希望する人らが足を運んだ。50代女性は「知っている人には話しにくいことがある。そういう人がいない場所で話せるのがありがたい。気になっていることを吐き出して、聞いてもらうと気持ちが軽くなる」と歓迎した。
 
 佐々木館長は「地域のよりどころとして、何か悩んでいたり、言いたいことがあっても誰に話せばいいか分からない人のお手伝いができれば。話すことで心と体の状況を良い方向に持っていってほしい」と見守る。来場者同士が会話を楽しみ、顔見知りになる―そんな新たな出会いの場にとの期待も。「相談ではなく、談話の場として気軽に来てみて」と呼び掛ける。
 
「毎月第2月曜日の午後は甲子公民館の図書館へ」と呼び掛ける

「毎月第2月曜日の午後は甲子公民館の図書館へ」と呼び掛ける

 
 次回は2月13日に開設。問い合わせは甲子公民館(甲子地区生活応援センター/電話0193・23・5524か、21・3151)へ
 

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今年も見られた!オオハクチョウ、カワセミに歓声 鵜住居川周辺で水辺の鳥観察会

片岸公園の沼地を泳ぐ野鳥を観察する参加者

片岸公園の沼地を泳ぐ野鳥を観察する参加者

 
 釜石市の鵜住居川河口周辺で14日、市生活環境課主催の「水辺の鳥観察会」が開かれた。一帯は東日本大震災による津波被害から10年の時を経て復興を遂げ、新設された片岸公園を中心に多くの野鳥が生息する環境が戻ってきた。今冬もオオハクチョウの飛来が確認され、ガン、カモ、サギなどと一緒に水辺に憩う姿が、散歩に訪れる市民らの目を楽しませている。観察会では、鮮やかな体色で「飛ぶ宝石」と称されるカワセミも見ることができた。
 
 同観察会は1977年から続けられる冬の恒例行事。震災後は新しい防潮堤や水門の設置工事のため中止されてきたが、2020年度から再開されている。今回は市民らを中心に約20人が参加。釜石野鳥の会(臼澤良一会長、7人)の会員3人が案内役を務め、双眼鏡やフィールドスコープを使って多種多様な鳥を観察した。
 
 片岸公園(2021年完成)から観察をスタート。参加者を出迎えたのは、園内の沼地で羽を休めるオオハクチョウの群れ。灰色の幼鳥を含め20羽以上が確認された。同会会員によると、今冬も11月下旬に第一陣が飛来。観察会の日までに35羽が確認されている。昨季は内陸部で積雪が多く、餌をとれなくなったハクチョウが沿岸部に多く飛来し、鵜住居川周辺では最大で約200羽が確認されたという。
 
水面をゆっくり進むオオハクチョウ。見応え十分

水面をゆっくり進むオオハクチョウ。見応え十分

 
釜石野鳥の会の会員らが鳥の生態や生息環境について説明した

釜石野鳥の会の会員らが鳥の生態や生息環境について説明した

 
飛来したハクチョウの多くが片岸公園で見られ、周辺にはにぎやかな鳴き声も響く

飛来したハクチョウの多くが片岸公園で見られ、周辺にはにぎやかな鳴き声も響く

 
 同会事務局の菊地利明さん(57)は「子育て中のハクチョウは子どもを守ろうと攻撃的になることがある。近寄りすぎると危害を加えられる恐れもあるので、距離を保って観察を。野生の鳥なので、人間が餌をあげることは絶対にしないでほしい」と注意を促した。
 
 この後、鵜片橋に移動。水門近くの中州に目をやると、アオサギやマガモの群れが見られた。数羽のダイサギが羽を広げて飛ぶ優雅な光景も。背が高いサギ類は外敵が近づくといち早く察知し鳴き声を上げるので、周りにいるカモなども危険を知ることができるという。
 
鵜住居川の水門近くの中州で見られたアオサギの群れ(左下)と周辺を飛び交うダイサギ(白色)

鵜住居川の水門近くの中州で見られたアオサギの群れ(左下)と周辺を飛び交うダイサギ(白色)

 
 最後の観察ポイントは釜石鵜住居復興スタジアム前の鎧坂橋付辺。ここ数年、カワセミがよく見られる場所で、参加者の期待も高まった。川のほとりの草地に目を凝らすと、ひときわ目立つカラフルな姿が…。「あっ、いたいた!きれいだー」。頭から背中にかけての青色、腹部のオレンジ色が美しいカワセミが枝に止まっていた。くちばしの色から雄の個体。餌となる水中の小魚を狙っている様子で、少しすると水面に向かって飛び立った。
 
鮮やかな体色のカワセミ。冬枯れの景色の中ではひときわ目を引く

鮮やかな体色のカワセミ。冬枯れの景色の中ではひときわ目を引く

 
 約1時間の観察の後、見られた鳥の種類を一覧表でチェック。結果、昨年の観察会と同様、28種類の野鳥が確認された。ガン・カモ類が最も多く、ワシ・タカ類ではトビやノスリが見られた。個体数ではオオバンの数が際立った。
 
 鵜住居町の佐藤奏子さん(44)、一帆ちゃん(3)親子は昨年に続いての参加。「ハクチョウ、かっこ良かった。鳥さん大好き」と一帆ちゃん。奏子さんは「カワセミは昨年も同じ場所で見られ、変わらず生きているんだなと感動した。震災から復興した風景、年数を重ね再生してきた自然を目の当たりにし、生き物の生命力、共存の大切さをあらためて実感した」と話した。
 
多くの野鳥が集う片岸公園の沼地。周辺には遊歩道も整備されている

多くの野鳥が集う片岸公園の沼地。周辺には遊歩道も整備されている

 
観察会で見られたカワウ(左上)、ホオジロ(右上)。下段はマガモのつがい(左が雄、右が雌)

観察会で見られたカワウ(左上)、ホオジロ(右上)。下段はマガモのつがい(左が雄、右が雌)

 
 震災前、県内有数の「野鳥の宝庫」として知られた鵜住居川河口周辺。市の観察会では最多で57種が確認されたこともあった。臼澤会長(74)は「(鳥の隠れ家となる)ヨシ原など草地はだいぶ戻ってきたが、樹木はまだ少ない。木に営巣する鳥も多いので、生息環境のためには植樹を進めるのも有効。鳥の餌となる昆虫を含め、生き物全体のバランスが保たれるようなフィールドが必要」と話し、今後も注意深く環境を見守っていく重要性を示した。

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釜石の鉄道が熱い!受験応援「すべらない砂」、SL銀河・BRT紹介「駅カード」配布中

JR釜石駅で配布している「すべらない砂」と釜石・気仙沼エリアの「駅カード」

JR釜石駅で配布している「すべらない砂」と釜石・気仙沼エリアの「駅カード」

  
 JR東日本の釜石線、三陸鉄道のリアス線が乗り入れている釜石駅(釜石市鈴子町)。両路線の連携企画として、釜石・気仙沼エリアの魅力を発信しようと作成した「駅カード」を利用客に配布する。さらに、シーズン真っただ中の受験生を応援する合格祈願の「すべらない砂」を無料配布中。人を呼び込む仕掛けで新年を迎えた地域を熱くしている。
  

JR×三鉄コラボ企画 釜石-気仙沼エリア・4つの駅カードを集めよう

  
三陸鉄道とのコラボ企画で作成した駅カード4種と特製台紙をPRするJR釜石駅の髙橋恒平駅長

三陸鉄道とのコラボ企画で作成した駅カード4種と特製台紙をPRするJR釜石駅の髙橋恒平駅長

  
 駅カードはJR東・盛岡支社と三鉄がタッグを組み、釜石-気仙沼間を走る列車やバス高速輸送システム(BRT)などをデザインした4種を作成した。対象駅は釜石駅、盛駅(大船渡市)、陸前高田駅、気仙沼駅。表面にはSL銀河や三鉄、BRTの車両が景勝地とともにイラストで描かれ、裏面では各駅の開業日や番線数など基本情報を紹介している。同支社では盛岡駅や二戸駅、一ノ関駅などの駅カードを作成しているが、SL銀河やBRTが登場したのは今回が初めて。三鉄とのコラボも初となった。
   
 対象となる4駅が乗車区間に含まれるきっぷを駅係員に提示すると、カードがもらえる。当日有効で、フリーきっぷも対象。定期券や駅入場券は除く。各駅で窓口の営業時間に配布。全4駅分を集めた人には、特製台紙のプレゼントという特典も用意する。
  
車両と景勝地がデザインされた駅カード4種。裏面のイラストをつなげて交通網の連携を見ることもできる

車両と景勝地がデザインされた駅カード4種。裏面のイラストをつなげて交通網の連携を見ることもできる

  
 JR釜石駅の髙橋恒平駅長(42)は「鉄道路線、BRTを使って駅めぐりを楽しみ、南三陸エリアの風景や食を満喫しながら魅力を感じてもらえたら。駅カードのコレクションを旅行の楽しみの一つに、『また行きたいな』と思うきっかけにしてほしい」と期待。SL銀河は今春の運行後に終了することが決まっていて、「プレミアム感もある」と強調する。
  
 駅カードの配布は1日から始まり、同駅では4日までに三鉄と合わせて計約200枚を配布。気仙沼駅では初日に70枚ほどが配られ、人気をうかがわせる。準備枚数がなくなり次第終了する。
  

JR釜石駅の新春応援企画 合格祈願の砂「受験・就活の験担ぎに」

  
「すべらない砂」と釜石駅発の「合格駅」行き特急券

「すべらない砂」と釜石駅発の「合格駅」行き特急券

  
 同駅では受験シーズンに合わせて改札前に「合格祈願神社」を設け、「すべらない砂」も無料提供している。市内の八雲神社でおはらいした砂と、合格特急券「釜石駅から合格駅ゆき」と書かれた片道切符を袋に詰めて1000個を用意。3月中旬の県立高校入試まで配布する予定だ。
  
 列車が上り坂を走行する際、砂を車輪の空転防止に使うことにちなんだ験担ぎ。15年以上前から受験応援グッズとして配っている。この時期の恒例企画として定着し、リクエストの多い取り組み。今年は4日に配布を始め、「お守りに」「御利益がありますように」と砂をもらうため駅を訪れる人も多いという。
   
合格祈願神社、後方に配置された赤い獅子頭は全て駅関係者の手作り

合格祈願神社、後方に配置された赤い獅子頭は全て駅関係者の手作り

  
 駅を訪れる人たちが快適に、穏やかに過ごせるよう、季節に合わせた装飾に力を入れている同駅。新年を盛り上げるオブジェとして、赤い獅子頭がお目見えした。神社を模した配布コーナーや170センチほどの大鳥居も全て駅員と、清掃を担うグループ会社の職員が手作りした。
  
 受験や資格取得、就職活動がうまくいきますように―。「頑張る人にエールを送りたいと職員一人一人が思いを込めた。砂が少しでも皆さんの心の支え、後押し、お守りになれば」と髙橋駅長。卯(う)年は「飛躍の年」とも言われ、自身は「仕事でもプライベートでも挑戦する年に。自己成長につなげたい」と目標を掲げた。
 
 

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釜石市「はたちのつどい」 成人年齢引き下げで式典名称変更 20歳の門出祝う

 「はたちのつどい」として開催された成人の日の記念式典=釜石市

「はたちのつどい」として開催された成人の日の記念式典=釜石市

 
 昨年4月に成人年齢が18歳に引き下げられ、初めて迎える「成人の日」。釜石市では、「成人のつどい」として開催してきた式典を「はたちのつどい」と改称し、これまで通り、本年度20歳を迎える人たちを祝う場が設けられた。8日、大町の市民ホールTETTOで開かれた式典には193人が出席。それぞれの道で精進を続ける若者らが人生の節目に誓いを立て、大人としての自覚を新たにした。
 
 式典であいさつした野田武則市長は、幾多の困難を乗り越えてきた釜石人の「不撓(ふとう)不屈の精神」、東日本大震災の教訓を心に刻み、今後の人生を切り開いていくことを期待。人口減少が進む同市に希望をもたらすため、「一人一人、何ができるか考えてほしい。釜石の将来を皆さんと一緒につくっていきたい」と呼び掛けた。
 
 式典運営には前回から、当事者らでつくる実行委が参画。今回は12人の委員が昨年6月から準備を進め、生まれた年から20年間の国内外、釜石の動きをまとめた映像、中高時代の恩師から集めたメッセージ動画を作成し上映した。恒例となった有志による郷土芸能の披露はこれまでの虎舞に加え、新たに神楽が登場した。
 
恩師のビデオメッセージを見ながら中高生時代を懐かしむ

恩師のビデオメッセージを見ながら中高生時代を懐かしむ

 
式典初となった神楽の演舞。東前太神楽の継承メンバーら8人が披露した

式典初となった神楽の演舞。東前太神楽の継承メンバーら8人が披露した

 
虎舞は有志15人で。威勢のいい掛け声と舞で20歳のパワー全開

虎舞は有志15人で。威勢のいい掛け声と舞で20歳のパワー全開

 
 東前太神楽の岩間雄史さん(19)は「20歳の節目に同級生みんなで踊りを披露でき、いい思い出になった」と感謝。現在、東北福祉大(宮城県)に在学中。「卒業したら地元に戻ってきて貢献したい。子どものころから親しんできた郷土芸能や祭りをしっかり引き継ぎ、さらに盛り上げて次世代につないでいけたら」と夢を描いた。
 
 抱負を発表したのは、甲子中出身で常葉大(静岡県)在学の金和樹さん(20)。サッカーで夢をかなえるため進んだ強豪・青森山田高での過酷な日々を振り返り、支えてくれた両親、地元の友人、地域の人たちへ感謝の気持ちを伝えた。プロ選手の目標を胸に抱き、「スポーツを通して釜石に貢献できるよう精進していく。新型コロナなど私たちをとりまく情勢は厳しいが、一人一人が困難に屈せず、たくましく前を向いて歩いていきたい」と決意を述べた。
 
出席者を代表し、抱負を発表した金和樹さん

出席者を代表し、抱負を発表した金和樹さん

 
 高校3年時に新型コロナの流行が始まり、この3年間、さまざまな制限の中で生活してきた若人ら。市外在住者は帰省も難しい状況が続いたため、式典での同級生との再会はいつも以上に大きな喜びに包まれた。フォトスポットでの記念撮影、近況報告や思い出話にたくさんの笑顔が広がった。
 
大平中、釜石中出身者らで記念写真におさまる男性グループ

大平中、釜石中出身者らで記念写真におさまる男性グループ

 
バルーンアートで彩られたフォトスポット。釜石商工会議所青年部が開設した

バルーンアートで彩られたフォトスポット。釜石商工会議所青年部が開設した
 
華やかな振り袖姿で笑顔を輝かせる女性グループ

華やかな振り袖姿で笑顔を輝かせる女性グループ

 
 帝京大(東京都)に通う川前優愛さん(20)は「一人暮らしもあって、自分でやらないといけないことが増えた。大人になっていくのを感じている」と自覚。小学2年時に震災の津波で大槌町の自宅を失い、釜石市に転居。コロナ禍の中、始まった慣れない都会での生活に寂しさを感じたこともあった。多くの苦難を経験し、将来に描く夢は「小学校教諭になる」こと。女手一つで育ててくれた母に深く感謝し、節目の年の新たな一歩を踏み出した。
 
 釜石東中出身の小笠原萌さん(20)は「全然会えていなかった中学の友だちに再会でき、記憶がよみがえってきた。みんな大人になっているのを見られてうれしい」と笑顔。大槌町で被災。家族は無事だったが、家など全て流された。今は尚絅学院大(宮城県)で勉学に励む。「帰るたび、まちも自分も少しずつ成長しているのを実感。震災で助け合いの大切さ、くじけない心を学んだ。乗り越えた自信を糧に、何事にも全力で取り組みたい」と誓った。                                                                                                 
 
 虎舞披露でメンバーを束ねた市内在住の鈴木佑太郎さん(20)は、久しぶりに顔を合わせた友人たちと会話を弾ませ、「何も変わっていない」と一言。式典前、「わくわくする。みんなで釜石を盛り上げたい」と心を躍らせた。2年目に入る建設業の仕事は「覚えることがいっぱい。怒られながら毎日頑張っている」と、一人前を目指して奮闘中。間もなく震災から12年を迎える古里に「人口が少ないので、自分たち若者が引っ張っていかねば」と意を強くした。
 
式典内容の企画などを行った、はたちのつどい実行委のメンバー

式典内容の企画などを行った、はたちのつどい実行委のメンバー

 
 同つどい実行委員の会田茉白さん(20)は上映した映像の編集に携わり、「頑張った結果が見られて良かった」と満足げ。今春、東京のダンスの専門学校を卒業予定。プロダンサーを目指して修行中で、「25歳までにディズニーとかの舞台に立ちたい。レッスンスタジオを持って教えられるようになるのも目標」と未来を見据える。愛娘の晴れ姿に母真里さん(49)は「3姉妹の末っ子。長かった子育ても卒業です」と感慨深げ。夢を追い求める茉白さんを応援し、「意志を貫き、好きな道を進んでいってほしい」と願った。
 
 今年の式典対象者は、2002年4月2日から03年4月1日までに生まれた同市出身者など268人。新型コロナウイルス感染症の影響による直前キャンセルなどもあり、出席者数は過去10年で初めて200人を下回った(オンライン開催の2021年を除く)。

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炎に願う平穏、感染収束 釜石・大渡町で伝統行事「どんと祭」 3年ぶり開催

「平穏な一年に」と願いを込め、正月飾りを燃やした「大渡どんと祭」

「平穏な一年に」と願いを込め、正月飾りを燃やした「大渡どんと祭」

 
 正月飾りを焚(た)き上げる伝統行事「大渡どんと祭」が7日、釜石市大渡町の大渡橋そばの甲子川河川敷で行われた。新しい年の多幸や平穏、新型コロナウイルスの収束-。集まった住民らは思い思いに願いを込めながら、立ち上がる炎を見つめた。
 
 大渡町内会(菅原章会長、約350世帯)の祭典委員会が主催。コロナ禍で一昨年、昨年と中止が続いたため、3年ぶりとなった。今年で49回目。感染状況を踏まえて式典やお振舞いは控えた。
 
八角形に組み上げられたやぐらの前で代表者が拝礼した

八角形に組み上げられたやぐらの前で代表者が拝礼した

 
市民が持ち込んだ正月飾りなどで山積みになったやぐらに点火

市民が持ち込んだ正月飾りなどで山積みになったやぐらに点火

 
 河川敷には丸太を組み上げた大きな八角形のやぐらが設けられた。朝早くから多くの住民が松飾りなどを持ち寄り、同町内会の役員らが受け取ってやぐら内に積み上げた。
 
 午後1時過ぎ、駒木町の不動寺内にある弘法寺の森脇妙紀住職が家内安全、開運招福、諸願成就、コロナ収束、平和などを祈願し、代表者が拝礼。手製のたいまつで点火し、勢いよく炎が上がると、参加した人たちは静かに手を合わせたりしていた。
  
3年ぶりに大渡地区で行われた「どんと祭」

3年ぶりに大渡地区で行われた「どんと祭」

 
市民らは燃え上がる炎に願いを託した

市民らは燃え上がる炎に願いを託した

 
 小佐野町の平泉栄子さん(62)は「どんと祭がないと、正月が明ける感じがしなかった。燃え上がる火は離れて見ていても、熱気がすごい。今年はいい年になりそう」と目を細めた。一緒に参加した孫の高橋葉月君(6)=北上市在住=は春から小学生になり、「勉強を頑張りたい」とはにかんだ。そんな孫の様子を柔らかな表情で見守る祖母は「無事に入学し、元気に育ってほしい」と願った。
  
 菅原会長(67)は「3年ぶりに開催できて、ほっとしている。商売繁盛、身体堅固など皆さんの願いがお焚き上げの炎で天まで届いてほしい。安心安全で住みやすい地域になるよう、大渡から盛り上げていきたい」と気持ちを新たにした。
 

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新型コロナと向き合い2023年がスタート 「健康で平穏な1年に」願い一層強く

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 新型コロナウイルス感染症の収束が見えぬまま迎えた2023年―。新規感染者数は依然高止まり傾向が続くものの、行動制限がない年末年始で人の動きは活発化。釜石市内の初詣スポット、初売りを行った商業施設の正月の人出は昨年より増加した。各所で帰省した若者グループや家族連れ、市外からの来訪者も多く見られ、本格的な“withコロナ”時代の到来を感じさせる新年のスタートとなった。
 

厳寒緩む年越し 尾崎神社に地元住民ら初詣 神楽、虎舞4団体が初舞奉納

 
年越しの時間帯に参拝する初詣客=尾崎神社

年越しの時間帯に参拝する初詣客=尾崎神社

 
 厳しい冷え込みもなく、穏やかな年越しとなった釜石市内。浜町の尾崎神社(佐々木裕基宮司)には、元日午前0時を前に初詣客が続々と集まった。新年を迎えたことを告げる本殿の太鼓が打ち鳴らされると、訪れた家族連れや友人グループがさい銭を投げ入れ、鈴を鳴らしてかしわ手を打った。佐々木宮司は新年初祈祷を行った。
 
 浜町の佐々木ヨシ子さん(81)は息子家族らと連れ立って親子3世代で参拝。一番乗りで神前に手を合わせ、家族の健康を祈った。東日本大震災の津波で同町の店舗兼自宅を失い、土地のかさ上げを待って2020年に再建。やっと暮らしが落ち着きつつある今、願うのは「コロナの収束、津波がこないこと、老いないこと」。生かされた命に感謝し、「体を弱らせずに今の状態を保つことが一番の願い。津波がきてもすぐに逃げられるよう準備もしている。子どもたちのためにも元気でいないと」と健康長寿を誓った。
 
 神社には地元の郷土芸能、神楽と虎舞の4団体が初舞の奉納に訪れた。各団体の代表が神前に玉串をささげ、昨年の加護に感謝。メンバー全員で参詣し、順に舞を披露した。新年の幕開けにふさわしい威勢のいい掛け声と勇壮な舞を初詣客らが見守った。
 
初舞の奉納に訪れた郷土芸能団体のメンバーら

初舞の奉納に訪れた郷土芸能団体のメンバーら

 
神社本殿で伝統の舞を披露する「東前太神楽」

神社本殿で伝統の舞を披露する「東前太神楽」

 
新年に期待を込め、威勢よく踊る「錦町虎舞」

新年に期待を込め、威勢よく踊る「錦町虎舞」

 
 昨年は、コロナ禍で中止が続いていた同神社と日本製鉄釜石山神社の合同祭「釜石まつり」が3年ぶりに復活。郷土芸能団体も久しぶりの舞の披露で躍動した。錦町虎舞の熊谷勇哉会長(32)は「祭りができたことは大きな喜び。みんな気合いが入り、気持ち的にも盛り上がった」と回顧。祭りやイベントの中止は次世代への芸能伝承活動にも影響を及ぼす。「子どもたちが踊りを目にする機会は絶対必要。祭りなどで興味を持ち、『やってみたい』と入ってきてくれる子が増えれば、踊りの継承にもつながっていく」と熊谷会長。今年も無事に祭りができるよう願った。
 

神々しい陽光に感動! 「初日の出」目当てに釜石の海岸部に見物客集まる

 
両石漁港から望む2023年の初日の出。神々しい光が海面を照らす

両石漁港から望む2023年の初日の出。神々しい光が海面を照らす

 
 元日朝のお楽しみといえば「初日の出」。釜石市内の海岸部には、2023年最初の朝日を拝もうと市内外から見物客が集まった。同市の日の出時刻は午前6時52分ごろ。水平線上を覆う雲に赤みが広がると、見物客は今か今かと太陽が顔を出すのを待ちわびた。雲の上部や半島部の稜線から光が差し込み始めると手を合わせ、スマートフォンのカメラなどを向けて美しい光景を写真や動画に収めた。
 
奥州市から訪れた女性3人はまばゆい朝日に感動

奥州市から訪れた女性3人はまばゆい朝日に感動

 
 県内外の進学先から帰省した奥州市の小野寺夏来さん(20)、阿部仁美さん(19)、菊池恵梨夏さん(20)は高校時代の同級生。年越しの時間帯に地元の神社を参拝後、海で日の出を見たいと沿岸部に車を走らせ、釜石にたどり着いた。地元旅館スタッフの好意で両石漁港に案内してもらい、無事、初日の出を見ることができた。「海から上がる朝日はめっちゃきれい。日光で海面が輝くのは初めて見る光景」と大感激。入学以来、コロナの影響を受けながらの学生生活が続くが、「今年こそ旅行に出かけられたらいいな。関東、関西方面に行ってみたい」と夢を描いた。
 

市内最大の初詣スポット「釜石大観音」 正月3が日のにぎわい回復傾向に

 
釜石大観音を訪れた初詣客。「新年のスタートに願うことは?」

釜石大観音を訪れた初詣客。「新年のスタートに願うことは?」

 
 大平町の釜石大観音は大みそか午後10時に開館。例年多くの初詣客でにぎわう元日、日の出の時間帯(午前7時前後)の人出は昨年より約300~400人増加。昨年までは県外からの帰省は自粛ムードで、小家族での参拝が多かったが、今年は若者グループの姿が目に見えて増えたという。人の流れは日中も途切れることなく続いた。正月3が日の人出は約8千人(昨年比約1500人増)。
 
 同所の初詣のピークは元日午前10時~午後2時ごろ。訪れた人たちはそれぞれの願いを胸に観音様に手を合わせ、参拝を終えると、お守りやお札を買い求めたりおみくじを引いたりしながら、新年への期待を高めた。観音像胎内の七福神巡りをしながら展望台に上がり、眼下に広がる釜石湾の雄大な景色を堪能する人たちも。各所で記念撮影を楽しむ姿も見られた。
 
引いたおみくじを笑顔で見つめる家族連れ

引いたおみくじを笑顔で見つめる家族連れ

 
 遠野市の佐々木達也さん(38)は、家族と県内外から帰省中の親族計12人で訪れた。同所への初詣は毎年恒例。昨年は「大きな病気もなく平穏だった」と感謝し、「今年も家族みんな無事に過ごせますように」と祈った。長女優希さん(9)は小学校入学と同時にコロナ禍に。この3年、各種制限の中で学校生活を送ってきた。母智美さん(38)は「学校行事が減ってしまい残念だが、少しずつ家族が見に行ける人数も増えたりしている」と変化を歓迎。長男陽麻君(6)、次男健麻君(2)と3人の子どもの健やかな成長を願い、「子どもたちが元気でいることが一番」と目を細めた。
 
青空に映える白亜の観音像。同市を代表する観光スポット

青空に映える白亜の観音像。同市を代表する観光スポット

 
 釜石大観音はコロナ禍への対応策として、週末3日間のみの営業を続けてきたが、昨年3月から通常営業を再開。国や県の旅行割引などもあり、団体ツアー客の来訪も少しずつ戻ってきている。小野寺俊雄係長は「関東方面からの来訪はまだ少ないが、東北エリア内ではだいぶ動きが出てきている。感染対策の関係で小規模ツアーが主流だが、今年こそ収束の方向に向かい、客足回復につながっていくことを願う」と話した。
 

初売りの人出も回復基調に イオンタウン釜石 正月3が日に約3万5千人が来店

 
福袋販売などが好調だったイオンタウン釜石の初売り=元日

福袋販売などが好調だったイオンタウン釜石の初売り=元日

 
 釜石市内の初売りは元日スタート。港町の大型商業施設「イオンタウン釜石」は通常より1時間早い午前8時に開店し、買い物客を迎えた。開店前には約350人が行列。開店と同時にお目当ての売り場に急ぎ、福袋など正月ならではのお得な商品を買い求めた。3が日の来店者は約3万5千人(昨年比約5千人増)。コロナ禍前には及ばないものの、着実な回復基調は新たな年への明るい材料となった。
 
 2014年3月にオープンしたイオン釜石の初売りは今年で9年目。元日初売りは地元民や近隣市町民らにもすっかり定着した。初売りのお楽しみ「福袋」は、今年もコロナ感染拡大防止策の一環で年末から販売開始。分散来店で客の密集を避けられるよう配慮した。約20の専門店が合わせて約1800個の福袋を用意。各店とも金額以上の商品を詰め、お得感を打ち出した。売れ行きも好調で3日までにほぼ完売した。
 
 元日はイオンタウンアプリの新規登録やクーポン提示で菓子の福袋がもらえる初めての企画(先着60人)も。2日は新春イベントとして唐丹町の桜舞太鼓が迫力の演奏を披露し、初売りを盛り上げた。元日の来店のピークは昼から午後4時ごろにかけて。駐車場は一時、満車状態となった。
 
イオンタウンアプリを活用した菓子の福袋プレゼントには長蛇の列ができた

イオンタウンアプリを活用した菓子の福袋プレゼントには長蛇の列ができた

 
買い物客でにぎわう店内=元日昼ごろ

買い物客でにぎわう店内=元日昼ごろ

 
 新型コロナの影響で大きな打撃を受けてきた商業界。イオン釜石もオープン以来、右肩上がりだった来店客数、売り上げが一時、落ち込んだが、昨年から徐々に回復傾向にある。片岡克也モールマネジャーは「コロナ禍前の19年の水準まではまだ戻っていないが、イベントなども増やしながら集客力アップを図れれば。地域との連携、空所活用も模索し、お客様に足を運んでもらえる施設を目指したい」と新しい年への意気込みを示した。